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日本食品標準成分表2020年版(八訂)かんたん解説

日本食品標準成分表2020年版(八訂) 電子書籍(第2章を除く) 

https://www.mext.go.jp/content/20201225-mxt_kagsei-mext_01110_011.pdf

日本食品標準成分表2020年版(八訂)に関するブリーフィング

エグゼクティブサマリー

「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」(以下、食品成分表)は、国民の健康維持・増進、食料の安定供給計画、栄養指導、教育、研究、そして食品表示制度に至るまで、日本の食と栄養に関するあらゆる分野で基盤となるデータを提供する極めて重要な公的資料である。1950年の初版公表以来、改訂を重ねてきた本書は、国民が日常的に摂取する食品の成分に関する最も信頼性の高い情報源としての役割を担っている。

本ブリーフィングでは、2020年版(八訂)の主要な特徴と改訂点を網羅的に解説する。特に注目すべき点は以下の通りである。

  • 網羅的な食品収載: 18の食品群にわたり、合計2,478の食品が収載されている。これには、原材料だけでなく、様々な調理法(ゆで、焼き、揚げ等)を施した食品や、調理済み流通食品も含まれる。

  • エネルギー計算方法の精緻化: 成分値の確からしさを評価する「評価コード(G/NG)」を導入し、食品ごとに最も信頼性の高い炭水化物の値を用いてエネルギーを計算する方式に改訂された。これにより、エネルギー値の精度が大幅に向上した。

  • 炭水化物成分の細分化: エネルギーとしての利用性に応じて炭水化物を「利用可能炭水化物(単糖当量)」、「食物繊維総量」、「糖アルコール」などに細分化し、それぞれに異なるエネルギー換算係数を適用することで、より正確な栄養評価を可能にした。

  • 調理による成分変化データの拡充: 調理方法ごとの重量変化率や、揚げ物・炒め物における脂質量の増減など、調理が栄養価に与える影響を具体的に示すデータを多数収載し、実践的な栄養計算を支援している。

  • 補足情報の提供: 栄養計算の精度をさらに高めるため、調理に使用される「水道水中の無機質」に関するデータを地域別・水源別に提供している。

本資料は、食品成分表の目的、構成、主要な改訂点、そして各栄養成分の定義や調理に関する留意点を体系的に整理し、利用者がその内容を深く理解し、効果的に活用するための一助となることを目的とする。

--------------------------------------------------------------------------------

1. 日本食品標準成分表の目的と役割

食品成分表は、国民が日常的に摂取する食品の成分を明らかにし、国民の健康維持・増進を図るための基礎データを提供することを主目的とする。同時に、食料の安定供給計画を策定する上でも不可欠な資料として位置づけられている。

その利用範囲は極めて広く、多岐にわたる。

  • 給食管理・栄養指導: 学校給食、病院給食などの給食管理や、食事制限、治療食といった栄養指導の現場で広く活用される。

  • 行政施策: 厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」の策定や「国民健康・栄養調査」、農林水産省による「食料需給表」の作成など、国の重要施策の基礎資料として用いられる。

  • 教育・研究: 高等教育(栄養学、食品学)、中等教育(家庭科、保健体育)における教育分野や、栄養学、医学、農学などの研究分野で必須のデータとして利用される。

  • 食品産業: 2020年4月に完全施行された食品表示法に基づく栄養成分表示制度において、事業者が栄養成分を合理的に推定するための基礎データとして頻繁に利用されている。

2. 構成と特徴

収載食品と分類

  • 収載食品数: 全2,478食品

  • 食品群: 全18群に分類されている。

| 食品群 | 食品数 | | 食品群 | 食品数 | | :--- | :--- | :--- | :--- | | 1 穀類 | 205 | | 10 魚介類 | 453 | | 2 いも及びでん粉類 | 70 | | 11 肉類 | 310 | | 3 砂糖及び甘味類 | 30 | | 12 卵類 | 23 | | 4 豆類 | 108 | | 13 乳類 | 59 | | 5 種実類 | 46 | | 14 油脂類 | 34 | | 6 野菜類 | 401 | | 15 菓子類 | 185 | | 7 果実類 | 183 | | 16 し好飲料類 | 61 | | 8 きのこ類 | 55 | | 17 調味料及び香辛料類 | 148 | | 9 藻類 | 57 | | 18 調理済み流通食品類 | 50 |

  • 分類体系: 収載食品は「大分類」「中分類」「小分類」「細分」の四段階で体系的に分類・配列されている。大分類は原則として生物の名称を五十音順に配列している。

エネルギー単位

エネルギー値は、国際単位系(SI)であるキロジュール(kJ)と、従来から広く用いられているキロカロリー(kcal)の両単位を併記している。これは、計量法において熱量の計量単位としてカロリーの使用が認められている状況を勘案したものである。

3. エネルギー計算方法の主要な改訂

2020年版(八訂)では、エネルギー計算方法がより科学的で精緻なものに改訂された。これは、各食品の成分値の確からしさを評価し、それに応じて最適な計算式を適用する画期的なアプローチである。

評価コード(G/NG)の導入

各食品について、水分を除く一般成分(たんぱく質、脂質、炭水化物、灰分など)の合計値が、乾物量に対して理論的に妥当な範囲内にあるかを評価する。

  • 評価コード「G」(Good): 合計値が妥当な範囲内にある食品。成分値の信頼性が高いと判断される。

  • 評価コード「NG」(Not Good): 合計値が妥当な範囲から外れている食品。成分値間に何らかの矛盾がある可能性が示唆される。

評価コードに基づく計算式の選択

この評価コードに基づき、エネルギー計算に用いる炭水化物の成分値と換算係数が選択される。

  1. 評価コードが「G」の場合:

    • **利用可能炭水化物(単糖当量)**の値を用いる。これは、でん粉や糖類などを直接分析または推計した値であり、より実態に近い。

    • エネルギー換算係数: 16 kJ/g (3.75 kcal/g) を適用する。

  2. 評価コードが「NG」の場合:

    • 差引き法による利用可能炭水化物の値を用いる。これは、食品全体(100g)から水分、たんぱく質、脂質、食物繊維、灰分などを差し引いて算出した値である。

    • エネルギー換算係数: 17 kJ/g (4 kcal/g) を適用する。

この改訂により、各食品のデータ特性に応じた最適なエネルギー値を算出することが可能となり、成分表全体の精度が向上した。エネルギー計算に利用された成分値には「*」が付記され、どの値が用いられたかが明確にされている。

4. 主要栄養成分の分類と定義

炭水化物(Carbohydrates)

エネルギー源として重要である炭水化物は、その利用性に応じて細分化され、それぞれに適切なエネルギー換算係数が設定された。

  • 利用可能炭水化物(単糖当量): でん粉やぶどう糖、しょ糖などを直接分析または推計した値。二糖類やオリゴ糖、でん粉は、単糖の質量に換算されて合計される。エネルギー換算係数は 3.75 kcal/g。

  • 食物繊維総量(Dietary fiber, total): プロスキー変法やAOAC. 2011.25法などにより測定された値。エネルギー換算係数は 2 kcal/g。

  • 糖アルコール(Polyols): ソルビトール、マンニトールなど。新たにエネルギー産生成分として収載され、種類ごとに個別の換算係数が設定されている(例:ソルビトールは2.6 kcal/g、マルチトールは2.1 kcal/g)。

  • 有機酸(Organic acids): 酢酸、クエン酸など。個別の換算係数が適用される。

たんぱく質(Proteins)

  • 2種類のたんぱく質:

    • アミノ酸組成によるたんぱく質: アミノ酸の分析結果から算出した、より正確なたんぱく質量。

    • 窒素量から計算したたんぱく質: 基準窒素量に「窒素-たんぱく質換算係数」を乗じて算出。

  • 窒素-たんぱく質換算係数: 従来の「6.25」を一律に用いるのではなく、穀類(小麦粉: 5.70)、豆類(だいず: 5.71)、乳類(6.38)など、食品ごとに定められた係数が適用され、算出の精度を高めている。

無機質とビタミン

  • 無機質: ナトリウム、カリウム、カルシウム、鉄、亜鉛など13成分を収載。それぞれの生理作用や欠乏・過剰時の影響について解説されている。

  • ビタミン:

    • 脂溶性ビタミン: ビタミンA, D, E, K

    • 水溶性ビタミン: ビタミンB群, Cなど

    • ビタミンA: レチノールに加え、プロビタミンAであるα-カロテン、β-カロテン、β-クリプトキサンチンを収載し、これらから「レチノール活性当量(μgRAE)」を算出している。

      • レチノール活性当量 (μgRAE) = レチノール (μg) + 1/12 × (β-カロテン (μg) + 1/2 × α-カロテン (μg) + 1/2 × β-クリプトキサンチン (μg))

    • ナイアシン: 食品からの摂取に加え、体内でトリプトファンから生合成される分を考慮した「ナイアシン当量(mgNE)」を算出している。

      • ナイアシン当量 (mgNE) = ナイアシン (mg) + 1/60 × トリプトファン (mg)

食塩相当量

ナトリウム量(mg)に2.54を乗じて算出される。この係数は、ナトリウム(Na)と塩素(Cl)の原子量から導き出されたものである。

5. 調理による成分変化に関する情報

食品成分表は、生の食材だけでなく、日常的に行われる調理後の食品の成分値も豊富に収載している。

  • 調理方法: 水煮、ゆで、蒸し、焼き、油いため、素揚げ、天ぷら、フライなど、多岐にわたる加熱調理および水さらし、塩漬などの非加熱調理を対象としている。

  • 調理条件: 調味料は原則として添加せず、調理器具から無機質の影響がないよう配慮されている。「ゆで」の操作には、野菜の種類に応じた湯切りや水冷・手搾りといった伝統的な後処理も含まれており、実践的な成分値となっている。

  • 詳細データ:

    • 表12 調理方法の概要および重量変化率表: 各食品の具体的な調理過程と、調理前後での重量変化率(%)が示されている。

    • 表13 揚げ物等における衣の割合及び脂質量の増減: 天ぷらやフライについて、生の材料100gあたりの衣量や吸油量(g)が詳細に記載されている。

    • 表14 炒め物における脂質量の増減: 油いためやソテーについて、生の材料100gあたりの吸油量(g)が示されている。

これらのデータは、調理による栄養素の損失や脂質の増加を考慮した、より正確な栄養価計算に不可欠である。

6. 食品群別の詳細情報

18の各食品群について、個別の食品ごとに成分値に関する詳細な留意点が記載されている。これには、品種(例:小麦の硬質・軟質)、産地(国産・輸入)、製造法、調理法、成分値の決定根拠(分析値、計算値、文献値など)が含まれる。

  • 穀類: 米の炊飯条件(加水量、炊飯器の種類)による重量変化率(例:精白米うるち米は210%)が示されている。

  • 野菜類: 「ほうれんそう」はビタミンC含量が季節で大きく異なるため、「夏採り」と「冬採り」に分けて収載されている。

  • 肉類: 牛肉は「和牛肉」「乳用肥育牛肉」「交雑牛肉」「輸入牛肉」に細分化され、さらに「リブロース」「サーロイン」などの部位別にデータが提供されている。

  • 魚介類: 天然魚介類は漁場や漁期による成分変動を考慮し、養殖魚は「たいせいようさけ」や「くろまぐろ」などが収載されている。

  • 豆類: 「だいず」は「黄大豆」「黒大豆」「青大豆」に分けられ、国産・輸入別のデータも提供。豆腐や納豆などの加工品も豊富に収載。

  • 調理済み流通食品類: 近年の食生活の変化を反映し、セントラルキッチンなどで製造される「そう菜」類が多数収載された。これらの成分値は、複数の事業者の標準的なレシピに基づいて計算されている。

7. 補足データと利用

水道水中の無機質

調理、特に炊飯や汁物において水道水は無機質の供給源となる。より正確な栄養計算を可能にするため、全国の水道水に含まれる無機質(ナトリウム、カルシウム、マグネシウム等)の量が、地方区分別および原水(表流水、地下水等)別に中央値・最大値・最小値で示されている。

電子版とデータベース

食品成分表の全文および各成分表の電子ファイルは、文部科学省のウェブサイトで公開されている。これにより、データの検索や加工が容易になっている。公開されているデータには、本表のほかに、より専門的な下記成分表が含まれる。

  • アミノ酸成分表

  • 脂肪酸成分表

  • 炭水化物成分表

  • 有機酸成分表


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