國學院大學の博物館学
博物館学講座 開講65年の物語
Our Story
樋口清之と博物館学講座の開講
HIGUCHI Kiyoyuki and Our Museum Studies
1928年(昭和3)、うら若き考古学徒・樋口清之は学部の学生の身分でありながら、中学時代に奈良県各地で収集した考古コレクション約3,000点を本学に寄贈、それをもとに「考古学標本室」が創設されました。
遡ること1904年(明治37)、最初の学術展覧会として東京帝国大学人類学標本展覧会を開催した坪井正五郎(東京帝国大学教授/國學院大學講師)、そして彼に師事する鳥居龍蔵(東京帝国大学助教授/國學院大學教授)は、近代人類学・考古学で種々の業績を遺しただけではなく、近代博物館学の暁を告げる学者の一人としてその名を連ねました。
この鳥居龍蔵を師と仰ぐ樋口清之による考古学標本室改め、考古学資料室(1932年)の形成、そしてその本格的な大学博物館としての拡充によって、國學院大學の博物館学は少しずつ萌芽の兆しをみせてきました。
さらに樋口清之は学生として勉学に勤しむ傍ら、近代博物館学の礎を築いた棚橋源太郎(東京教育博物館・東京博物館館長/ICOM名誉会員)にも学ぶことでその学識を深めました。
やがては、本学に着任して25年後、博物館法が制定される6年後の1957年に國學院大學博物館学講座を開講しました。
このようにして、國學院大學における博物館学は、1952年には博物館法に定める博物館相当施設の指定を受けた最初の大学博物館のひとつとなった考古学資料室を附属施設として、国家資格としての学芸員の養成の一翼を担うとともに本格的にその幕を開けました。
博物館学講座の拡充
Expand Our Museum Studies
樋口清之は、考古学者として1947年の静岡県登呂遺跡発掘調査にはじまる戦後考古学の黎明を支えたのみならず、加藤有次とともに長らく博物館学講座を担当し、後進の育成にあたりました。
また、樋口清之、加藤有次はともに本学を拠点として、1957年には博物館学講座を開講する大学間の連絡組織として「全国大学博物館学講座協議会」、1973年には博物館をフィールドとした研究を対象とした学術的な研究組織として「全日本博物館学会」の創設に携わり、戦後博物館学のインフラストラクチャー整備にも寄与してきました。
この間、学芸員資格取得者のみならず、全国の博物館や美術館で活躍する学芸員、大学で学芸員の養成を担う研究者を本学から数多く送り出してゆきました。
なお、博物館学講座の開講以来、研究活動や博物館実習を中心とした教育活動の舞台ともなった考古学資料室は、1975年に考古学資料館へと発展拡大し、半世紀にわたって本学における博物館学の発展を支えていきました。
やがては、神道学資料室(1963年)を母体とする神道資料館(1990年)と統合、新たに学術資料館として改組されて現在の國學院大學博物館(2007年)へと連なり、2018年(平成30)には開館90年を迎えました。
新世紀に入り、博物館学講座は青木豊に引き継がれ、2009年には博物館学の研究者や上級学芸員の育成を目的とした大学院高度博物館学教育プログラムの構想が平成21年度文部科学省「組織的な大学院教育改革推進プログラム」に採択されました。
これによって、大学院文学研究科史学専攻考古学コースにおいて培われてきた大学院教育における博物館学は、博物館学コースが新設されたことで新たな転換期を迎えました。
本学に博物館学講座が開講されて65年、学芸員資格を取得した院友は7,000名を超えました。
博物館学講座のこれから
Our Museum Studies for the Future
國學院大學の博物館学は、これまでの歴史のなかで数多くの院友によって種が蒔かれ、育まれていった研究の蓄積をプラットフォームに、次のステップとしてめまぐるしく変化しつづける21世紀の多様に富む社会に高い関心を向けながら、博物館学的な知のアップデートを目指していきます。
さらには、学際的かつ綜合科学的な視野から、新時代においてなおも拡張しつづける「博物館/ミュージアム」を見つめなおしてゆくことで様々な知見を切り拓き、社会に還元していくための試みに挑み続けています。
博物館学のあゆみ:1957-2022
A Chronological Table of Our Museum Studies History, 1957-2022
1928年
樋口清之、考古コレクション約3,000点を本学に寄贈
鳥居龍蔵教授をはじめとする本学関係者の支持により、常盤松校舎本館に考古学標本室が創設される
1929・1930年
樋口清之、上野の東京科学博物館(現在の国立科学博物館)で前館長・棚橋源太郎に博物館学を学ぶ
1932 年
樋口清之、国史研究室助手・考古学資料室主任として本学に就任(~1979年)
1909~1997 國學院大學文学部講師、教授を経て名誉教授、國學院大學考古学資料館名誉館長、國學院大學栃木短期大学名誉学長、全日本博物館学会名誉会長。このほか、全国大学博物館学講座協議会委員長、日本風俗史学会会長、社団法人日本博物館協会理事等を歴任。文学博士。著書に『梅干と日本刀』(祥伝社・1974年)ほか多数。シリーズ『博物館学講座』(雄山閣出版)の編集に携わる。
1952年
考古学資料室、昭和27年12月3日文部省告示第95号をもって、本年に施行された博物館法(1951年公布)に定める博物館相当施設に指定される
1957年
本学に博物館学講座が開講される
本学において全国大学博物館学講座協議会設立総会を開催、樋口清之教授が委員長に選任される
1960年
常盤松校舎図書館棟竣工、旧本館より研究室を移転
1966年
加藤有次、文学部専任講師として本学に就任(~2002年)
1932~2003 國學院大學考古学資料館学芸員、文学部専任講師、助教授、教授を経て名誉教授。國學院大學考古学資料館館長、全国大学博物館学講座協議会委員長、全日本博物館学会会長、川崎市市民ミュージアム館長、社団法人日本博物館協会評議員等を歴任。博士(歴史学)。著書に『博物館学序論』(雄山閣出版・1977年)、『博物館学総論』(雄山閣出版・1996年)ほか多数。シリーズ『新版博物館学講座』(雄山閣出版)の編集に携わる。
1968年
常盤松校舎2号館竣工、考古学・博物館学実習室が新設され、研究室を移転
1969年
『國學院大學博物館學紀要』を創刊
1973年
本学において全日本博物館学会設立大会を開催、樋口清之教授が会長に選任される
1977年
文学部附属として博物館学研究室が設置される
1979年
加藤有次教授、博物館学主任教授に着任
樋口清之名誉教授の学績を顕彰して、本学に考古学・博物館学に関する優秀な研究業績を対象とした「樋口博士記念賞」が設けられる
1980年
『國學院大學博物館學紀要』を再刊、第4輯を樋口清之名誉教授の古稀記念論文集として刊行
1987年
『國學院大學博物館學紀要』第11輯を、樋口清之名誉教授の喜寿記念論文集として刊行
1997年
『國學院大學博物館學紀要』第21輯を、樋口清之名誉教授の米寿記念論文集として刊行
2002年
青木豊教授、博物館学主任教授に着任(~2021年)
2003年
『國學院大學博物館學紀要』第27輯を、加藤有次名誉教授の古稀記念論文集として刊行
故・加藤有次名誉教授の学績を顕彰して、本学に博物館学に関する優秀な研究業績を対象とした「加藤有次博士記念賞」が設けられる
2005年
『國學院大學博物館學紀要』第29輯を、故・加藤有次名誉教授の追悼号として刊行
2007年
國學院大學博物館学講座 開講50年
2008年
『國學院大學博物館學紀要』第32輯を、博物館学講座開講50年の記念特集として刊行
『院友学芸員』を創刊(~2021年)
渋谷キャンパス再開発に伴う学術メディアセンター棟(AMC)の竣工、博物館学専門実習室が新設され、研究室を移転
2009年
大学院高度博物館学教育プログラムの構想が、平成21年度文部科学省「組織的な大学院教育改革推進プログラム」に「高度博物館学教育プログラム―体系的な知識と技能を備えた博物館学研究者と上級学芸員の養成―」として採択される(~2012年)
研究開発推進機構研究開発推進センター内に、博物館学教育研究情報センターを開設(~2012年)
大学院文学研究科史学専攻に、博物館学コースを開設
2017年
『國學院雜誌』第118巻第11号を、博物館学講座開講60年の記念特集として刊行
2021年
内川隆志教授、博物館学主任教授に着任
2022年
『Musette―國學院大學博物館學研究』を創刊
國學院大學 創立140年・國學院大學博物館学講座 開講65年