タクティカル・ターン

フォーメーション維持の基礎

ここではタクティカル・フォーメーションを維持しながら機動を行うための方法を紹介します。

ポジションの維持

タクティカル・フォーメーション時の編隊を維持するのに必要な物理法則はパレード(フィンガーチップ)を組むときのそれと違いはありません。しかし、接近した編隊を組んでいるときより周りの機体との距離の差が大きくなります。編隊を維持する上で、リードの機体を見て自分が並行に飛べているか確認できる能力を鍛えましょう。

ポジションの修正

編隊の位置関係は次の優先度で維持します。

  1. ベアリングライン(リードから見た自機の方位)

  2. 横方向の距離

  3. 高度

機速でベアリングをコントロールし、自機のヘディングで距離をコントロールし、パワーで高度をコントロールします。

フォーメーション維持はエネルギー変換を利用するいい機会です。エネルギー変換では高度を速度に変換したり、速度を高度に変換します。スムーズな調整を心がけましょう。

遅れを取り戻す

リードから遅れている場合には、高度(位置エネルギー)を速度(運動エネルギー)に変換することで修正を行います。もしリードから前後方向に遅れていることに気が付いたら、機種を下げて速度を稼ぎ、正しいベアリングラインにまで追いつきます。ベアリングラインにたどり着いたらスムーズに引き上げを行い元の高度に戻りましょう。

追い越しを修正する

追い越しを修正するには様々な方法があります。例として次のような方法を上げますので、これをもとに自分なりのやり方を組み立ててみてください。

少々追い越し気味なのであれば、水平に旋回して長い距離を飛ぶか、上昇して機速を下げることができます。水平旋回ではパワーを足す必要があるため燃料を消費します。

上昇して機速を下げるとより燃料を効率的に節約できます。上昇して速度が下がるとリードに対して機体が下がっていきますので、適切なベアリングラインに到達する少し前に機首を落として元の高度に戻ります。

大きく追い越している場合は、上昇に水平旋回を組み合わせることが出来ます。

横方向の距離を修正する

機速を足して方位を少しリードに向けるか、反対側に向けることで横方向の距離を修正できます。方位の変更が大きいほど機速も多めに足さなければいけません。

高度を修正する

パワーを足して機速が上がらないように上昇するか、パワーを下げて機速が下がらないように降下します。大きく降下する場合には旋回を併用して運動エネルギーの増加を抑えることもできるでしょう。

チェック・ターン

チェック・ターンは30度以内の方位変更を行う際に用い、リードはバンク30度以下の旋回を行います。

リードは合図を行い、僚機の了承を確認したらチェック・ターンを開始します。

Lead: “Hammer, Check left, 250”

Wing: “Hammer 12, 250”

旋回の内側でチェック・ターンを行う

僚機が旋回の内側に入るチェックターンでは、僚機がリードより大幅に短い距離を飛ぶことになるため、普通に旋回した場合には大幅にリードを追い越してしまいます。そのため、先ほど紹介した追い越し時の位置修正を利用して旋回の終了時に元のフォーメーションを維持できているようにします。

旋回の外側でチェック・ターンを行う

僚機が旋回の外側を回るチェック・ターンでは、僚機はリードより長い距離を飛ぶため、旋回の終了時にリードより遅れた位置に後退してしまいます。これを防ぐため、大きく機首を下げて位置エネルギーを運動エネルギーに変換しつつ旋回します。そして旋回の終了時に機首を上げて元の高度と速度に戻ってください。

シャックル

シャックルは編隊の左右の構成を入れ替えます。二機がお互いの方向へ45度方位を変針し、すれ違うまで飛び続けます。 この際僚機は高度差を設けて衝突を避けなければいけません。シャックルの最中はリードを目視しつづけてください。すれ違いの後に元の方位へ二機が変針すれば、左右の入れ替えが完了します。

シャックルは僚機が隊列に遅れていたり通り過ぎたりしているのを修正するのにも役立ちます。

もし僚機が遅れているのなら、すれ違いのあと早めに方位を元に戻すと、リードに追いつく形になります。もし僚機が大幅に遅れているのであれば、45度より小さめに変針したまま飛び続け、リードに追いついたとき45度の変針を完了するようにします。

もし僚機がやや追い越し気味であれば、方位を戻すまでの時間を長めに飛びます。もし僚機が大幅にリードを追い越しているなら、45度より大きめに変針し、リードが追いついたときに45度の変針へ戻します。

シャックルは共同で行う機動なので、リードの意図をくみ取らずに盲目的に機動を開始してはいけません。

オフヘディング・シャックル

リードの合図で30度以内の編隊の変針をオフ・ヘディング・シャックルで行います。片方の機体は大きめに(30度ターンの予定であれば75度)もう片方は小さめに(30度ターンの予定であれば15度)変針を行い、目標の方位を真ん中に置くようにします。

まっすぐ飛ぶときのシャックルとは違い、短めにはじめの変針を行う方が先に相手の進路を通り過ぎます。すれ違いの後は肩越しにリードを目視してください。リーダーが自分の真横から、自分がこれから旋回しなおさなければいけない角度と同じだけ後ろに見えたときが、戻しの旋回を始めるのにちょうどよいタイミングです。

クルーズ・ターン

クルーズ・ターンはセクションが90度の変針を行う際に用います。

リードは無線で合図を行い、僚機が了承の返答をしたら30度バンクの旋回を開始します。

“Hammer, Right/Left 90”

“Hammer 12”

旋回の内側に入るクルーズ・ターン

僚機がクルーズ・ターンの内側に入る場合は、僚機はリードの反対側に10-20度ほどの緩い旋回を開始し、リードの前に出ます。リードがあなたの後方下側を通過するときに、僚機はバンク角を45度に増します。リードが通過を終え自分の後方の反対側に見えたら機首を下げ、ベアリングラインを調節し、調整を終えたら高度を元に戻すようにします。

旋回の外側につくクルーズ・ターン

旋回の外側でクルーズ・ターンを行うときは、内側で行う時の反対のことを行います。45-60度ほどの深いバンク角をとり、機種を下げて加速し、リードの後方を通ります。リードの軌跡を通過するさいにバンク角をおおよそ10-20度に緩め、機種を上げ元の高度に戻ります。

クルーズ・ターン時の修正

リードから見た自機の方位をよく確認するのがコツです。リードのロールアウトまでにベアリングラインに到達しなさそうであれば機首下げをして加速し追いつきます。リードのロールアウトまでにはやくベアリングラインにたどり着きそうであれば機首を上げ速度を落とし後退します。

タック・ターン

タック・ターンはセクションが90度の変針を行う際に使用し、終了後は編隊の左右は入れ替わります。タックターンは所定の迎え角で行われ、必要なだけパワーを足し速度を維持し、脅威に対抗するため早急に旋回を行います。

タック・ターンはリードの合図と、僚機の了承によって開始されます。

Lead: “Hammer, Tac left”

Wing: “Hammer 12”

旋回の内側でタック・ターンする

リードの旋回の開始後も僚機はまっすぐ飛び続けます。リードが自分の後方を通り過ぎようとするときに旋回を開始し、旋回を終えたときには編隊が左右入れ替わっているようにします。

もし旋回の開始時に編隊が崩れているなら、旋回のタイミングを調整することで隊列を修正することができます。

もしリードを追い越しているようなら、僚機は旋回を早めに行うことでタック・ターンの終了時に僚機とのベアリングラインを後退することができます。ただし横方向の距離が縮まるため、旋回後に修正を行ってください。

もしリードから遅れているようなら、両機は旋回を遅めに行うことでック・ターンの終了時に僚機とのベアリングラインを前進することができます。ただし横方向の距離が延びてしまうので、旋回の終了後に修正を行います。

旋回の外側でタック・ターンする

リードに向けて旋回を開始し、後方を通るようにします。リードはあなたが自分の後ろを通り過ぎるときに旋回を開始し、編隊を入れ替えます。

インプレース・ターン

インプレース・ターンは交戦時に方位を180度変針し、編隊の左右を入れ替えます。どちらの機体も同時に旋回を開始し終えなければいけません。

このターンは後方象限から敵機が現れた場合に使用します。リードの合図に僚機が了承した後ターンを開始します。

Lead: “Hammer, In-Place right”

Wing: “Hammer 12”

旋回の内側でインプレース・ターンを行う

合図の後ただちにリーダーのいない方向へ旋回を開始し、速度を維持できるようにパワーを足します。インプレース・ターンでは旋回中のミスが大きな編隊のズレとなって表れやすいです。旋回の最中にリードとの距離やお互いの見えるべき方位を修正してください。

旋回の外側でインプレース・ターンを行う

合図の後ただちにリーダーのいる方向へ旋回を開始し、速度を維持できるようにパワーを足します。90度の変針をしたところでリードとの旋回率が一致しているか確認してください。もしリードより旋回率が小さかったり、リードの旋回の外側にいる場合は、ターンの後半を修正してください。もしリードより旋回が大きかったり、リードの旋回の内側に入ってしまっている場合は、旋回を緩める必要があります。後半のターンで旋回の修正を行うことで、旋回終了時の真横方向の距離が変わってしまうことに気を付けましょう。安全のためには、リードの位置を目視するよう旋回の際に機首下げをすると良いでしょう。

クロス・ターン

クロス・ターンではお互いの方向に向かってターンを行い180度の変針を行います。編隊の左右は入れ替わりません。衝突をさけるため無線での通信を欠かさないようにしてください。

リードは無線でクロス・ターンの開始を告げます。

"Hammer, Cross Turn, Cross Turn, Hammer 11 low.”

僚機はターンのさい高度の高い方を飛びます。両省の合図は

“Hammer 12 high.”

となるでしょう。この合図の"Hammer"の部分で僚機は所定のAOAでリードに向けてハードターンを開始します。リードは同様に僚機に向けてハードターンを行います。90度ほど変針したところでお互いにすれ違い、180度変針を完了します。ハードターンのさい、お互いに機首を少し下げますが、衝突を回避するため僚機はリードより高い高度ですれ違います。

すれ違いのあと、僚機はバンクを強めつつもAOAを維持し、機種が下がるスライスターンで機速を増していきます。セクションが0.8-1.0マイルのセパレーションからクロス・ターンを開始したのであれば、二機はそれより広いセパレーションで180度変針を終えることになります。僚機は180度変針後もバンクを維持したまま編隊の内側に旋回し真横方向の距離を修正したあと、方位と機速を元に戻します。

もし僚機はクロス・ターンの最中にブラインド(リードを見失う)したのであれば、180度変針のみを行い真横方向の修正は行いません。リードを探して目視できたら真横方向を調節してください。

基本的に、僚機はリードのベアリングラインからやや遅れた位置につきます。なので真横方向の調節のあとに前後方向の調節も必要になります。