東海大学医学部基礎医学系分子生命科学情報生物医学研究室(今西研)の研究室員と進めています。
松前直下のメンバーおよび主な研究テーマは下記の通りです。
学生・学振PD・共同研究などの受け入れも可能です。
学生の場合、修士・博士課程ともに東海大学大学院医学研究科の今西研に所属することになりますが、本学では博士課程の学生を対象に月々50,000円~160,000円(学費相当額)が支給されます(2023.01現在)。研究テーマは進化やバイオインフォマティクスに関連すれば下記に限りませんが、事前にご相談ください。
ポスドク・技術員の雇用はグラント採択状況によります。2023.03現在は募集していませんが、関心がある方はコンタクトを頂ければ、研究費申請も行います。
詳しくはお問い合わせ下さい。
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自然人類学、情報科学を用いて、人文科学のデータを生物学のデータと重ね合わせて人類の歴史や多様性について統合的に解析する研究に携わる方を募集します。
【情報系の人向け】ヒトに関するデータはオミックスや行動記録といったデータのみならず、文化データが豊富です。文化データ(例えば、言語、文化人類学に基づく民族集団の属性についての情報、美術品や考古遺物の画像、人文学アーカイブ、それらのメタデータなど)は、一見役に立たないと見逃されがちですが、既に社会で広く利用されている文化データがあります。例えば、自然言語処理では、デジタル化された文字情報が機械翻訳の発展に重要なリソースとなっています。英語のような、先進国で話者数が多くかつ言語学的に偏った言語の機械翻訳が飛躍的に向上する一方で、人類学や言語学的に見れば、世界の言語の多様性の実態と相反しており、学習データにバイアスがかかっていることが指摘されています(注)。また、それ以外の文化も、デジタルアーカイブといったデータベース化が進められている一方で、ドメイン知識に基づいてデータの解釈を進める研究も必要です。このように、文化に関するデータは人類学等の知見を取り入れたり、他の生物学のデータと繋げていくことでデータに新たな解釈を与えたり、新しい技術の発展に寄与する可能性があります。
注)英語やドイツ語、スペイン語、フランス語などの西ヨーロッパの言語は、インド・ヨーロッパ語族と呼ばれる語彙の祖先を共有する一つのfamilyです。一方、北太平洋沿岸部はfamilyレベルの言語多様性高いことが知られます、例えば日本語や韓国語、中国語はそれぞれ独立したfamilyで、全体的な語彙どころか文法も異なります。世界の言語は約7000あると言われていますが、主要先進国ので話されている言語とはfamilyレベルで異なりかつ話者数の少ない言語が数多くあります。その場合、英語とドイツ語の機械翻訳の手法が、例えば、アマゾンの先住民の言語と日本語の翻訳にそのまま使えない可能性といった課題が示唆されています。
(1) これまでに、私たちは、先住民族や古代人を含むゲノム解析に加え、言語や音楽の解析から、東ユーラシアの民族集団の歴史や関係性を推定してきました(Matsumae et al, Science Advances 2021, 生命誌vol.102, 情報処理学会山下記念研究賞受賞)。そうしたゲノムの歴史と文化の横断的な研究を引き続き行います。
(2) 新たに、どのような文化データがゲノムや生態系など生物学のデータと重ね合わせできて、どんな発見があるのか、探索する実験的な試みを行います。
文化や生物のデータを統合するにはどのような課題があり、どのような未来が待っているのか、日本バイオインフォマティクス学会JSBi Reviewから日本語総説を公開しています。
生物の種内の遺伝的多様性は進化の原動力です。これまでの集団ゲノミクス(population genomics)ではヒトやマウスのような哺乳類は遺伝的多様性の低い生物種が多く、そうした種を対象に進化研究やバイオインフォマティクス・集団遺伝学のツール開発が行われてきました。また生物の界レベルで見ると、そうした遺伝的多様性の研究は、多くは動物や植物に偏っていて、菌類は酵母を除くとほとんど研究されていない現状があります。近年、菌類と植物・昆虫などの生物間相互作用や環境DNAによって菌類の生態学的な重要性が明らかになってきていますが、菌類そのものは進化生物学では注目されていません。菌類は生活史・多細胞性・生殖・代謝などが動物や植物とは大きく異なっており、生命進化の多様性を考える上で重要ではないでしょうか。
そこで、これらの課題にアプローチするモデル菌類として、キノコ(白色腐朽菌)であるスエヒロタケの高精度なリファレンスゲノムを、ゲノム・トランスクリプトーム・プロテオームなどを用いて構築中です。スエヒロタケは、真核生物では遺伝的多様性が最も高いことが報告されており、多様性の高い生物のモデルとして、また研究が遅れている多細胞性の菌類のモデルとして進化研究に利用できると考えています。またごく稀にスエヒロタケはアレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)の原因として知られており、ゲノム・遺伝的多様性・バイオインフォマティクスを武器に、いまだ治療法や機序の解明が確立していない疾患の研究へ役立てることを目標としています。スエヒロタケの研究では、実験およびドライの解析を用いて、私たち自身で収集した菌株で遺伝型および形質(表現型)の情報を整備しています。これまで松前は、遺伝研のグループと進めている構築中のリファンレスゲノム(論文準備中)について、実験系立ち上げの苦労(?)話や現在までの成果など、学会やセミナーなどで講演しております。菌類は動物や植物に比べると分子・細胞生物学の手法や知見が整備されていない面もありますが、逆に研究者が少ない未知の分野に挑戦したい・菌類を使った研究に関心がある方をお待ちしております。
主要共同研究先:国立科学博物館、千葉大学真菌医学研究センター、国立遺伝学研究所、他
スエヒロタケの子実体(キノコ)。
スエヒロタケの培養株
MinIONでのシーケンシング
開発中の日本産スエヒロタケのゲノムブラウザ
研究室全体のHP:http://bmi.med.u-tokai.ac.jp/
研究室全体としては、医学部内の情報系の研究室である情報生物医学研究室(今西研)に属します。
ゲノム解析や医療情報などバイオインフォマティクスが主体の研究室で、データ解析に特化した解析サーバがある他、必要に応じて、外部のスパコンなどを契約し利用しています。加えて、核酸解析、NGS解析などに適した実験室もあります。その他、実験設備・技術は必要に応じて、学内の共用施設である生命科学統合支援センターの支援を受けています。
松前所有機器類
コンピュータ関連
ファイルサーバ3台など
予算状況によるが、現状、パソコンやデスクは一人一台支給できています
実験関連
MinION 1台
薬品用冷蔵庫
人工気象器(植物用培養装置)2台
ウォーターバス 1台
実験台 1台
UVクロスリンカー 1台
分析天秤 1台など
今西研のメンバー構成は女性や育児中の職員も多い環境です。
今西研のうち、以下は、松前のプロジェクトのメンバーです。
西川有理(2022.04- 特定研究員, 文化進化)
鴨下 真由(2019.06- 研究技術員, 東海大学文学部考古学専攻M1, 考古遺物の画像解析 )
須藤恵美(2021.04-大学院生, スエヒロタケの形質多様性解析 )
片平 泰弘 (2019-2020.03, 研究技術員, 東海大学医学部大学院生, 画像解析 )
西山久美子(PhD)(2021.04-2022.12 研究技術員、コミュニケーションの進化)