カノン法

カノン法(Canon law)とは、キリスト教の組織・教徒を統治するために教会当局がつくった法体系をいいます。"Canon"という語はギリシア語の"Kanon"に由来し、4世紀にキリスト教公会議の定めた法令を指す言葉として使われるようになります。しかし、カノン法(ius canonicium)という表現が---ローマ法"ius civile"との違いを強調するために---一般に通用するようになるのは、12世紀初めになってからのことです。

 

THE FIRST COUNCIL OF NICEA, 325 : 「ニケーア信条」を採択した第1回ニケーア公会議(325年)。

Internet Medieval Sourcebook : Medieval Legal History : 第1回ニケーア公会議から中世までのカノン法資料を数多く読むことができます。

Twelfth Ecumenical Council: Lateran IV 1215 : 第4回ラテラノ公会議(1215年)。その"CANON 18"は、聖職者が裁判官職を務めたり「神判」に従事することを禁止している。(これを契機に、神判以外の証明方法が採用されるようになったといわれているが、実際には依然として聖職者が神判に従事し続けたようである)

 

Domus Gratiani; Homepage for Gratian Studies : カマラドルス修道会の修道士・グラティアヌス(1179年以前に没)は、膨大な成文カノン法(管区会議や公会議の決議、教皇の書簡、教父の文書)を集成し、グラティアヌス教令集(1140)("教会法大全Corpus Iuris Canonici"ともいわれる)を完成させました。グラティアヌスは、既存の教会法源を集録・選別し、弁証法的・スコラ学的方法によって、矛盾のない体系として構築したのです。この著作をもって、カノン法学が学問の世界に登場したといわれます。そして、その後、何と1917年までカノン法全体の基礎をなしました。


「グレゴリウス9世の教皇令」 : 1234年公布。「リーベル・エクストラ(Liber Extra)」の名称も。5巻の書をもって裁判所構成法、訴訟法、教会官僚制、婚姻法、刑法を規定。この刊行により、カノン法学は最盛期を迎えたといわれます。


リーベル・セクストゥス(Liber Sextus)」 : 「リーベル・エクストラ」を補充するものとして1298年編纂。

リーベル・エクストラを公布する勅書(施行令)は、古い(時代遅れとなった)法の代わりに新しい法をつくる立法者の法的権力を宣言しました。こうして、単に<記録しておくだけの法律>という伝統的理解が克服されたのです。