2019年度に行われたゼミのアブストラクト集を掲載しています。4月3日の例会分から順番に公開しています
4/3 YT(理3)
渡り鳥はどのように方角を知るのか? 光合成においてどのようにエネルギーが輸送されるのか? これらの現象が量子力学によってどのように記述されるかを紹介します。数式を使わず定性的に量子論を理解できる構成にしていますので,ぜひ、量子力学と生物学の奇妙な世界を楽しんでもらえたら,と思っています。
4/10 (医医)
細胞のストレス応答のひとつとして知られている低酸素ストレス応答について,HIFという転写因子に焦点をあてて概説します。基礎的な分子生物学の知識があれば十分理解できる内容となっています。
4/17 TI(理2)
最近の生物学のモチベーションとして生き物の特徴量を正確に,つまり定量的に測ることがあります。特に生き物の形態・かたちを測る学問分野は形態測定学と呼ばれています。形態測定学は主に「幾何学的形態測定学」と「理論形態学」に区別されます。幾何学的形態測定はかたちを標識点の集合あるいは輪郭として表現し,理論形態学では生物の器官や組織に合わせたモデルとして表現します。ここでは主に理論形態学に焦点を当て、アンモナイトをはじめとした巻貝がモデルとしてどのように表現されるかを扱います。かたちをどのようにしてモデルで表現するかをはじめとして,巻貝の巻きのモデル,またモデルを考えることで生物学的にどう嬉しいかについても考えます。
4/24 YH(理4)
昨年の夏,大腸菌のゲノム中に短い動画のデータを挿入し,その子孫からデータを取り出すことに成功した論文が発表されました。 その論文の話題を中心に添えながらデータ保存場所としてのゲノムの可能性を論じていきたいと思います。
5/1 RU(農2)
寄生生物の巧みな生存戦略について紹介し,宿主と寄生者の関係が及ぼす生態系への影響について考えていきます。
5/8 KH(理3)
前者はがんについての概説,後者はアルコールの悪影響を面白おかしく伝えられたら良いなと思っています。 なお,二本とも高校生物の知識すら仮定しないので,生物学(医学寄りの内容かもしれません)に興味はあるけれど,どうも腰が重いな,という方は是非来てください。ある程度生物学の知識がある方でも退屈しないような講義を目指します。
5/15 TF (理3)
視細胞とは光を受容し電気信号に変換することに特化した細胞です。 視細胞には視物質が発現し,これが光を受容する分子スイッチとして機能しています。 脊椎動物は桿体と錐体の2種類の視細胞をもち,それぞれ異なる特性を持っています。
今回は,この精巧な細胞の「かたち」に注目し,桿体と錐体の違いや,光受容の舞台である視細胞と役者である視物質との興味深い関係についてお話します。
5/22 AN(理4)
植物において重要なイベントである種子散布について概論的に解説します。さらに,実際にどのような研究があるのかを,葉緑体を持たない植物に関する論文に即して話します。
5/29 SY(同志社理工2)
コウモリのセンシング戦略に関してお話しします。 彼らは具体的に超音波を用いてどのように世界を「見て」いるのか。物理をよくわきまえた彼らの行動をご紹介します。
6/5 UM(理3)
ワインの香りや味と微生物との関わりをメタゲノム的手法で調べた論文を紹介し,メタゲノム解析の基本についてもお話します。
6/12 TM(農資源4)
外来種はどうして定着したり問題になるほど繁栄するのか。侵入先で彼らが得られるメリットデメリットについて解説します。また,いくつか具体的な例を上げて外来種たちの面白さ恐ろしさを説明します。
6/19 TN(農資源2)
侵入種に関する一報の論文と演者自身の旅行記について解説します。
6/26 TI(理2)
多くの生き物が形態的な左右対称性や回転対称性を有する一方で,シオマネキや我々ヒトの臓器の配置のように対称性が破れている例も数多く存在します。また,生物界全般には形態的対称性に限らず遺伝的な対称性も多く見られます。 今回は特に遺伝的な対称性に焦点をあて,それら対称性をどのように扱うかということについてお話しします。
7/3 AO(理3)
ヒトの脳における言語処理の機序について説明します。
7/10 SM(理1)
ネットで話題になった「記憶の移植に成功」というニュースを基に,そんな事が本当に可能なのか、議論していきたいと思います。
7/31 たくさん
8/8 UM(理3)
深海底の大半が荒涼としている中で,熱水噴出孔付近には豊かな生物群集が存在します。光合成は行えず,表層の有機物もほとんど届かない環境で,どのように生態系が形成されるのでしょうか。後半は,熱水噴出孔にすむ古細菌Aeropyrum属のゲノム進化がウイルスにより促された可能性について,論文をもとにお話します。
8/21 GS(農応生1)
チャネルとキャリアーそれぞれの定式化について,じっくりと過程を追ってご紹介します。 基礎的な定式化が中心ですが,少しコアなものとしてHillのダイアグラム法も取り上げます。
8/28 (医医)
近年,中枢神経系にリンパ組織が存在する事が知られてきています。今回のゼミでは,一般的なリンパ系の循環や頭蓋内の構造から,その存在意義について詳説します。
9/4 KH(理3)※台風のため中止
8/27-30にかけて,岐阜県のぎふ長良川温泉ホテルパークで実施された,「生物物理若手の会夏の学校」という「生物物理若手の会」主催の合宿についてお話します。
9/11 SF(京工繊応生2)
西日本に生息しているものに関してはおおよそ観察することができたので,その時の思い出話を交えながら,それぞれの生態や外見,同定方法などを話します。
9/18 SY(同志社理工2)
今夏は,種子島(アカウミガメのボランティア調査),屋久島(ヤクザル調査隊),北海道(アンモナイト等の化石採集)へ出かけていたのでこれらのことと,そのバックグラウンドとして面白そうなことを話したいと思います。
9/25 MK (理2)
NETsという,好中球がもつ貪食とも抗体産生とも異なる免疫の仕組み,またNETsの形成に伴う細胞死であるNETosisに焦点を当てて話したいと思います。
10/2 KH(理3)
9/4に行われるはずだったゼミを行います:8/27-30にかけて,岐阜県のぎふ長良川温泉ホテルパークで実施された,「生物物理若手の会夏の学校」という「生物物理若手の会」主催の合宿についてお話します。
10/9 KK(理3)
GPCR(Gタンパク質共役型受容体)は細胞の情報受容の大部分を担うヒトゲノム内でも最も大きなファミリーを形成する膜タンパク質です。その構造解析は極めて困難であり,様々な工夫、技術革新を経て現在まで続けられています。また,GPCRとこれらの共役因子との選択的な相互作用の仕組みは未だ解明されていません。今回のゼミでは,これまでの創意工夫と努力の歴史を紹介するとともに,最近発表された受容体共役の特異性についての新たな知見についてご報告します。過去にはノーベル賞も贈られたGPCRの立体構造解析研究の話です。
10/16 SK(理3)
「分類学者ではない我々が分類とどう向き合えばいいのか」という視点から系統分類についてのイントロダクションを行います。 はじめに系統分類についての概念と理論をざっくりと説明し,提示された分類体系がどのように我々の役に立ちうるかをお話します。 種概念と体系化については,de Queirozの統合種概念と分岐分類の立場を中心に扱います。後半は,系統分類についてのよくある勘違いや悩み,また理論と実践における反発が指摘されます。 実例を用いて説明する際には,演者が国内・海外で出会った最高な生き物たちを登場させる予定です。
10/23 HT(文1)
2006年に国菌,つまり国を代表する菌に認定されたコウジ菌についてお話しします。コウジ菌が作り出す食品について説明するとともに,コウジ菌が国菌に認定された理由を,歴史的な観点から説明し,コウジ菌に関する研究についてもお話ししようと思っています。高校生物や,高校日本史の知識を交えた楽しい話にしようと思っています。
10/30 MT(理1)
現生の生物と大きく形態の異なる古代生物との間にある進化の道筋のギャップを埋める方法について紹介したいと思います。ただし、ディッキンソニアの話しかしません。今までどのように古代生物の分類がなされてきたかを軽く説明した後,バイオマーカーを用いた分類についてお話します。
11/6 KY(農資源1)
神戸名産とされる珍品の虫をご紹介します。生態・分布等この虫に関する基礎的な情報を説明しながら,昆虫の生殖様式等を中心に関連する話題にも寄り道する予定です。
11/13 RU(農資源2)
植物が持つ免疫システムについての知識と近年の研究トピックスについて,植物病理学の観点からご紹介します。植物と病原菌との攻防を概観し,その戦略の多様さについて考えていき ます。更に,植物病理学研究の背景にある現代の食糧生産の実態,特に食糧危機の可能性についても論じていく予定です。
11/27 IH(理1)
我々人間は言語を持つため,遺伝子を共有している仲間を見つけ,利他的に振る舞うことは容易です。しかし他の生物達はどうなのか。聴覚?嗅覚?触覚?それ以外?何でしょうか。それを,今回は共立出版の「行動生態学」に沿って少し古めの論文を紹介しつつ説明していきます。
12/4 TI(理1)
植物体を構成する物質をいかに生物が代謝し,利用しているか,またそれらの酵素群はどのように獲得されたかについて考えていきます。「木材と腐朽菌」「カイコとクワ」など,いくつかの生物種にスポットを当てて,「植物の美味しい食べ方」について深めてゆくつもりです。
12/11 TN(農資源2)
植物の二次代謝産物に対する鱗翅目昆虫の適応と利用について概説します。
12/18 MS(理1)
真核生物における染色体構造の解析と,最近話題の液-液相分離について何が分かってきたかを総説的に述べ,そのふたつが交わる所を考えて行きます。
12/25 KH(工1)
ルアーについて力学的、生物学的な視点から見ていきます。
1/8 TI(理2)
動物の形態形成において組織・器官等の「かたち」やサイズがどのように制御されているかについてお話します。 組織・器官のかたち・サイズ(・位置)の制御,種間での形態の差異の決定,種内での形態の差異に対する機能維持など,色々な現象とその制御機構の具体例を紹介します。
一本の軸に沿ってお話しするというよりは,発生のごく基本的なことを前半で話した後に色々な現象とその制御機構を雑多に紹介していきます。数学・物理の言葉を使わずに、ゆるふわにお話します。
1/ 29 MS(理1)
液液相分離ゼミのこぼれ話:液液相とCRISPRとオプトジェネティクスを組み合わせた新たな解析法について,概説します。
1/ 29 YT(理3)
去年新たに報告された体細胞組み換えについて紹介します。前半はこの機構が疾患を引き起こす可能性について論じます。後半はこの機構が遺伝子多重化によるゲノム進化の原動力となるか議論して遊んでみようと思います。
2/5 IH(理1)
種の定義や種分化のモデルをゆるく説明した後,アフリカの湖におけるシクリッド類の多様性の形成過程を取り上げて,側所的種分化についてより具体的に説明していきます。
2/5 TI(理2)
植物生理学の基礎から始めて,最近分かってきている植物の温度感知センサーとしてのphytochromeの機能や,phytochromeによる転写開始位置の制御(及びそれに伴う光環境応答)について簡単にお話します。
2/12 YH(理4)
いわゆる "エピジェネティックな" 遺伝の1つとして,miRNA,siRNA, piRNA などの小分子 RNA の配偶子から受精卵へ継承されることがよく知られていますが,エピジェネティックに働く第4の RNA として tRNA 由来の RNA 断片がここ数年注目されています。今回のゼミではこの "tRNA 断片" に関する研究を,2, 3 本の論文を中心に追っていきます。
2/19 CF(理4)
光合成をするにあたって光は必要不可欠である一方で,過剰な光エネルギーはその系自体を損傷させてしまう恐れのある危険なものです。過剰なエネルギーをうまく処理しつつ,様々な生育環境,あるいは刻一刻と変化する状況の中で最大限の光合成を行うために,光合成生物はそれぞれ複雑で多段階な調節メカニズムを機能させ,強かに生きています。今回のゼミでは,その調節機構の中でも特に光合成装置が変動光に対応するメカニズムを取り上げます。葉緑体のチラコイド膜という舞台の上で一体何が行われているのかや,まだまだ謎の多いこの研究分野の最前線について一部紹介することで,「光合成」という現象の奥深さやその魅力を皆さまにお伝えできればと考えています。
2/26 TM(農資源4)
ヤマトシロアリの行動について動画解析を用いて新しく明らかになったことを発表します。
2/26 AN(理4)
これまで曖昧だった寄生植物シマウツボの宿主をDNAバーコーディングで同定した話と,遺伝構造解析によりシマウツボが小笠原諸島内でどのような遺伝的分化があるかを調べた話。
3/6 EW(理4)
発光波長の異なるルシフェラーゼを導入することによって,同時に2種類の遺伝子発現動態を観測する2波長発光レポーター測定系について話します。
3/6 YT(理3)
レトロウイルス,内在性レトロウイルス,そしてその宿主の奇妙な関係について紹介します。特にネコ白血病ウイルスに注目して遊んでみようとおもいます。
3/12 MT(理1)
生命が誕生した環境と似ていると言われる熱水噴出孔の立地や岩石,含まれる化合物を調べることによって,何をエネルギー源とする生物が存在するのかを推定する研究を紹介します。
3/19 UM(理3)
近年発見された巨大ウイルスたちを紹介し,それらの発見が示唆する「ウイルスは何から生まれたか」「真核生物はどのように誕生したのか」といった謎に対する仮説を手掛かりに,「ウイルスは生物といえるのか」について議論を進めていきます。
1992年のミミウイルス発見を皮切りに次々と発見されてきた巨大ウイルスは,サイズが大きいだけでなく,多彩な遺伝子を持ち,細胞性生物に近い機能を備えているものすらいます。これらの新発見により,「ウイルスは生物ではない」という定義が揺らぎ,巨大ウイルスは第4のドメインといえるのではないかという議論が起こってきました。
3/26 KY(農資源1)
繁殖干渉は比較的新しく重要性が認知された現象ですが,個体群や群集にも大きな影響を与えることが分かってきており,今後も研究が進むと期待される分野です。今回のゼミにおいてはどのような影響が生じるのかについて浅く広く総説的に取り扱い,研究の現状について理解を深めたいと思います。