インターセプトとBVR(WIP)

引用資料:

P-825 All Weather Intercept (AWI), Flight Training Instruction, Advanced NFO T-45C/VMTS

なるべく米軍のマニュアルを元にしていますが、不確かな部分などはフライトシミュレータ向けに再解釈・アレンジして説明しています。

※随時加筆します。

誘導管制との連携

AWACSあるいはGCI/ACIからの迎撃誘導はブロードキャストコントロールとタクティカルコントロールに分かれます。

ブロードキャストコントロールは空域にいる全機に対する情報の共有であり、タクティカルコントロールは特定の迎撃グループに対する通信です。

インターセプトする対象の情報はBRAAあるいはブルズアイ地点からの方角と距離、高度と指向性で表されます。BRAAとはBearing(自機からの方位),Range(距離),Altitude(高度),Aspect(指向性)の頭文字を取ったアクロニムです。アスペクトは次図のように自機に対してバンディットがどの程度こちらを指向しているかをHOT、FLANK、BEAM、COLDのいずれかで表します。

インターセプトの対象は次のいずれかに分類されます。

  • ホスタイル

ROE(交戦規程)を満たし武器を発射してよい相手

  • フレンドリー

味方機

  • バンディット

敵機の可能性があるがROEを満たさず武器の発射が許可されない

  • ボギー

対象の所属が不明、パイロットがセンサーあるいは目視での確認による判断を行う

  • スタンバイ/アンエーブル

不明

この図で敵機の方角をブルズアイ(Vegasと名付けられた地点)基準およびBRAAで表すと迎撃誘導の通信例は次のようになります。

  • ブロードキャストコントロール:ブルズアイ -

“SABRE, Single Group, Vegas 015, 80, 22 thousand, track southwest, hostile”

セイバーより、1グループの反応、Vegasから方位015, 80マイルの距離, 高度22000フィート, 南西に移動中のホスタイル

  • タクティカルコントロール:ブルズアイ -

“Nikel 11, SABRE, Single Group, Vegas 015, 80, 22 thousand, hot, hostile”

ニッケル11へ、セイバーより、1グループの反応、Vegasから方位015, 80マイルの距離, 高度22000フィート, ホット(高い指向性で接近中)のホスタイル

  • タクティカルコントロール:BRAA -

“Nikel 11, SABRE, Single Group BRAA 345, 90, 22 thousand, hot, hostile”

ニッケル11へ、セイバーより、1グループの反応、貴機から方位345, 90マイルの距離, 高度22000フィート, ホット(高い指向性で接近中)のホスタイル

ファイターがインターセプトにコミットするまで、誘導はブロードキャスト・コントロールで行われます。コミット後に誘導支持はブルズアイ基準でのタクティカル・コントロールに切り替わり、目標の30マイル以内でBRAAに切り替わります。

インターセプト

インターセプトの基礎

インターセプトとは、GCI (Ground Controlled Intercept) あるいは AWACS (Airbone Warning and Control System) の誘導、あるいは自身のセンサーを利用して、目標の機体に対する武器の発射あるいはVID (Visual Identification) が可能な位置に占位する機動のことです。

ベースライン・インターセプト

基礎的なインターセプトとして、以下のことをパイロットが行わなければいけません。

  1. 目標に接近する

  2. 目標を識別する

  3. 必要であれば旋回余地を相手との間につくる

  4. ピュアパシュートへ移行する

  5. 目標の目視を維持する

  6. 目視で目標を識別する

  7. 目標に対する射程距離まで機動する

インターセプトに使用する用語

アスペクト・アングル (AA):

目標の後方への延長戦と、自機と目標の間の線分が織りなす角度を敵機の後方側から図ったもの、自機の方位は換算しません。

アンテナ・トレイル・アングル (ATA):

自機の機首方位から目標に向くレーダーの角度。中心から左右何度と数える。

コリジョン・アンテナ・トレイル・アングル (CATA):

自機とコリジョンコースをとる目標を追尾するレーダーアンテナのアジマス角。180度からアスペクト・アングルを引くとCATAとなる。例えば150度のアスペクト・アングルで飛行する目標に対するCATAは180-150より30度となる。

ベースライン・インターセプト

ベースライン・インターセプトには6つのステップがあります。

    • 20マイルまでにCATAを得る

    • 20マイルまでにオフセットをつくる

    • 目標より速度を上回るように加速し、アスペクト・アングルを監視する

    • 10マイル以内でレーダーをSTT(単一目標追尾モード)にする

    • 120°のアスペクトになったらピュア・パシュートへ移行する(あるいはそれ以上のアスペクトでも6-8マイルに近づいたらピュア・パシュートへ移行する)

20マイル地点までに、レーダーで目標を追尾してCATAを計算し、レーダーに表示されるインターセプト・ステアリング・シンボルを中心に置くよう旋回します。

20マイル地点で水平方向のオフセットを開始し旋回余地を確保します。アスペクト・アングルはレーダー画面から読み取ることが出来るでしょう。

もしアスペクト・アングルが120°以上であれば、目標を自分の機首方位から左右いずれか40-50°の位置に置くように旋回します。このとき、アスペクト・アングルが右方向であれば右方向に、左であれば左方向に旋回します。レーダー上では目標が左右いずれかの位置に見えるようになります。

所定のアスペクト・アングルあるいは距離にまで接近するまで、レーダー上でアスペクトアングルを読み取ります。

対して接近するほどオフセットが自然に大きくなっていくため、40-50°のオフセットを維持するためにはチェック・ターンを加えます。目標がレーダーのジンバルリミットを超えないように気を付けてください。

垂直なオフセット、すなわち高度差を水平のオフセットと同時に設ける方法もあります。この場合、20マイル地点でなくとも目標の高度差が分かり次第に垂直オフセットを設けます。高度差は最低でも数千フィート必要です。

高度差を設けることで、状況次第では以下の利点があります:

      • 目標のレーダー捜索範囲から逃れる

      • 目標のレーダーからグラウンド・クラッターに紛れて隠れる

      • 目標を目視しやすい背景に置くことができる。

      • 目標から隠れやすい背景に自機を置くことができる

      • エネルギー的に優位に立てる

      • 目標の死角に入れる

      • 必要な水平旋回余地を減らして機動する目標に対処しやすくなる

      • 低空へ降りることですばやく加速できる

      • あるいは上昇することで接近率を下げることが出来る

欠点は次の通りです:

      • レーダーアンテナの操作が難しくなる

      • レーダーロックが切れたとき、目標に接近しているほど再ロックするのが難しくなる

      • ノーロックインターセプトではレーダーコンタクトを見失いやすい

速度優位を保つこと:

大まかなやり方として、下方から接近する場合は150KCASの速度優位を、情報から接近する場合は50-100KCASの速度優位を目標に対して持つことです。これは中高度向けの値なので、低高度や高高度では調整しなければいけません。

アスペクト角を監視すること:

目標が機動しなければ、自分がオフセットを正しく取った後、連続してアスペクト角が減少していきます。この時点でアスペクト角が増大するなら、それは標的がこちらに進路を向けていることを表します。より急速にアスペクト角が減少したなら、標的は自機から逃げるように反転しています。

10マイル地点でSTT(単一目標トラッキング)へ入る:

こうすることで旋回中にレーダーロックを維持できます。

120°のアスペクト角/6-8マイル地点でピュア・パシュートコースを取る:

6-8nmという距離は第一優先の基準ではありません。しかし大抵のヘッドオン状況(開始時点のアスペクト角か160-180°)では6-8nm地点に接近した時点でアスペクト角が120°となります。アスペクト角が120°になった時点でピュアパシュートコースをとる(TDボックスがHUDに入るように飛ぶ)ことが重要です。また、アスペクト角にかかわらず5nmまで接近する前にピュアパシュートに入ってください。ハイアスペクト状況から開始したインターセプトであれな。3-4nm地点で残りおおよそ90°の旋回が必要な程度になります。この地点で目標が見えミサイルを発射できる状況にあるはずです。状況が必要とするならBFMを開始してください。

僚機の役割

インターセプトの最中における僚機の役割はリードのマージを支援することです。六時方向や、目標をターゲティングすること、リードがターゲティングしていない敵機との交戦などが要素に入ります。またリードにより脅威度の高い敵機と渡り合うよう呼び掛けることも行います。これらの役割をなすためには、僚機は3つのことをしなければいけません。

  • 編隊を維持すること

  • 無線で通信を行うこと

  • 適切な兵装を選択すること

フォーメーションの維持

タクティカル・インターセプトにおける典型的なフォーメーションは、5000-7000フィートの間隔を開いて、30-45°後方に高度差を設けます。旋回の内側にいるときは、リードより高度を下げてリードを見失わないようにします。旋回の外側にいるときは、リードより高度を上げてエナジーを優位に保ちます。旋回の内側ではリードの3/9ライン前方に出ないよう気を付けてください。旋回の外側では高度を速度に変換してリードに置いて行かれないように気を付けます。

無線コミュニケーション

GCIがフライトに指示や情報を与えるとき、リードが返答を行います。もし答えられる内容が"Viper One, Clean,"だけであっても、GCIは通信が良好であることを確認できます。フライト内で通信を行う時は、両方のエレメントメンバーが知っていること・知らないことを伝えなければいけません。"Viper One, contact two groups, 10NM west bull's eye." これに対して沈黙で答えるのはよくありません。Viper Twoは"Viper Two, clean/same"あるいは自分の持つ情報を伝えてください。インターセプトの進行に応じて、察知した変化をエレメント内で共有することが大事です。

通信手順

ブルズアイチェック

ブルズアイからの自機の距離が編隊間で正しく表示されていることを確認します。

#1 "Viper Flight Bullseye Check #1 is 213 65"

#2 "2 same"

#3 "3 same"

#4 "4 same"

#1 "Good Bullseye."

BRAAとブルズアイ

BRAA, BULLSEYE あるいは各ブルズアイにつけられたコードネームで呼びます。BULLSEYEをBULLと略すのはBRAAと紛らわしいのでやめましょう。

アドバーザリーの情報を聞き出す

ABM(Air Battle Manager)/WD(Weapons Director)にアドバーザリーの情報を聞き出すときに、次の用語を使います。

  • PICTURE

  • STATUS

  • BOGEY DOPE

  • SNAP

  • CUTOFF

PICTURE」 がリクエストされたとき、 ABM/WDは全てのピクチャーを教えます。ブルズアイフォーマットを使い、可能であればラベリングして応答します。

“DARKSTAR, RAMBO 1, PICTURE.”

“DARKSTAR, 2 GROUPS, GROUP B/E 250/15, 25 THOUSAND, BOGEY. GROUP B/E 290/25, 15 THOUSAND, SPADES, HEAVY, TRACK NORTH.”

STATUS (グループ名)」がコールされたとき、 ABM/WDは指定されたグループのブルズアイ、高度、IDを伝えます。

“BANDSAW, SNAKE 1, STATUS NORTH GROUP.”

“BANDSAW, NORTH GROUP, B/E 212/21, 26 THOUSAND, HOSTILE.”

BOGEY DOPE」がリクエストされたとき、ABM/WDはBRAAで最も近いグループの情報を伝えます。あるいは「BOGEY DOPE(グループ名)」で特定のグループの情報をリクエストします。

“COWBOY, CONAN 1, BOGEY DOPE SOUTH GROUP.”

“CONAN 1, SOUTH GROUP BRAA, 190/22, 17 THOUSAND, HOSTILE, 2 CONTACTS SWEPT NORTHEAST 2 MILES.”

SNAP (グループ名あるいは機体のコールサイン)」を使ったとき、ABM/WDはBOGEY DOPEと同様に指定された目標の情報を伝えます。BOGEY DOPEがただ情報を聞くだけであるのに対して、SNAPは指定された目標にファイターが攻撃あるいはジョインすることを意味しています。

特定のグループへのコリジョンコースを訊きたいときは「CUTOFF(グループ名)」を使います。ABM/WDはBRAAでグループまでのカットオフベクターを伝えます。

識別と交戦規定

敵味方識別はIFFのみによっては行われません。

例えばもしIFFの信頼性が90%であるとして、10%の味方機から適切にIFF応答が来ないとした場合、その10%の味方機と同数の軍用機を敵軍が保有しているのであれば、50%の確率で応答のない存在は味方機であることになります。

敵味方識別は、敵正反応や飛行ルートも加味して行われます。

ID クライテリア

IDクライテリアは戦域により異なるでしょう。通常IDクライテリアは

  • lack of friendly (LOF) (例:フライトプランやIFF/SIF照合)

  • positive enemy indication (PEI) (例: EID あるいは VIDによる)

によって行われます。

BOGEY

レーダーあるいは目視で確認されたID未確認の存在です。BOGEYはどのIDクライテリアにも一致していないことを示します。ID確認によって(SPADE, RIDER, SQUAWKING, GOPHER)など別の照合に置き換わります。

BANDIT

BANDITは敵機として照合された存在です。戦域の規定に応じてPEI, LOFあるいは両方、またVIDによってBANDIT IDクライテリアが照合されます。

Positive Enemy Indication (PEI)

PEIを満たすセンサーや発信源は複数あります。戦域に応じてPEIを満たす規定は異なるでしょう。

Lack of Friendly (LOF) Indication

LOFを満たすには、次の照合を完了しなければいけません。

  • friend or foe (IFF)

  • selective identification feature (SIF)

  • minimum risk route (MRR)

IFF/SIFの規定は戦域に応じて異なるでしょう。

PAINTS

IDクライテリアを満たすIFF/SIFのインテロゲートに応答したグループあるいはコンタクトを指します。PAINTSはそのグループがLOFを満たさない。つまりそのグループはATO/ACOに規定されたモードで応答していることを意味します。

“FOCUS, GROUP BULLSEYE 250/15, 27 THOUSAND, PAINTS, TRACK WEST”

SPADES

ATOに規定されたすべてのIFF/SIFコードによる照合がIDクライテリアを満たさなかった存在を指します。SPADEであればIFF/SIFによってLOFクライテリアを満たしたことを意味します。(例えば、ATO/ACOのSPINに指定されたモード1,2,3,3Cあるいは4で応答すべきときにグループが返答しなかったとき)

SQUAWKING (Mode #).

IFF/SIFがATO/IDクライテリアに従わないモードあるいはコードで応答しているボギー。SQUAWKINGはグループのSIF照合がSPADESあるいはPAINTS基準に相当しないがMark X/XII-type SIFで応答している場合に使われます。

“FOCUS, GROUP BULLSEYE 240/35, 25 THOUSAND, SQUAWKING MODE 1 41.”

Minimum Risk Route (MRR)

MRRとは戦域のACOに規定された、応答不能状態の見方機が安全に帰還するためのルートです。識別されていない機体がMRRを飛行している場合、RIDERと呼ばれます。

MRRのパラメータは次のいずれかあるいはすべてを含みます。

  • Transit level (TL)—altitude bands.

  • Transit corridor (TC)—specified routes of flight.

  • Airspeed.

MRRを飛行していない、あるいはMRRゾーンを飛行していたがMRR要求を満たしていないターゲットをGOPHERと呼びます。

PEIはMRRをオーバーライドします。しかし状況不明な時にPAINTSをオーバーライドすることはできません。

Guilt by Association

もしBANDIT(あるいはHOSTILE)と宣言されていたグループが2つあるいは複数のグループに分離した場合、分離後のグループはどれもBANDIT(あるいはHOSTILE)とされます。

もしBOGEYと宣言されていたグループが2つあるいは複数のグループあるいはアームに分離したのち、分離後のグループがBANDIT(あるいはHOSTILE)と宣言された場合、宣言はそのグループ/アーム/コンタクトのみに適用されます。もしグループ同士が合流した場合、合流後の分離までトラッキングが維持されない限り、IDは最も制限の高いID(BOGEYあるいはSPADEなど)に変更されます。

もしトラッキングが維持できずにIDが一時的なものに変更された場合、IDマトリクスをもう一度照合しなければいけません。

このメソッドはグループ/アーム/コンタクトが一つあるいは複数のレーダーでトラッキング維持されていなければいけません。GCI/AWACSの視点では、20秒以上目標がフェードしなければ連続したトラッキングであるとされます。

BVR

ミサイルの射程

発射象限による射程の変化

ミサイルの射程は発射母機から見た目標とのアスペクトに応じて変化します。

もし目標と向き合った状態で発射するなら、ミサイルはより遠くから発射しても命中できるでしょう。ミサイルが飛翔している間に目標もミサイルへ接近するため、最終的に命中するまでにミサイルが飛ばなければいけない距離は、ミサイル発射時の目標までの距離より圧倒的に縮まります。

逆にもし反対方向へ逃げている目標へ背後からミサイルを発射するなら、ミサイルはより近くから発射しなければ命中しません。ミサイルが飛翔している間に目標はミサイルから遠ざかるため、命中するまでにミサイルが飛ばなければいけない距離は、ミサイル発射時の目標までの距離より格段に伸びるからです。

ミサイルは通常”No Escape Zone”と呼ばれる必中距離を持っています。これは発射時の高度や発射母機の速度などによって変化します。もし目標をこのゾーンに捉えた状態でミサイルが発射されたなら、ミサイルは目標に命中するための力学的エネルギーを持ちます。

NEZの外でファイターがミサイルを自分に向かって飛行している目標に向けて発射したとします。そのまま目標が直進を続けたなら目標はNEZに入り、ミサイルは目標に命中するでしょう。ではミサイル発射後に目標が反対方向へ旋回したらどうなるでしょう?ミサイルはNEZより遠くの目標に向けて飛ばなければいけなくなり、飛翔中に速度・高度といったエネルギーを失い、命中は期待できません。

次の図は一般的なミサイルの速度変化のグラフです。ミサイルは発射後にロケット燃料を燃焼させながら加速します。燃料が切れたら滑空しながら目標へ向けて飛翔することになり、その間速度を失い続けます。

ミサイルは旋回性能を発揮するために速度を必要とします、航空機と同じように高Gで素早く旋回するほど素早く速度を失い、速度を失うほど旋回の素早さは下がっていくでしょう。エネルギーを失うほどミサイルの命中可能性は下がっていきます。

結論として、ミサイルは発射された後の回避機動次第で回避することが出来ます。そして回避機動とは発射後の敵機とのアスペクトを変化させることです。最も確実にミサイルを回避したいのであれば、敵機に対して反転して、なるべく高い速度で逃げましょう。

タクティクス

Wall

横並びの隊形で敵と交戦します。

Grinde

縦並びのトレイルフォーメーションで敵と交戦します。通常はPUMP指示と同時に片方のエレメントが分離して反転し、一定の距離がリードエレメントとの間に設けられた時点で再び反転を行うことでGrinde隊形に移行します。

フロー

ブレビティ

リーダーは以下のフローのいずれかを決定してBVRに突入します。

Skate

Launch-and-Leaveタクティクスで敵機と交戦しDORまでにOUTします。

Short Skate

Launch-and-Leaveタクティクスで敵と交戦しMARまでにOUTします。

Banzai

Launch-and-Decideタクティクスで敵と交戦します。

用語

Launch-and-Leave

ミサイルを発射(Launch)後、反転(Leave)して敵から逃げます(例えば方位360に位置する敵機と向き合っていたならば、180度反転して方位180度に向けて逃げる)。

ミサイルを発射後の反転を"OUT"と無線でコールします。反転時に右旋回と左旋回どちらでOUTするかエレメントリードがウィングマンに指示を出します。

Viper1 "1&2 OUT LEFT Flow 180"

1番機と2番機で左旋回で反転し方位180度へ機首を向けよ

Launch-and-Leave後に状況が許せば再び反転して敵へ向き直ります(リコミット)、この反転を"IN"とコールします。

Viper1 "1&2 IN RIGHT Flow 360"

1番機と2番機で右旋回で反転し方位360度へ機首を向けよ

OUT後の状況がINを許さない場合(敵機にハードスパイクされている等)は、編隊を左右に分離してStaggerBack等の防御機動を実行します。

Viper1 "1&2 Stagger Back 2 FLow 135 1 Flow 225"

1番機と2番機でStagger Backを行う。2番機は方位135度へ機首を向けよ、1番機は方位225度へ機首を向ける。

Launch-and-Decide

ミサイルを発射後、Winning/Losingに従い、MARを超えて敵とマージ(ドッグファイトに突入)するか、アボートするかを決定(Decide)します。敵機にスパイクされていなければWinningとしてマージに向かいます。スパイクされていればLosingとしてアボートします。スパイクされたもののMARまでにミサイルを発射できていればNeutralですがマージには向かえません。

タイムライン

次の基準で定義された敵グループとの距離に応じてBVRフローを実行します。

参考値としてAA-10を装備する敵機に対する各レンジの値を記載しています(現実のデータ)。

(LB = Long Burn: AA-10A/B SB = Short Burn: AA-10C/D)

Pump

LB & SB: 45 to 55 nm

Grinderタクティクスを開始する合図。DORが最低のポンプ開始レンジとなる。

Viper1 "1&2 Pump Left"

1番機と2番機は左旋回でポンプする。

Meld

45 nm

レーダーによるAORサーチ(リードが高度20k以下を捜索し、ウィングマンが20k以上を捜索する)を取りやめピクチャーに対するターゲティングを行う距離。

MTR (Minimum Targeting Range)

LB: 25 nmSB: 20 nm

この距離までに各エレメントリードがターゲティングあるいはグループ情報のシェアを行わなければいけないとされるレンジ。あるいはリーダーがこの距離までにウィングマンにどの目標をターゲティングするか指示しなければいけない距離。

また、可能であれば各エレメントリードはウィングマンにソートを指示します。

Viper1 "Target Two Groups West and East. Flight SHORT SKATE. 3&4 Target East Group 1&2 Pump Left"

Viper3 "Targeted"

Viper3 "4 Sort West Group Western"

Viper4 "Sorted"

TD (Targeting Depth)

LB: 20 nm (Launch and Decide 時), 5 nm (Launch and Leave 時)SB: 15 nm (Launch and Decide時), 5 nm (Launch and Leave 時)

フライトメンバーがターゲティングを行わなければいけなくなる最も近いグループからの最大距離、この距離以遠のグループに対してはC2(Command and Control: AWACS/AEWやGCIなど)がターゲティングの責任を負う。TDを超えたターゲットにターゲティングを行うとリーディングエッジ(最も近いグループ)との距離がMARを割る危険性が生じる

SD (Shot Depth)

LB: L&L= 5 nm, L&D= 20 nmSB: L&L= 5 nm, L&D= 15 nm

これからマージするグループとその次に最も近いグループとの距離の前後方向成分の長さ

FR (Factor Range)

LB: 20 nm (L&D)SB: 15 nm (L&D)

これからマージするグループとその次に最も近いグループとの距離として許される最低の長さ。この距離より遠くのグループはマージ中の機体に干渉できない。FRが十分にあれば交戦したターゲッテッドグループを撃墜後に次のグループからテイルアスペクトでエグレスして、そのグループに対するSTERN WEZの外側に留まることが出来る。

MAR (Minimum Abort Range)

LB: 13 +/- 4 nmSB: 10 +/- 2 nm

標準的なアボートを実行できるまでの距離。標準的なアボートとはアフターバーナーを焚いた状態での5G維持旋回によるスライス(斜め下旋回)でテイルアスペクト(敵に背を向ける状態)に移行すること。MARまでにアボートを実行すれば敵機の初段を回避でき、脅威に対するWEZの外側に自機を置くことが出来る。

MARはクランクしない敵機のFLO(First Launch Opportunity)ショットを元に換算されます。つまり敵機と自分が向かい合って直進し、敵機がミサイルを発射したとき、そのミサイルが自機に命中する瞬間の自分と敵機の距離をF-POLEと呼びますが、このF-POLEに対して反転に使用する旋回半径等を足した数がMARとなります。

例:お互い400kt 20,000ftの条件(FalconBMS 4.34における検証、10000ft変化ごとにF-POLEは+/-2nmされる)

AMRAAM のRAERO射程(37nm)発射時の F-POLE: 14nm

F-16の旋回半径: 1nm

マージン: 1nm

MAR = 14 + 1 + 1 = 16 nm

例:お互い400kt 20,000ftの条件(DCS World 2.5.5における検証)

AMRAAM のRMAX1射程(18nm)発射時の F-POLE: 8nm

F-16の旋回半径: 1nm

マージン: 1nm

MAR = 8 + 1 + 1 = 10 nm

MARはそのグループとの最初の交戦時にのみ遵守すれば問題ありません。なぜならLaunch-and-Leave後のリコミット時にはお互いにより近い距離からミサイルを発射することとなり、F-POLEが縮まるからです。経験則として、リコミット後の交戦においてはStern Wezに反転時の旋回半径と敵機の接近距離を足した値を最低の回避距離と決めてアボートを実行すれば大抵の敵の攻撃は回避できます。

DOR (Desired Out Range)

LB: 25 nmSB: 20 nm

ファイターのOUT(反転)機動が既に発射されたあるいはこれから発射される敵機からのあらゆるミサイルを回避し、Launch-and-Decideタクティクスでリコミットするまでに十分な時間を設けることのできるようになるときの最も近いグループまでの距離。つまり、この距離までにOUTすれば次のINでLaunch-and-Decideを実行できます。

※DCS World 2.5.5ではミサイルの最大射程とF-POLE(およびそこから換算されるMAR)が近すぎるので概念として存在しません。

TR (Transition Range)

LB: 32 nmSB: 28 nm

この距離までにAMRAAMを発射すればDORまでにAIM-120のレーダーが機動し発射母機がOUT(反転)できる最低の距離。(SHORT SKATE時にはファイターがMARまでにOUTしなければいけないため該当しない)

Stern WEZ

LB: 9 +/- 3 nmSB: 5 +/- 2 nm

後方象限からミサイルを発射された場合に命中が期待される距離。

FalconBMS 4.34のAMRAAMであればDLZのRPIに相当する距離がStern WEZとなり、自機・目標共に400kt 20000ftであれば11nmがおおよそのStern WEZとなります(高度の変化に比例して10000ftごとに+/-2nmの変化があるでしょう)。

DCS World 2.5.5のAMRAAMであればF-16のDLZのRMAX2に相当する距離がStern WEZとなり、自機・目標共に400kt20000ftであれば8nmがおおよそのStern WEZとなります。

Launch-and-Leave時のリコミット以降はこれに反転時の旋回半径と敵機の接近距離を足した値を最低の解飛距離としてアボートを実行すれば大抵の敵の攻撃は回避できます。

DR (Decision Range)

LB: 15 +/- 4 nmSB: 12 +/- 2 nm

ノッチ機動(脅威に対するビーム機動)を行い、15秒の後にスパイクされていればアボートするか、ネイキッドであればマージすることを選べる、最低の距離。DRでのノッチは敵機から発射されたミサイルを回避し敵機から自機へのSTERN WEZの外側に自機を置く。

Stern WEZに15秒間の敵機の接近距離を足せばDRとなります。

例:(FalconBMS 4.34における検証、20000ft 敵機0.9machで接近)

AMRAAMのStern WEZ: 11nm

15秒間の敵機の接近距離: 3nm

マージン: 1nm

DR = 11 + 3 + 1 = 15nm

※DCS World 2.5.5ではノッチ機動でAMRAAMのレーダーが目標を捉えられなくなり、追尾を諦めるので検証不可。

防御機動

OUT後にバックレンジ(背後にいる敵との距離)がStern WEZ相当まで縮まりINが行えない場合の戦術です。

Greaseback

inside stern WEZ only

エレメント内で片方あるいは両方のファイターがスパイクを受け、選択肢がないとき、デコイを射出する。

Staggerback

Outside Sternwez (13)/inside MAR+5 (17)

スパイクされたファイターはピッチバック可能になるまで逃げ続け、ターゲティングを敵から外されたファイターはピッチバック(敵機に向きなおす)からのDelouseを行う。

実行前に編隊を左右に分離することで敵にどちらか片方のみを追うように仕向け、その後Stagger Backを行うと効果的です。

Notchback

Outside sternwez (13)/inside MAR+5 (17)

スパイクを受けているがCOLD(敵機に対して反転した状態)で逃げ続けることがなんらかの理由(侵入させてはいけないエリアに到達するなど)で出来ないとき、ノッチを行う。

Delouse

outside stern WEZ/inside MAR +5

逃げているエレメントあるいはファイターのために、別のエレメントあるいはファイターが背後のターゲットにリコミットする。

BVR全体の流れ

ピクチャーへのコミット

ピクチャーは複数のグループを含みます。AWACSはファイターからピクチャーをリクエストされた場合、周辺のピクチャーをラベリングして伝えます。

Viper1 "SkyEye, Viper1, Request Picture"

SkyEye "Viper1, SkeEye, Picture is multiple Group, North Group Bullseye 360 30nm 15 thousand track South. East Group Bullseye 090 45nm Track West."

ファイターはどのピクチャーへコミットするか決定します。

Viper1 "Viper1 commit North Picture"

グループのラベリング

ピクチャーをレーダーで捉えることが出来たら、グループのラベリングを行います。

(通常はC2がラベリングを行いますが、DCS/BMSではリーダーが行うことになるでしょう)

Viper1 "Target Two Groups East and West Azimuth 10"

グループの定義

グループとは3nm以内の前後あるいは横に開いた機体同士の集団を指します。

フローの決定

リーダーは戦闘のフローを決定します。

・どのように対処するか(SKATE/SHORT SKATE/BANZAI)

Viper1 "Flight SHORT SKATE"

ターゲティングとソーティング

MTRまでの間にターゲティングとソーティングを完了しましょう

ターゲティング

ターゲティングとは各機がどのグループを目標とするかアサインするプロセスです。グループをターゲットしたファイターはそのグループを"own"する"owner"となります。もし他のファイターがownerを助けるため同グループ内でソートを行った場合、そのファイターはグループを"share"する"sharer"と呼ばれます。

Viper1: "Viper 1&2 target East Group, Viper 3&4 target West Group."

Viper2: "2 Targeted East Group"

Viper3: "3 Targeted West Group"

Viper4: "4 Targeted West Group"

ソーティング

ソーティングとはグループ内のピクチャーを決定し、コンタクトへのトラックを確立することです。つまりグループ内のターゲット割り振りを行います。そしてもし可能であればowner/sharerを割り当てます。基本的には各エレメントの僚機(2と4番機)がownerとなります。

Viper1: "2 Sort East Group Leader"

Viper2: "2 Sorted"

Viper3: "4 Sort West Group Trailer"

Viper4: "4 Sorted"

赤がHOSTILE、黄色がBOGEY、矢印上の数字がターゲティング・ソーティングを行うフライトの機番を意味する。

インナーグループのラベリング

ソートを正しく行うためにはグループ内の各目標に対するラベリングを行います。

例:

Lead Group Leader

リードグループのリーダー

Lead Group Trailer

リードグループの僚機

Trail Group Leader

トレイルグループのリーダー

Trail Group Trailer

トレイルグループの僚機

North Group Nothern

北グループの北側の機体

North Group Southern

北グループの南側の機体

North Group Leader

北グループのリーダー

North Group Trailer

北グループの僚機

など

攻撃

ミサイル発射後、攻撃したターゲットのブルズアイをコールし、要すればクランクを行います。

ミサイルのシーカーがアクティブになったらHuskyをコールしましょう。HuskyかDOR/MARに到達したら旋回方向を指示してOUTしてください。

Viper1 "Fox3 East Trailer Bullseye 5 30 15 thousand, 1&2 Crank Right"

Viper2 "Fox3 East Leader Bullseye 5 29 15 thousand"

Viper3 "Fox3 West Trailer Bullseye 355 30 15 thousand 3&4 Crank Left"

Viper4 "Fox3 West Leader Bullseye 355 29 15 thousand"

Viper1 "Husky"

Viper2 "Trashed"

Viper1 "1&2 Out Right"

Viper2 "2"

Viper3 "Husky"

Viper4 "Husky"

Viper3 "3&4 Out Left"

Viper4 "4"

離脱とリコミット

OUT後は要すれば脅威の状況(お互いのRWRの反応など)を伝え合うとよいでしょう。

Viper1 "1 Spike 29 360"

Viper2 "2 Spike 29 360"

Viper3 "3 Nails 29 360"

Viper4 "4 Naked"

脅威が弱まるか、ミサイルがタイムアウト(着弾予想時間に到達)するか、あるいは一定時間以上OUTを実行した後に再反転(IN)してリコミットします。または片方がスパイクされているがもう片方のエレメントがスパイクされていないようなとき、スパイクされていない側がINしてもう片方のエレメントをロックしているであろう敵機に攻撃をしかけるのも有効です。このような対処をDelouseと呼びます。

Viper1 "3&4 Delouse 1&2 Short Skate"

Viper3 "3&4 IN Right"

Viper4 "4"

リコミット以降

リコミット後のピクチャーで敵の隊形が変化しているのを確認した場合は、Original West/East Group など現在の隊形にかかわらず元のグループのラベリング名をコールするか、あるいはNew Pictureをコールしてラベリングをし直します。彼我との距離など状況に応じてフローを更新しても構いません。

Viper3 "New Picture Target 2 Group Lead and Trailer, Lead Group Over Bullseye Tracking 180 3&4 Target Lead Group Request Update Banzai"

Viper1 "3&4 Update Banzai"

Viper3 "4 Sort Leader"

Viper4 "4 Sorted"

Viper3 "3 Fox3 Lead Group Leader Bullseye 180 3 13 thousand"

Viper4 "4 Fox3 Lead Group Trailer Bullseye 180 2 12 thousand"

Delouse後、スパイクの切れたエレメントはリコミットします。

Viper1 "1 Naked"

Viper2 "2 Naked"

Viper1 "1&2 In Right"

Viper2 "2"

マージ

Banzaiを決断した場合、DRにてエレメントを左右に分離し、敵機にどちらか片方のみを狙わせるようにして、スパイクされていない方がマージ、スパイクされている方がアボートするようにすれば安全に突入できます。

Viper3 "3&4 DR Left and Right. 3 Notching Left"

Viper4 "4 Notching Right"

Viper3 "Naked"

Viper4 "Spike"

Viper3 "3 In"

Viper4 "4 Out"

編隊分離

後方からの敵機との距離を詰められInすればMARを割ってしまうような場合も、エレメントを左右に分離し、敵機にどちらか片方のみを狙わせるようにして、スパイクされていない方がマージ、スパイクされている方がアボートするようにすれば安全にDelouseできます。

Viper1 "1 Spike 360"

Viper2 "2 Spike 360"

Viper1 "1&2 StaggerBack 2 Right 210 1 Left 150"

Viper2 "2 Right 210"

Viper1 "1 Spike 350"

Viper2 "2 Naked"

Viper1 "2 in left"

Viper2 "2 in"