空力特性

飛行機にかかる4つの力

飛行中の航空機には4つの力がかかります。それは揚力、抗力、重力、そして推力です。揚力は空力中心を作用点とします。推力と抗力は重心を作用点としますが、これはおおよその話です。重力は常に重心を作用点とします。等速度で飛行する場合には推力と抗力が釣り合っており、等高度を維持して飛ぶときには揚力と重力が釣り合います。

揚力の原理

航空機の翼型(翼の断面)の後端は、翼の後ろに渦を発生させ、この渦の反作用で翼の周りには反対向きの渦を生みます(クッタ・ジューコフスキーの定理)。

この反作用によって生まれる渦のベクトルと、翼の正面から流れる気流のベクトルを合成すると、翼の上側を流れる空気は速く、下側を流れる空気は遅くなります。

流れの速い上側は気圧が低くなり、流れの遅い下側は気圧が高くなることから、翼は上側へ吸い上げられます(ベルヌーイの定理)。これが揚力となります。

翼の前縁と後縁を結んだ線(翼弦線)と、機体の進行方向(気流の流れる方向の逆)との角度差を迎え角(AOA = Angle of Attack)と呼び、迎え角が大きいほど揚力は大きく、迎え角が小さいほど揚力は小さくなります。

迎え角は同時に翼の抵抗(抗力)も増大させ、速度を奪っていきます。

迎え角が一定を超えると翼の表面から空気が剥がれ、揚力が発生しなくなります。

これを失速と言います。

揚力の計算

翼に発生する揚力は次の式で表されます。

L = ρsv2CL / 2

    • L:揚力

    • ρ:空気密度

    • s:翼面積

    • v:対気速度

    • CL:揚力係数

sはフラップを操作しない限り常に一定です。CLは迎え角に応じて上昇するものの、失速によってある地点から下降に転じます。

揚力(CL)とAOAの関係

m = 機体の質量としたとき、水平飛行に必要な揚力は L = mg (gは重力加速度)から、重量が重たいほど大きい揚力を高度の維持に必要とします。

例えば同じ迎え角で飛行した場合でも重量が重たいほど、速度も大きくなければ高度を維持できなくなります。

水平飛行時の速度・高度維持

水平飛行を行うには常にL:揚力を一定に保つ必要があります。普段の操縦でパイロットが揚力式に与えられる変化は、スロットル操作によるv:速度の変化と、ピッチ操作による迎え角の変化を通したCL:揚力係数の操作です。

ですからv:速度が落ちたときはピッチを上げることでCL:揚力係数を上げ、速度が上がるときはピッチを下げることで揚力係数を下げます。

ピッチの操作をおこなうときに注意しなければいけないのが抗力です。

迎え角に比例して増大する抗力によって速度が下がるため、ピッチを上げるときはスロットルを開き、速度が一定に保たれるようにしなければいけません。

ピッチを下げる場合には逆にスロットルを絞ることで速度が上昇しないようにします。

スロットルの操作を行う時には、ピッチに注意しなければいけません。

増速するときにはピッチを下げ揚力係数を下げることで揚力を一定に保ち、高度の変化を抑えます。

減速する場合はピッチを上げることで揚力係数を上げ、速度が落ちた分を補い揚力を一定に保ちます。

旋回時の高度・速度維持

旋回を行う際は、旋回したい方向へロールしてバンク角を発生させます。

揚力が旋回したい方向を向き、その横ベクトルは旋回のための力として使われます。

揚力は翼に対して垂直に発生しています。

ですから旋回のためにバンクを行った際には上方向へのベクトルが重力に対抗できる1G分の力となるよう、翼の揚力を増大させなければ高度が維持できません。

旋回Gの計算

水平旋回に必要な旋回G(=翼に必要な揚力の大きさ)は次の式で計算することができます。

旋回G = 1 / cos 旋回角

旋回バンク 旋回G

    • 10° 1.015 G

    • 20° 1.06 G

    • 30° 1.15 G

    • 40° 1.30 G

    • 50° 1.55 G

    • 60° 2.00 G

    • 70° 2.92 G

    • 80° 5.76 G


旋回Gを維持するためには旋回中にスティックを手前に引き、ピッチ上昇モーメントを発生させます。

迎え角の増大により抗力が発生し、旋回中は速度が落ちていきます。

スロットルを旋回に際して開くことで速度を維持しましょう。

反作用として機体には揚力と同じだけの遠心力が働きます、この加重によって機体はダメージを受けます。

兵装や燃料の搭載量に応じて最大制限Gは変化しますので、飛行中は現在の自機の重量と旋回Gに注意を払う必要があります。

誘導抗力の計算

誘導抗力は次の式で計算できます。

Cdi = (CL)2 / πAR

      • Cdi誘導抗力係数

      • CL:揚力係数

      • AR:翼弦線にたいする翼幅の比率

水平飛行時に機速が下がるのに対して、AOAを上げて高度を維持する場合、抗力も増加します。揚力係数が上がるにつれて、誘導抗力係数は揚力の自乗で上昇します。

寄生抗力

寄生抗力は機体の形状や翼に吊るした武装、フラップやギアによって生じます。また、寄生抵抗はベロシティ(速度)の影響を大いに受けます。機速があがるにつれて、寄生抵抗は速度の自乗で上昇していきます。揚力係数を無視するなら、2000ポンドの推力で200ノットで飛行できる機体は、400ノットで飛行するのに8000ポンドの推力を必要とします。

合計の抵抗

誘導抵抗と寄生抵抗を足し合わせたとき、ベロシティあるいはAOAに対する合計抗力のカーブはUの字型になります。このUの字型の谷の部分で、機体は最も早く上昇でき、最も早く加速でき、最も効率的に滑空できます。

1Gで飛行時の抗力とAOA