出会い。
アニメ『機動戦士ガンダム、ジークアクス』から
司祭 ミカエル 藤原健久
サマリアの女が水を汲みに来た。イエスは「水を飲ませてください」と言われた。・・・サマリアの女は、「ユダヤ人のあなたがサマリアの女の私に、どうして水を飲ませてほしいと頼むのですか」と言った。・・・
超人気作品「機動戦士ガンダム」の最新作です。最初の数話を編集した先行上映版を映画館で観ました。これがまた面白い!今、テレビで放映されていることでしょう。お話が大きく展開されていることと思います。
いわゆる「ロボットアニメ」と言われる中で、最も多くのシリーズが放映されている作品だと思います。私が小学生の頃に最初の作品が放映されたのですが、従来の「正義の味方の巨大ロボット」ではなく、「戦争」で用いられる「兵器」としてロボットを描き(作中では「モビルスーツ」と呼ばれます)、人間が用いるに適当な大きさで表現されています。
世界観の魅力は、何よりも「リアルさ」です。「正義‐悪」という図式ではなく、「敵‐味方」が争う「戦争」が舞台になっています。それは、ロボット同士の戦いだけでなく、人間ドラマにも共通しています。ごく普通の一般市民が戦争に巻き込まれ、深い葛藤を抱きながら戦います。
今作の「リアルさ」は、「戦後」を描いたところにあります。戦争が終わり、不要になったロボットは、警察などの治安活動や、工事などの作業に用いられています。そして、「戦後」の一つの特徴は「混乱」です。戦争で疲弊した地域では、秩序や治安が乱れます。そのような中で、非合法な「ロボットバトル」が行われて、ギャンブルに用いられている、という設定です。
人間ドラマでは「難民」の問題が取り上げられています。主人公の少女は、その才能から「ロボットバトル」に誘われますが、断ります。けれども、一つの出会いで変わります。偶然知り合ったもう一人の少女は難民で、人々や警察から迫害されているのです。理不尽な迫害に怒りを覚えた主人公は、彼女を救うためにロボットに乗るのです。
「出会い」が私たちを、思いもしなかった方向に導くことがあります。私は神学生の時に実習で沖縄を訪れました。そこで、戦争の傷跡や、広大な米軍基地、ハンセン病の方々の苦しみに出会いました。「この出会いにどう応えたらいいんだ?」という問いが、その後の私の基盤になっています。問いに対する応えは、今も模索中です。
イエス様も様々な出会いをされました。その中には、イエス様も思いもしなかったものもあったのでしょう。その出会いに誠実に応える中で、新たな、神の国への道が開けてきたのだと思います。出会いを大切にしていきたいです。