薪ストーブをはじめとするバイオマス燃料の燃焼時の排気ガス中には、様々な有害物質が含まれています。なぜ、煙と言わないかは、車をイメージしてもらえば分かります。車のマフラーからは、エンジンでガソリンを燃焼させたあとの排気ガスが出ていますが、それを煙とは呼ばないはずです。当然、排気ガス中には様々な有害物質が含まれています。しかし、外から見えるのは白い煙です。煙というと、煙たいだけで無害なイメージがしますが、排気ガスと言うと急に有害な気がしてきます。
この時点で、薪ストーブ会社は意図的に一つの事実を歪めることによって、真実を隠しています。ガソリンを燃やしているときに発生する気体等を排気ガスというのに、なぜ、薪を燃やしているときに発生する気体等は排気ガスと言わないのでしょうか?化石燃料だから有害?石炭、石油、天然ガスは有害?
そんな事はありません。
重要なことは、
「薪等のバイオマス燃料の燃焼時にも、有害物質は発生する!!」
ということです。
ここで、以下の疑問を感じる人もいると思います。
「薪は自然の木から作ったもので、燃やしても安全なんじゃない?」
これが、自然のものであればエコ、ロハスといった、誤った考え方です。
逆に、この質問に対しては皆さん、同じ答えが帰ってきます。
「焚き火の煙を吸い込み続けたら体に悪影響はありますか?」
当然、皆さんこう答えるでしょう。
「焚き火の煙を吸い込んだら、体に悪いに決まっている!下手すると、一酸化炭素(CO)中毒になるじゃないか!」
そうなんです。しかし、何故か、薪ストーブの煙になると、勘違いをしている方がたくさんいます。まずは、煙と呼ばずに「排気ガス」と呼びましょう。
次に注意していただきたいのです。薪ストーブ会社ですら、薪ストーブで燃やすのは、薪から発生する可燃性のガスだ、と主張しています。 例えば、天然ガスの主成分はメタンですが、合成したメタンだろうが、天然ガスから分離したメタンだろうが、燃やしたら同じ様な排気ガスを排出します。ガソリンだって、炭化水素です。気化した炭化水素を燃焼させているわけです。とすると、薪ストーブ会社が主張するように、薪ストーブで燃やす可燃性のガス、つまり、炭化水素ガスを燃やせば、当然、発生する排気ガスには有害物質が含まれることとなります。
そろそろ、薪ストーブの煙という表現が間違っていて、薪ストーブの煙突からは有害な「排気ガス」が出てきているということを、感覚的に理解して頂けたのではないでしょうか。
さて、薪ストーブの排気ガス中には、COや二酸化炭素(CO2)以外にも、VOC(揮発性有機化合物)、PAH(多環芳香族炭化水素)と呼ばれるガスが含まれていることが知られています。これ以外に、PM2.5と呼ばれる、直径が2.5ミクロン以下の微小粒子状物質も含まれています。直径が髪の毛の1/30程度以下の微粒子であるPM2.5は、車の排気ガスに含まれているだけでなく、国外から風に乗って運ばれてくる、というニュースが良くテレビ等で流れています。
これらの排気ガス中に含まれるVOCやPAHに分類されるガス成分の中には、発がん性物質も含まれています。PM2.5も、小さいために肺の奥深くまで入り込むために、子供の小児喘息発生率を優位に高くする、脳卒中等の発生率を高くする、といった論文が数多く報告されています。そのため、薪ストーブの煙の被害者が、「煙の匂いがする」と言うと、
「たかが、煙の匂いくらいでゴチャゴチャ言うなんて神経質だ」
と、薪ストーブ使用者は思うはずです。なぜなら、薪ストーブ会社に煙は無害だ説明されているので。当然、使用者は、そう感じて使用をやめないわけです。
しかし、薪ストーブの排気ガス問題は、特に排気ガスを吸いたくもない近隣住民が、強制的に有害であることがわかっている種々の化学物質やPM2.5をはじめとする有害物質を、自宅という最も安全であるべき場所で吸わされることがキーになるのです。なお、これらの化学物質はPM2.5の規制値は、WHOや環境省によって設定されていますが、ここで一つ忘れないで欲しいことがあります。これらの規制値は、あくまで、健康な成人に対して設定されているということです。当然、乳幼児、子供、老人等に対してはこれらの規制値以下でも悪影響が出る可能性があります。また、喘息等の呼吸器疾患を持つ人に対しても、大変有害です。
喘息に関しては、名前を聞いた方もいるかと思います。この病気は、アレルギー反応によって、最悪、窒息死する病気です。その様な呼吸器疾患を持つ人の周りで、薪ストーブの様な趣味性の高い暖房器具を、先進国であるにほんにおいて使う権利など、誰もありません。現在、規制法令がなかったとしても、それは違法ではない、つまり、脱法状態なだけとなります。脱法ドラッグはすぐに規制されるのに、薪ストーブの排気ガスが規制されないのはなぜでしょうか?
皆さん、「四日市ぜんそく」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?4大公害のうちの一つとして知られる四日市ぜんそくも、当初は規制する法律がなかったのですが、公害による死者まで出しました。子供を含む、喘息患者の窒息死、更には、喘息が治らないことを苦にして、対策を取らない一部政治家を言及しての自殺まで出ました。その後、心ある弁護士が法定で争って、政府も動かした結果、現在の規制法案が出来たのです。気になる方は、wikipediaで四日市ぜんそくを調べると、経緯がよく分かります。このあとは、規制法令に関してです(2025/01/10)