S14

・概要

1993年10月,6代目シルビアとして登場.ボディサイズは拡大され,3ナンバーとなった.RV人気やボディの大型化等により商業的には芳しくなかったとされる.先代のS13がそこそこ上手くいったのと対照的に,登場時の評価も低かったらしい.S13と同様,グレードは大まかにNAのJ's,Q's,ターボのK'sがある.1996年6月のマイナーチェンジで後期となった.なお中期と呼ばれる過渡期の車両も存在する.前期と後期の違いは一見外装のみだが,それ以外にも随所に細かな変更点がちりばめられている.1998年いっぱいで生産終了し,後継のS15にモデルチェンジした.

・エンジン

〜諸元〜

(出力・トルクの括弧内はオーテックバージョン K's MF-T)

PS13から引き続きSR20を搭載する.可変バルブタイミング機構NVCS(Nissan Valve Timing Control System)が採用されるなど各所改良されている.S13系よりタービンも大径化されており,S13系に流用されることもしばしば.但しS13系とは取り回しが異なる.

オーテックバージョンは1997年10月に登場した受注生産モデルで,通常K'sにはギャレットのタービンが搭載されるのに対し,オーテックバージョンにはIHI製の斜流タービンが搭載される.低回転からトルクが出やすいタービンらしい.その他巨大なリアウイング等専用装備が多数盛り込まれていたが,希少車故あまり縁がないのでここでは詳しくは触れないでおく.

〜S14,S15純正ギャレットタービン〜

S13系がメタルフロータービンであったのに対し、S14では先述の通り大径化され、ボールベアリングに変更された.そのため,S13純正タービンより低回転から立ち上がると評される場合が多い.S14純正タービンの品番は"14411-69F00"(ハイフンより手前はタービンを表す記号であるため,以下ではハイフン以降5桁のみ表記する).一方,S15純正タービンは,S14と共通の"69F00"と,エキゾーストハウジングに隔壁を設けたボールベアリングタービンである"91F00",メタルフローに変更された(真偽は不明)"75F00"の3種類が存在している."91F00"はS15前期,"75F00"はS15後期に搭載されていたらしい.エキゾーストハウジングの隔壁の有無によって"69F00"とそれ以外の見分けはつくので,流用チューンなどを考えているならば覚えておいて損はないだろう.

〜NAスロットル流用〜

S14,S15のスロットルのバタフライバルブ部分の内径はターボ:50mm,NA:60mmであり,ターボグレードにNA用スロットルを流用することで大径化が可能.バタフライバルブまでのテーパーが違うのみなのでポン付けでOK(なおスロットル・サージタンク間のガスケット品番はNA・ターボとも共通).

ちなみにS13系はNA・ターボともスロットル径は同一である.

〜カップリングファン流用〜

R33等のファンを流用すると9枚羽(シルビア純正は7枚羽)となる.S13系,R32等と同じく定番流用チューンのひとつ.

〜前期ラジエター流用〜

S14前期K'sの純正ラジエターはコア厚25mm(2層)であり,S14後期やS15等によく流用される.PS13等にファンシュラウドごと流用されることも.但し前期の後半あたり(所謂中期と呼ばれるあたり)からはS14後期等と同じコア厚15mm(1層)のものが採用されているらしい.

また,同時期でもATとMTでラジエターが違う/コア厚35mmの前期ラジエターが存在する/NAにも厚いものが採用されていた時期がある/オーテックバージョンは厚いものが採用されている…等,ネット上で様々な情報が飛び交っているが,筆者はパーツリスト等を持ち合わせていないのでその真偽は不明である.

~エキマニのスタッドボルト~

日産のエキマニのスタッドボルトは良く折れたり取れたりする。トヨタの3S用スタッドボルトを流用。品番はボルトが90116-10169、ナットが90179-10088。ダブルナットしなくても工具買えば簡単に付けれる。


・駆動系

デフは大雑把にターボ:R200,NA:R180である.これに伴いリアメンバーもターボ,NAで異なる.なおS15は全車R200である.

S14,S15の5速R200車のファイナルは全て4.083.デフに関してはS13HNR32のページに詳しく記載されているのでそちらを参照のこと.

・足周り

S13系と同じF:ストラット,R:マルチリンクの構成であるが,多数変更点があるため,ロアアームやナックル等をS13系等に流用する場合は要注意.

ハブはNA(Q's,J's)が4穴,K'sは5穴.S15は全車5穴で,旧車ホイールを履くためにS14NAのものを流用して4穴化する人もいる.

前後ロアアームのボールジョイントは同一である.ちなみにS13系は前後で異なるのでボールジョイント打ち替えの際は注意.

S15specR用リアメンバーはS14K'sと同形状ながら純正強化品となっている.

・HICAS

HICAS(ハイキャス,High Capacity Actively Controlled Suspension)は日産が開発した量産車初の4輪操舵機構."技術の日産"が誇る(忌まわしき)装備である.R31スカイラインに搭載されたのが始まり.スカイラインにはグレードにより標準装備,シルビア等はオプション装備?であったのか標準車とHICAS搭載車が存在する.S13,180SX,R32,A31セフィーロ,C33ローレルには油圧式,R33以降,S14以降,C34以降には電動式が搭載される.ドリフトする上での存在価値はないとされ,HICASはキャンセルするのが定番である.以前はHICASを撤去,またはキャンセルロッド等の利用で殺した場合構造変更が必要だったが,2015年4月以降,検査項目が改正されHICASキャンセルに関しては構造変更は不要になった.

シルビア系のHICAS搭載車にはS13,180SXの場合型式の頭にK,S14にはCがつく.なお筆者のS14はHICAS搭載車であるが,HICASが生きた状態で乗ったことはない.

S14シルビアにおいて,HICASの有無によってざっと(リア周り)メンバー,ナックル,(フロント周り)ステアリングラック,パワステ配管(金属配管及びラックに接続するホース)が異なっている.なお,S15はタイロッドの径も異なるので注意.S13,180SX,S15(HICAS無)はエンド側のボルト径M12,S14,S15(HICAS有)はM14である.HICAS付車のパワステ配管は冷却のためなのか(S14は電動HICASなのでパワステへの負荷は変わらない気がするが)HICAS無車よりかなり長くなっている.

HICAS搭載車のリア周りはECR33等と共通であるが,フロント周りの項目に関してはスカイラインとの流用は基本的に不可と考えられるため,ラックやパワステ配管が死ぬと部品の入手に苦慮することとなる.

筆者はラック本体の配管が割れ,単品で部品が出なかったことからHICAS無車のラック+配管をセットで移植した.配管のステー位置は元からある固定ネジ穴を利用すれば綺麗につく.

・前(中)後期間の相違点等覚書

前期,中期(前期の後半),後期(以降(前),(中),(後)と表記)には色々と差異があり,部品も流用できたり出来なかったりするので何となく気づいた点をメモ程度に書き置いた.なお表記なき場合(中)は(前)に含まれる.

ちなみにS14の前期・後期は海外でもZenki・Koukiで通じるらしい.

〜外装〜

・顔面:タレ目の(前),ツリ目の(後)

(前)(後)顔面換装は定番.顔面が揃った部品取り車があるなら,滞りなく進めば半日あれば終わる.筆者のS14は(後)だが(前)顔面に換装した.その模様はこちら(車検を経て灯火類は流石にボルト止めにした).

・テール:滑らかな(前),段付の(後)

ポン付け.これも換装は定番.ちなみに(後)テールの方が中古相場は高い.

〜シャシ・ボディ・ボディ電装〜

・(後)ボディのヘッドライト後部に穴がある.(前)にはない.穴があるとバルブ交換が楽.

・メーター

(前):タコ,スピード(いずれも楕円)の縁が重なるように配置,黒に白文字

(中):タコ,スピード(いずれも楕円)の縁が重なるように配置,白に黒文字

(後):タコ,スピード(いずれも真円)は接していない,白に黒文字

(前中)同士はカプラーオン,それらと(後)は基本的に互換性無し.

〜エンジン・エンジン電装〜

・ECUは基本的に(前)(後)流用不可.ハーネスも異なる.

・ラジエターに関しては前述の通り.

・その他

・S13以降のシルビア系,またスカイラインのリアナンバーステーはヒンジになっており,容易にナンバーをしゃくれさせることができるのだが,S14だけなぜかヒンジになっていない.

ちなみにR35もヒンジになっているらしい.