司法史年表_1877
●明治一〇年一月六日 郷宿営業再開の広告（同日付重新静岡新聞(号数不明)）
旧臘三十日江川町ヨリ出火弊宅右火災ニ罹リ類焼仕候処焼跡ヘ家作仕本月六日ヨリ営業仕候間愛顧之諸君不相替御投宿アランコトヲ懇願
静岡伝馬町
丑一月 上等郷宿 田中富次郎
客歳敝家類火仕候ニ付馬場町柏屋長右衛門方ニテ是迄之通営業仕候此旨更ニ広告候也
静岡伝馬町
官許郷宿 安田故太郎
●明治一〇年一月一七日 裁判所ノ呼出ヲ受ケ無届ニテ遅参不参スル者五銭以上十円以下ノ罰金ヲ科ス（布告第五号）（『太政類典』2編346巻【78】）
●明治一〇年一月二〇日 府県警部巡査官等ヲ定ム（東京府を除く）（太政官第一一号達）
府県警部以下官等左ノ通被定候条此旨相達候事
一等警部 八等
二等警部 九等
三等警部 十等
四等警部 十一等
五等警部 十二等
六等警部 十三等
七等警部 十四等
八等警部 十五等
九等警部 十六等
十等警部 十七等
以上判任
一等巡査 等外一等
二等巡査 等外二等
三等巡査 等外三等
四等巡査 等外四等
但巡査月俸ハ拾円以下ヲ以テ其府県適宜ニ定ムルヲ得
●明治一〇年一月二七日 静岡県令より各警察出張所へ達（『静岡県史料』二二（駿河国史））
今般府県官中参事以下被廃警部巡査官等左之通被定候処巡査之義ハ渾テ従前之通可相心〔得〕旨各巡査ヘ無漏可相示此段相達候事（後略）
●明治一〇年一月三一日 「駅費滞金催促一件」大審院判決（『大審院民事判決録』）
●明治一〇年二月二日 沼津区裁判所申渡（同年二月二六日付重新静岡新聞第一〇一号）
静岡県第三大区三〔小〕区駿河国
庵原郡興津住平民傳次郎長女
佐野 ぶん
其方儀明治九年九月十五日有渡郡北矢部村酒井柳吉養母とめヘ依頼シ堕胎ヲ為ス科改定律令第百十四条ニ擬シ懲役百日申付ル
●明治一〇年二月五日 静岡県、警察出張所・屯所等の名称を廃し、出張所を警察署、屯所・分屯所を分署と改称（『静岡県史料』二二（駿河国史））
今般警察出張所并屯所等之名義ヲ廃シ更ニ出張所ヲ警察署ト屯所分屯所ヲ分署ト相改即チ左之通称呼候条門牌之義雛形之通調製至急掲可致此段相達候事但本分署印章之義ハ当地ニ於テ彫刻ノ上可相渡事
明治一〇年二月五日 静岡県令大迫貞清
┌─────────────┐
│□何地名警察署 │
└─────────────┘
┌─────────────┐
│□何地名警察署 何地名分署 │
└─────────────┘
警察第一出張所改
一静岡警察署
第三大区屯所改
一静岡警察署興津分署
第四五大区屯所改
一静岡警察署静岡分署
第六七大区屯所改
一静岡警察署藤枝分署
第四大区分屯所改
一静岡警察署清水分署
第六七大区分屯所改
一静岡警察署島田分署
警察第二出張所改
一沼津警察署
第二大区屯所改
一沼津警察署吉原分署
第一大区分屯所改
一沼津警察署御殿場分署
第二大区分屯所改
一沼津警察署大宮分署
警察第三出張所改
一韮山警察署
第八大区屯所改
一韮山警察署三島分署
第八大区第一分屯所改
一韮山警察署三津分署
第八大区第一分屯所改
一韮山警察署本立野分署
第九大区第二分屯所改
一韮山警察署熱海分署
警察第四出張所改
一下田警察署
第九大区屯所改
一下田警察署松崎分署
第九大区〔第〕一分〔屯〕所改
一下田警察署梨本分署
警察第五出張所改
一浜松警察署
第十二大区屯所改
一浜松警察署浜松分署
第十二大区分屯所改
一浜松警察署白須賀分署
警察第六出張所改
一見附警察署
警察第七出張所改
一掛川警察署
第十大区分屯所改
一掛川警察署金谷分署
●明治一〇年二月六日 沼津区裁判所申渡（同年二月一二日付重新静岡新聞第九四号）
東京府第七大区二小区
武蔵国豊島郡北品川駅
平民清蔵長男
榊原亀太郎
其方儀東京芝田町上総屋彦次郎方雇ハレ中同人方ニ於テ窃取スル金弐十五銭又ハ相模国高座郡鵠沼村関根市兵衛同居木村福松方日雇中同人ヨリ依託スル品物ヲ質入レ窃取スル賍金壱円右科ノ内賊盗律改正盗条例ニ依リ窃盗ヲ以テ論シ一等ヲ加ヘ懲役七十日申付ル
神奈川県相模国高座郡
鵠沼村平民関根市兵衛同居
木村福松代木村友七後家
木村 ふし
其方儀先般窃取セラルヽ金ハ賊費用致シ可償資力無之間其旨相心得ベシ但右盗賊武蔵国豊島郡北品川駅平民清蔵長男榊原亀太郎ハ懲役七十日申付候事
●明治一〇年二月七日 沼津区裁判所申渡（同年二月一二日付重新静岡新聞第九四号）
静岡県第三大区三小区
駿河国庵原郡
八木間村平民金兵衛弟
梅澤伊三郎
同県第八大区二小区
伊豆国君澤郡青木村
平民寅吉厄介
鈴木弥三郎
其方儀三島駅伝馬町長谷川忠助方ニ於テ同人妻くにト申合金銭ヲ賭ケ博戯致ス科雑犯律賭博条ニ依リ懲役八十日申付ル
同県同区
伊豆国君澤郡三島駅
伝馬町平民忠助妻
長谷川くに
其方儀八木間村金兵衛弟梅澤伊三郎外壱人申合セ居宅ニ於テ金銭ヲ賭ケ博戯致ス科雑犯律賭博条ニ依リ懲役八十日可申付処婦女ナルヲ以テ収贖ヲ聴シ贖金弐円申付ル
●明治一〇年二月九日 保釈条例（太政官第一七号布告）
第一条 保釈トハ刑事被告人ヲシテ保証人ヲ立テ保証金ヲ出シ審訊中ノ繋留ヲ免レシムルモノヲ云フ
第二条 裁判官ハ被告人ノ遁逃シ或ハ罪証ヲ隠滅スルコトナキヲ察スレハ懲役終身以上ニ該ルヘキ者及ヒ先キニ重罪ノ刑ニ処セラレタル者ヲ除クノ外保釈ヲ許スヘキモノトス
第三条 被告人タル者及ヒ其保証人タラント欲スル者ハ何時ニテモ保釈ヲ願フコトヲ得ヘシ
裁判官ハ速カニ之ヲ許否スヘシ事由ナクシテ遷延五日ヲ過ルコトヲ得ス
（後略）
●明治一〇年二月一二日 沼津区裁判所申渡（同年二月一八日付重新静岡新聞第九七号）
静岡県第一大区四小区
駿河国駿東郡萩原村
平民 堀内丑之助
其方儀御殿場村荒井庄蔵ナル者雇女くまト同臥セルヲ目撃セシコト有之トテ憤リ突然薪木ヲ以両人ヲ殴打シ疵負ハセ追テ自首スト雖モ人ヲ損傷スルヲ首免ヲ与ヘス右科闘殴律闘殴条瓦石槌棒等ヲ以テ人ヲ殴チ傷ヲ成ス者ニ擬シ懲役四十日申付ル
同県第一大区四小区
駿河国駿東郡御殿場村
平民 荒井 庄蔵
其方儀萩原村堀内丑之助ニ殴打セラルヽ一件取糺ス処不束ノ筋モ無之ニ付無構
●明治一〇年二月一二日 沼津区裁判所申渡（同年二月二六日付重新静岡新聞第一〇一号）
静岡県第四大区五小区駿河国
安倍郡南番町住士族雅房姉
石川 なつ
其方儀静岡壱番町遠山直温宅外二ヶ所ヘ忍入金銭衣類等盗取ル賍金七十三円拾六銭ニ相成ル科賊盗律窃盗条ニ依リ懲役二年申付ル
●明治一〇年二月一二日 静岡県人民下田村警察出張所敷地献納（『太政類典』2編147巻【35】）
●明治一〇年二月一九日 大審院諸裁判所職制章程及控訴上告手続改正巡迴裁判規則判事職制通則刪除（太政官第一九号布告）（控訴上告手続は、明治23年7月17日法律第50号民事訴訟法施行条例により改正）
【大審院職制】
長一人 一等判事ヲ以テ之ニ充ツ
院長ハ課ヲ分チ主任ヲ命シ随時各庭ニ臨ミ民刑事件ヲ聴理スルコトヲ掌ル
判事
第一 民事刑事ノ上告ヲ判理シ裁判ノ不法ナル者ヲ破毀シ及ヒ内外交渉ノ事件重大ナルモノ並ニ判事ノ犯罪ヲ審判スルヲ掌ル
第二 死罪ノ案ヲ審閲スルコトヲ掌ル
属
【大審院章程】
第一条 大審院ハ民事刑事ノ上告ヲ受ケ上等裁判所以下ノ審判ノ不法ナル者ヲ破毀シテ法憲ノ統一ヲ主持スルノ所トス
第二条 審判ノ不法ナル者ヲ破毀スルノ後它ノ裁判所ニ移シテ之ヲ判決セシム又便宜ニ大審院自ラ之ヲ判決スルコトヲ得
第三条 已ニ它ノ裁判所ニ移シテ之ヲ判決セシムルノ後其裁判所亦大審院ノ旨ニ循ハサル時ハ大審院更ニ自ラ之ヲ判決ス
第四条 陸海軍裁判所ノ裁判権限ヲ越ユル者ハ其裁判ヲ破毀シテ之ヲ当然ノ裁判所ニ付ス
第五条 各判事ノ犯罪其違警犯ヲ除クノ外大審院之ヲ審判ス
第六条 内外交渉民刑事件ノ重大ナル者ヲ審判ス
第七条 各上等裁判所ヨリ送呈スル所ノ死罪案ヲ審閲シ批可シテ送還ス其否トスルモノハ更ニ律ヲ擬シテ還付ス
【上等裁判所職制】
長一人 勅任判事ヲ以テ之ニ充ツ
所長ハ課ヲ分チ主任ヲ命シ随時各庭ニ臨ミ民刑事件ヲ聴理スルコトヲ掌ル
判事
第一 管内ノ控訴ヲ受ケ之ヲ覆審スルコトヲ掌ル
第二 管内死罪ノ獄ヲ判決スルコトヲ掌ル
判事補
事ヲ判事ニ受ケ裁判スルコトヲ掌ル
属
【上等裁判所章程】
第一条 上等裁判所ハ地方裁判所ノ裁判ニ服セスシテ控訴スル者ヲ覆審ス
第二条 各地方裁判所ヨリ具スル所ノ死罪ヲ判決シテ大審院ノ批可ヲ取リ然ル後原裁判所ニ付シテ宣告セシム
第三条 各地方裁判所ヨリ送呈スル所ノ終身懲役罪案ヲ審批ス
【地方裁判所職制】
長一人 奏任判事ヲ以テ之ニ充ツ
所長ハ課ヲ分チ主任ヲ命スルコトヲ掌ル他ハ判事ニ同シ
判事
民事ヲ初審シ刑事懲役以下ヲ審判スルコトヲ掌ル
判事補
事ヲ判事ニ受ケ裁判スルコトヲ掌ル
属
【地方裁判所章程】
第一条 地方裁判所ハ一切ノ民事及刑事懲役以下ヲ審判ス
第二条 地方裁判所ニ於テ審判シタル民事ハ軽重トナク皆初審トス
第三条 民刑事ノ内外ニ交渉シタル者ハ其軽キハ直ニ之ヲ裁決シ其ノ重キハ一面之ヲ聴理シ一面之ヲ司法卿ニ具申スヘシ
第四条 死罪ハ審訊シテ文案証憑及ヒ擬律案ヲ具ヘ上等裁判所ニ逓送シ其行下ヲ得テ宣告ス
第五条 終身懲役ハ擬律案ヲ具ヘテ上等裁判所ノ審批ヲ取リ然ル後ニ宣告ス
【控訴上告手続】
第一章 控訴ノ事
第一条 凡ソ地方裁判所ノ初審ニ服セスシテ再ヒ上等裁判所ニ訴ヘ覆審ヲ求ムル者之ヲ控訴ト云
第二条 控訴ハ民事ニ止マリ刑事ニ及ハス
第三条 控訴ハ一タヒスルコトヲ得再ヒスルコトヲ得ス
第四条
第五条 地方裁判所ノ裁判言渡ヨリ三箇月（三十日ヲ以テ一月トス）ヲ過ルトキハ控訴スルコトヲ許サス但シ地方裁判所ヨリ上等裁判所ニ至ルノ距離八里ヨリ遠キトキハ期限三箇月ノ外八里毎ニ一日ノ猶予ヲ増スヘシ
第六条 控訴ヲ為ス者ハ其初審ヲ受ケタル地方裁判所ニ届ケ出ツヘシ但シ添翰ヲ乞フニ及ハス
第七条 前条ノ届ヲ受ケ取リタル地方裁判所ハ裁判言渡ノ執行ヲ停止スヘシ若シ上等裁判所ノ請求アル時ハ地方裁判所ニ於テノ訴状答書口書裁判見込等ヲ差出スヘシ
第八条 上等裁判所ニ捧クルノ訴状ハ訴答文例ニ照準スヘシ
第二章 上告総則ノ事
第九条 各裁判所ノ終審ヲ不法ナリトシ大審院ニ向テ取消ヲ求メル者之ヲ上告ト云
第十条 上告スルコトヲ得ルノ事件ハ
第一 裁判所管理ノ権限ヲ越ユ
第二 聴断ノ定規ニ乖ク
第三 裁判法律ニ違フ
第十一条 大審院ハ上告ヲ受クルノ所ニシテ控訴ヲ受クルノ所ニアラス故ニ控訴スヘキノ事ヲ以テ誤テ上告スル者アルモ之ヲ斥ケテ理セス
第三章 民事上告ノ事
第四章 刑事上告ノ事
第二十六条 違警罪及死罪ヲ除クノ外一切ノ刑事皆上告スルコトヲ得
第三十二条 刑ノ言渡ヲ受タル者自ラ上告状ヲ書記スルコト能ハサル時ハ代理人ヲ獄中ニ延キ（獄中ヲ劃リテ応接所ヲ設ケ他ノ囚人ト混セサルヲ要ス）上告趣意明細書ヲ代書セシムルコトヲ得其代理人ハ明細書ニ本人ト共ニ姓名ヲ記ス可シ本人自ラ姓名ヲ記スルコト能ハサルトキハ其事ヲ肩書スヘシ但代理人ヲ獄舎ニ延クトキハ之ヲ看守者ニ告ケ看守者ハ之ヲ裁判所ニ届クヘシ
第三十三条 刑ノ言渡ヲ受タル者幼年（十五歳未満ヲ云フ）ニシテ上告ヲ為スノ権利アルコトヲ知ラサルトキハ其親族（五等親ヲ云フ）代リテ為ニ上告スルコトヲ得
●明治一〇年二月二二日 沼津区裁判所での出来事（同年二月二八日付重新静岡新聞第一〇二号）
本日廿二日夜午後九時頃沼津裁判所の官員が二三名急に出庁されたるを見たから又例の鹿児島一件が沼津でも起たかと案思て居たが今朝腰掛で聞たらば矢張り鹿児島の贋物で何所の者とも知れないが水野出羽守だ急に訴へがあるから門を通せと門番に断り訴口にて宿直の官員が出て何者だ何の用が有て来たかと尋ねられしに･･･
●明治一〇年二月二七日 静岡裁判所申渡（同年三月二日付重新静岡新聞第一〇三号）
静岡県第十大区八小区
遠江国城東郡横須賀
軍全町平民
名倉 才平
其方儀窃盗ノ科ニ依リ再度処刑ヲ受クル身分ニテ尚又明治九年六月五日以来長上郡小池村間淵市平方其他処々ヘ忍入衣類物品盗取ル賍金七円六拾四銭五厘ニ相成ル科賊盗律窃盗三犯賍金五十円以下懲役十年ノ処旧浜松県拘留所ヲ脱逃スルヲ以テ改定律例第二百九十三条ニ照シ懲役終身申付ル
●明治一〇年三月五日 司法省職制章程並検事職制章程（太政官第三二号達、明治一三年七月一七日太政官第三七号布告治罪法により消滅）
●明治一〇年三月六日 為換方と代人の話題（同日付重新静岡新聞第一〇五号）
○今般静岡裁判所に於て静岡江川町川崎組え為換方被仰付以来諸上納金は該組え持参証書と引換従前の手続を以て上納可致との事
○品行履歴に困まるか但しは文盲か夜魔志か玄関構で頗代言ぶる代人は神主で無し農工商でも無し先づ士賊体裁殿様気どりで其癖今の下賤活業貸借訴訟の差添人嘘を月夜に釜をぬく･･･
●明治一〇年三月七日 「始末書」（勝山守正家所蔵文書）
始末書
第六大区十二小区
志太郡下泉村
農業渡世
勝山吉太郎代
勝山庄五郎
一本日御呼出し之上去ル八九ヶ年前勝山吉太郎宅江押借ニ罷越候もの有之哉之旨御尋御座候此段奉申上候前書勝山吉太郎儀者私本家ニ而従弟ニ罷在候然ル処去ル八九ヶ年前ニ而昼中と覚候用事有之吉太郎宅江罷越候処士体之男壱人帯刀ニ而罷越居金員貸呉候様及強談ニ彼是混雑迷惑罷在候ニ付私儀茂罷出如何之義と事柄及承候処如何ニも浮浪難渋之様子殊ニ帯刀ニも有之如何様之義出来可及茂難計場合と見受心配仕候ニ付吉太郎と相談之上少々ニ而も金員貸遣し候方穏便之義と存金壱円貸遣し申候処右受取差出何れ江か立退行衛相知不申候尤年齢者三十余才位ニ而髪者大タブサ衣類者木綿堅縮ニ而紺羽織ヲ着シ組紋壱ツ■立之袴ヲ着シ候哉と覚候然ル処今般前同様八九ヶ年前吉太郎宅より押入候趣申立候盗賊之趣を以本日御呼出之上御突合御座候得共前顕申上候儀と者大ニ相違致し居候尤此度御尋之儀者如何之義ニ御座候哉更ニ不存且吉太郎義ハ本家別家之義ニ付小事タリトモ私江噺者之筈之間柄故本人ニおいても同様覚無之義と存候依之右御尋ニ付此段奉申上候
右之通リ相違不申上候以上
右
明治十年三月七日 勝山庄五郎
静岡裁判所長
五等判事 中嶋錫胤殿
●明治一〇年三月八日 巡査ニシテ警部ノ職務ヲ行フ節帯剣苦シカラス（内務省乙第三一号達）
●明治一〇年三月一三日 静岡裁判所管内伊豆国附属七島ノ儀ニ付伺（司法卿大木喬任、三月二〇日原案通り裁可）（アジア歴史資料センターRef.A07090158600『行政決裁録』四（国立公文書館））
静岡裁判所管内伊豆国附属七島ノ儀ハ孰レモ不便ノ僻島ニテ同国ヨリノ航路モ無之遑ニ東京ニ迂廻シテ往復ヲ辧シ候次第ニテ実際不都合不少候就テハ該島裁判事務ノ儀ハ自今東京裁判所ヘ被属候様致度依テ御布告案等添此段相伺候也
明治十年三月十三日 司法卿大木喬任
右大臣岩倉具視殿
●明治一〇年三月一四日 静岡裁判所判決（同年三月一八日付重新静岡新聞第一一一号）
静岡県第一大区四小区駿河国
駿東郡竈新田十四番地住
平民 榑林 栗八
其方儀兼テ村内榑林きわト姦通致シ居ル処きわ儀入夫ヲ迎ヘ後暫ク中絶致シ居ル中旧情尚止ミ難ク明治九年五月廿二日夜きわノ戸外ニ出ルヲ待受交通ニ及バント挑ム際きわ大声ヲ発シ辱シメシヲ憤リ傍ラニ有合セル薪ヲ以テ打擲ニ及ビきわハ右傷ニテ相果ルト雖モ素ト殺意ナキヲ以テ改定律例第百七十五条闘殴人ヲ殺ス者ヲ以テ論シ懲役終身申付ル
●明治一〇年三月一四日 静岡裁判所判決（同年三月一八日付重新静岡新聞第一一一号）
静岡県第二大区四小区駿河国
富士郡粟倉村三十四番地住
幸平弟
平民 大河原惣平
其方儀村内渡辺さだ方ヘ聟養子ニ相越スノ処多病ナルヲ以テ双方熟談ノ上離縁致シ其後尚ホ再縁モ致度心底ニテ罷在ル処右さだ方ニテ已ニ侘ヨリ聟養子ヲ貰ヒ受シト承リ遺限ニ堪カタク明治九年十月廿五日夜窃カニさだ方ヘ立越摺付木ヲ以テ同人方柴垣ヘ火ヲ移シ居宅其外ヲ焼失セシムル科雑犯律放火条火ヲ放テ故サラニ民舎ヲ焼ク者ニ擬シ斬罪申付ル
●明治一〇年三月一六日 静岡裁判所判決（同年五月二七日付静岡新聞第一四五号、同年五月二九日付静岡新聞第一四六号）
静岡県第四大区五小区
駿河国安倍郡静岡安西一町目
南裏町三十壱番地ノ内弐号住
原告人 栗田 藤蔵
静岡県第五大区弐小区
駿河国安倍郡有渡木村住
被告人 望月長右衛門
同人長男
引合人 望月長四郎
其方共詞訟審理ヲ遂ル処原告栗田藤蔵申立ル趣意ハ被告望月長右衛門ト米穀其他諸品取引ノ末精算残金四拾弐円弐十九銭五厘八毛延滞シ屡弁済ヲ促スト雖モ苦情申唱ヘ弁金セサルヲ以テ明治九年十二月廿一日静岡区裁判所ヘ出願シ勧解ヲ受再三済方延期ヲ申立タレトモ兎角違約セシニ付明治十年一月十一日同人悴長四郎代理トシテ出庁シ尚済方日延ヲ申立ル節約定書之ヲ取リ其意ニ任セタリ然ル処是又其期日ニ違約シ明治十年一月廿五日長右衛門自ラ出頭シ猶延期ノ示談アリ因テ今回ハ本人記名押印ノ証書ニ改ムヘキ旨申聞ケ且慈愛ヲ以テ金高ノ内端数ヲ除棄シ金四拾弐円更ニ貸付ノ名義ニ引直シ乃チ該証券ヲ受取リ明治十年二月一日迄ノ猶予ヲ与ヘタレトモ遂ニ弁済セザルニ依リ明治十年二月五日区裁判所ノ勧解ヲ願下テ明治十年二月十五日当裁判所ニ出訴シ該証券ノ金額四拾弐円ヲ請求セリ
被告望月長右衛門申立ル趣意ハ原告栗田藤蔵ト米穀其他売買ノ取引ヲナシタル末精算金三拾五円五拾銭藤蔵ヘ渡スヘキ金額ヲ生シタルニ付乃チ既ニ金四拾円相渡シアルヲ以テ多少ノ過剰アリ然ルヲ却テ藤蔵ヨリ売掛金催促ノ儀ヲ静岡区裁判所ヘ訴ヘ出ラレ勧解中明治十年一月八日悴長四郎ヲ代理トシ出庁セシメシ際同人ノ愚昧ヨリ藤蔵ニ欺カレテ返済ノ約定書ヲ差入レタル由承知セリ爾後明治十年一月廿五日自カラ出庁セシ砌嘗テ長四郎ヨリ差入タル約定書ヲ長右衛門記名押印ノ証券ニ書キ改ムヘキ旨申促サレ長右衛門モ亦愚昧文盲ニシテ何ノ弁解モナク藤蔵ノ申分ニ任セタル証券ヲ佗人ニ代書ヲ頼ミテ書キ改メタリ然レトモ原告藤蔵ニ対シテハ多少ノ渡シ過キ金アレトモ彼レヨリ請求ヲ受クヘキ負債ハ更ニ無之畢竟藤蔵最前区裁判所ニ於テ愚昧ノ長四郎ヲ欺キ尋テ又長右衛門ヲモ其術中ニ陥レ不実ノ証券ヲ詐取シテ出訴セシモノニ付請求ノ通リ執リ行フヘキ義務コレナキ旨答弁セリ
引合人望月長四郎申立ル趣意ハ父長右衛門答弁ノ如ク明治十年一月八日長右衛門病気ニ付代理トシテ静岡区裁判所ヘ出庁セシ際即答シカタキ廉コレアリ其答弁ノ延期ヲ願ヒタルトキ斯ノ如キ場合ニハ約定書ヲ渡スヘキ成規ナリト原告藤蔵ヨリ申促サレ申聞ルニ任セ証券ヲ差入レタレトモ素藤蔵ト売買取引ハ父長右衛門万端取扱長四郎ハ曾テ関係セザルヲ以テ貸借ノ有無計算ノ如何ハ更ニ弁知セスト雖モ明治十年一月八日長四郎ヨリ差入レタル証券ハ前述ノ如ク藤蔵ノ云フマヽヲ記シタルモノニ付真正ノ証ニアラサル旨申立タリ
因テ判決スル左ノ如シ
被告ニ於テ原告ヨリ呈スル証券ノ原由タルヤ畢竟原告ノ詭欺ヲ受ケ成立セル不正ノモノニシテ則チ実際上負債ノ有無ハ従前原被取引ヲナシタル牒簿ニ憑拠シ双方照会アラハ事実明瞭タル旨陳述シ引合人於テモ原告ノ所為ヲ不正ナリトスル項アル旨申立ルニ因リ原被所持ノ牒簿ヲ調査スルニ孰レモ自記ノモノニシテ侘ノ捺印アルニアラス且ツ付込ノ前後尚余白アリテ出入計算高ヲ随意ニ増減シ得ベク又今マタ新造シ得ヘカラサルモノニモアラサルヲ以テ倶ニ証拠ト為スニ足ラサルモノニモアラサルヲ以テ倶ニ証拠ト為スニ足ラス而シテ其被告ノ所謂詭欺ヲ受ケタルノ証左ニ至テハ毫モアルコトナク唯被告口頭ノ申立ノミニ有之ヘキ原由ト為スヲ得ス被告ノ申分何レモ難相立ニ付該証書記載ノ金額四拾弐円原告ヘ弁済スヘシ但訴訟入費被告ヨリ規則ノ通リ原告ヘ償スヘシ
●明治一〇年三月一七日 「幼女ヲ和姦セシ件」大審院判決（同年四月四日付静岡新聞第一一九号、同年四月六日付静岡新聞第一二〇号、『大審院刑事判決録』）
●明治一〇年三月二一日 「刑律估計金請求一件」大審院判決（『大審院民事判決録』）
●明治一〇年三月二一日 行政裁判ニ帰スヘキ訴訟伺書正副進達ノ儀稟議（『太政類典』2編38巻【61】）
●明治一〇年三月二二日 伊豆七島裁判事務東京裁判所ヘ属ス（太政官第三三号布告）
静岡県管轄伊豆国附属七島裁判事務自今東京裁判所へ被属候条此旨布告候事
●明治一〇年三月二四日 重罪犯状明白ナルモノハ糾問判事ノ下調ヲ請フニ及ハス（司法省丁第二五号達）
自今重罪ト雖トモ犯状明白ナルモノハ糾問判事ノ下調ヲ請フニ及ハス直チニ裁判ヲ求ムヘシ但シ糺問判事在ラサル裁判所ニ於テハ当分軽重罪ニ拘ハラス直チニ裁判ヲ求ムヘシ
●明治一〇年三月二四日 沼津の景況（同日付重新静岡新聞第一一四号）
客冬区裁判所を御設けになりてより物貨は尊としと雖市中余程の潤いなり随て芸娼妓に御茶を挽く者なし裁判所の雑踏見るへきに足る又三級判事補吉岡君の評判至極よろし殊に邪正を判然として至れり尽せりこれか為に狡黠の代言人は大きに辟易するよし
●明治一〇年四月二日 静岡裁判所管内浜松区裁判所ヲ支庁ト為ス（司法省指令）
●明治一〇年四月二日 静岡裁判所掲示（同年四月八日付静岡新聞第一二一号）
○静岡裁判所に左の掲示がありました
一訴状は午前九時より十時までを限りとす但至忽の事件は此の限にあらざるに付商法上の要訣及び身代限掲示満期に迫り追訴等の如き休暇日と雖も苦しからず
一午前九時の召喚を受け其期を過き午後三時迄参衙する者を遅参とし三時後に至る者は不参を以て論す
一延期願の日満ちて原被参衙の当日は午前十時を限りとす遅参不参は前条に同し
一遅参不参の科金は必ず即納たるべし但止むを得ざるの事故あれば居村町え往復の日間は与ふと雖も別に延期を許さず直に身代限を以て徴収すべし
右之趣詞訟人共予而心得居るべく候事
静岡裁判所長
明治十年四月二日 五等判事中島錫胤
●明治一〇年四月五日 目安糺シ廃止（司法省丁第二九号達）
従来目安糺シト云成例アリテ出訴ノ起頭被告ノ答弁ヲ俟タス直ニ受理不受理ヲ判決スル等ノコト有之候処右ハ廃止可致候条此旨相達候事但大審院ニ於テ願訴ノ下調ヲ為スハ此限ニアラス
●明治一〇年四月七日 静岡県甲第二七号（同年四月二〇日付静岡新聞第一二七号）
詞訟告原人ヨリ裁判所エ出願之節被告人ノ名前（例ヘハ右衛門ヲ左衛門ト何蔵ヲ何助ト誤ル類）篤ト推糺致サス出訴ニ及候者往々有之夫ガ為メ呼出ノ際妨碍不少畢竟原告ノ疎漏ヨリ醸スモノニ付向後屹度取糺之上可訴出旨静岡裁判所ヨリ通達有之候此旨布達候事
明治十年四月七日
●明治一〇年四月八日 郷宿営業の広告（同日付静岡新聞第一二一号）
一私儀静岡江川町元三階屋仁右衛門跡ニテ郷宿営業罷在候所去十二月類焼ニ付更ニ新ヶ谷町六番地ニ家作落成候間従前之通営業仕候尚一層勉励質素節倹ヲ旨トシ来客ニ无益ノ冗費勿ランコトヲ誓フ諸君幸ニ光顧ヲ賜エ
新ヶ谷町六番地
明治十年四月 郷宿 三田亦三郎
●明治一〇年四月一二日 刑事事件の報知（同日付静岡新聞第一二三号）
遠江第十大区三佐久保村の遠山藤三郎は焔硝を同大区二俣村へ売捌きに赴きしに見附駅警察所より間者を遣はされ捕縛の上吟味を受けしに私は十大区掛川駅焔硝売捌人兼子友蔵と申す者へ年々六円づゝ税金をも納め売捌方致しますと申す故に右友蔵を戸長付き添へにて見附警察所へ御呼ひ出しに成り御糺問ありしに右件々に相違無之と書面を差出し遂に戸長預けになり浜松警察所へ御廻しになり御糺しありしに見附警察所に於て御受け申せしに相違なきに付き其の筋へ伺ひ中宿預けになり舛た跡は如何なりしや分りませんと久津部村より報知があり舛たが時節柄を弁まへ無く御布告も心附ずに子へ
●明治一〇年四月一三日 代言人風評（同年四月一六日付静岡新聞第一二五号）
本月十三日午前第九時静岡研屋町通りを歩行するに頗る名筆の一章朝風をして東西へ披がり有を読見したり表書に大石吉左衛門様へ和田忠兵衛よりとあり文中に曰今朝は御来車ありがたく然らは角左衛門罰金三円本日入用に付大石金兵衛へ御頼申に吉左衛門と相談之上必す扱ひ可遣云々々とあり（跡は掲げず）按ずるに此吉左衛門と云人は免許なとある区裁判所へ出る代言でもする人の様に見受け舛か頃日は官の罰金も扱かへは減少に成る御成規の告かあり増たか御問合申と静岡山の手の某よりまさか
●明治一〇年四月一六日 郷宿営業の広告（同日付静岡新聞第一二五号）
弊店客歳類焼ニ罹リ郷宿休業罷在候処今般都合ニ寄当町四・五番地買請同所ニ於テ如従前営業可仕筈方今店宅組立中ニ付追テ建築落成シ開店ノ上ハ四方之諸賢不相変御止宿アランコトヲ希望ス此段予メ広告仕候也
静岡紺屋町拾八番地居住
謹一代理
明治十年四月 宮村鍾太郎
宮村総三郎
●明治一〇年四月二三日 静岡県甲第三三号（同年四月二八日付静岡新聞第一三一号）
是迄本支庁ヘ差出来リ候左ノ条件ハ来ル五月一日ヨリ其所轄警察署ヘ可差出此旨布達候事但失踪人ノ義ハ従前ノ通本支庁ヘモ可届出事
明治十年四月廿三日 静岡県令大迫貞清
一銃砲弾薬売買願伺届
一芸娼妓貸座敷引手茶屋営業並廃業願ノ類
一失踪人届
●明治一〇年四月二四日 郷宿営業の広告（同日付静岡新聞第一二九号）
今般蒙御免許郷宿営業本月廿八日開店仕候就テハ百事入念御用弁専要可仕候勿論都テ軽算ヲ旨トシ御入費相省キ候様精々尽力勉励仕候間何卒御誘導御入宿之程伏テ奉懇願候以上
静岡江川町通往還ヨリ四五間入
免許郷宿営業 高山勝三郎
弊宅ノ義客歳類焼仕馬場町望月長右衛門宅借請営業罷在候処今般本地エ新材工作全ク落成本月三十日開店仕候間四方之諸賢不相変御設宿アランコトヲ希望ス此段広告仕候也
静岡伝馬町百五十七番屋敷居住
明治十年四月 免許郷宿 安田故太郎
●明治一〇年四月二七日 沼津区裁判所判決（同年五月二日付静岡新聞第一三三号、同年五月四日付静岡新聞第一三四号）
静岡県第一大区六小区
駿河国駿東郡岡一色村平民
原告代人 内田 新吾
同県同大区六小区
同国同郡岡ノ宮村光長寺住職
被告人 貫名 日政
其方共詞訟遂審問処文政六未年六月原告本人野秋直作先代直左衛門後家いく儀祖先持来リノ田地壱反九畝弐拾四歩平均年貢諸役等差引残リ正味徳米五俵三斗八升之場所ヲ祖先三霊菩提ノ為メトシテ光長寺学校ヘ寄附致シ該寺ヨリ右地所ヲ収領セシ証トシテ字堀合上田壱反壱畝弐十九歩中田七畝弐十五歩トモ合反別壱反九畝弐拾四歩ノ地所挌応院扇樹院鶴林院各証菩提ノ為メ当未年ヨリ永々寄付セラレ当山学校ニ於テ深志ノ至リ感悦斜メナラス永代不易回向セシム可キ者也ト云フ書面ニ該時住職日宏並ニ役者僧侶マテ連署押印セシヲ取置キタルヲ観レハいくノ志願ハ右学校盛隆ニ至ラシムル為メニ寄付セシモノト想ハル然ルニ右学校ハ今ヲ距ル凡三拾余年前ニ在テ廃絶セリ而シテ右田地徳米共今猶ホ光長寺ニ於テ之ヲ領スサスレハ施主ノ素願ハ既ニ消滅シタル者ナリ因テ即今右田地ヲ取戻シ我カ区内小学語学舎資本ノ内ヘ寄附換致シ度然ルトキハ一旦寒灰ニ属セシ祖先ノ本志ヲ再ヒ温メ且ハ小学舎持久資本ノ一助トモナリナンコトヲ企望シ目今該寺住職貫名日政ヘ談判ニ及フト雖モ渠レ之レヲ肯ンセサルニ付已ムヲ得ス出訴セシ旨原告代人ヨリ申立テ被告人ニ於テハ文政六未年該寺宗学研究ノ為メ一ノ講場ヲ境内ニ設ケ置キアリシ処其節同村檀越野秋直左衛門後家イク義同家祖先三霊菩提ノ為メトシテ永代寄付シタル田地証文ニ字堀合上中田共合反別壱反九畝廿四歩挌応院扇樹院鶴林院追善菩提ノ為メ御本山光長寺ヘ古証文添相納候処相違無御座候然ル上ハ当未年ヨリ貴寺名寄ニ御入レ代々支配可被成候尤往々右徳米ヲ以テ徳永山学校御番頭飯料ニ致シ置カレ御回向受申度旨申入候処其段御承引被成下難有奉存候勿論右地所ニ付外ヨリ指搆申スモノ一切無御座候後証ノ為メ親類一同連即仕処依テ如件トアリテ乃チ寄付人いく並ニ親類中ノ連印ヲ以テ光長寺ヲ宛テタルモノ今猶ホ現存セリ然ルニ天保五年右学校火災ニ罹リ焼失セシニヨリ爾来学所ハ本寺ニ移シ今ニ宗学勉励セリ抑モ此ノ学校タルヤ宗学専務ノ所ニシテ他ノ人家童子ノ教授所ニ非ス一山末徒ノ僧侶此講場ニ出入シ宗学熟成ノ上番頭ノ任ヲ受ケ猶一階昇進シテ一山ノ主僧トナリ若シ主任ノ番頭無之節ハ山主之レヲ兼帯スルノ旧慣ナレハ当住職日政即チ番頭兼務ノモノタリ苟クモ釈門ノ道未タ地ニ落チスシテ其学務主任ノ者アル間ハ何ソ其学所ノ所在転移ニ因リ之ヲ廃絶セシモノト謂フコトヲ得ンヤ況ンヤ文政度原告先代いくヨリ寄付セシ本志ハ証文ニ明記アル如ク同家三霊菩提ノ為メトシテ当山ヘ納メ右徳米ヲ以テ番頭飯料ニ差向ケ回向受度旨ノ文言有之ニ付今ニ右三霊ノ為メ旦暮回向ヲ懈ラサレハ決シテいくノ素願ノ消滅セシモノニアラサルヲヤ而ルヲ原告人ニ於テハ学校ノ何モノタルヲ弁セス漫リニ寄附換ノコトヲ訴フルト雖モ前文ノ理由ニヨリ今更地所ヲ還付スヘキ筈ハ無之旨申立テタリ右ニ付判決スルコト左ノ如シ
原告代人ニ於テハ唯光長寺ヨリ取リ置キシ証書中当山学校ニ於テ深志ノ至感悦不斜トノ文言ト役者僧侶等ノ連印セシトニノミ着目シ単ニ此田地ハ学校盛隆ノ為メ学校ヘ寄附セシモノニシテ其本寺ニ納メシモノニ非スト云ヒ旦其学校建物ノ烏有トナリシヲ以テ既ニ廃絶セシモノナリトシ施主ノ素願ハ茲ニ於テ消滅シタリト謂フト雖モ現ニ其証書中挌応院扇樹院鶴林院各証菩提ノ為メ云々トアリ其結句ニ永代不易回向セシムヘシトアル文言是一編ノ主眼タルノミナラス被告人ヨリ呈スル所即チ原告人ノ先代いくヨリ光長寺ヘ差入レ置キタル証書ニ御本山光長寺ヘ古証文添相納云々右徳米ヲ以テ徳永山学校御番頭飯料ニ致シ置カレ御回向受申度云々トアルヲ観レハ右田地ハ光長寺ヘ寄附致シ其徳米ヲ以テ学校番頭ノ飯料ニ備ヘ置キシモノニシテ学校建物ノ為メニ寄附セシニアラサルコトハ昭々タリ而シテ被告人ノ所謂ル天保五年学校火災ニ罹リ消失セシニヨリ云々ヨリ三霊ノ為メ旦暮回向ヲ懈ラサレハ云々ニ至ルマテノ申立渾テ理アリトス因テ原告人ノ所謂学校既ニ廃絶シテ施主ノ素願消滅セシニヨリ即今右田地取戻シ度云々ノ申分ハ相立タサル儀ト可心得事
●明治一〇年四月三〇日 静岡県甲第三八号（同年五月九日付静岡新聞第一三六号）
今般沼津警察署構内ヘ監獄相設ケ更ニ韮山監獄相廃シ同所ヘ合併候条此旨布達候事但沼津韮山両警察署所轄獄事関渉ノ事件ハ自今沼津監獄ヘ可申出事
明治十年四月三十日 静岡県令大迫貞清
●明治一〇年五月二日 茶番と代言の兼帯（同日付静岡新聞第一三三号）
静岡裁判所の御腰掛にて茶番と代言と兼対でやつて居る某先生が四五日前に御勧解の御呼出御状を持て東西と名宛を尋ねたが訳ら無く該町の区長様の御宅へ聞たがそんな名宛は知ら無と断たのを然ば戸籍簿を改めて呉ろ抔云たが戸籍簿は隣町の戸長の所に有と聞て該戸長さんの所で尋ねれは主人は区務所へ出頭して居るので委敷は訳らんが先生御尋の人名は有ませんと云たので是非無立帰つたが三時間も達と又のこのこやつて来ていや先程は御手数右人名は漸々相訳る則何々の横町に罷在付ては先程は居無とか訳ら無とか往々不都合の次第だそれだから人員帳を調て呉ろと云たのだ抔種々小利屈を並べ立て云た所はいゝが御気の毒のは右名宛人は外町より転移に居るかも知ら無が籍の届無内は私等の関係する訳では有ませんと一本突かれ青菜に塩々返たが又区長さんの御宅へ行て右通りの小利屈を云て返たが何と困た人足では無いか斯なヘッポコ代言では定て御布達を弁へても居無かろう菜計で塩々返たのは気の利無事だ精錡水の一瓶も附て県庁の甲第廿七号布達を能々拝見すればいゝに人名の誤りも町名の誤りも同一で有ませう前体被告人の住所も篤と知ら無くせに生いきなと同し代言らしい人が話して通りましたが何の事だか
（なお、明治一〇年五月四日静岡新聞第一三四号に「前号に記しました裁判所の腰掛にて茶番と代言と兼帯の某がお差紙を以て戸長三の処で利屈を云たと申件は全く投書家の聞違いで茶番の人では無く弁当屋の小遣だと申事が判然解り升た唐前条は取消にいたし升」とある）
●明治一〇年五月五日 静岡裁判所判決（同年五月一九日付静岡新聞第一四一号）
静岡県第四大区五小区
駿河国有渡郡静岡本通九丁目
士族
小倉 笑一
其方儀他人ノ石上忠蔵ヘ従弟ト記載ノ委任状ヲ以テ代理ヲ嘱託シ至親ノ体ニテ出頭為致科改定律例第二百八十八条違式重ニ問ヒ懲役二十日ノ贖罪金壱円五十銭申付ル
同郡静岡寺町三丁目
三十六番地
平民
石上 忠蔵
其方儀他人ノ小倉笑一ヨリ嘱託ヲ受ル迚従弟ト記載ノ委任状ヲ以テ至親ノ体ニテ出頭スル科改定律例第二百八十八条違式重ニ問ヒ懲役二十日従ヲ以テ論シ一等ヲ減シ懲役十日ノ贖罪金七拾五銭申付ル
●明治一〇年五月八日 静岡県甲第四三号（同年五月一三日付静岡新聞第一三八号）
詞訟原告人ヨリ裁判所エ出願之節被告人名前屹度取糺出願可致様本年四月七日甲第廿七号ヲ以布達及ヒ候処今以兎角姓名取調方疎漏之向キ有之哉ニテ名前相違ノ者ヲ相手取候者比々有之或ハ一応之掛合モ経ズシテ願出候ヨリ被告人住所之地名相違或ハ他行中又ハ失跡逃亡死去等ノ者ヲ被告ト為シ勧解ヲ請フモノ往々有之不都合不尠趣右ハ兼テ之布達ヲ注意セサルヨリ致ス所ニシテ不都合ニ候条向後ハ篤ト双方掛合ヲ遂ケタル上猶示談不行届分ハ云々ノ次第ニ立至リシニ付已ムヲ得ス勧解願出候旨ヲ被告人住所区内ノ事務所ヘ届出被告人ノ姓名書ヲ申受候上可願出義ト可相心得且勧解ヲ請フモノヘ被告人又ハ引合人呼出状ヲ相渡シ候上之ヲ受取タル原告人又ハ其代人ニ於テ其呼出状ヲ使之者エ付託シ或ハ郵便ヲ以送付スル者有之夫レガ為容易ニ和解ニ至ルベキ事件モ却テ渋滞ニ相成ノミナラス中ニハ彼是行違之廉ヨリ争端ヲ醸成スルノ類無之ニ非ス畢竟勧解願ノ原意ニ相悖リ候間将来右様不都合無之様致注意出願前双方篤ト掛合示談ヲ遂ケ候様可致静岡裁判所ヨリ通達之趣有之ニ付此旨更ニ布達及ヒ候事
明治十年五月八日 静岡県令大迫貞清
●明治一〇年五月一三日 遅参不参者への罰金処分（同日付静岡新聞第一三八号）
静岡裁判所に於て去る四月中遅不参抔致して罰金を命せられたる者が三百六十九人此金弐百六拾七円五十五銭だと申事兎角お差紙抔を疎にすると此通りです唐皆三五用心をなさいまし
●明治一〇年五月一三日 郷宿営業の広告（同日付静岡新聞第一三八号）
遠江国城東郡横須賀町
井田 嘉一
私儀今般静岡下桶屋町十六番地の内第壱号へ寄留致し郷宿営業仕候間諸君陸続御来車を乞
●明治一〇年五月一五日 沼津区裁判所申渡（同年五月一九日付静岡新聞第一四一号）
静岡県第八大区壱小区
伊豆国君澤郡三島駅二日町
平民忠七二男
野田 寅吉
其方儀曩ニ同駅漆畑平兵衛長女らくヲ娶リ妊娠中離別セシニ其後右らく分娩女子出生セシヲ引取リタル処貧窮ニ付乳養ノ手当等ニモ差支ルトテ右小児ヲ川ノ中ヘ投棄シ追テ自首スト雖モ已ニ死後ニアルヲ以テ首免ヲ与ヘス右科殴律殴祖父母父母条ニ子孫ヲ故殺スル者ハ徒三年トアルニ依リ懲役三年申付ル
●明治一〇年（月日不明） 静岡裁判所判決（同年六月一二日付静岡新聞第一五六号）
静岡県第五大区四小区
駿河国安倍郡小瀬戸村
原告 加藤助左衛門
助蔵相続人 加藤 亀吉
小出喜兵衛
斎藤善兵衛
右三名代人
同県第四大区五小区同国
有渡郡静岡七間町二丁目寄留
原告 横山 伴一
同県第五大区四小区
同国安倍郡小瀬戸村
斎藤六郎左衛門代人
被告 斎藤 宗平
其方共詞訟審理ヲ遂ル処原告申立ル要領ハ村内字西俣山ノ儀古来村民互ニ入会シ秣肥草等ヲ刈取リ之レヲ稼山ト称シ即チ一村ノ共有山タリシカ享保五年ニ至リ村内一同協議ヲ遂ケ当時代官小林又左衛門ノ許可ヲ受ケ戸数竝ニ耕地ヲ九組ニ分割シ一組ニ一名ノ組頭ヲ置キ以テ取締ノ任ヲ委シ山地モ同断戸数ニ分与シ第一号証拠物ノ如ク所有者ノ名前ヲ記シ控山ノ絵図面ヲ製シタリ乃チ本訴ノ原被告ハ倶ニ西俣組ト称シ当時組頭六郎左衛門右絵図面ニ押印シ後来ノ証トナシタリ由テ村民之ヲ循守シ秣肥草等自由ニ刈取ノ権ヲ有シ第三号証拠物ノ如ク山銭ヲ上納シ各自之ヲ所有セリ然ルニ寛保二戊〔戌〕年割山ノ義自然不平ノ論ヲ発出シ差縺中組頭六郎左衛門其不平論ヲ取鎮メンカ為メ更ニ西俣組百姓銘々ヘ山地壱枚宛ヲ持タセ其余ハ悉皆六郎左衛門ヘ第二号証拠物ノ如ク与リ置キ該組ノ人民倶入会相稼キ貢租ハ銘々ヨリ取集メ上納スヘキ筈ノ約ヲナシタリ爾後寛政二戌年二代六郎左衛門ニ至リ組頭ノ役威ニ募リ万事檀〔擅〕ノ取斗ヲナシ該山ヲモ吾カ所有トナス可キ不良ヲ工ミシヨリ忽チ同組ノ者共紛議ヲ生シ当時代官所ヘ出訴ニ及ヒタレ共其際既ニ証拠物第二号ノ預書ヲ紛失セシヲ以テ遂ニ六郎左衛門ノ申立ヲ挫折スル能ハス小瀬戸村組頭五兵衛外五名ノ者仲裁ニ立入種々甘言ヲ以テ説諭ヲ為スニ解訟ニ帰シタレトモ当時村民ノ愚昧ヨリ済口証文ニ至テハ其説諭ト反対ノ文言アリ（第四号証拠物）爾来数十年ヲ経過シ六郎左衛門自儘ノ取扱ヒ益々増長シ該論山ヲ売却或ハ親族ヘ分与セシ等ノ事ヨリ猶同組ノ者共紛議ヲ生シ文化九年中再度出訴及ヘキ際同村九郎左衛門立入右売却或ハ分与セシ山林ヲ取リ返シ全ク双方熟済ニ及ヒタリ（第七号証拠物）明治六年一月中地券名受ノ義ニ付更ニ紛議ヲ生シ当被告六郎左衛門エ係リ静岡県庁ニ出訴シ預審中同村副戸長大森五兵衛並飯間村安池五右衛門等立入寛政文化両度内済ノ趣意ニ基キ地券ハ六郎左衛門名受ケナシタリト雖モ組一同稼山トシテ入会スル義ハ先規ノ通取極メ壱名毎ニ新貨六銭二厘五毛宛ノ山銭ヲ出金シ六郎左衛門ニ於テ上納ノ取次ヲナスヘキ約定ニテ第六号証拠物ノ如ク結果ヲナシタリ然リ而テ六郎左衛門ニ於テハ地券名受ケ名義ヲ得タルヲ以テ該山ヲ吾カ所有ナリトシ原告共ヨリ上納セシ貢租山銭ノ受ケ取リ証ヲ山賄代金抔ト記載シ従前稼山入会ノ名実ヲ併セテ消滅セシメ該山ヲ押領セント欲スルノ心底アリ抑モ該山ハ前述ノ如ク組内入会ノ共用タルハ古来実際ノ行ニ於テ明瞭タリト雖モ寛政度以降数回ノ争訟毎ニ曖昧ノ結果ヲナシタル者ハ唯証拠物第二号寛保度山林預証ヲ紛失セシニ依ルノミ然レトモ右数回争訟ノ済口証ニモ判然被告ノ所有ト確言セシコトナク自然原告共トノ関係ヲ離レ切ラレサル意味ヲ含メリ当今幸ニ証拠物第二号ノ証券ヲ発顕セシ上ハ其証ニヨリ寛政以降ノ済口ヲ自カラ消滅セシムルハ至当ノ義ナリト思考セリ（以下次号─欠号）
●明治一〇年五月二八日 静岡裁判所管内浜松支庁敷地買上ノ儀成規ノ通渡方可取計（内務省へ達）（『太政類典』2編24巻【6】）
司法省伺
静岡県下遠江国浜松駅平民中村惣七所有地并同駅共有民地トモ合七百四十坪代償金百七拾円ヲ以テ当省ヘ買上静岡裁判所管内浜松支庁敷地ニ使用致シ度旨内務省ヘ協議及ヒ候処支障無之間右地所御渡シ相成度図面相添此段及上申候也 五月廿二日 司法
追テ本文地所購求代価ハ当省定額内ヲ以支消候条此段申副候也
（朱書）
「伺ノ趣聞届候事 五月廿八日」
本局議按
別紙司法省伺静岡裁判所管内浜松支庁敷地買上ノ儀ハ内務省協議ノ上ニ付左ノ通御指令且御達可相成哉相伺候也 五月廿三日
●明治一〇年六月一二日 静岡裁判所掲示（同日付静岡新聞第一五六号）
静岡県駿河国庵原郡南松野村
平民 佐野角太郎
右之者儀静岡区裁判所延期当日無届不参ニ付罰金可申付処完納差支身代限ヲ以完納可致申立候ニ付以下例文
静岡県駿河国志太郡藤枝宿
平民 松浦 源吉
右之者儀益頭郡田中二番町木野定吉ヨリ貸金之儀及出訴審理中示談身代限ヲ以済方可致段申候ニ付以下例文
右当十二日ヨリ来ル八月十一日迄
●明治一〇年六月二八日 一等判事以下四級判事補迄並大検事以下四級検事補迄ヲ廃シ判事検事等ヲ置キ年俸月俸ヲ定ム（太政官第四六号達）
●明治一〇年七月六日 民刑事上告裁判ヲ経タル者司法卿検事ヲシテ再審ヲ求メシムルヲ得（太政官第四九号布告）
●明治一〇年七月二六日 静岡県甲第六九号（同年七月三〇日付静岡新聞第一七六号）
民事詞訟身代限リ掲示中追訴ノ事件ニ限リ本支区庁ノ権限ニ拘ラス即チ其ノ身代限ヲ処分セシ裁判庁於テ受理可及旨静岡裁判所ヨリ通知ニ付此旨布達候事
明治十年七月廿六日 静岡県令大迫貞清
●明治一〇年（月日不明） 静岡裁判所申渡（同年七月三〇日付静岡新聞第一七六号）
静岡県第拾壱大区二十三小区
遠江国周智郡森町村平民
太田藤次郎代人
同県第四大区五小区駿河国
有渡郡静岡伝馬町平民
原告 前田嘉七郎
同県第十大区二小区遠江国
佐野郡西山村平民
被告 山崎 金作
同
同
引合 永井 孫六
同
同
引合 石川平四郎
其方共詞訟審理ヲ遂ル処
原告申立ル趣意ハ被告所有地券壱通書入明治八年十一月限返金ノ契券ヲ取置キ明治七年十二月金拾五円貸与セシニ期限返償無キユヘ利子ノミ請取更メテ明治八年十二月十二日同村石川平四郎地券壱通ヲ以テ最前ノ書入被告所有ノ地券ト引換ヘ明治九年十二月限返償ノ筈ヲ以テ新証券ヲ取リ而シテ古証券ハ返却セリ然ルニ満期後返金ナキヲ以テ督促ニ及ヘトモ兎角不筋ノ暴言ヲ主張スルカ故ニ証書面ノ通壱ヶ月金壱円ニ付壱銭六厘六毛ノ利子ヲ加ヘ元利合金拾九円五拾銭ヘ返済迄ノ利子ヲ算シ返償受ケ度旨申立タリ
被告申立ル趣意ハ原告請求スル処ノ借財ハ曩ニ不縁ニセシ養子留吉ノ負債ナレトモ父子ノ情義ヲ慮リ証人永井孫六ヘ嘱託シ明治八年中右返済ノ為メ金拾五円ヲ渡シ現ニ同人ヨリノ請取書二通ヲ所持シタレハ原告ヘノ義務ハ疾ニ果セルモノニシテ其明治八年新証文ヲ差入レタル儀ハ勿論被告実印ヲ押用セシコトハ曾テ知ラス仍テ這回出訴ニ及レシ段心外ノ旨申立タリ
証人永井孫六申立ル趣意ハ原告ヨリ金拾五円新旧両度被告ヘ借用セシ節々証人トナリ加印セシハ原告申立ル通ナレトモ是迄被告ヨリ返金等ノ儀依託受ケ金員授受ナシタルコトナク然ルニ該返償金ヲ請取シ書面ノ由ニテ被告ヨリ差出セシハ嘗テ同国周智郡森町村福川仙吉外三名ヨリ被告借受ケシ金額ノ内ヲ自分外壱人ヘ尚亦分借セル仕訳書ナリ又壱通ハ原告ヘ金作ヨリ新証文ヲ差入ルヽ砌前年書入アリシ被告所有ノ地券ハ低価ニ付同村石川平四郎所有地券ト交換シ最前ノ請取書ヲ戻セシ書面等ニシテ本訴干係ノ書類ニハアラサル旨申立タリ引合人石川平四郎申口ハ原告並孫六ノ供スル趣意ニ符合シ唯実印ノミ異同ナリ
仍テ判決スル左ノ如シ
被告於テハ原告ヨリ請求スル証券ハ実際我カ負債ニアラサレトモ父子ノ情義ヲ顧慮シ証人孫六ニ依託シ原告ヘ返償シタル旨弁解シ乃チ義務ヲ果セシヲ証明スル為メ両通ノ端書ヲ以テスト雖モ孫六申立ル如ク該金員ニ関渉シ証トナスヘキモノニアラス決シテ其余ノ申立ハ毛モ証跡ナキニ付採用セス却テ原告ノ申供ハ孫六及ヒ平四郎ノ供スルトコロニ符合シ条理貫通スルニ依リ該証券ノ義務ハ被告ニ於テ負担スヘキモノト判決セリ右判決ノ通タルヲ以テ原告請求スル元利合金拾九円五拾銭ニ返償済マテノ利子ヲ加算シ被告ヨリ返償スヘキ事
●明治一〇年八月一日 「分附地一件」大審院判決（『大審院民事判決録』）
●明治一〇年八月二二日 静岡県下和田村総代下田新右衛門代言人高梨哲四郎ヨリ該庁ニ対スル漁業線新置処分不服ノ詞訟ヲ審判ス（司法省伺）（『太政類典』2編341巻【19】）
司法省伺
別紙高梨哲四郎ヨリ静岡県庁ニ係ル漁業線新置処分不服ノ趣ハ該県庁ニ於テ両村地先キノ海面ニ区画ヲ定メテ借用営業ヲ差許シタルヨリ不服ヲ唱フルモノナリ是レ全ク施政上ニ属スル詞訟ト思考セリ故ニ行政裁判ニ帰スヘキモノナラン因テ相当ノ上等裁判所ヘ付シ審判為致可然歟書類相添此段仰高裁候也 六月十八日 書類欠 司法
（朱書）
「伺ノ通 八月廿二日」
●明治一〇年八月二四日 刑事ニ附帯シテ起ル民事ノ賠償処分方（司法省達丁第六〇号）（『太政類典』2編338巻【42】）
●明治一〇年（月日不明） 裁判所申渡（同年八月二三日付静岡新聞第一七八号）
〔西尾 重氏〕
［資料欠］ヲ狐憑ト偽言シ異体〔ヲ〕為サシメ財ヲ図ラサル科雑犯律不応為重ニ問ヒ士族ニ付閏刑ニ換ヘ禁獄七十日申付ル
但シ無謂祈祷シ人民ヲ眩惑スルハ違令重ニ問ヒ懲役四
十日軽キニ依テ論セズ
同町四十五番地借家
音蔵母平民
小田 とく
其方儀西尾重氏ノ依頼ヲ受一時病者ノ信心代人トナリ狐憑ノ異体ヲ為シ人ヲ欺騙スル科雑犯律不応為軽ニ問ヒ懲役三十日可申付処情ヲ量リ一等ヲ減シ懲役二十日婦女ニ付例ニ照シ収贖金五十銭申付ル
同郡台所町壱番地
平民
石川 虎蔵
其方儀西尾重氏エ依頼及病気祈祷ヲ受ル節同人儀其方妻とみハ狐憑ナリトテ蕃椒ヲ以テ口鼻ヲ薫シ或ハ小田とくヲ虎蔵代人トナシ異体ヲ為サシムル等ニ全ク重氏及ヒとくノ偽言ニ出ルモノニ付此旨心得ヘシ
●明治一〇年九月一一日 利息制限法（太政官第六六号布告）
●明治一〇年一〇月五日 〔静岡裁判所管内谷村区裁判所敷地渡方〕（太政官達）
●明治一〇年一〇月三一日 御用状逓送凡例中第二条取消（司法省丁第八〇号達）
※同月（九月）上申シテ曰ク明治七年裁令ヲ経テ達シタル逓送凡例第二条ニ人民呼出状或ハ督促状ノ類ハ総テ民費タル可シトアリ抑裁判上人民ノ呼出督促等ハ固ヨリ一私人ノ詞訟ヨリ生スル私費ニ属シ其区内ノ民費ニ課スル理アル可ラス且現今ノ実際ト齟齬スルヲ以テ之ヲ廃セント同十月裁可アリ同月丁第八十号ヲ以テ右達ヲ廃スル旨大審院諸裁判所ニ達ス（アジア歴史資料センターRef.A07062305900『記録材料・司法省第三年報』(国立公文書館)）
●明治一〇年一一月二三日 控訴者時宜ニ応シ訴状数通ヲ差出サシム（『太政類典』2編337巻【23】）
●明治一〇年一二月五日 犯罪証憑ヲ得レハ速ニ求刑セシム（司法省達）（『太政類典』2編347巻【45】）
●明治一〇年静岡県断獄表（『静岡県史料』二九（駿河国史））
棒鎖二日ノ上懲役終身 男一人
懲役終身 男十六人
棒鎖一日ノ上懲役十年 男一人
懲役十年ノ上エ加エ三十日 男一人
懲役十年ト十日 女一人
懲役十年 十人 内男九人
女一人
懲役七年 男九人
懲役五年 男二人
懲役三年 男二人
懲役二年半 二人 内男一人
女一人
懲役一年半 男一人
棒鎖二日の上懲役一年と七十日 男一人
懲役一年 男一人
懲役百日 男四人
禁獄九十日 男一人
懲役九十日 男八人
禁獄八十日 男一人
懲役八十日 三十二人 内男三十一人 内贖罪九人収贖一人
女一人 収贖一人
禁獄七十日 男一人
懲役七十日 三十六人 内男三十四人 内贖罪二人
女二人
懲役六十日 五十六人 内男五十一人 内収贖三人
女五人
懲役五十日 三十四人 内男三十一人 内収贖三人 贖罪二人
女四人 収贖一人
懲役四十日 二十人 内男十六人 内贖罪四人 収贖一人
女四人 収贖四人
禁獄三十日 男一人
懲役三十日 二十二人 内男二十一人 内贖罪十一人
女一人 収贖一人
懲役二十日 四十二人 内男三十三人 内贖罪二十四人 収贖一人
女九人 収贖九人
懲役一十日 十五人 内男十四人 内贖罪八人 収贖一人
女一人 収贖一人
除族 男二人