ステッキ術2 どんなステッキが役に立つか

(現代語訳)

敵と対峙した場合、どうしてもその隙を見て、打つか、突くか、当てるか、さもなくば敵の武器を打ち落として取り押さえるか、締めるかして、その戦闘力をくじくより他に方法がない。だからステッキはすぐ折れたり、曲がったり、打つ・突いた場合に効き目が十分でないようではダメである。

蛇や鶴の足のステッキが、役に立たないことは言うまでもないが、犬殺しの棒のような太いものは、打つ・突く場合に効き目はあるが、使うのに自由自在にいかない。だから却って敵に乗じられて、不覚を取るようなことになるから、やはり役に立つと言うわけにはいかない。

十分に役に立つステッキというのは、打っても突いても当てても折れず曲がらず、重からず軽からず、手頃なものでなければならない。従って普通のステッキで、至極丈夫なものがよい。

(注)

「打っても突いても当てても折れず曲がらず」との基準には普遍性がありますが、「重からず軽からず」は使う者によって異なる、と思われます。私は経験上、杖道の稽古をする際には、自分には重めの杖が扱いやすい、と思っているのですが、他の人にはまた別の感想があるでしょう。金砕棒を自在に操る武人もいれば、普通の杖でも持ち重りがする人もいるからです。

手練れの職人は、仕事道具を特注します。武具に限らず、その手で用いるあらゆる道具は、その効率を追求すれば各人各様になる、ということなのでしょう。