By Artfarmer2026年1月15日
インスリン分泌の真の目的
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解説を聞きながらご覧になるとより理解が深まります。
現代医学では、インスリンを「血糖値を下げるホルモン」と教えます。しかし、この理解は本当に正しいのでしょうか。進化生物学と生理学の視点から考えると、まったく異なる姿が見えてきます。
太古の人類にとって、血糖値が急上昇するような食物(蜂蜜、熟した果実、デンプン質)は極めて稀でした。それを連日大量に摂取できる環境など、ほぼ存在しませんでした。
つまりインスリンは、日常的に血糖を処理するホルモンではなく、たまに訪れる「豊穣」を脂肪として保存するための非常スイッチとして進化したのです。
インスリンの主目的:血糖値を下げること
エネルギー貯蔵:副次的な機能
インスリンの主目的:飢餓に備えたエネルギー貯蔵
血糖降下:その結果として起こる現象
インスリンの主要作用を見てみましょう:
脂肪合成促進
タンパク質合成促進
グリコーゲン貯蔵促進
脂肪分解抑制
ケトン体産生抑制
これらはすべて「エネルギーを体内に蓄える」方向の作用です。
「インスリン=血糖降下ホルモン」という定義では、なぜ脂肪合成を促進するのか、なぜタンパク質合成を促進するのか、うまく説明できません。
しかし**「インスリン=栄養貯蔵ホルモン」**と定義すれば、すべての作用が「今あるエネルギーを明日のために蓄える」という一つの目的に収束します。
インスリンとは、摂取した栄養を「今は使わず、体内に保存せよ」と命令する同化・貯蔵ホルモンである。血糖低下はその必然的帰結である。
この定義の優れた点は、「摂取した糖質」ではなく「摂取した栄養」としている点です。インスリンが反応しているのは、血中に現れた「余剰の栄養シグナル」であって、本質的には糖そのものではありません。
この視点で見ると、2型糖尿病の本質は明確です。
インスリンが悪者なのではない。インスリンが出続けなければならない食環境が異常なのです。
飢餓に備えるホルモンを、飢餓の来ない社会で一日中押し続けている状態——これがインスリン抵抗性、高インスリン血症、脂肪肝、内臓脂肪、そして糖尿病を生みます。
糖質制限は、インスリンを「否定」する食事法ではありません。インスリンを「本来の出番だけ」に戻す食事法です。
日常:インスリン低値 → 脂肪・ケトンを自由に使う
たまの糖質:インスリン上昇 → 保存モードに切り替え
これは、進化的に自然な代謝リズムを回復させる方法なのです。
多くの医学教育では、こう教えられています:
インスリン = 糖のホルモン
役割 = 血糖値を下げる
糖尿病 = インスリンが足りない/効かない病気
しかし、このモデルでは説明できないことが多すぎます。なぜ高インスリン血症が問題になるのか。なぜ血糖が正常でも肥満・脂肪肝が進むのか。なぜ糖質制限でインスリン量が減り改善するのか。
「糖質制限の目的は血糖値を下げること」と書く医師がいます。しかし、これは根本的に誤っています。
糖質制限の目的は、血糖値を上げないことです。
「血糖値を下げる」という発想は、血糖値は上がるものとして、上がったら下げればよいという事後処理モデルです。このモデルでは、食後高血糖を前提とし、インスリン分泌を正当化し、高インスリン状態を問題視しません。
一方、「血糖値を上げない」という発想は、原因制御モデルです。血糖が上がらない食事設計をし、インスリンを出さない生活設計をすることで、代謝の土台を乱しません。結果として、血糖は自然に低位安定し、インスリンは必要最小限となり、脂肪は燃え、合併症リスクは下がります。
血糖値が下がるのは目的ではなく、必然的帰結なのです。
人類におけるインスリンの主たる役割は、飢餓に備えたエネルギー貯蔵です。血糖値降下作用は、その結果にすぎません。
インスリンは「血糖の掃除屋」ではなく、「冬に備える倉庫係」なのです。現代人は、倉庫が満杯なのに毎日「もっと貯めろ」と命令している——そこに問題があります。
この視点の転換は、糖質制限を単なる「食事法」ではなく、人類史に沿った代謝の再起動として捉えることを可能にします。そして、糖尿病や肥満のメカニズムをより深く理解する鍵となるのです。
この記事の考察は、9年間の独学による生化学・栄養学の研究と、自身の糖質制限実践(薬なしでHbA1c 5.9を維持)に基づいています。