本ホームページの紹介内容は、北海道大学 創成研究機構
同位体顕微鏡システムをご利用・またはご利用を検討頂いてる皆様へ向けた内容となります。
上記以外で所有の同一装置(仕様が同一であっても)において、本マニュアルの内容に沿って操作やエラー解決などを行った場合の結果についての保証、および起因して生じたトラブルについての責任は負いかねますこと、ご承知おきください。
初版作成:上杉 2023年10月18日
ライカHPM100では、高圧凍結時に試料に2100barの加圧をし、加圧直後に低温固定化します。この高圧により氷晶の発生や成長を抑え、試料の微細構造の損傷を防ぎます。
高圧凍結された試料の硝子用凍結の深度は、最大200μmです。これは、従来の大気圧化での各種凍結技法の10~40倍に当たります。大気圧下において、このような深さで良好の凍結を得ることはできません。
さらに、ライカEM HPM100では、独自の6mm径のキャリアシステムにより、他の高圧凍結システムでは不可能なより広い試料面積の凍結が可能になります。
1,液体窒素:本装置では大量の液体窒素(LN2)を使用します(30リットル以上)。
10Lなどのデュワー:回収デュワーに液体窒素を供給する必要がありますので、準備が必要です。
(*)液体窒素の充填は、使用者が行ってください。
(*)一番近い充填場所は、創成研究機構の01-301-1室です。
(*)使用者側で液体窒素の充填作業を出来る人がいない(学外からなど)場合は、ご相談下さい。
(*)10Lなどのデュワーをお持ちでない人はご相談下さい。IIL所有のデュワーをお貸しできる場合があります。
(同位体顕微鏡が稼働中で、使用中の場合があります。その際はご容赦ください)
2,イソプロパノール、又は無水エタノールを400ml:試料、条件によって使わないこともあります。
3,シリンダー(上部、下部)、キャリアプレート、試料ホルダー:IIL所有の物をご使用の場合、費用が発生しますがご相談下さい。
1,液体窒素:本装置では大量の液体窒素を使用します(30リットル以上)。
50L 加圧容器:現場に設置してあります。使い方を確認の上、使用して下さい。
(*)液体窒素の充填は、使用者が行ってください。
(*)一番近い充填場所は、創成研究機構の01-301-1室です。
(*)使用者側で液体窒素の充填作業を出来る人がいない場合(学外からの場合など)は、ご相談下さい。
2,回収デュワーに液体窒素を入れる際に使う卓上ポッドの類。
3,試料回収用の柄杓(ステンレス製)
4,試料プレスユニット:使い方を確認の上、使用して下さい。
5,装置内の液体窒素回収容器
(*)液体窒素の残量が多い場合、処分をどうするか、担当者までご相談下さい。
本装置では大量の液体窒素を使用します(30リットル以上)。
途中で液体窒素が無くならないよう、事前に多めに準備しましょう。
50L 加圧容器を用意していますが、場合によってはそれ以上の液体窒素を必要とする事があります。
装置背面のコンセントが接続されている事を確認する。
装置前面のpowerスイッチを押す。
右写真の「WAIT FOR AIR PRESSURE」が表示される。この表示が消えるまでExitキーも含め、操作を受け付けない。
表示が消えるまで、最大15分程度かかる時もある。
上記表示が消えると、下図の画面になる。
装置状態により、左上の表示が「wait for pressure(ポンプが動いている時)」と「wait for cool down(ポンプが動いていない時)」に切り替わる。
処理に、アルコールを使用するかどうか、選択することが出来る。
画面の上部中央の瓶の様なアイコンをクリックして、アルコール使用あり・使用なしを切り替える。
アルコールは無水エタノール、またはプロパノールを使用する。
アルコール使用あり
アルコール使用なし
装置前面にある安全カバーを開ける前に、顕微鏡を右側にずらしておく。
→
装置前面にある安全カバーを、右図の赤い矢印方向に上げる。
「CLOSE SAFETY COVER」の表示が画面に出るが、ここでは無視する。
右写真のサポートロックを操作することによって、安全カバーが上がった状態で固定する事が出来る。
サポートロックを、左写真の状態から上方向へ引き上げる事によって、安全カバーが固定される。
ネジ、ナットは固定されており動かない。
アルコールタンクの蓋を外し、内部にイソプロパノール、又は無水エタノールを400ml入れる。
この時、装置内部にこぼさないように注意する。
入れ終えたら、アルコールタンクに蓋をし、サポートロックを外して安全カバーを閉める。
⚠️アルコールは必ず、イソプロパノールか無水エタノールのみを入れてください。
装置裏側の「empty process DEWAR」, 「empty storage DEWAR」の両方のバルブが閉まっているのを確認する。
(ここが開いた状態で液体窒素を補充すると、ここから液体窒素が流れ出てしまう)
→
装置上部の液体窒素投入口から液体窒素を入れる。
容量は約50L、液体窒素量が30%以下になると稼働しないので、十分量の液体窒素を入れるようにする(LN2 STRAGEが100%になるまで)。
液体窒素を入れてから冷却されるまで、時間を要する。
液体窒素投入口は装置上部にあるため、取り扱いに注意し、安全を最優先に作業して下さい。
HPM100に付随する50L加圧容器を使用する場合、使い方に関しては、こちらのページを参照して下さい。
LN2 STRAGEの表示は、0%、30%、70%、100%の4種類しかなく、その間の細かい値は表示されません。
その為、70%の表示からいきなり30%に下がる事もあるので、値に注視しましょう。
冷却している間に、凍結処理条件の保存を行っておくと効率的である。
画面右側の部分に、希望のディレクトリ名を入力し、ENTERを押して確定する。
すると、冷凍サイクルごとのプロセスパラメーターを選択したディレクトリに保存できる。
保存した最初のファイルは、名前 /000.xlsと表示され、2つ目は/001.xlsと表示されていく。
装置の冷却が完了して凍結準備が整うと、「ready for freezing」が表示される。
参考
装置左側にある回収デュワー入れの扉を開け、デュワーに液体窒素を入れて、装置内部に格納する。
ここの液体窒素は、容器が満杯になるまで入れてください。
量が少ないと、凍結スタート時、「CHECK DRAWER LN2 DEWAR」の表示が出てスタートされません。80%程度の量でもこのエラー表示が出るので、絶えず満杯にしておく必要があります。
回収デュワー底部には突起があるため、正しい位置にデュワーをセットするようにしましょう。
セット位置が正しくない時も、凍結スタート時、「CHECK DRAWER LN2 DEWAR」の表示が出てスタートされません。
デュワーセット位置(正面)
デュワーセット位置(背面)
実験室奥のミクロトームの右側にある引き出しに入っている、「3 mm CLEM system」または「6 mm CLEM system」と表示されたケースを取り出し準備する。
本マニュアルでは、上記「3 mm CLEM system」または「6 mm CLEM system」の試料ホルダーを使う場合で説明しています。
これらは北大IILの所有物です。使用者は、同等の物を各自準備する様にいて下さい。
もし、この試料ホルダーを使用したい場合は、担当者にご相談下さい。
本装置で、試料をセットするキャリアサイズは3 mmと6 mmがあり、試料サイズ等によって使い分けます。
キャリアサイズによって、シリンダーとキャリアプレート、試料プレスユニットの仕様が異なりますので、混在しないように注意して下さい。
サンプル(試料)をセットしていない状態で、何度か試し打ちを行う。起動してすぐの状態だと圧力がうまく上がらず、圧力が上がる前に凍結してしまう場合があるからである。
ローディングステーションが右写真の状態であることを確認する。
(左側にあるローディングレバーが手前に倒れている)
もし、右写真の状態だったら、左側にあるローディングレバーを手前に倒し、右写真上の状態を作る。
左写真の青矢印の部分を指で押さえて、左側にあるローディングレバーを奥に倒し(赤矢印)、黄矢印の部分を上に上げ、そのまま奥側まで倒す。
→
右写真の赤で囲んだところに、シリンダー、キャリアプレートをセットしていく。
※本キャリアの組み合わせは6 mmキャリアを使用する場合である
左写真:下部シリンダーを載せる。上下の向きに注意する。
右写真:その上にキャリアプレートを載せる。上下の向きに注意する。
(*)今回は試し打ちなので、実際の試料はセットしない。
上部シリンダーをセットする。
上下の向きに注意する。
このまま、上部シリンダーを手前に倒してきて、下部シリンダー+キャリアプレートに重ねる。
この際、上部シリンダーが安定しなくて取れてしまう場合は、右写真の六角ネジが緩んでいる事が多いので、締め付ける。
重ねた後、さらに下側に少し力を入れて、パチンという音がするまで押し込む。
少しプレートを持ち上げてみて、しっかり上部・下部シリンダーがかみ合っていることを確認する。
このまま、さらに奥側にトータル180°倒し、ピンを装置側に押すと自動的に凍結される。
(*)大きな音がするので注意。
実験室に他の人がいたら、事前に連絡してあげると親切である。
※3 mmキャリアを使用する場合は、左図の組み合わせで作業する。
前述したように、ピンを押してもストッパーが利いて装置内部に入っていかず、「CHECK DRAWER LN2 DEWAR」の表示が出た場合は、装置左側にある回収デュワーの液体窒素量・位置を確認して下さい。
また、ポンプが稼働してる時(画面で「wait for pressure」が表示されている時)も凍結処理が出来ません。
この場合、ポンプが止まり、「ready for freezing」の表示に変わってから凍結処理を行ってください。
凍結処理が終了すると、測定結果がメイン画面に表示される(下左写真)。
この結果から、凍結処理が適切に行われたかを判断する。
また、温度と圧力の値は、グラフで表示することもできる。画面左下の「GRAPH」ボタンを押すと、凍結開始から500 msまでの結果が表示される(下記、中写真)。
グラフ表示画面の左下にある、「DETAILS」を選択すると、凍結開始から20 msまでの結果が表示され、より詳細なデータを見ることができる(下記右写真)。
「VALUES」を選択するとメインスクリーンに戻る。
Shift p/Tの値がプラスになると、実際の試料の処理が可能になる。
以下、示す試料のセッティング方法はあくまで一例です。
試料の大きさ、形状などにより、そのセッティング方法のパターンは変わります。
あくまで参考として下さい。
なお、このマニュアルで紹介しているキャリアサイズは6 mm仕様です。
ローディングステーションが右写真の状態であることを確認する。
(左側にあるローディングレバーが手前に倒れている)
もし、右写真の状態だったら、左側にあるローディングレバーを手前に倒し、右写真上の状態を作る。
左写真の青矢印の部分を指で押さえて、左側にあるローディングレバーを奥に倒し(赤矢印)、黄矢印の部分を上に上げ、そのまま奥側まで倒す。
→
右写真の赤で囲んだところに、シリンダー、キャリアプレート、キャリア、試料をセットしていく。
左写真:下部シリンダーを載せる。上下の向きに注意する。
右写真:その上にキャリアプレートを載せる。上下の向きに注意する。
2023年10月現在、試料キャリアは以下のうちType-AとType-Bを準備しています。
下の様に、いろいろ試料キャリアを組み合わせることによって、試料が入る空間のサイズなどを変えていくことが出来ます。
(下の例は試料キャリア3 ㎜の例ですが、基本的に6 mmも同じです)
次から示す試料キャリアの組み合わせは、Type-Bを2つ使う場合で、下図例赤枠の箱型を作ります。
左写真:試料キャリアType-Bを、凹の向きでキャリアプレートの溝にはめる。
必要があれば、キャリアに載るサイズに試料を切り出した後、試料をキャリアに載せる。
試料を載せたキャリアプレートに、マイクロピペットを使ってPBS,或いは純水を注ぐ。
ここで、気泡が入ると圧力が均一にかからないので注意する。
右写真:試料キャリアType-Bを、凹をひっくり返した向きでPBS:リン酸緩衝生理食塩水 (あるいは純水)と試料の上にゆっくりと載せる。
この状態では水滴量が多すぎて上手く凍結できないため、余分な水分を濾紙で吸い取り、試料キャリアの高さがフラットになるようにする。
上部シリンダーをセットする。
上下の向きに注意する。
このまま、上部シリンダーを手前に倒してきて、下部シリンダー+キャリアプレートに重ねる。
この際、上部シリンダーが安定しなくて取れてしまう場合は、右写真の六角ネジが緩んでいる事が多いので、締め付ける。
重ねた後、さらに下側に少し力を入れて、パチンという音がするまで押し込む。
少しプレートを持ち上げてみて、しっかり上部・下部シリンダーがかみ合っていることを確認する。
このまま、さらに奥側に180°倒し、ピンを装置側に押すと自動的に凍結される。
(*)大きな音がするので注意。
実験室に他の人がいたら、事前に音が鳴ることを声かける。
ピンを押してもストッパーが利いて装置内部に入っていかず、「CHECK DRAWER LN2 DEWAR」の表示が出た場合は、装置左側にある回収デュワーの液体窒素量・位置を確認して下さい。
また、ポンプが稼働してる(画面で「wait for pressure」が表示されている)際も、凍結処理が出来ません。
この場合、ポンプが止まり、「ready for freezing」の表示に変わってから凍結処理を行ってください。
高圧凍結後、試料は自動的に液体窒素回収デュワーに移動する。
表示画面、温度、圧力の曲線にて、圧力が上がってから凍結できたかを確認する。
圧力が上がる前に凍ってしまった場合はもう一度やり直す。
凍結された試料ホルダーは、回収デュワーに入り左写真の3つに分かれます(6 mmキャリアの場合)。
この3つを、液体窒素下に保ったまま(室温にさらさないで)試料プレスユニットに持って行く。
その際、右写真の様な柄杓に液体窒素を入れ、そこに入れて持って行くのが良い(他に良い手法があればそれでも可)。
試料プレスユニットを準備して、事前に内部を液体窒素で満たしておく(右写真は便宜上液体窒素は入れていいない)。
前述したように、試料プレスユニットの部品も3 mmと6 mm両方があるので注意します。
図内左が3 mm仕様、右が6 mm仕様です。
取り出したキャリアプレートを、右写真の場所にセットする。
その際、キャリアプレートの溝が上側に来るようにする。
その後、レバーを右に倒すと試料が押し出されて回収出来る。
3 mmの場合は右図。
(*)この後の試料の取り扱いは、サンプル・高圧凍結後の処理によって異なるため明記しない。
装置内部に入っている液体窒素を回収する。
HPM100は、Storage Dewerに最大40L、Process Dewerに最大10Lの液体窒素が入っている。
装置裏側の「empty storage Dewar(左側)」、「empty process Dewar(右側)」の両方のチューブを容器に入れ、両方のバルブを開いて液体窒素を回収する。
右図の容器でもあふれる場合があるので、その際は追加の容器を準備する。
液体窒素が十分回収され、液体窒素レベル(LN2 STRAGE)が0%になっていることを確認する。
メインメニューの「SYSTEM」を選択する。
「BAKE OUT ON」を選択し、ベークアウトを開始する。
この処理は時間がかかるので、大概一晩この状態で放置する。
翌日、装置裏側の「empty storage Dewar」「empty process Dewar」の両方のバルブを閉め、電源スイッチを切る。