学長メッセージ

 新入生の皆さん、高知工科大学へのご入学を心からお祝い申し上げます。

 本学は香美キャンパスと永国寺キャンパスの2キャンパスに広がり、システム工学群、環境理工学群、情報学群、および経済・マネジメント学群の4学群の学士課程と、大学院工学研究科の修士・博士課程の教育を行っています。本学の柱である、工学と経済・マネジメント学は、それぞれ理系・文系に及ぶ学問分野の中でも社会とのかかわりが強く、社会に直接的に貢献する度合いの高い分野です。それだけに、皆さんに対する社会の期待は大きく、それに応えるには大きな努力が必要と思います。しかし、その分貴重な人材として社会に歓迎されるはずです。本学において是非学びを広げ、深めていただき、皆さんの将来を切り開いていただきたいと願っております。

 皆さんの将来を思い浮かべるとき、現在の常識とは相当違ったものになることが予想されます。アメリカでは現在の雇用の半分がコンピューターに取って代わられるという予想が発表されています。また、エネルギーや食糧、自然災害、地球環境などでも、現在とは異なる様々な問題が生じるでしょう。2020年に広がった新型コロナウイルスは、突然に社会生活を一変させました。このようなことを前提にすると、大学で学んだことが将来そのままでは問題の解決に役に立たないかもしれません。現在の型にはまった知識や技術は、社会の形が変わってしまえば使うことができません。したがって、社会の変化にも柔軟に対応できる、皆さんの一生を通して道具となり、武器となる知識や知恵を学ぶ必要があります。それが、いわゆる基礎力というものと思います。

 学問の基礎がしっかりしていれば、その上に様々な問題解決の突破口を構築することができるはずです。公式を丸覚えしたり、単にマニュアルが使えるようになっても、その基礎となる理論や考え方をきっちりと理解しなければ、応用問題に適用することはできません。皆さんには学問の基礎に立ち戻り、様々な知識や技術の成り立ちや仕組みに立ち戻って、深く理解するような学習の習慣を身につけて欲しいと思っています。それには、根気と時間が必要です。その時間が与えられているのが大学です。このような時間は、皆さんがいったん社会に出てしまえば再び得られるものではありません。この与えられた時間に、じっくりと学問に取り組む皆さんの根気を加え、しっかりとした皆さん自身の基礎を築いていただきたいと思っています。

 このために努力は絶対に必要です。しかし同時に、この道のりはとても楽しいものです。知識を天下りで押し付けられるのではなく、自ら納得して理解すること、それにより「わかった」という瞬間の醍醐味を味わいながら、学問の小路を歩んでいくことは、人生の極上の楽しみといえるものです。この楽しみの機会が与えられていること、それこそが大学における皆さんの特権と言えると思います。そして、本学にはそれが実現できる教員と職員、施設と制度が整っています。

 大学時代を有意義に過ごされ、将来に向けての力を養い、自分の人生を見いだせるように、本学の資源を最大限にご活用ください。

学長 磯部 雅彦