2021年度に行われる予定・行われたゼミのアブストラクト集を掲載しています。4月6日の例会の分から順次、順番に公開していきます。
ただし、掲載されたゼミ内容の詳細は変更される場合があります。あらかじめご了承ください。
チューリング・パターンの数理生物学
4/6
動物の模様はどのように生じるのでしょうか。また、その疑問に対してどのような答えがあり得るでしょうか。本ゼミでは、1953年にアラン・チューリングという数学者が提唱した数理モデルからスタートして、反応拡散理論をチラ見しながらこの問題を掘り下げます。数理モデルとしての非自明さ、および生物にまたがる普遍性が核心的な面白さです。
生物群集は泰然自若としているか
4/13
諸行無常・泰然自若は自然を形容し得る2つの四字熟語ですが, 正反対の意味を持つように感じます。自然, ここではもっと単純に生物群集はどちらなのでしょうか? 高校生物から大学の「マクロ生物」へ, 理論・実証の古典を通じてご案内します。
俺自身が分子になることだ
4/20
生きた細胞の分子が、「見える」ようになるためには?人間が「見る」ためには様々な手法で細胞から情報を取り出さなければなりません。今回は「1分子イメージング」という方法を紹介し、人間が分子の気持ちを理解するのにどう役立つか?を考えます。
進化のスキャンダル
4/27
私たちの周りを見ると、非常に多くの生物が有性生殖を行います。その数の多さのため、無性生殖のみ行う生物はほぼいないように思われます。
しかし、なんと実は...⁉“進化のスキャンダル”とよばれる生物を題材に、有性生殖・無性生殖などについて説明していきます。
不良品タンパク質の処理システム
5/4
翻訳された分泌タンパク質や膜タンパク質は、小胞体の中で折り畳まれて運ばれていきます。しかしながら、この過程で小胞体内で正しく折り畳まれなかった不良品タンパク質は、小胞体内で蓄積し続けて小胞体ストレスを引き起こします。今回のゼミでは、細胞の小胞体ストレスの回避機構を紹介したいと思います。
「生命とは何か」を『どう』考えるか?
5/11
生命、と広辞苑で引くと、「生物が生物であり続ける根源」と表されています。
17世紀頃までは、生物は生気や魂を持つと信じられていました。
しかし、デカルトの機械論が生物を古典力学の世界に引きずりおろし、現在では、生命現象は原子や分子の動きですべて説明できるというのが生物学の前提にあります。
このゼミでは、ならば生命はDNAをもつただの機械仕掛けなのか?生命らしさ、生きているとはどういうことなのか?という問いに、人工生命の研究・物理化学の視点からの捉え方・死から捉える生、という3つの観点から考えてみたいと思います。
これからの「社会性」の話をしよう
5/18
新型コロナウイルスの流行により、世界中の人々が外出自粛やリモートワークを余儀なくされ、孤独から心身の不調を訴える人も増えています。なぜ我々は人に会わないと調子が悪くなるのでしょうか?このことには、多くの動物が本来持つ「社会性」が関係しているようです。Ethologyと近年発展著しいSocial Neuroscienceの両面から、「社会性」とポストコロナの我々の生き方について考えます。
生命を作る化学反応ネットワークの現代非平衡化学熱力学 ~ΔG°= −RT ln Keqを越えて~
5/25
生命を化学反応の集合とし進化的適応性を語りたい, しかし化学反応ネットワーク:CRNに必要な熱力学的記述は近年まで未開拓でした. 生物学的問題意識から始め, CRNの非平衡熱力学2021年最新の成果まで本格的に解説します.
ハネカクシの生物学Ⅰ -フィールドと研究室のはざまで-
6/8
あまり知られていない昆虫ーハネカクシ。今回は彼らの生態や魅力を最新の研究ももとに紹介します。後半は彼らを研究する意味と演者の研究内容も紹介させていただく予定です。
僕らはカセキホリダー
6/15
はるか昔地球上にいた生物について、全てを知ることはできません。しかし、化石を通じれば多くのことを知ることができます。今回のゼミでは中生代に生きたいわゆる「恐竜」に焦点を当てて、前半では化石について、後半では大量の恐竜の紹介をします。
Model-based prediction of spatial gene expression via generative linear mapping
6/29
多細胞生物において、細胞内の遺伝子発現がどのように表現型に影響しているか、を理解するには、空間的遺伝子発現パターンを調べることが欠かせません。しかしながら、古典的なin situ hybridizationでは、一度に少数の遺伝子発現パターンしか調べることができませんでした。今回のゼミでは、ゲノム網羅的に空間的遺伝子発現パターンを調べるためにはどうすれば良いか、特に計算機を用いたアプローチについて、これまでの研究も踏まえつつお話ししたいと思います。
生命を司るリン酸
8/10
生体の中で多彩な役割を果たす化合物であるリン酸に注目し、その性質や、生命がリン酸を利用するメリットについてお話します。
優生思想の生物学
8/17
優生学というと、漠然としたタブーであり詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。今回のゼミではその内実に踏み込みます。また、ノーベル賞を受賞したCRISPR-Cas9システムがもたらす「新しい優生学」の問題も扱います。
Hello, World!
8/24
タンパク質の構造を高精度で予測するAI「AlphaFold2」が公開され、瞬く間に注目の的となりました
このAIがなぜ革命的とまで言われるのかを簡単に解説したのち、実際にみなさんと遊んでみようと思います
スマホではじめる構造予測、生命科学の新境地を体験しませんか?
ノーベル賞ゼミ2021
10/5
ノーベル生理・医学賞の受賞内容について紹介するゼミです
4日に受賞が発表されるまで、どんなゼミになるかわかりません
ぜひ、演者と一緒にドキドキしながら受賞発表とゼミを楽しみに待っていてください!
寄生生物と菌従属栄養植物
10/12
植物は光合成を行い自力で生活する生物です。しかし、中には光合成能力を失った、寄生・菌従属栄養植物と呼ばれるグループが存在します。
今回はそうした植物の奇異で面白い姿を写真で楽しむゼミとします。彼らが光合成を捨て、どう進化を遂げたのか是非ご覧ください。
ミカエリスメンテン式を再考する
10/19
酵素反応速度論の基礎であり、皆様にも馴染みのあるミカエリスメンテン式ですが、考えてみると案外わからないもの。今回のゼミでは、ミカエリスメンテン式を導出するうえで、演者があれっ?と感じたことに焦点をあててミカエリスメンテン式を検証していきます。
速度論なんて知らねえ、という方はもちろん、ミカエリスメンテン式をご存知の方でも何か発見のあるような例会にしたいと思っております。
胃痛と薬
11/9
おそらく常備薬として一般のご家庭にある薬、胃薬。
どの胃薬もちゃんと胃痛を鎮めますが、効き方は様々。
今回は主にその効き方に注目し、薬が体にどう作用するかを解説します。
アストロバイオロジー 宇宙と生命
11/16
生命はどのようにして誕生したのか、生命は地球以外の星に存在するのか、というのは我々人類に残された大きな謎のひとつです。20世紀末から、この謎に取り組む学問「アストロバイオロジー」が急速に発展し、驚くべきことがいくつも判明しました。
今回のゼミでは、隕石の分析から明らかになった宇宙での化学進化、太陽系内(火星、エウロパ、エンケラドス、タイタン)での地球外生命探査、そして系外惑星での地球外生命、知的生命探査について話していきたいと思っています。
脳の数理モデルを考える
11/30
昨今の分子生物学の発展により、神経科学においても様々な現象の分子レベルでの理解が進んできました。しかし、1つの神経細胞を見つめているだけでは、意識、情動、学習といった生物らしい複雑な振る舞いを理解することは難しく思われます。
そこで、今回のゼミでは、神経細胞をマクロなスケールで定式化する方法を紹介し、神経科学を理解する上で有効なアプローチであることを検証していきます。
固有値から始める安定性解析
12/21
ある条件でライオンとハイエナが共存できるのか、生体内の化学物質の濃度は安定かなどを判定することを安定性解析と言います。その判定方法の一つとして、微分方程式に対応する行列の固有値を算出するという方法があります。
今回は、そうした「力学的安定性の固有値問題」についての理論的背景について紹介し、特に2変数の場合を詳しく話していこうと思っています。
アイアイ、マダガスカル島の不思議なサル
2/1
「第7の大陸」とも呼ばれるマダガスカルは動植物の約9割が固有種であると言われており、マダガスカルの霊長類はすべて固有種です。
今回の主役であるアイアイは日本では童謡で人気ですが、歌のイメージからは想像できない奇妙で少し不気味な見た目をしています。
一科一属一種、木の中の昆虫を探して食べるのに使う細くて長い中指と永遠に伸びる歯を持ち、霊長類最大の昆虫食者…。アイアイの特徴は枚挙に暇がありません。
系統の面では他のマダガスカルの霊長類から最も古くに分岐したことが分かっています。
マダガスカル島がどのようにでき、霊長類の祖先がどのように島にたどり着き、どのように適応放散を遂げたのか。
アイアイをはじめとしてマダガスカルの霊長類について紹介をしていこうと思います。
ひと狩りいこうぜ!辺境微生物
3/8
さまざまな極限環境に生息する微生物についてお話ししたいと思います。はじめに環境微生物学の基本的な事柄についてご説明したのち、深海・南極・砂漠といった幅広い極限環境で微生物ハンターたちが発見してきた微生物についてお話しします。最後に、深海熱水活動域の微生物に関する、演者自身の修士研究について発表します。
動物の小さな光受容装置:オプシンの仕組みを調べる
3/15
動物の知覚において、光は重要な情報源の一つです。動物は光情報を視覚だけではなく様々な機能に用いますが、その多様な光受容機能に共通して関わるのが「オプシン」という光受容タンパク質です。近年のゲノム解析により、動物は想定よりもずっと多種多様なオプシン遺伝子を持っているということが明らかとなってきました。光センサーの分子特性を変化させて多彩なオプシンレパートリーを揃えることは、動物の多様な光受容機能の基盤となっていると考えられています。
今回のゼミでは「動物の小さな光受容装置:オプシンの仕組みを調べる」と題しまして、演者の修士研究についてお話しします。オプシンの中でも近年その生理機能に注目が集まっている、ヒトも持つ短波長光受容体「Opn5」を対象として、その分子特性を制御するメカニズムの解明を試みました。
自分で自分を京都から追い出すゼミ
3/22
減数分裂期の染色体に見られるSynaptonemal complexという構造体が液晶っぽいぞ???みたいな話をします。
セレンディピティ 〜神の条件検討〜
3/29
捕食者からの攻撃から逃れる回避行動は、動物の生存に極めて重要な行動です。
回避行動はその緊急性から、遺伝的にプログラムされた本能行動として多くの動物に備わっています。
私が研究対象にしているショウジョウバエ幼虫は、天敵である寄生蜂に攻撃されると、ゴロゴロと転がる回転回避行動をとります。
回転回避行動は、寄生蜂の羽音や栄養ストレスといった環境要因によって調節されうることが報告されています。
一方、所属研究室が同定した遺伝子belly roll(bero)をはじめ、回避行動を調節する遺伝子もいくつか報告されていますが、「環境要因」と「遺伝子型」がどのように相互作用しているのかはわかっていませんでした。
今回のゼミでは、beroの機能を解析した演者の研究について紹介させていただきます。
本研究により、環境要因による回避行動の調節にはberoが必要であることを発見しました。
この発見から、本能行動における「環境要因」と「遺伝子型」の相互作用メカニズムをより深く理解できるようになると期待されます。
この研究の過程で、海外の研究グループとの競争や、バッファーを作り間違えるという大失敗がきっかけで思わぬ発見をするという稀有な経験をしました。
そこで今回は「セレンディピティ 〜神の条件検討〜」と題しまして、論文にあるようなキレイなストーリーではなく、もやもやとした研究の裏話に焦点を当てて発表させていただこうかと思っています。