本ホームページの紹介内容は、北海道大学 創成研究機構
同位体顕微鏡システムをご利用・またはご利用を検討頂いてる皆様へ向けた内容となります。
上記以外で所有の同一装置(仕様が同一であっても)において、本マニュアルの内容に沿って操作やエラー解決などを行った場合の結果についての保証、および起因して生じたトラブルについての責任は負いかねますこと、ご承知おきください。
初版:塩野 2023年12月1日
本稿では、EM VCMクライオワークステーションから、同位体顕微鏡まで試料を搬送するための準備手順を記載します。
導電処理については、EM ACE600 高真空スパッタコーター を参照ください。
装置利用にあたって(注意事項)
この装置では液体窒素(LN2)を使用します。液体窒素の取り扱いについて今一度理解し、怪我や事故が起こらないよう安全第一で作業を行ってください。
Leica EM VCMの作業手順
詳細はEM VCM クライオワークステーション を参照する。
① 装置背面の電源を入れ、タンク(図内赤矢印)にLN2を入れる。タンク内のLN2量はパネル右上に表示される。タンクの色表示が黄色から青になるまで、LN2を注ぎ入れる。
※本作業はACE600で導電処理中に実施するといい
② ワークステーション内の、ホルダを固定するボール部分が正しい位置にあるかを確認する。冷却後はパーツの移動が難しくなるため、冷却前に確認を行う。
上記作業で使用する専用ツールは右です。
工具が入っている引き出しには、似たような工具があるので、間違えない様にして下さい。
・右真ん中写真:ボールを回転する際に使用する工具
・右写真:ボールを固定 or 固定解除する時に使用する六角
④ 装置本体を冷却する。
下記の通り、LN2量を設定する。ここを先に設定(選択)していないと、Coolingをスタートする事が出来ない。
LN2量を設定した後、ある程度冷却が進むと、パネル上の「Cooling」を選択できるようになるのでクリックし、冷却を開始する。
温度設定は不可だが、LN2量を三段階で設定することができる。
💧LN2量について
High :LN2量が最も多く、ホルダを十分浸した状態
Low :ホルダが数cm程度浸る状態
Gas :チャンバー内がLN2ガスで満たされた状態で、ホルダは浸らない
上記、LN2量は作業の種類、試料によって使い分ける。
ただし、「Gas」では、ホルダが充分に冷却されない可能性があるため、本作業では「Low」または「High」を使用する。
※LN2量が多すぎると、装置内部にLN2が入り込み故障する場合がある。
⑤ シャトルをEM VCMに接続する前に、運搬用デュワーにLN2を入れ冷やしておく。
⚠️作業中に液体窒素が少なくなって、霜が発生することがあるので、LN2は多めに入れて残量に気を配る。霜が発生しないように、必ずふたを閉めておく。
シャトルにも事前に液体窒素を入れて置き、十分に冷却しておく。
⑦ 試料ホルダをワークステーション内に入れる。ホルダを入れる際は、シャトルから落ちないよう「〇」の部分を真上にしたまま、シャトルをボール部分に入れていく。
⑧ ホルダを入れたら、シャトルのダイアルを回し、「S」の部分を真上にする。シャトルを引き抜く。
⑨ 試料をSIMS用ホルダに移す。この手順は試料により選択するホルダや手順が複数パターンある。一例(フィルム状のミクロトームサンプルの移動)を記載する。
ミクロトームからVCMへの移動は、 EM UC7 クライオミクロトーム を参照する。
移動に使用する治具やホルダは、作業直前まで乾燥機で乾燥させておく。作業は治具を入れてバブリングが治まってから始める。
※治具やホルダをワークステーションに入れたままにすると、霜が付きやすくなる。使用の度に乾燥させるのが良い。
⑨-1 ミクロトームからVCTシャトルを用いて、ワークステーション内に試料ホルダを移動する。上図赤矢印の小ねじを取り外し、金色のカバーを試料に触れないように取り外す。
⑨-2 ⑨-1で取り外した金色のカバーを、青いカップによけておく。ミクロトーム用ホルダを、試料に触れないように、ピンセットで赤矢印方向のホルダに入れ替える。
⑨-3 ⑨-1で取り外した金色のカバーを、小ねじで赤矢印の箇所に固定する。カバーが試料表面に触れないように注意する。
⑩ SIMS用ホルダを運搬用デュワーに移動させる。SIMS用ホルダを白いカップ内に立てて固定する。ツールに差し込み90°回すと、ホルダがツールに固定される。
⑪ 試料ホルダは温度が下がらないように冷却キャリアに入れて運搬する。冷却キャリアをワークステーション内で冷却して、キャリア内をLN2で満たす(柄杓や、小さな水筒でキャリア内にLN2を継ぎ足す)。ツールと試料ホルダをキャリア内に差し込み、もう一度LN2をキャリアに入れる。
⑫ 試料ホルダをキャリアに入れた状態で、デュワーの中へ運搬する(下図左)。デュワー内にキャリアを入れた際に、LN2によるバブリングが起こり、内部が見えにくくなるので、落ち着いてから作業する。LN2中にホルダが浸漬した状態でキャリアのみ取り出し、デュワー内のレールにホルダを差し込む。きちんとレールにはまっていることが確認出来たら、ツールを回して、ホルダから取り外す。
⚠️下図は、デュワー内の状態が確認しやすいように、液体窒素を入れずに作業をしている。液体窒素が入ると白煙やバブリングの発生により、デュワー内の確認が難しく、作業難易度が高くなる。実作業前に練習を行って作業になれることを推奨する。
ホルダの取り外し
ホルダがレール内にうまくはまっていないと、ツールの取り外し時にホルダがデュワー内で倒れてしまう。デュワーからレール部分を出した状態で、ホルダの取り外しのみを練習する事を推奨する。
⑬ 運搬用デュワーに蓋をして、上からアルミホイルをかぶせる。内部で脱落等しないよう慎重にSIMS装置の部屋へ運搬する。