第一回目

森林所有権制度研究会(仮称)の第一回研究会のご案内

1.研究会の趣旨・素案

日本の国土の多くは森林によって覆われていますが、今日、多くの森林は過少利用の状態にあり、その多面的・公益的機能を低下させつつあります。そこで、この過少利用の一つの要因を所有権のあり方に求めていくことを仮説として設定し、議論を積み重ねるためのオープンな研究会をスタートすることにしました。

所有権とともに重要となるのが制度(Institution)の役割です。ここで言う制度とは、ダグラス・ノースが定義を与えたような人々の相互作用を形づくりながら作用しているルールのことであり、望ましい森林利用のためにはフォーマルなルールだけでなくインフォーマルなルールの役割が特に重要なものとなります。制度に関しては、ノース以降、超学際的な研究が展開され、目覚ましい成果が上がっています。研究会ではそのような動向にも学びつつ、研究の視野を広げていきたいと考えています。幅広い分野の方に集まり頂き、このテーマについての議論のフォーラムを作っていければ幸いです。皆さまのご参加、楽しみにしています。

2.日時・場所

2017年10月28日(土曜) 13時〜17時半

立命館大学大阪いばらきキャンパス C棟2F 272 (A棟Room1から変更になりました)

会場への交通アクセス http://www.ritsumei.ac.jp/accessmap/oic/

キャンパス内の地図 http://www.ritsumei.ac.jp/file.jsp?id=229844&f=.pdf

3.内容

a. 研究会の趣旨案の説明 高村学人(立命館大学) 13:00〜13:15

b.報告1「過少利用状況の共有林における部外者入山制」林雅秀(山形大学) 13:15〜14:45

要旨 本研究では,過少利用状況にある共有林管理について,外部者による利用を促す方法によって成功的な管理に結びつく条件を明らかにすることが目的である。調査対象は,福島県会津地方における主に山菜・キノコ利用のための共有林10か所(=10集落)で,区長,記名共有の共有林の代表者,古くからの山林利用に詳しい人物など,各集落で5名前後,計50名ほどの関係者に対してインタビューを行った。なお,本研究でいう集落の多くは近世村である。

10集落について比較分析を行った結果,外部者入山ルールに関しては,外部者入山を認める制度を実施しているか否かと,そうした制度の運用を積極的に行っているか否かの2つの観点から制度を分類可能であることが分かった。つまり,各集落の制度は,積極的入山制(5集落),消極的入山制(1集落),積極的入山禁止制(1集落),消極的入山禁止制(3集落)の4つに分類可能である。積極的入山制を行う集落と行わない集落を比較すると,制度を行う集落の特徴として,住民による集落の集まりへの参加率が高いこと,成員の多くが農家で職業の同質性が高いこと,入山制以外の集落活動にも積極的に取り組んでいること,集落のリーダーと外部者との間で交流があること,などをあげることができた。

参考文献:林雅秀・金澤悠介(2014)コモンズ問題の現代的変容. 理論と方法19(2): 241-259. 池谷和信(2003)山菜採りの社会誌. 東北大学出版会.

c.報告2「地域社会における放置される財の状況とその対策」 片野洋平(鳥取大学) 15:00〜16:30

要旨 近年日本全国各地で、過去に植林された森林、耕作が放棄された田・畑、居住が確認されない家屋、放置された墓などの問題が顕在化しつつある。これまでこうした問題はそれぞれ、放棄された森林問題、耕作放棄地問題、空き家問題などとして別々の課題として扱われてきた。確かに学問的にみれば、それぞれの問題を支える制度や対策は異なるため、個々に考察が行われてきた経緯は理解できる。しかし、所有者側からみた場合、森林、田・畑、家屋、墓などは地域において同時に所有されることが多く、類似する理由から放置されることも多い。学問的・政策的にみても、放置される財(以下、放置財)として一つの課題として構造的にとらえた方が理解が深まり、対策が立てやすい可能性もある。本報告では国内における典型的な過疎社会における放置財の状況、および、全国の過疎社会における放置財の状況を報告する。また、あわせて、現在、筆者が自治体の政策形成に関わっている同問題への対応についても報告する。

参考文献 : 片野 洋平:過疎地域における不在村者の森林を中心とした財の所有動向 ―鳥取県日南町の事例から―、環境情報科学学術研究論文集28号197-202、2014, 片野洋平:不在村者による家屋管理の条件~鳥取県日南町の事例から~、計画行政38(3):65-74 2015, Y. Katano: The conditions of forestry management in depopulated areas of Japan: Forest management behaviors of non-resident owners using a qualitative comparative analysis. Journal of Environmental Information Science, 44(5):99-110 2016、片野洋平:過疎地域における放置林の発生条件-在村者・不在村者の間伐に着目した分析-、林業経済研究、62(3):21-30 2016、片野洋平:過疎地域に放置される不在村者の財の所有動向:所有者に対するインターネット調査から、環境情報科学、46(1):91-100 2017

d.研究会の進め方についての意見交換・ディスカッション 16:30〜17:30

4.懇親会 18:00〜20:00

研究会終了後、北摂の山間部で捕獲されたジビエの料理を出してくれる大学近くの以下のお店で懇親会を行います。

http://pu-3.com/?p=6124

会費は、 お酒をよく飲む方 6,500円程度 お酒をあまり飲まない方 5,000円程度 院生 3,000円 を予定しています。

こちらも奮ってご参加ください。