このチャプターではいずれ起こりうるであろう緊急事態の種類と、それについての適切な対処法について説明していく。
ここで学んだ事を活かすことで、君と飛行機の最大限の安全を確保することが出来るだろう。
緊急事態が発生した時、君は常に以下の3つのルールを守らなければならない。
飛行機のコントロールを維持する。
何が起こっているのかを調べる。
このチャプターに書いてある中の適切な行動を行う。
重要なこととして、緊急事態時には自分の記憶の中から素早く緊急時の手順を呼び起こし、正しい判断を下さなければならない。また一般的なセンスや、飛行機の仕組みなどをすべて理解しておくことも必要だ。
このチャプターではよく"Land as soon as possible"という言葉と"Land as soon as practical"という言葉が使われているがこれらの意味を以下に記述する。
Land as soon as possible. ・・・近くの着陸に適した飛行場へ早急に着陸する。
Land as soon as practical. ・・・すぐに着陸する必要は無いが、ミッションは中断するべきである。
このセクションでは、目にするであろうcaution lightの表示と意味、それが点灯した際の処置を解説していく。
AIL, L/R ・・・左右どちらかのエルロンが動かなくなってしまっている。
処置方法・・・aileron emergency disengage switchを操作して、このcaution lightに影響があるかを確認し、AIL DISENGのCaution lightが点灯するかを確認する。
AIL DISENG ・・・左右どちらかのエルロンと操縦桿が接続されていない状態になっている。
処置方法・・・disengage switchを真ん中に戻し、エルロンと操縦桿を接続しなおす。もし必要であれば飛行機を左右に動かす。
AIL TAB, L/R ・・・manual reversion mode(油圧系統が不具合を起こした際に油圧サポート無しでコントロールを行うモード)がオンになっている時にしか点灯しない。タブを動かすためのアクチュエーターが動いている時に点灯する。
処置方法・・・manual reversion modeを解除する。
ANTI-SKID ・・・ギアダウン時にAnti-skid switchがOFFになっている時に点灯する。また、ONにした際に回路が異常を起こしている場合にも点灯する。
処置方法・・・スイッチがOFFになっているならONに、すでにONの場合は着陸時にタイヤをロックさせないように気をつけながらブレーキをかける。
APU GEN ・・・APUが発電していない状態にもかかわらずAPU generatorのスイッチがPWRに入っている。
処置方法・・・いくつかの機器の電源を落とした後にAPU generatorのスイッチを入れる。
BREED AIR LEAK ・・・温度センサーが抽気の漏れを確認した際に点灯。
処置方法
Bleed airスイッチをOFFにする。
APUのスイッチをOFFにする。
出来ればミッションを中止し、出来るだけ早く着陸する。
CADC ・・・Central Air Data Computerが故障している。故障している場合は誤ったデータが表示される。HUDには故障する前の最後に表示されたAir speedと高度が表示され、CADC FAILとINS DEGRADEDのメッセージがCDUに表示される。
処置方法・・・高度計をSTBYかPENUへ切り替え、ピトー管を使用した速度計を使用する。
CICU ・・・Central Interface Control Unitが故障している。
処置方法・・・CDUのステータスをCDUのSYSページで確認する
CONV, L/R ・・・左右どちらかのコンバータ(ACをDCに変換する装置)が故障している。
処置方法・・・早急に着陸を行う。
EAC ・・・Enhanced Attitude Controlが故障している。
処置方法・・・EACスイッチを入れなおす。これでもし直らない場合はUFCのFUNCを押した後にCLRを押しMALFを押す。
ELEV, L/R ・・・左か右のエレベータが動いていない。
処置方法・・・Elevator emergency disengage switchを入れ、caution lightに影響があるかどうかを確認し、ELEV DISENGが点灯するかをチェックする。
ELEV DISENG ・・・左右どちらかのエレベータが操縦桿と接続されていない状態である。
処置方法・・・Disengage switchを真ん中へ戻し、エレベータと操縦桿を接続する。必要であれば飛行機を上下に動かす。
ENG HOT, L/R ・・・どちらかのInterstage Turbine Temperature(エンジン温度)が880℃を超えてしまっている。
処置方法・・・スロットルをエンジン温度が運用レンジに戻るまで弱くする。
ENG OIL PRESS, L/R ・・・どちらかのエンジンの油圧が34 psi以下になっている。
処置方法
油圧が下がっているエンジンのスロットルをIDLEポジションには行かない位まで下げる。
もし1の時点で30 psi以上が維持できているのであれば、スロットルをIDLEにする。
もし1の時点で30 psiを下回ってしまうのであれば、エンジンの破損を防ぐため、油圧の下がっているエンジンのスロットルをOFFポジションに持っていく。
ENG START CYCLE ・・・エンジンが自動でスタートアップをしており、air turbine starter solenoid valveが開放されている。スロットルがIDLE位置にあるが、エンジンスピードが56%に満ていない状態。このライトは左右どちらかのengine operate switchがMOTORの位置になっている時も点灯する。
処置方法・・・エンジンのスタートアップをエンジンが始動するまで待つ。またスイッチがMOTORに入っているならエンジン始動の方法によってMOTORポジションから動かす。
FUEL PRESS, L/R ・・・Fuel pumpの異常を示す。原因としては差動するために必要な燃料の圧力が足りていないか、燃料を送るためのラインが詰まってしまっている事である。
処置方法
Crossfeed switchをCROSSFEEDにセットする。
もしライトが消えない場合は、Crossfeed switchをOFFにして燃料が漏れていないか確認するため、燃料の量を監視する。もし燃料が漏れているようなら、表示されているほうのスロットルをOFFにし、T-handle(消化装置作動用のハンドル)を引っ張る。
もし左側の燃料が漏れ続けている場合は左側のBoost pump switchをOFFにする。もし右側の燃料が漏れ続けているのであれば、右側のBoost pump switchをOFFにし、さらにSAS switchもOFFにする。
GCAS ・・・Ground Collision Avoidance System(地面との衝突を防止する装置)が動いていない。
処置方法・・・LASTE panelにある電波高度計のスイッチをNRMにセットし、Master caution lightをUFCでリセットする。
GEN, L/R ・・・どちらかのジェネレータがOFF/RESETにセットされているか、故障を起こしている。故障を起こしている場合はメインのシステムとWing fuel boost pump、SASが動かなくなるのが確認できる。
処置方法
10,000ft AGL(地上からの高度)以上にいる場合はCROSSFEEDを入れる
故障を起こしているジェネレータのスイッチを一旦OFF/RESETへ入れ、もう一度PWRへ戻してみる。
上記の手順を試してもダメな場合は
a. 異常を起こしているジェネレータのスイッチをOFF/RESETに戻す
b. 15,000 ft MSL(海抜からの高度)以下でAPUを起動する
c. APUジェネレータのスイッチをPWRに入れる
d. 出来ればミッションを中止し、着陸を行う。
GUN UNSAFE ・・・機銃発射後に、実弾がバレルの中に残っている状態。
処置方法・・・機銃の発射を行わず、GUN/PACとMaster ARMのスイッチをSAFEに入れる。
HARS ・・・HARSが動いておらず、データの提供が行われていない状態。
処置方法・・・もしHARSが故障して、それが飛行機の体勢の情報を提供していた場合、ヨーの動作とトリムを回復する方法を以下に記述する。
EGIが動いている場合:
Navigation Mode Select PanelでEGIを選択する
YAW SASスイッチを入れなおす。
EGIが動いていない場合:
CDUのスイッチをOFFにする。
EGIのスイッチをOFFにする。
HARS/SASスイッチをOVERRIDEへ入れる。
HYD PRESS, L/R ・・・左右どちらかの油圧システムの油圧が900 psiを下回っているか、manual reversion modeが有効になっている。
処置方法
左側のシステムが故障している場合
FRAP EMER RETR(フラップを強制的に戻す)スイッチをEMER RETRへセットする。
もし、油圧が下がり続けている場合:
a. SASとAnti-skidをOFFにする。
b. ピッチのSASをOFFにする。
c. 早急に着陸する。
右側のシステムが故障している場合
SP BK EMER RETR(エアブレーキを強制的に閉じる)スイッチをEMER RETRへセットする。
もし、油圧が下がり続けている場合:
a. SASとAnti-skidをOFFにする。
b. ピッチのSASをOFFにする。
c. 左の油圧システムが動いている場合はAnti-skidを有効にする。
d. 早急に着陸する。
左右どちらも故障している場合
1Gを掛ける飛行を180 KIASから210 KIASで行う。
フラップをフルアップにする。(必要であれば、Emergency retractを使用する)
装備を投棄し、左右のバランスを均一にする。
Manual Reversion Modeを有効にする。
HYD RES, L/R ・・・油圧の液体容量が少なくなっている。
処置方法
左側のシステムが故障している場合
FRAP EMER RETR(フラップを強制的に戻す)スイッチをEMER RETRへセットする。
もし、油圧が下がり続けている場合:
a. SASとAnti-skidをOFFにする。
b. ピッチのSASをOFFにする。
c. 早急に着陸する。
右側のシステムが故障している場合
SP BK EMER RETR(エアブレーキを強制的に閉じる)スイッチをEMER RETRへセットする。
もし、油圧が下がり続けている場合:
a. SASとAnti-skidをOFFにする。
b. ピッチのSASをOFFにする。
c. 左の油圧システムが動いている場合はAnti-skidを有効にする。
d. 早急に着陸する。
左右どちらも故障している場合
1Gを掛ける飛行を180 KIASから210 KIASで行う。
フラップをフルアップにする。(必要であれば、Emergency retractを使用する)
装備を投棄し、左右のバランスを均一にする。
Manual Reversion Modeを有効にする。
IFF MODE-4 ・・・Mode-4が動いていない時に点灯。原因はZeroize(?)されているか、システムが故障している事である。
処置方法・・・正しいモードにセットしなおす。
INST INV ・・・インバータ(DCをACに変換する機械)が動いておらずAC回路に電気が供給されていない状態。左右のエンジン温度警告のcaution lightが点灯してるような場合に両方のACジェネレータが動いていない際にも点灯する。
処置方法
25,000 MSL以下を飛行している場合はエンジンスピードを90%以下へ、25,000 MSL以上を飛行している場合は85%以下に下げる
Inverterスイッチを一度TESTとSTBYの間へ持って行き、STBYへ戻す。
15,000 MSL以下でAPUを起動する。
APU generator switchをPWRへ切り替える。
出来るだけ早く着陸を行う。
L-R TKS UNEQUAL ・・・胴体にある2つのメインの燃料タンクの燃料の量に750 lbs以上の差がある状態。
処置方法
CrossfeedスイッチをCROSSFEEDへ切り替える
Wing boost pumpsをOFFにする。
右の燃料が少ない場合は右のmain boost pumpをOFFにする。
左の燃料が少ない場合は左のmain boost pumpをOFFにする。
LASTE ・・・Low Altitude Safety and Targeting Enhancement systemが動いていない。
処置方法・・・IFFCCスイッチを入れなおす。
MAIN FLOW LOW, L/R ・・・燃料の残りが500 lbsを下回っている。
処置方法・・・早急に着陸を行う。
MAIN PUMP L/R ・・・メインのFuel boost pumpが故障を起こしている可能性がある場合に点灯する。Main fuel tankの出口部分の燃料の圧力が左右で異なっている場合、圧力が低いほうのタンクを通知する。
処置方法・・・どちらかのBoost pumpが故障した場合、MAIN PUMP, L or Rのランプが点灯する。Wing boost pumpが動いていると仮定した場合、そのPumpの圧力によってエンジンに燃料が供給される。もし、両方のMain/Wing boost pumpが動いていない場合は10,000 ft以下ではエンジン自身が燃料を吸い込むことが出来るが、それ以上の高度を飛んでいる場合はエンジンのオペレーションは苦しくなる。このような状態の場合は、CrossfeedスイッチをCROSSFEEDへセットする。ただ、燃料が燃料タンクに急激に送り込まれている場合は、すべてのスイッチを切る。
NAV ・・・このランプが点灯する多くの原因はEGIの状態が関わってくる。
起こりうる原因とそれに対応した処置方法
EGI Flight instrumentの故障
NavigationモードをEGIからHARSへ切り替える。
CDUのにEGI FLY INST FAILのメッセージが表示されているのを確認する。
CDUのRESETページを開き、EGI line selectキーを押す。
EGIがnot readyの場合
EGIスイッチがONの状態であることを確認する。
EGIスイッチを最低でも10秒間OFFにする。
EGIスイッチをONに戻す。
EGI GPSの故障
CDUでGPS FAILのメッセージを確認する。
Navigation Mode Select PanelでEGIが選択されていることを確認する。
CDUのRESETページでREINIT INS line selectのキーを押す。これでも改善しない場合は・・・
Navigation Mode Select PanelでHARSを選択する。
CDUのREINITページでREINIT GPS line selectキーを押す。
EGI INSの故障
CDUでINS FAILのメッセージを確認する。
Navigation Mode Select PanelでEGIが選択されているかを確認する。
CDU RESETページでEGI line selectキーを押す。これでも改善しない場合は・・・
Navigation Mode Select PanelでHARSを選択する。
CDUのREINITページでREINIT GPS line selectキーを押す。
CDUの故障
CDUのスイッチを最低でも4秒間OFFにする。
CDUをONへ戻す。これでも改善しない場合は・・・
DTSデータを読み込みなおす。
Navigation Mode Select Panelで希望するモードを選択する。
OXY LOW ・・・液体酸素の残量が0.5リットルを切っている。
処置方法・・・出来るだけ早く10,000 ft AGLまで降下する。
PITCH SAS ・・・片方か両方のSASチャンネルが切断されている。
処置方法・・・SASを接続しなおす。この時に両方の接続が確立できなかった場合は、両方のSASを切断する。片方だけSASを有効にしてオペレーションすることは避けるべきである。理由は、インターコネクターの金具に過負荷がかかる可能性があるためである。
SEAT NOT ARMED ・・・Seat ground safety lever(射出座席の安全装置)がSAFEポジションに入っている
処置方法・・・特に無し
SERVICE AIR HOT ・・・最初に冷却された空気の温度が極端に高い。
処置方法
Bleed airスイッチをOFFにする。
APUのスイッチをOFFにする。
出来るだけ早く着陸する。
STALL SYS ・・・Alpha/Mach computerとStall warningが動いていない状態。この状況では、スラット(前縁フラップの一種)は自動的に展開する。
処置方法・・・AoA(翼の迎え角)が20度を超えないように飛行する。
WINDSHIELD HOT ・・・風防の除氷装置の温度が150 Fを超えてしまっているか、飛行機の電源がバッテリーのみの場合に点灯する。
処置方法・・・特に無し
WING PUMP, L/R ・・・Fuel boost pumpが故障を起こしている可能性がある場合に点灯する。このランプは、左右の燃料タンク出口部分の燃料の圧力に差がある場合、圧力が低いほうのタンクを通知する。
処置方法・・・もし、右か左のWING BOOST PUMPのCaution lightが点灯した場合、これは600 lb以上燃料が入っているにもかかわらずBoost pumpが燃料を送ることが出来ていないことを表している。もし、LeftのCaution lightが点灯していない場合は重量のバランスが取れなくなってしまうため、CROSSFEEDスイッチを入れることで解決を行う。ただ、もし燃料タンクに急激に燃料が送り込まれている場合は、すべてのスイッチを切る。
YAW SAS ・・・1つか両方のYAW SASが接続されていない状態。
処置方法・・・SASを接続しなおす。この時に両方の接続が確立できなかった場合は、両方のSASを切断する。片方だけSASを有効にしてオペレーションすることは避けるべきである。理由は、インターコネクターの金具に過負荷がかかる可能性があるためである。Navigation Mode Select PanelでHARSかEGIを選択しなおし、attitude reference systemを一度リセットした後、接続をしなおす。
フラップが左右非対称になってしまった場合
もしフラップをダウンもしくはアップにした際に左右でフラップの角度がそれぞれ違う状態になってしまった場合、以下の操作で解決を試みる。
フラップのポジションを選択しなおす。これでもだめな場合は・・・
速度と高度を上げて、フラップをMVRにセットする。これでもだめな場合は・・・
Emergency Flight Control PanelのFLAP EMER RETRのスイッチを上げる。
スピードブレーキが左右非対称になってしまった場合
Emergency Flight Control PanelのSPD BK EMER RETRのスイッチを上げる。
エルロン/エレベータが動かなくなってしまった場合
1つ及びそれ以上のエルロンかエレベータが動かない状態の時、AIL,L/RかELEV, L/RのCaution lightが点灯する。点灯しているCaution lightに従ってEmergency Flight Control Panelを操作し、操縦桿と翼の接続を切った後、通常の飛行が出来るようにする。
油圧系統の故障
A-10Cは右と左に油圧装置を持っており、片方が故障してもかろうじて飛行操作は可能である。左右いずれかの装置が故障してしまった場合はL and R HYD RESかL and R HYD PRESSのCaution lightが点灯する。1つの油圧装置を失ってしまった場合はラダーの利きが悪くなってしまう。
もし左の油圧装置が故障してしまった場合は、以下の装置が失われる。
フラップ
Nosewheel steering(地上滑走の際に前輪を操作する機能)
通常の着陸装置の操作
Wheel brakes
Anti-skid
油圧による左のエレベータとラダーのアクチュエータ
デュアルチャンネルによるピッチとヨーのSAS
左の油圧装置が故障してしまった場合
FRAP EMER RETR(フラップを強制的に戻す)スイッチをEMER RETRへセットする。
もし、油圧が下がり続けている場合:
a. SASとAnti-skidをOFFにする。
b. ピッチのSASをOFFにする。
c. 早急に着陸する。
右の油圧装置が故障してしまった場合、以下の装置が失われる。
スラット(もし自動で展開した後に油圧を失ってしまった場合)
空中給油用のシステム
スピードブレーキ
右のエレベータとラダーのアクチュエータ
デュアルチャンネルによるピッチとヨーのSAS
右の油圧装置が故障してしまった場合
SP BK EMER RETR(エアブレーキを強制的に閉じる)スイッチをEMER RETRへセットする。
もし、油圧が下がり続けている場合:
a. SASとAnti-skidをOFFにする。
b. ピッチのSASをOFFにする。
c. 左の油圧システムが動いている場合はAnti-skidを有効にする。
d. 早急に着陸する。
両方の油圧装置が故障してしまった場合
1Gを掛ける飛行を180 KIASから210 KIASで行う。
フラップをフルアップにする。(必要であれば、Emergency retractを使用する)
装備を投棄し、左右のバランスを均一にする。
Manual Reversion Modeを有効にする。
トリムの故障
通常のトリム機能が故障してしまった場合は、Emergency Flight Control PanelのPITCH/ROLL TRIMスイッチをEMER OVERRIDEへセットする。その後にemergency pitch and roll trim switchでトリムを設定する。
コントロール不能状態からの回復
もし飛行機がスピン等のコントロールができない状態に陥ってしまった場合、何度か機体のぐらつきをコントロールした後に簡単に回復することが出来る。
機体のぐらつきが収まるまですべてのコントロールをニュートラルにする。焦って操作すると逆に状況を悪化させる場合がある。
スロットルをアイドルにする。
もしスピンをしている場合は、スピンと反対方向のラダーを蹴り込む。
スピンに入っている場合は、スピンの度合いにもよるが、回復に4,000~10,000 ftの高度を失う。
低酸素症
20,000 ft MSL以上で十分な酸素を摂取できなかった場合、低酸素症の影響を受けて意識も失ってしまう。もし視界に何らかの影響が出た場合は、以下の手順を必ず行うこと。
Oxygen leverがONになっていることを確認する。
Oxygen flow indicatorが点滅しているしているのを確認する。
酸素の圧力が55 psi以上であることを確認する。
正しくセットされていて視界に影響が残っている場合は、13,000 ftまで降下する。
油圧サポート無しでの着陸
もし、Manual Reversion Flight Control Systemを使用してランディングを試みる際、機体のコンディションが良く、操縦がしっかりと行える状態である必要があり、Crosswind(横風)の強さは20 knots以下、ECMポッドがステーションの1~11につんでいない状態、また、Trimは一切使用してはならない。以上の状況がそろっていない場合はイジェクトしたほうがいいだろう。ランディングを行う場合は、
外付けの燃料タンクは投棄する。
ランディングギアを下ろす。普通に下ろせない場合はAUX LG EXTハンドルを使用する。
EMER BRAKEハンドルを引く
1.5~2度の低い降下率でストレートアプローチを行う。
高度が50 ft AGLを下回るとピッチのレスポンスが非常に悪くなる。
タッチダウンまで大体140 KIAを維持する。
エンジンの火災
いずれかのエンジンの火災が確認された場合、右か左のT-Handleが点灯する。火災が発生した場合は以下の手順を行う。
火災が発生した方のエンジンのパワーを絞り、鎮火するかを確認する。鎮火しなかった場合は・・・
火災が発生した方のエンジンのスロットルをOFFにする。
火災が発生したエンジンのT-Hundleを引く。
Fire discharge agent switch(消化剤を出すスイッチ)を右か左に倒す。
左右両方にfire discharge agent switchを倒しても鎮火出来なかった場合は、早急に着陸を行う。
APUの火災
APUの火災が確認された場合、中央のT-Handleが点灯する。APUの火災が発生した場合は、Bleed Air LeakのCaution lightが同時に点灯する可能性が高い。この火災が発生した場合は以下の手順を行う。
APUを動かしている場合はAPUをOFFにする。鎮火しなかった場合は・・・
APUのT-Handleを引く。
Fire discharge agent switch(消化剤を出すスイッチ)を右か左に倒す。
左右両方にfire discharge agent switchを倒しても鎮火出来なかった場合は、早急に着陸を行う。
片方のエンジンの再始動
飛行中にエンジンを再始動する場合はAPUを使用して再始動を行うか、Windmill air startを行う。
APUを使用してのリスタートの手順
停止しているエンジンのスロットルをOFFポジションへ持っていく。
シャットダウンしたエンジンの温度が下がっていくことを確認する。
20,000 ft MSL以下を飛行し加速を行う。
15,000 ft MSL以下になってからAPUを入れる。
動いているエンジンのスロットルをMAXにする。
停止しているエンジンのEngine Operate switchをMOTORにセットする。
停止しているエンジンの温度が100℃以下になり、15,000 ft MSL以下になったら再始動するエンジンのスロットルをOFFからIDLEへ動かす。
Engine Operate switchをNORMの位置へ戻す。
エンジンの再始動が完了したら、SASスイッチを入れなおし、Engine Operate switchをNORMへ戻っているかを確認する。
Windmill Restartの手順
Windmill Restartを行う場合はエンジンを始動する際は、30度の急降下を行わなければならない為、6,000 ft~8000 ftの高度が必要となる。なのでこの再始動の方法は10,000 ft以下で行ってはならない。手順を以下に記述する。
機体を30度の降下体勢にする。
Bleed AirのスイッチをOFFにする。
CrossfeedスイッチをCROSSFEEDにセットする。
一度停止したほうのエンジン温度が150℃以下になったら、両方のスロットルをMAXにセットする。
停止しているエンジンのEngine Operate switchをIGNにセットする。
エンジンが動き出したら、Engine Operate switchをNORMへ戻す。
CrossfeedスイッチをOFFにする。
Breed AirスイッチをONにする。
エンジン始動に失敗した後の始動
Engine Operate switchがNORMモードの時にエンジンの自動始動が失敗してしまった場合、エンジンの燃焼を行うチャンバー内に燃料が大量に入ってしまっている状態の可能性がある。これを取り除かなければ、再始動の際にHot start(燃焼ガスの温度が異常に高い状態)が起こる可能性がある。エンジン始動に失敗してしまう原因として、InverterスイッチがSTBYにセットされている場合があるが、これはエンジンに点火を行う装置に電源が送られていない状態になってしまっているからである。チャンバー内の燃料を取り除く方法を以下に記述する。
始動に失敗したエンジンのスロットルをOFFにする。
始動に失敗したエンジンのEngine Operate switchをMOTORにセットし30秒ほど待機する。
この手順で燃料を取り除いた後に、エンジンの再始動を行う。
APUの温度が異常に高い場合
APUの温度が異常に上がっているか上がり始めている場合、APUのスイッチをOFFにして早急にシャットダウンを行わなければならない。もし、飛行中にこれが起こってしまった場合は、なるべく早く着陸を行う必要がある。しかし、エンジン始動のためにAPUが必要な場合や、APUからの電源供給が必要な場合はAPUの再始動を行ってもよいが、その際にはAPUの温度を注意深く監視すること。また、抽気の異状により機体にダメージが発生する恐れが為、いずれかのエンジンのRPMが80%を超えている場合はAPUを使用するのを避けるべきである。
エンジンのオイル機能不全
エンジンのオイル圧力が通常の状態を逸脱してしまっている場合、以下の手順を行う。
油圧が下がっているエンジンのスロットルをIDLEポジションには行かない位まで下げる。
もし1の時点で30 psi以上が維持できているのであれば、スロットルをIDLEにする。
もし1の時点で30 psiを下回ってしまうのであれば、エンジンの破損を防ぐため、油圧の下がっているエンジンのスロットルをOFFポジションに持っていく。
Main Fuel Boost Pumpの故障
どちらかのBoost pumpが故障した場合、MAIN PUMP, L or Rのランプが点灯する。Wing boost pumpが動いていると仮定した場合、そのPumpの圧力によってエンジンに燃料が供給される。もし、両方のMain/Wing boost pumpが動いていない場合は10,000 ft以下ではエンジン自身が燃料を吸い込むことが出来るが、それ以上の高度を飛んでいる場合はエンジンのオペレーションは苦しくなる。このような状態の場合は、CrossfeedスイッチをCROSSFEEDへセットする。ただ、燃料が燃料タンクに急激に送り込まれている場合は、すべてのスイッチを切る。
Wing Fuel Boost Pumpの故障
もし、右か左のWING BOOST PUMPのCaution lightが点灯した場合、これは600 lb以上燃料が入っているにもかかわらずBoost pumpが燃料を送ることが出来ていないことを表している。もし、LeftのCaution lightが点灯していない場合は重量のバランスが取れなくなってしまうため、CROSSFEEDスイッチを入れることで解決を行う。ただ、もし燃料タンクに急激に燃料が送り込まれている場合は、すべてのスイッチを切る。
燃料の圧力低下及び燃料漏れの発生
L-FUEL PRESSかR-FUEL PRESSのcaution lightsが点灯した場合、Crossfeed switchをCROSSFEEDにセットする。
もしライトが消えない場合は、Crossfeed switchをOFFにして燃料が漏れていないか確認するため、燃料の量を監視する。もし燃料が漏れているようなら、表示されているほうのスロットルをOFFにし、T-handle(消化装置作動用のハンドル)を引っ張る。
もし左側の燃料が漏れ続けている場合は左側のBoost pump switchをOFFにする。もし右側の燃料が漏れ続けているのであれば、右側のBoost pump switchをOFFにし、さらにSAS switchもOFFにする。
片方のエンジンのみでの着陸
片方のエンジンが停止してしまった状態で安全に機体をコントロールすることが出来る場合は、以下の手順で着陸を試みる。
停止したエンジンが火災を起こして機体にダメージが入ることがないかを確認する。
片方のエンジンしか動いていない場合は、動いているエンジンと反対方向にヨーが発生するためラダーで打ち消し、出来るだけ動いているエンジンの方向へバンクを取るようにする。
動いているエンジンのスロットルをMAXにする。
スピードブレーキが開いている場合は閉じる。
フラップをMVRにセットする。
ストレートアプローチを行うが、タッチダウンの2~3 nm手前までには滑走路と正対している状態を作り出しておくこと。
片方のエンジン出力を最大にしても水平飛行で高度を保つことが出来ない場合は、装備を投棄すること。
ランディングギアを下ろす。しかし、空気抵抗が増えるためそれを相殺するように飛行する。
接地の際にはパワーをゆっくり絞り、フレアを掛けるが、エンジン出力が変わってくるとヨーの効果も変わってくるため、ラダーの踏み込み具合に注意しながらしっかりと滑走路に方向を合わせる。
フレームアウトランディング
脱出が出来ない状況の時、フレームアウトランディングを試みることになる。これは両方のエンジンが出力を生み出せない状態で、地上に降りなければならない。以下の手順で着陸を行う。
滑走路から8,000 ft以上離れないように、かなりきつめの円形のランディングパターンを作る。また、ターンを行う場合は30度のバンク角を超えないように注意する。
ランディングギアを高度7,000~6,500 ft AGL,160 KIAS以下で出す。
そのまま160 KIASを維持し3,500~4,000 ftまで降下する。
160 KIASを維持し2,000~2,500 ft AGLでベースレグに入る。
Manual reversion modeの場合はロールのレスポンスがかなり遅くなるため、ファイナルへ進入するためのロールアウトを早めに行うこと。ファイナルでは500ft以上、150 KIASの速度を確保しておく必要があり、タッチダウンは滑走路の1/3の場所で行う必要がある。ランディングの際のフレアは滑走路の200~300 ft,AGLから開始し、50 ft AGLで1.5~2度の浅い角度で行う。タッチダウン時の速度は120 KIAS。50 ft AGL以下では地面効果の影響を受けることを覚えておくこと。
anti-skid, フラップ, スピードブレーキが使えない状態のため、接地したらemergency brakesを使用する。
ランディングギアがうまく降りていない場合
理想的なランディングの条件は3つのランディングギアが降り、緑色のGear-down indicatorsでロックをされていることを確認できる状態であるが、ランディングギアのレバーを下ろしても3つのGear-down indicatorsが点灯しなかった場合、以下の手順を行う。
Signal Lights buttonを押し、ライトが動いていることを確認する。
油圧装置の圧力をチェックする。もし問題がなければ・・・
ランディングギアのレバーを上げて、もう一度下ろしなおす。
速度を200 KIASまで上げ上下左右に機体を振る。
上記の手順を行ってもだめな場合は、Landing Gear Alternative Extension Handleを使用する。手順は、
a. 速度を200 KIAS以下にする。
b. ランディングギアのレバーが下がっていることを確認する。
c. Pull AUX LG EXT handleを引く
ギアがない状態及び部分的にギアが出ている状態での着陸
上記に書いてあることを行ってもランディングギアが降りない場合は、ギアを上げた状態でのランディングを試みる必要がある。以下に手順を記述する。
Pull AUX LG EXT handleを押し込む。
すべての装備とフレア(欺瞞用)を投棄する。
余分な燃料を燃やす。
EMER BRAKEを引く。
スピードブレーキを40%でセットする。
フラップを20度にセットする。
通常の速度で2度の浅い角度でアプローチする。
効果率をギリギリまで抑えて滑走路の真ん中に接地する。
接地後スピードブレーキをフルオープンする。
スロットルをアイドルにする。
コントロールスティックは手前一杯に引きっぱなしにする。
機体が停止したらスロットルをOFFにする。
緊急脱出
どの速度域や機体の体勢でも射出座席を使用することは出来るが、ベストなのは高度が2,000 ft AGL以上でで機体が水平の時である。もし高度が2,000 ft AGL以下の場合、脱出するかの判断が遅れることがあってはならない。また、機体が操縦不能の場合は4,000 ft AGL以上で脱出を行う必要がある。もし、脱出する前に時間の余裕があるのであれば、以下の手順を行う。
IFFをEMERにセットしMode 3/Aにセットする。
UHF guard チャンネルに"May Day"コールを行う。
機体を居住区等がない方向へ向ける。
機体のトリムを出来るだけスピードを落とした状態で水平飛行が出来る位置にセットする。
脱出の準備が整ったら、両方の射出座席のハンドルを引く。