???「さて…霊体は霊体で楽ですが、そろそろ依り代が欲しいところですね。
元の世界(トムの出身世界)では、霊的に何も持たない人形など、生半可な依り代では、世界の否定力に負けてしまいますが、幸いこの世界ではかなりいい加減なものでも世界に否定されない……非常識がまかり通っているようなので、案外簡単に見つかるかもしれません」
???「なんでもいいと言っても、流石におにぎりやペットボトルやアクリル板が依り代というのは不自由なので、どこかに落ちてませんかね? ピチピチのホムンクルスとか……」
???「ゆくゆくは……目指せ主従逆転!!
【拳を握る】
【主従=メイン・サブ】」
???「とは言ってみたものの…… 魂の入ってないホムンクルスなんてそうそう落ちて無いですよね?
流石にその辺のわけのわからないエネミーの死体を借りるのは厭ですし…… かと言って、この状態で何か対価を支払って募集するわけにもいきませんし……」
成るか!? 主従逆転!! 頑張れわたし……
魔方陣「【突如として少し離れたところに魔法陣が浮かび上がり、王冠を被り、蠍の尾を持ったイナゴの群れが湧き出した】」
トム「? 特に何も頼んじゃいねぇと思ったんだが……防寒具はこないだ頼んだし、最近メシはろっこに食わせて貰ってるし……」
イナゴの群れ「【イナゴの群れは一冊の分厚い本と電話の受話器を引きずり出した】」
トム「【受話器を取る】
……何だ……またババァのお小言か? 」
プルメリア「お前その独り言は受話器を取る前に済ませておけよである……」
プルメリア「まぁ、お小言はよしておいて……さて、クリスマスが近づいて来たであるな? 」
トム「ああ、カモの財布が膨らむ時期だな」
プルメリア「お前……スラム街気分をいい加減卒業せえよ……である」
プルメリア「クリスマスと言えば、家族で団らんで過ごすのが我が国の常である。
まぁ、流石に帰ってこいよとは言わぬので、せめてクリスマスプレゼントくらいは人並みのものを贈ろうではないか。
お前にとってこんな幸運なクリスマスは初めてであろうから、今回はなんでも好きなものを選ぶがよいぞ?
金に糸目はつけぬ」
トム「何!? じゃあ何かアーティファクトくれよ!! 」
プルメリア「却下!! 前に言ったであろ? 金に糸目は付けぬとは言ったが、組織の管理物をちょろまかして渡すなぞ、最悪余の首が飛ぶような事は却下である!! 」
プルメリア「と、言っても、クリスマスにプレゼントを貰うなどという事は初めてであろうし、何を選んだらいいかもわからぬであろうから、カタログも一緒に送ってやったであるぞ?
余は気配りとか根回しのできる女であるからな? さ、自由に選ぶが良い……何ならいくつか纏めてでも構わぬぞ? 」
トム「えーっと……ライフルライフル……」
プルメリア「そんなものあるかーっ!! 」
トム「いや、載ってるぞ!? 289ページ……ほら、子ども用ライフル……」
プルメリア「ほ……本当に載っているのである……」
プリシラ「載っているどころか、州にもよるけど男の子のクリスマスプレゼントとしては、5指に入る定番アイテムよ? 」
トム「んー……所詮はガキ向けだな……口径が小さすぎて、こんなんじゃ人間殺すのがやっとだぜ」
プルメリア「何か怖い事言ってるし!! 」
プルメリア「……そうか……うちの国はクリスマスプレゼントにライフルとか贈るのふっつーの事であったか……改めて怖い国であるなぁ……」
プルメリア「ぐぬぬ……余としてはそういう危ないものは持たせたくないので、こう……ラジコンとか、ブロックとか、自転車とかにならんであるかな? 」
トム「なんでもっつったろ?
まぁ、本当にライフルを頼むかどうかはわかんねーが、このカタログの中から決まったら、番号通知しとくぜ? 」
プルメリア「ぐぬぬ……」
トム君の世界のアメリカって凄い所なんだね?
いえ、皆さんの世界のアメリカでも概ねそんな感じです。
嘘だと思ったら「子供用ライフル」で検索してみましょう
トム「んー……装弾数も一発こっきりだし、塔の魔物相手にゃ荷が重いな。
再装填してる暇は無いだろうから、1ダースほど注文しといて、戦闘が始まったら猫達に一発こっきりで一斉射撃させるか?
いや、でも一番集中力が必要な時にそっちに集中力をとられるのは痛いな。
狙いもつけずに射撃しても相手を怯ませる事すら出来ねーかもしんねぇし……」
トム「やっぱ駄目だな……威力は弱いし、訓練を積んでない俺じゃまともに当てられないし、何より嵩張るし弾丸もある程度纏まった量持って歩かなきゃならなくなる」
トム「ナイフやマシェットもあるが、こっちはもっと駄目だろうな。
クソ……こんな事ならチムニーの言う事なんて無視してナイフの使い方ぐらい訓練しとくんだったぜ……
【カタログを放り投げる】」
???「わわわっ! 危ないですよー? 」
トム「お前実体無いんだし平気だろ? 」
???「まぁ、それはそうなんですけれどもね……。
クリスマスプレゼントは決まりましたか? 」
トム「駄目だな。
欲しいモンは自分で買ってるから、今更こんなカタログ渡されても大して欲しいモンが無い」
???「トムさんSFBIのエージェントですから、お給料貰ってますもんね。
なら、お歳暮とかどうでしょう? ほら、こないだ倒れて皆さんにお世話になりましたし」
トム「……俺はそんなガラじゃねーよ(舌打)。
ま、無理して頼む事もねーな……思いつかなきゃそのままにしとくぜ」
???「うーん……それはちょっといただけないですね。
プルメリアさんはトムさんに贈り物が出来るのを凄く楽しみにしてたじゃないですか。
何も頼まなかったらきっとガッカリしちゃうと思います」
トム「チッ……どいつもこいつも面倒臭ぇな……。
おい幽霊……じゃあババァが喜びそうなプレゼントを、適当にお前が見繕って頼んどけよ」
???「はぁ……私の趣味で選んじゃいますけどいいんですか? 」
トム「構わねーよ……そのカタログに載ってる品ぐらい、俺は自分の給料で買えっからな。
後で惜しがったりしねぇ」
???「はーい」
ナレーション「SFBIニュージャージー支部」
プルメリア「ふむ……クリスマスプレゼントのリクエストが届いたであるな」
プルメリア「!? 」
プリシラ「? クリスマスギフトのカタログの中にそんな驚くようなもの載ってたかしら?
【オーダーを覗き込む】」
プリシラ「…………随分意外なものを頼むのね……再プレゼント用かしら? 」
プルメリア「……にしても、小僧がこんなものを欲しがるとは意外であるな……てっきり武器の類かと思っておったであるが……」
果たして私の注文したクリスマスプレゼントとは?
魔方陣「【突如として少し離れたところに魔法陣が浮かび上がり、王冠を被り、蠍の尾を持ったイナゴの群れが湧き出した】
【何故か今日に限っては赤と緑の二色のイナゴが入り混じっている】」
トム「……ああ、ひょっとしてクリスマスカラーのつもりか……芸が細かいな……お前ら
【受け取りのサインをしながら】」
トム「さて、幽霊のやつ何を頼んだんだ?
【色とりどりのクリスマスプレゼントの箱をひとつひとつ開封する】
ターキーの燻製と……クッキー缶と……こっちはドライフルーツの入ったケーキか」
トム「で、この、デカい箱は……重さはそんなでもないな」
箱の中身「……」
トム「ぬいぐるみ? 」
トム「おい幽霊……お前こんなの俺に持って歩かせる気か? 」
???「お似合いですよ? と、そういうわけではなくてですね? 私の入っている珠を、この縫いぐるみの背中にチャックがありますので、そこに入れてください」
トム「ん? こうか? 」
猫のぬいぐるみ「はい、よくできました」
トム「……」
猫のぬいぐるみ「あれ? リアクション薄くないですにゃ? 」
トム「こっちは日常的に大根やトビウオと会話してっからな……いまさらぬいぐるみが喋ったぐらいで驚いてられっかよ」
猫のぬいぐるみ「まぁ、言われてみればそうですにゃ……」
猫のぬいぐるみ「何はともあれ、これで今まで以上にトムさんをお助け出来ますにゃ!!
名前が今まで通りの幽霊では何かと不便ですし、これからは『瑠璃』と、お呼びくださいにゃ」
トム「今まで……」
トム「お前……今度勝手に精神に振ったら、その辺の木に逆さ釣りにすっからな? 」
瑠璃「え? 何か酷い!! 」
と、言うわけで受肉(?)完了ですにゃ。
え? 「今まで『にゃ』とか言ってなかっただろう」って?
そこはそれ……キャラ付けって大事なんですにゃ