ヨーロッパ音楽のみなもと
♪ヨーロッパの古代というのも、実は語るのが難しい時代です。ふつうヨーロッパというと、むか~しから「ヨーロッパ人」という人たちが住んでいるような気がしますが、現在、ヨーロッパで幅を利かせている人たちは、かなり後から来た人たちです(現在、移民としてヨーロッパに滞在している人たちを「よそ者」として排除するのは、いかがなものですかね)。現在のドイツにはゲルマン人、イギリスにはアングロサクソン人、フランスにはいろいろ混じった人たちが大移動をしてきたのであり、イタリアぐらいがなんとか現在地に居住していたラテン人の末裔ということになります。それでは、もともとの先住民は誰かというとケルト人が挙げられるのですが、謎の多い集団なものですから確実なことがいえません。一般には、ヨーロッパ各地に遺跡が残り、現在のアイルランド、スコットランド、ウェールズ、ブルターニュに住む人々が、ケルト人の末裔だといわれています。彼らのケルト音楽といわれるものが日本でも人気がありますね。
そんなわけで、ヨーロッパでは伝統的に古代というとギリシアあたりから話をはじめようとします。でも、ギリシアから多くの知的遺産をうけとったからといって自分の歴史の一部にしてしまうのはいかがなものでしょうか。日本が中国から多くを学んて発展させたからといって中国を日本の一部であるかのような言い方はしませんよね。音楽との関連でもギリシアから多くを学んでいますが、現在ではギリシア音楽がどんなものであったのかはまったくわかっていません。文献から音楽の理論をうかがい知るだけのようです。
そこでギリシアは脇において、今から2000年ほど前のローマ帝国あたりから話をするのが妥当だと思います。ローマ帝国は今述べたラテン人が建国し、やがて地中海一帯からカフカスあたりには広がった大帝国です。ケルト人をヨーロッパから追い出したのもローマ人のようです。はじめは太陽神を拝んでいたのですが、やがてキリスト教を取り入れます。そしてローマが帝国の中心というだけでなく、カトリックというキリスト教集団の中心地となりました。ちなみに、キリスト教には、東方キリスト教という古くて多様な宗派や、カトリックから飛び出したプロテスタントなどもあります。お前たちはキリスト教徒じゃないといわれて仲間外れにされた集団も歴史上ではいっぱいあります。
そもそもキリスト教というのは、イエスという人をキリストと信じる人々の集まりです。このイエスという人は、ユダヤ教という宗教のなかで改革運動を始めたのですが、気の毒なことに犯罪者として十字架の上で処刑されてしまいました。残された信者たちは絶望しましたが、イエスが復活したという証言を礎にして活動を再開します。信者は迫害を受けましたが、結局、それまでの太陽神崇拝などを駆逐してキリスト教は国家の宗教となります。それからはキリスト教会と国家とが仲良く手をつないで人々を支配するようになりました。ときどき、喧嘩をすることもあったようですが。
ローマ帝国からはキリスト教の布教が広くおこなわれて、ヨーロッパ各地にキリスト教会ができました。ヨーロッパ中央部になだれ込んできたゲルマン諸民族も、多くがキリスト教化しました。ローマ帝国が崩れた後にできたフランス、スペイン、イタリア、ドイツという国々もみんなキリスト教の国になり、現在にいたっているのです。
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