今回は、被害者が取れる対策を、種々の状況に分けて考えていきます。
ただし、Bearは弁護士等ではありませんので、あくまでも可能性の指摘ということを理解して、ご自身でチェック、可能であれば弁護士に相談してみてください。
(1)薪ストーブの使用者が刑法に触れる場合
これに関しては、特殊な場合となりますが、あまりにも「薪ストーブの煙突」と「被害者の家屋の窓や給気口」が近い場合に可能性があります。その様な場合には、排気ガス中の二酸化炭素・一酸化炭素が被害者宅に流入して、死亡・失神・中毒等が起こる可能性があります。その場合は、以下の法律に違反する可能性があります。
・業務上過失致死
・業務上過失致傷
・傷害罪
ここで、なぜ業務上が付いているかというと、法律上は「業務」とは「仕事」ではなくて「反復して行う行為」を指すためです。暖房器具を使う場合は、たまたま最初の1回目でなにか問題を起こしたとしても、通常は冬に反復して行うはずのことですので、業務として扱われます。
そのため、たまたま一回使っただけでも、死亡・失神・傷害等の極めて重大だ結果を生じさせた場合は、業務上過失致死傷に問われる可能性があります。その場合は、対応してもらう先は警察となります。ただ、明らかに薪ストーブの排気ガスが室内に流入しているのが匂いで分かる状況で、失神等の健康被害が発生する場合は、救急車を呼ぶべきです。余裕があったら、警察も呼びましょう。
また、傷害罪に関しては、故意でなくて、未必の故意も成立条件に入ります。つまり、薪ストーブの排気ガスによって隣人が失神等をすることを知っているのに、それを繰り返した場合は成立する可能性があります。しかし、このレベルの薪ストーブ利用者が居たとしたら、引っ越しを考えたほうが良いかもしれません・・・。
(2) 公害等調整委員会
総務省および各都道府県には、公害等調整委員会という組織があり、比較的低コストで公害関連の問題の調停をしてくれます。ただ、調停は不成立となる可能性があります。
(3) 弁護士会の紛争解決センター(ADR)
弁護士会では、紛争解決センターによる調停を受け付けてくれます。居住地の弁護士会に問い合わせてみてください。
(4)民事訴訟
弁護士に相談して、隣人を訴えて使用の停止を求めます。
(5)地方自治体で条例を制定
これが出来るのは、地方議会の議員しか出来ません。しかし、議員も臭いだけでは動かないという話をよく聞きます。臭いと言う主張が、自治体の人口の1割等になれば別かもしれませんが、住宅密集地における薪ストーブの被害は、周囲200m程度にとどまると思います。今後、非常識な薪ストーブが増えたとすると、臭いという被害者の数が増えて、それだけで議員も動いてくれるかもしれません。しかし、現状では難しいようです。
このブログで紹介した葉山の青山氏は、大気汚染状況を比較的安価な装置を用いて測定し、データを地方議員に示すことで、行政府に対して何らかの、被害者救済につながる具体的な対処を求める活動をしているようです。
(6)引っ越す
現状では、家族に健康被害が出てしまった場合等は、引っ越すのが一番かしこいかもしれません。正直、趣味の薪ストーブで隣人に健康被害が出てもやめない場合は、人間性が疑われる、危険人物が隣人ということになるわけです。というわけで、大変悔しいかもしれませんが、賃貸等であれば引っ越しも良い選択肢の一つです。ただ、引っ越し先でも被害に合う可能性は残ります。
というわけで、次回は、持ち家のリスク(隣人ガチャ)に関してです。(2025/01/10)