石坂研連絡網を通して訃報に接しました。
内藤先生のご冥福をお祈り致します。
内藤先生を初めてお見かけしたのは学部時代の講義 (1987年) でしたが、初めて直接お話しをしたのは大学会館の前でした。その日 「ドクトル・ジバゴ」 の上映があり出掛けてゆくと、会館前のコロセウム様の階段に内藤先生が立っていました。挨拶したら「留学時代にアメリカで観たので、懐かしくてまた観に来ました」「今ね、ワイフが来るのを待っているんです」とのことでした。ワイフ、とおっしゃっていたのが印象に残っています。
3年次の研究室選びの折りに内藤先生をオフィスに訪ね、「そういう興味なら、石坂先生の方がよいかもしれないですよ」 と言われました。それで石坂先生にも相談にゆき、結局石坂研で面倒をみて頂くこととなりました。後で内藤先生へ「石坂研にゆくことにしました」と報告とお礼とに行ったら「そうですか、よかったですね」と言われました。丁寧に話を聞いて下さったこの時の経験から、学生の質問や相談にはなるべく辛抱強く対応するよう心掛けています。
その後 休憩室の小さな本棚にぎっしり詰まっていたNational Geographicを、学術誌にしてはあまり関係の無さそうなタイトルと不審に思い引っ張りだして、初めて見る綺麗な写真に独り見入っていたら、部屋に入ってきた内藤先生が「留学中に見つけて、写真が美しいので以来ずっと購読しているんです」とのことでした。それに倣って私も大学院以来ずっと購読しています。
その休憩室で皆にドリップコーヒーを淹れたところ、「いくらなんでも濃過ぎる」 「インスタントの粉末を誤用しなかっただけマシ」 等総スカンを頂いてしまいました。内藤先生は 「こいつは強烈だ、脳に直にガツーンとくる!」 とのことでした (アメリカンが好みだったのでしょうか)。悔し紛れに 「薄く淹れると濃いのが好みの人はどうしようもありませんが、濃い目に挿れておけば薄いのが好みの人はお湯を差せば用が足りると思い、濃いめに淹れました」 と言うと、「お説ごもっとも」 と返されました。
卒研開始前の春休みに生物学類の連中と一緒に西表島に生物採集に行き、その時の標本を一時研究室 (石坂先生オフィス向かい) に置いていました。それを何かの用事で部屋に立ち寄った内藤先生が見つけ、検分されたことがありました。まだラベルを付けていなかったので 「採集地は西表南部です」 と言ったら、「そうでしょうね」 とのことでしたが、どうしてそう分るのかは教えてもらえませんでした。「指定前の天然記念物も含め日本の蝶は全種採集済み(らしい)」 と加藤さんから伺っていた通り、専ら蝶の標本を観察していて、私が必死に集めた甲虫の方にはノーコメントでした。
2020-06-29