2014年8月15日から17日まで、岐阜県中津川市加子母で夏合宿を行いました。加子母は式年遷宮にも使われる木曽ヒノキの森がある村です。美しい自然、高い木工技術、そしてなにより活気ある素晴らしい人たちの村です。今年は中務先生ご夫妻と生徒6人が参加して、三日間、加子母の自然を味わい、みっちりと合奏練習に励みました。その様子を報告します。
初日は生憎の雨模様で、予定していた神宮美林(備林)の見学が可能かどうか危ぶまれました。去年はおりからの集中豪雨のために山道が流され、見学が中止となりました。今年こそはと期待は高まりますが、まずは腹ごしらえ。こちらの名物ほうば寿司を築百年を超える古民家の合宿所で食べました。それからバスとの待ち合わせ場所である加子母道の駅へ。参加者の熱意が天に通じたか、出発時には遠くに青空が見えました。ただし、見学する山の方向には何やら怪しげな雲が・・・・。しかし、まずは出発!
加子母総合事務所所長の内木さんの見事な運転で、無事に山に到着しました。ちなみに内木さんは尾張藩が定めた山守という山林管理職のご子孫だそうです。さて、さわらとひのきの合木や実生から生育した天然ヒノキ林を見学しました。ちなみによく似たさわらとヒノキを区別するには、葉の裏を見るといいそうです。さわらにはX、ヒノキにはYの葉脈筋がみえるのです。また実生から生育した天然ヒノキは根が深いので災害に強く、また間伐の必要がないほど生態環境に適合しているのだそうです。式年遷宮で用いられる木を切り出した場所も訪れました。切り出しの斜面には300人が見学できる台を設置したそうです。残念ながら、そこで雨となりましたが、崖の上にのんびり草をはむニホンカモシカの姿をみることができました。土砂降りの中、それから天然ヒノキ林のなかの整備された林道を一時間ほど歩いて雨に濡れたヒノキやさわら、ほうば、かしなど木々の緑を堪能しました。
びしょ濡れの身体をいやすのは温泉がなにより。みんなで付知狭倉屋温泉で暖まり、疲れをとりました。そして合宿所に帰り、晩御飯の支度です。疲れていましたが、美味しいお豆腐を前菜に、ぱりっとした厚揚げと焼きナスの皮をとってからつぶして塩コショウ、油で味を付けたサラダをつまみに、そして鶏肉に下味をしみこませてある名物けいちゃんを焼いて食べました。充実した一日でした。
二日目はいよいよ合奏練習です。ヴィヴァルディの四季から冬、久石譲の天空の城ラピュタ、グリーグのホルベルグ組曲のプレリュードを合わせてました。ヴィヴァルディでは、冬の始まりのしんしんとした部分のデリケートな表現や突然氷が割れる瞬間の雰囲気を出すのが難しいです。ラピュタでは親しみやすい美しいメロディーながら、久石さんの編曲はとても精妙でリズムや音の重なりを正確に表現するのが大変でした。ホルベルグはバロック音楽の雰囲気をもった組曲なので、旋律と通奏低音とをきちんと合わせるところが課題でした。
お昼になると、朝予約しておいた美味しいお蕎麦屋さんで昼食をとりました。たっぷりのお蕎麦と野菜てんぷらに舌鼓を打ちながら午後の練習に備えます。
しかし、あまりの美味に体がくつろいでしまったのか、我々は眠くなってしまいました。でも、先生お二人は休む間もなく夜のミニコンサートの準備です。そうです、合宿所に村の人をお誘いしてヴァイオリンとフルートによるミニ音楽会をするのです。ミニ音楽会では誰もが知っている曲やテレマンのトリオなどが演奏されました。合宿所となった古民家を移築された中島工務店の中島社長ご夫妻と息子さんご夫妻、ご近所のご夫妻も来てくださり、みなさん楽しんでくださったようです。私たちにとってもフルートとヴァイオリンの重奏は本当に素晴らしく、よい夕べとなりました。
そして晩御飯。中務(晴之)シェフの指揮の下、男子(年齢はばらばらですが)たちの見事な包丁さばきで美味しい夕食ができました。一糸乱れぬチームワークは、まるでどこかの料亭の調理場のようでした。それから音楽談義。夜は更けていきました。
最終日、朝から音楽談義に花が咲き、もっと滞在して練習したい、もっと加子母を歩きたいと心残りがあるものの、朝の練習が終わるとはや帰り支度となりました。全員で掃除、整頓をして車にごみを積み込んで出発です。
帰りには加子母が誇る歌舞伎場である明治座を訪れました。もう130年も前に作られた建物ですが、加子母の大木で作られた大黒柱はゆらぐことなく建物を支えています。ここでいつか演奏会をしたいものです。それから東白川村の道の駅に立ち寄って食事です。おいしい豚丼をいただき、お土産を買ったら解散。また来年ここで会えたらいいですね。思い出になる夏合宿でした。(M.O.B.)