仕事で鳥取県米子市を訪れた。米子は美保湾と中海を隔てる弓ヶ(夜見ヶ)浜半島のちょうど根元にある。 弓ヶ浜半島の先端、中海と美保湾の接合部には古くからの日本海海運の要衝である境港がある。
江戸時代、日本の海運が日本海中心であった頃は大変に栄えたであろうことが偲ばれる。もちろん、現在も地域の商業の中心地であることは変りない。岡山から”スーパーやくも”で2時間、JR米子駅に降り立つ。米子駅を中心に広がる米子市内はよく整備されていて清々しい。駅前から商工会議所方向にまっすぐ伸びた歩道の所々に星座が埋め込まれている。多分、夜になると点灯されるのだろう。洒落た仕掛けだ。
仕事の翌日、境港の近くで「山陰・夢みなと博覧会」が行われていたので行くことにした。駅前から
バスに乗って約35分。広々とした弓ヶ浜半島を境港方面に向かって走る。進行方向左側には中海が見え隠れする。しばらく行くと米子空港がある。この飛行場は航空自衛隊美保駐屯地に同居しており、滑走路には迷彩色の国産C1輸送機が数機駐機していた。更に行くと博覧会会場だ。美保湾に面した広大な一角が会場になっている。出張の合間での見学であるので開場一番の9:30に入って1時間ほど見て回った。大手企業のパビリオンをはじめ、地域物産の紹介・即売コーナーなどがある。娯楽設備やグルメコーナーなどもあり、家族連れが1日ゆっくり見て回るのにはよい。駆け足で見て回り、10:30にはもう退場したのだが、出口がわからない。案内係のお嬢さんに教えてもらったのだが、「もうお帰りですか」といわれてしまった。事情を話すと丁寧に会場を訪れてくれたお礼を述べられた。バスに乗って米子駅に向かう。左手には青い美保湾に面して松林と白砂の弓ヶ浜が延々と続く。進行方向11時の方向には伯耆大山(ほうきだいせん)の雄大な山麓が見える。上半分は雲に隠れて見えない。雪を戴いた大山の写真は富士山に似ている。大変に姿のよい山だ。大山に見とれているうちにバスはいつしか市内に入っていた。
JR米子駅で帰りの車中で食べる昼食を買い求めた。ご当地名物はいろいろあるようだが、昨日、米子駅に降り立ったときから目を付けていた「吾左衛門寿し」を買った。京都名物・鯖寿司と同じである。酢飯に脂ののった塩鯖の半身を乗せ、厚い昆布で巻いてある。セロファンの封を切り、竹皮を丁寧に開くとぷ~んと酢の匂いと鯖と昆布の渾然としたなんともいえぬ香りが湧き立つ。わたしはこの香りが好きだ。一口食べると鯖の旨みが口の中に広がる。大変に美味しい。米子の観光もよかったが、帰りの車中で食べたこの「吾左衛門寿し」が決め手となった。
平成9年9月19日 鈴木松蔭
※弓ヶ浜の写真は「広報よなご」から引用させていただきました。