地デジの延期可能性(地域限定)と周波数政策

投稿日: Apr 20, 2011 4:37:3 AM

東北3県に限って地デジを延期する検討が総務省内で行われているようです。

災害や復興に関する情報が重要なこの時期に、被災地にまだ十分行き渡らないデジタルに切り替え、NHKテレビ音声をFMラジオで聞くような事もできなくなるのはさすがにタイミングが悪すぎると言う事でしょう。

これに従って、2012年に開始を予定していたモバイルブロードバンドの為の周波数再編にも影響を与えなければ良いのですが。

先日勉強会で「0次事業者」の話をしました。3月末のAPEC TEL43で"Shared Infrastructure"というセッションがあり、限られた資源(インフラ構築投資もそうですが、周波数資源や、アンテナ立地、局舎内のラックスペース)を最大に利用しようとすると、どうしても事業者個別の整備をしていては効率が悪くなるという意識がだんだん増大しているようです。

http://www.apectel43.org.cn/apec/index.jsp

日本からは、有線を想定してNTT局舎内の共同収容の話を総務省さんがお話しされていましたが、無線基地局の共同アンテナ、共同電波塔の話を出す参加国も多く居ました。MVNOも上のレイヤーでの資源共有の一種でもあります。

今の0次レイヤー(物理層、conduit)から競争を想定する縦割り事業モデルは歴史的に成立したものではありますが、700−900MHz帯と言うプレミアム周波数を考えた場合どうしても3社〜5社へ不公平感無く割当をしようとするとLTEでの利用などを考えても効率が著しく悪くなります。

電波割当政策でも、初期のビューティーコンテストモデル(美人投票、審議によって利用者を決める)から、市場モデル(オークション、市場原理で入札により利用者を決める)と変化させるのが最先端の動きであると言うように考える人も多いようですが、私は少し疑問です。

実は、市場モデルとは別に「共有モデル」という考え方も昔から提案されています。コグニティブ無線やConduit事業者による一括運営、MVNOなどがそうした共有モデルの例です。また、FON(http://fon.com/)やFreespotなどの、WiFiによるブロードバンド共有も、そうした動きの一環です。地域内のネットワークであれば、幹線支線という構造化されたルーティングではなく、アドホックな自律分散系の独自のルーティングを作るしくみもあり、これなどは地理的な「場所」の持つ機能の共有と言えるでしょう。

不透明で結果に妥当性を感じにくい「美人投票モデル」は次第に数少なくなっていくのでしょうが、それに変わるモデルは「市場モデル」と同時に「共有モデル」を考えていく必要があるのではないでしょうか?