2022年度に行われる予定・行われたゼミのアブストラクト集を掲載しています。4月5日の例会の分から順次、順番に公開していきます。
ただし、掲載されたゼミ内容の詳細は変更される場合があります。あらかじめご了承ください
「第3の生命鎖」糖鎖と医療、薬学 (4/5)
糖鎖はDNA、タンパク質と並ぶ第3の生命鎖と呼ばれ、注目を集めています。
糖鎖はタンパク質や脂質と結合して、シグナル伝達などの様々な生理機能を担います。そのため、糖鎖の異常は様々な疾患を引き起こすことが知られています。また、医薬品の中にも糖鎖を標的としたものや、医薬品自身が糖鎖を持つものが多くあり、研究がなされています。
「ハネカクシの生物学 ~フィールドと研究室の狭間で~」(4/12)
「ハネカクシとは」から始まり, 先端研究まで軽くですがご紹介させていただく予定です。専門知識は必要ありませんので, お気軽にご参加ください。
「遺伝子暗号の拡張」(4/19)
通常、我々の身体では塩基3つでアミノ酸1つを指定するという仕組みで20種類のアミノ酸が用いられています。
これらのアミノ酸の種類を増やそうという試みが遺伝子暗号の拡張です。
新歓ということで、DNAからタンパク質までの一連の流れなど基礎知識からおさらいし、遺伝子暗号拡張技術についてとその応用例についてご紹介します。
深く掘り下げるというよりも、こういう技術があるよ、と知ってもらうゼミになります。
「新たなるたんぱく質デザインの時代」 (5/3)
遺伝子工学などを用いて酵素のようなたんぱく質に新たな性質を与えて科学研究・産業ともに貢献してきた「たんぱく質工学」が今、近年の電子顕微鏡の発達やコンピューターの進歩によって新たな分野を開拓しています。今回のゼミでは具体例を中心に新たな時代のたんぱく質工学を紹介します。
「親指について考える」 (5/10)
哺乳類の前肢は、それぞれの生活環境や食性によって泳ぐ、走る、飛ぶ、掘るなど様々な用途に応じた形をしています。
明日のゼミでは、哺乳類の前肢を紹介しその後演者が興味を持っている霊長類に着目してお話します。
特に、親指を持たないサル、クモザルの手についてお話しようと思います。
「微生物能力者達の異能バトル」 (5/24)
異能バトルロワイヤルを開催します。嘘です。バトルも異能もないただのゼミですので、無能力者諸君も安心してご参加ください。
その代わり、共生微生物を駆使する(或いは駆使される?)生き物たち(特に昆虫類)について紹介します。共生微生物とは、文字通り、ある生物に共生する(要定義)微生物の事で、皆さんが想像するよりきっと普遍的な存在です。ゼミでは、その共生微生物の役割、重要さ、柔軟さ、研究対象としての面白さ、などに言及する予定です。
「神経の活動電位を通して学ぶ、数理モデルと量子力学的アプローチ」(6/14)
神経の数理モデルを通して、近似の威力と危険性について議論します。さらにHodgkin-Huxley方程式を量子力学へ拡張したものも紹介します。
イオンチャネルは量子重ね合わせ状態にある?意識の本質とは?
「『遺伝子』とは何か?」 (8/9)
コロナ禍においては、遺伝子、RNA、DNA、PCR検査、ワクチンといった「生物学用語」を聞かない日はないと言っても過言ではありません。
特に「遺伝子」という単語は、我々が思っている以上に、生物学の文脈を離れて広く一般に用いられています。しかしながら、ほとんど全てが(生物学的に)正しく使用されておらず、また、生物学の文脈においてすら、誤った理解のもとに切腹物の嘘が並べられることも少なくありません。
そこで、今回のゼミでは、改めて「遺伝子とは何か?」という疑問について、特に遺伝子という概念がたどってきた歴史を振り返ることで(したがって、ほとんど全ての生物学史を振り返ることで)考えていこうと思います。
ただし、詳細に生物学史をたどるというよりは、高校生物でも登場するような主要な学者・著名な実験を題材として、当時の生物学者たちが何を考えてきたのか?、また、それらは「遺伝子概念」という文脈にどのように位置づけられるのか?という点をお話しするつもりです。
「ノーベル賞ゼミ」 (10/4)
今年のノーベル賞生理医学賞は絶滅したヒト族のゲノムを解析しヒトの進化の謎に迫ったSvante Pääboが受賞しました。
完全にあてが外れて予習がパーになりましたが、これから勉強して張り切って発表したいと思います。
「生体直交化学と糖鎖研究」 (10/18)
今年のノーベル化学賞は「クリックケミストリーと生体直交化学」でした。生体直交化学は糖鎖研究にも応用されており、様々なことが明らかになりました。
今回のゼミでは、生体直交化学の開発についてやその後の糖鎖研究についてお話ししたいと思います。
「回避行動を調節する新規遺伝子belly rollの発見」 (10/25)
ショウジョウバエ幼虫は寄生蜂に襲われると転がって逃げますが、自然界には多少の痛覚刺激にも応じない"勇敢な性格"の個体が存在します
本ゼミでは幼虫を勇敢にする遺伝子として発見されたbelly rollの機能や役割について議論します
「シマウツボの送粉者」 (11/2)
小笠原諸島の固有種シマウツボはハマウツボ属植物です。しかし、その花形態は他の同属植物に比べ特異的であり、送粉生態が異なると予想されていました。本発表では、シマウツボの送粉者を初めて観察した成果と、送粉生態の進化についてお話しします。
「LLPS~Judge me if you can!~」 (11/15)
細胞内では「細胞内小器官」と呼ばれるような膜で細胞質から物理的に隔離された構造がある一方で、核小体やストレス顆粒など膜がないにもかかわらずたんぱく質などの濃度が周囲と比べて高くなっている構造体もあります。どのようなメカニズムでそのような凝集が起こっているのか、またそうした凝集が生体内でどのような役割を持っているのでしょうか。その疑問に答える強力な見方の一つがLLPSです。
このゼミではLLPS研究の端緒となった研究や生体内での機能や疾患との関連を研究したものまで取り上げてLLPSの基本的な特徴を解説したいと思います。また、非膜性の凝集体の形成が本当にLLPSで駆動されているかを判定する困難なども話したいと思います。
「ミミズをと(採・屠・撮)る」 (11/22)
これらは、ミミズに関わるうえで基本中の基本ですが、ミミズ研究者が日夜頭を悩ませ試行錯誤している大変奥深いものです。
この度は、初歩的なことしか扱いませんが、これを知っているのと知っていないのとでは、ミミズ研究者からの好感度は月とすっぽんでしょう…
もちろん、ミミズだけではなく、ほかの生きものにも活きるような知見や考え方も含んでおりますので、生きものを直に扱うような方には有用なお話となっているかと思います。
「幹細胞ホメオスタシスの統一理論(かもしれない) 」(11/28)
組織幹細胞は、自らの数を一定に保ちながら分化細胞を供給しています。これは多細胞生物のホメオスタシスにとって重要な働きです。どのようにこの働きが達成されるかについて、もともと二つの解釈が存在していて、決着がついていませんでした。本研究では、二つの説明を融合させて、すなわち「階層性」と「幹細胞同士の競争」という要素を両方入れて、より包括的なモデルを作りました。
単にくっつけただけではなく、新規な現象を予言して実験データで確認したというのがアピールポイントなのですが、それは例会でお話しします。
また、研究と執筆がどのように進んでいったかという体験談も話そうと思います。
「毒と生物の関係」 (12/6)
生物の毒について毒の使い方、種類と作用、毒と人間の関わりに分けて、自然毒について学んでいきます。生物学の基礎的な知識も交えながら話す予定なので、新入生の方も是非気軽に参加してください。
危険だけど使い方次第では役に立つ、興味深い毒の世界を覗いてみましょう。
「えこえぼ!過去篇」 (12/20)
今回はEco-Evoという分野の前日譚的な部分である、進化過程が生態学に持ち込まれた経緯について考える事で、生態学の意義や課題について理解を深めようと思います。生態学っぽい事を体系立てて学ぶ機会は極めて少ないと思いますし、生態学やEco-Evoという言葉を知らなくても理解できる(ように頑張ります)ので、どなたでも気軽にご参加ください。
「クマムシの強さを"支える"線維化タンパク質CAHSの秘密」 (1/24)
クマムシは完全な脱水にも耐える特殊な能力を持ちますが、その分子メカニズムは不明でした。本ゼミでは、クマムシ特有のCAHSタンパク質がストレス依存に細胞骨格様の構造を形成し耐性に関与する仕組みをご紹介します。
「Tree of Life」 (1/31)
生命の樹は大きく3つの幹、バクテリア、アーキア、真核生物から成ると言われてきました。
一方、真核生物はアーキアの一部であり、生命は2つの幹しか持たない可能性も指摘されていました。
この論争は約8年前に北極海で発見されたアーキアによって、転換期を迎えることになります。
これらのアーキアが、真核生物にユニークと考えられてきた構成要素である膜内輸送系遺伝子や細胞骨格を既に獲得していることがわかったのです。
近年、これらのアーキアの培養に成功し、真核生物がどのように誕生したのかについて重要な手がかりが得られつつあります。
そこで、次回のゼミでは真核生物という主要な幹の根本にスポットライトを当ててみたいと思います
「巨大ナマズ・カイヤンのダム湖における食性」 (2/7)
皆さんはスーパーマーケットで「パンガシウス」という白身魚に出会ったことはありますか?
まだまだ日本では馴染みが薄いかもしれませんが、全世界で年間 20 億ドル以上の市場規模を持つ美味しい魚です。
実はこの魚、メコン川やチャオプラヤ川を原産とする “ナマズ” の仲間なんです。
本研究では、そんなカイヤンが栽培漁業という半野生下の環境で何を食べ、成長しているのかに迫りました。
「PPP!」(2/14)
DNAの複製などでオリゴDNAにNTPが結合する伸長反応が行われますが、これが分子スケールでどのように行われるかはこれまではっきりとわかっていませんでした。今回のゼミではX線結晶構造解析を用いてその反応schemeを可視化した実験を紹介するとともに、伸長反応を駆動する根本となるATPの高エネルギーリン酸結合の”高エネルギー性”はどこに由来するのかを考えたいと思います。
「Mimicry 自然の中の嘘」 (2/14)
擬態の概念や例といった基本的なことを通して、多様で不思議な擬態の世界を紹介したいと思います。
「極限の世界から」(2/21)
高温、酸性、高塩濃度といった過酷な環境に生息する古細菌と呼ばれる生物について紹介します。
私たちの常識が通用しない極限環境の生物の歴史や、広く知られていない新たな古細菌についても学んでみましょう。