古代ローマ法史

古代法一般

 

 

Internet Ancient History Sourcebook : Legal Texts : ローマ法はいうまでもなく古代法全般(なんと日本法まで)について有用なデジタル資料を提供しています。

The Code of Hammurabi : 紀元前18世紀に成立したハンムラビ法典の英訳版。アメリカ・Yale大学のAvalon Project から(いちいち明記しませんが、他の事項についても、このProjectにたいへんお世話になっています)。解説論文・訳注もあり便利。有名な「目には目を」「歯には歯を」を意味する規定は196条と197条です。

 

 

古代ギリシア

 

▼アリストテレス著/村川堅太郎訳『アテナイ人の国制』(岩波文庫、1980年) : アテネの国制を知るための必読文献。 

▼澤田典子著『アテネ 最後の輝き』(岩波書店、2008年) : 紀元前4世紀、アレクサンドロス大王のマケドニアに敗れたアテネの姿を、政治家・弁論家デモステネスを軸に描いています。とくにデモステネスのライバルであるアイスキネスとの間で行われた「冠の裁判」(デモステネス顕彰提案に対しアイスキネスが違法提案として告発して始まった裁判)などについて詳しく扱っており、ギリシアの裁判を知るうえでもお勧めの1冊です。

▼澤田典子著『アテネ民主政 命をかけた八人の政治家』(講談社、2010年):いうなればアテネ民主政の通史ともいうべき一冊。

 

 

 古代ローマ法

 

 

ラテン語法学・政治学用語集-ラテン語情報館 : 「レース・プーブリカ(res publica、公共体=公的生活=国家)に関する用語を集めてみました。法律用語が中心です。」(開設者)

リーウィウス「ローマ建国史」 : 古代ローマの歴史家リーウィウス(BC57-AD17)の「ローマ建国史」の私訳版。その「第二十六章 ホラティウスに対する裁き」では、王政時代の裁判の様子が描かれています。なお、刊本は、岩波文庫で上・中・下三巻本として刊行されています

Gizewski, Geschichte des romischen Rechts, Skript zur Lehrveranstaltung im WS 2000/2001.:: 法制史というよりも歴史学的な立場からのローマ法史概説(ローマ建国以前から19世紀まで叙述)といえるでしょう。

〔王政期の法〕

Laws of the Kings, 753 - 510 B.C : 十二表法成立以前(王政期)のローマ法について。

〔十二表法〕

The Twelve Tables. : Yale Law School のAvalon Projectのサイトから、ローマ法史の出発点に位置する十二表法の英語訳(全文)です。なお、十二表法の各表のタイトルは以下の通りです。

Table I. Proceedings Preliminary to Trial

Table II. Trial

Table III. Execution of Judgment

Table IV. Paternal Power

Table V. Inheritance and Guardianship

Table VI. Ownership and Possession

Table VII. Real Property

Table VIII. Torts or Delicts

Table IX. Public Law

Table X. Sacred Law

Table XI. Supplementary Laws

Table XII. Supplementary Laws

▼佐藤篤士著『LEX XII TABULARUM ―十二表法原文・邦訳およぴ解説』(早稲田大学比較法研究所、改訂版1993年)

▼春木一郎「十二表法」、『京都法学会雑誌』第1巻第8~11号、第2巻第1号、明治39年8~11月、明治40年1 月

 

〔ローマの制定法〕

Julian Law on Agrarian Matters, 58(?) B.C.

Law of Caesar on Municipalities, 44 B.C.

Internet Medieval Sourcebook : Medieval Legal History : ディオクレティアヌス帝以後のローマ法史料を見ることができます。"Codex Theodosianus"や"Corpus Iuris Civilis" の抜粋もあります。

Roman Law Resources

広島大学法学部 吉原研究室HP : ローマ法史料がラテン語で読めます(残念ながら私は読めませんが、それでも雰囲気は味わえます)。日本を代表するローマ法学者の著作目録もありたいへん便利。

ヨーロッパの法 : 個人の方が開設したHP。守備範囲(?)は古代ローマ法から近代法まで。たいへん参考になります。

 

〔ガーイウス「法学提要」〕

▼佐藤篤士監訳・早稲田大学ローマ法研究会訳『ガーイウス 法学提要』(敬文堂、2002年)  : 参考図書の紹介です。紀元2世紀に活躍したローマの法学者ガイウス(Gaius)は、ユスチニアヌス帝の「学説彙纂」(Digesta)にその学説が引用されたことでも知られています。その著「法学提要」の内容が詳細に知られるようになったのは、1816年、ローマ史家ニーブールがヴェローナの教会附属図書館で羊皮紙に書かれた写本を発見して以後のことだそうです。そのような歴史的背景を念頭に置いて訳書を読むと、ちょっと感動します。なお、ガイウスの邦訳としては、船田亨二訳(有斐閣、1967年)もあります。

▼末松謙澄訳竝注解『ガーイウス羅馬法解説』(大雄閣書房、訂正増補三版・1924年) : 2008年7月、田中実先生(南山大学)からご教示を頂戴しました。実際に読んでみると、これがなかなか面白い。

なお、『法学提要』の編別は以下の通りです。

第1章 人の法

自由人と奴隷

自権者と他権者

後見と保佐など

第2章 物の法

物の分類

物の個別取得

物の包括取得

債権債務関係とその分類など

第3章 訴訟の法

訴訟

抗弁

特示命令

濫訴に対する制裁

有責判決を受けた者が破廉恥な者とされる訴訟

法廷召喚と再出頭保証契約など

 

▼フリッツシュルツ著/佐藤篤士監訳「古典期ローマ私法」(I) : 全部で8回連載。PDFファイルで全文読めます(リンクは初回分のみ)。

▼フリッツシュルツ著/塙浩訳『古典期ローマ私法要説(塙浩著作集8-西洋法史研究)』(信山社、1992年) :これも田中実先生のご教示によるものです。

▼栗生武夫電子文庫(私立玉川用賀村中央図書館) : 「Jus Gentium発達ノ内面」、「ローマの法学教育」、「中世イタリイにおけるローマ法の運命」などの論文を全文pdfファイルで読むことができる。

▼原田慶吉電子文庫(私立玉川用賀村中央図書館) : 「民法七〇九条の成立する迄」、「法学提要希臘語義解」第一巻邦訳、法学提要希臘語義解」第二巻邦訳、「法学提要希臘語義解」第三巻邦訳、「法学提要希臘語義解」第四巻邦訳、「我が国に於ける外国法史学の発達」などを全文pdfファイルで読むことができる。

〔ローマ法大全〕

『ゲバウエル=シュパンゲンベルク版ローマ法大全』について : 福岡大学が公開・提供する画像データベースです。「ローマ法研究にあたり、現在もっとも利用されていますのが、ローマ史・ローマ法の泰斗であったテオドール=モムゼン(1817-1903)の編纂にかかる刊本です。 しかし、モムゼン版に対しては、 たとえば、『学説類集』につき、もっぱらフローレンス写本と バシリカ法典にもとづいてテクストを復元し、いわゆる流布本を軽視した点、あるいは、写本の読みにあたり、きわめて恣意的にコンマを入れた点など、批判も少なくありません。今後、このモムゼン版を批判的に再検討するためには、それにさきだって、フローレンス写本の読みと流布本の読みとの異同を詳細に注釈した『ゲバウエル=シュパンゲンベルク版』の参照が欠かせません。 こうして、クリスティアン=ゲバウエル(1690-1773)およびゲオルグ=アウグスト=シュパンゲンベルク(1738-1806)が編集したこの刊本が今日世界的に再評価されつつあります。しかし、この刊本の発行部数は少なく、わが国ではもちろんのこと、ヨーロッパであっても、参看は困難と言われています。」(福岡大学HP)

大橋直美「貴重書 『ローマ法大全』 と南山大学デジタルアーカイブ 」 : 南山大学図書館の欧州中世法コレクションの中核をなす 『ローマ法大全』について解説しています。

Corpus Iuris Civilis : 前掲・吉原先生(広島大学)のホームページにも資料・リンクがあります。

日本民法典の基礎としてのローマ法文に関する研究 : 田中教雄先生(九州大学大学院法学研究院)のサイトでは、日本民法に影響を与えたローマ法文に焦点をあて日本民法の歴史的系譜を明らかにすることを目的として、「ローマ法大全」の一つ、「学説彙纂」の翻訳(一部)が公開されています。あわせてローマ法文の日本語訳文献一覧(暫定版)も公開されています。

〔キケローの法廷弁論〕

・紀元前1世紀ローマにおける裁判の様子を知るには、古代ローマを代表する弁論家・政治家キケロー(BC106-BC43)の法廷弁論を読むのが最適だと思います。

▼『キケロー選集』1~5(法廷・政治弁論Ⅰ~Ⅴ)、岩波書店、1999~2001年

・お手軽なところでは・・・

▼小川正廣・谷栄一郎・山沢孝至訳『キケロー弁論集』岩波文庫、2005年

キケロー「トゥスクルムの別荘での対話」 : 私訳版。ローマ最高の弁論家キケロー(BC106-BC43)の思想をこのサイトで味わって下さい。キケロ曰く、「これまでわたしの弁論の場は法廷でした。わたしよりもこの仕事に長く携わったものはいないでしょう。老境に入るわたしのこれからの弁論の場は、哲学だということになります。」(私訳より) 古代ローマの弁論家は、法務官の前で、あるいは法廷で、あるいは民衆の前で、あるいは元老院において豊かな知識を持って弁論を行った人々。したがって、ローマ法の知識を身につけることも当然要求されました。にもかかわらず、キケローによれば、「時として恥ずかしい思いをするほどに、みながみな、市民法には無知」(キケロー著/大西英文訳『弁論家について』上、岩波文庫、2005年、31頁)だったそうです。

〔木庭顕先生のお仕事〕

・ローマ法史研究といえば、やはり木庭顕先生の業績を紹介しなければなりません。

▼『政治の成立』(東京大学出版会、1997年

▼『デモクラシーの古典的基礎』(東京大学出版会 、2003年

▼『法存立の歴史的基盤』(東京大学出版会、2009年

▼『ローマ法案内-現代の法律家のために』(羽鳥書店 、2010年

▼『現代日本法へのカタバシス』(羽鳥書店、2011年

・前三冊の三部作が木庭先生のお仕事の本体部分。それらを踏まえて要約的にまとめられたのが『ローマ法案内』。さらにそうしたローマ法史研究をもとに現代法研究について発言されたのが最後の『カタバシス』。私自身は、後三冊を読書中(まだしばらくこの状態が続くと思いますが)。何回読んでも難解。それでも本当に凄いお仕事だということだけは理解できます。その基本命題の一つは「ローマ法の基本原理は占有である」ということ。占有概念を核とし、そのコロラリーとして民事訴訟などが体系的に発展していく様が見事に描かれています。

・なお、木庭先生のお仕事にとって、Savignyの占有論が非常に重要な位置を占めています。この点に関しては、以下の論文が必読です。

▼木庭顕「Savignyによる占有概念の構造転換とその射程」(海老原明夫編『法の近代とポストモダン』東京大学出版会、1993年、167~191頁