本ホームページの紹介内容は、北海道大学 創成研究機構
同位体顕微鏡システムをご利用・またはご利用を検討頂いてる皆様へ向けた内容となります。
上記以外で所有の同一装置(仕様が同一であっても)において、本マニュアルの内容に沿って操作やエラー解決などを行った場合の結果についての保証、および起因して生じたトラブルについての責任は負いかねますこと、ご承知おきください。
初版:田保 2023年11月8日
ツールボックス
・ガラスナイフ (消耗品のため各自ご用意ください。)
・液体窒素(専用の25Lデュワーに予め汲んできておいてください。)
・卓上ポット(液体窒素用)
・水筒 ・柄杓 ・プラカップ ・工具類(ピンセット、ドライバー、六角レンチ、専用ツール) ・耐冷作業手袋 etc.
① クライオチャンバーに試料ホルダ、ナイフホルダ、VCTシャトル用ホルダ(スパッタする場合)を取り付ける。
EM FC7 クライオチャンバー
ナイフホルダ
VCTシャトル用ホルダ
↑ピン用試料用
↑高圧凍結試料キャリア(3mm)用
試料ホルダ
*試料ホルダには、標準ホルダ(ピン用)、高圧凍結装置キャリア用他、何種類かあり、使用する試料形状によってホルダを用意する。
*VCTシャトル用ホルダにも種類があり、試料の形状によって選択する。
①-1. VCTシャトル用ホルダをピンセットを使ってチャンバー手前のホルダ固定位置に装着する。
矢印の方向へ押し込む。
チャンバー内に固定したところ
①-2. 試料ホルダをセットする。専用ツールを試料ホルダのネジ穴に差し込み、その状態でセグメントアークにはめ込み固定する。
*固定ネジはトルクリミットネジなので、ある程度回し負荷がかかったら空回りするようになる。ある程度回してテンションが変わらなくなったら離すようにする。締めすぎないように注意。
左:固定用ツール
右:運搬用ツール
〈試料がピンに載っている場合〉 先にホルダーをセットし庫内の冷却完了後、試料ピンをホルダにセットする。
ホルダのネジ穴にツールを差し込み
チャンバーのセグメントアークにはめ、
固定ネジを六角のツールで固定する。
*試料ホルダの固定ネジはトルクリミットネジになっているので、締めすぎないように注意する。
〈高圧凍結装置で調整した試料の場合〉 試料を載せる試料台はナイフホルダで冷却し、外側のホルダをセグメントアークに固定しておく。庫内の冷却完了後、試料を試料台にセットし試料台ごとセグメントアークに固定したホルダにセットする。
ナイフホルダにセット
外側のホルダをセグメントアークに固定
*高圧凍結試料用ホルダは、3㎜キャリア用と6㎜キャリア用があり、付け替え可能
①-3. ナイフホルダをセットする。ナイフホルダにはトリミング用ナイフ、本番用ナイフをセットできる。それぞれのナイフをセットしたらあおり角をナイフ横のネジで設定する。(ナイフのあおり角はナイフそれぞれに設定値があり、説明書記載の設定値に合わせること。)(また、本切削のナイフは右側、トリミング用ナイフは左側に置くと良い。)
ネジ穴に運搬用ツールを差し込み、チャンバー内部の窪みにはめ込む。
*ナイフホルダーの位置調整 ナイフホルダの固定を外し、チャンバー前部のダイアルを動かすと僅かにナイフホルダを左右に動かすことができる。これにより試料に対して斜めに切ることができる。また、試料に厚みがありナイフを下げても試料に当たってしまう場合は、このダイアルを後ろに下げるとナイフホルダを下げることができる。
チャンバーにホルダー類のセットが完了したところ →
② Leica本体の電源を入れる。
FCMountを押して初期位置にリセットする。
ナイフブロック、セグメントアークを取り外す。
③ フロントカバーを手前に引っ張り、フロントカバーを取り外す。
④ チャンバーをセットする。
まず、チャンバーを白い線の部分の手前に置く。チャンバーのレールを合わせ、チャンバーの裏にあるナイフステージ部分の銀色のレールを手前にはめ込み、白い部分でスライドさせ奥まではめる。
裏から覗くと入れやすい。→
⑤ セグメントアーク部分をチャンバーにセットする。
アームを下に下げた状態でチャンバーの接続部分と位置を合わせながら、奥に押し込む。ネジを専用ツールでしっかり固定する。
ネジが窪みにはまっているか確認すること。
アームを動かしてみてスムーズに動くか確認すること。
ガチャガチャ音がする場合は、うまくはまっていません。
*チャンバーとアームの間の隙間が500μmほどになっているか確認*
専用のプラスチック板(無ければ名刺3枚程度)を差し込んで確認する。隙間が開きすぎていたり、閉まりすぎていたら調整が必要。
→調整の仕方 チャンバー左前にあるネジ穴にツールを差し込み、反時計回りに回すと締まる。
⑥ セグメントアーク部分がきちんと固定されたら、チャンバー右側にあるロックレバーで固定する。
⑦ シャトルで移送するためのホースを接続する。ホース左側を回しながら入れてから右側を押し込むようにはめる。
ホースが真っすぐになっていることを確認する。この時少しでも曲がっているとシャトル先端部がホース内で引っ掛かったりチャンバー内部に入れなくなるので注意する。
⑧ クライオチャンバーの電源を本体裏側に差し込む。
⑨ 液体窒素の入ったデュワーにポンプを入れる。 ポンプ先端にあるボール弁をエタノールで軽くふき、汚れがないか確認してから入れる。
急激に蓋を差し込むと温度差で液体窒素が噴き出し危険なので、ゆっくり差し込む、覗き込まないようにする。
差し込んだ後、1分ほど待って液体窒素が溢れ出てこないかを確認し、問題がなさそうであれば、蓋をきちんとはめ密閉する。
⚠️ポンプ先端にはボール弁が2層あり、外側のボール弁は埃や霜でつまりやすいので注意。ポンプから異音がする場合は詰まっている可能性がある。
⑩ チャンバーとデュワーをチューブでつなぐ。まずチャンバー側からチューブを差し込み、線の入ったノズルを回して固定する。
ツルツルのノズルはチューブを固定しているので回さないようにする。
次にデュワー側のポンプ部分にチューブを接続する。
ピンを解放した状態で差し込む。→
⚠️この時、必ずチャンバー側から接続するようにする。デュワー側から接続するとチューブから液体窒素が飛散する可能性があるので注意。
⑪ グローブボックスのカバーを取り付け、ネジで5か所固定する。
⑫ イオナイザー(CRION)、チャンバーの電源を入れる。
チャンバーの電源を入れると、FCチャンバーをコントロールするためのアイコンが画面上に表示される。
①ナイフ温度
②試料温度
③ガス温度
*FCチャンバーの電源が本体と接続できていないと、画面にクライオ用コントロールパネルが表示されない。表示されない場合は、本体裏側を確認し、接続し直す。
設定されているプログラム温度をタッチし、温度を設定する。
設定を変更したい場合は、各温度をタップすると温度入力画面に切り替わるので、所定の温度を入力する。
設定した温度を保存したい場合は「STO」ボタンを押し、保存先を選択し、保存できる。
*設定可能な作業温度は-185℃~-15℃。ただし、温度が低すぎると試料がその温度まで冷却されづらいので注意。
*冷却温度の設定は、低温すぎるとガラス転移温度に到達し、アモルファス化する。そうすると、切削が難しくなるので冷却のしすぎに注意する。
*-120℃が液体窒素の消費燃費が良く、設定温度が低くなるほど液体窒素の消費量が多くなるので残量に注意する。
⑬ ここまで準備できたら、プラスチックカバーを載せて、モニターの「START」ボタンを押して冷却を開始する。
*冷却されるまで時間がかかるので、冷却している間に試料の準備を行うと良い。
*CRIONを使用する際は、右の写真のような穴の開いたプラスチックカバーを使用する。→
グローブボックス内に切削に必要な道具を準備し、予め冷却しておく。
グローブボックス内に道具(ピンセット、専用ツール、試料等)を入れる場合、こちらの窓を利用する。この窓は二重窓になっており、一方の窓を開放した場合、もう一方の窓は必ず閉めておくこと。絶対に両方の窓を開放した状態にしないこと。空気が入り、庫内に霜が付きやすくなります。
また、凍結した試料をチャンバー内に置いておくためのプラスチックカップ(5mLまたは10mL)を準備しておく。
高圧凍結装置にて凍結試料を作製する場合 → 高圧凍結装置EM HPM100のページを参照
試料ピンに載せる場合
① 試料ピンを試料調製プレートに準備する。
② 試料をピンの上に載る大きさに小さくカットする。
③ ピンセットでガムシロップをピンの上に載せる。
④ ガムシロップの上からピンの溝に試料を載せ、余分なガムシロップをピンセットで取り除く。
⑤ 水筒に液体窒素を入れ、その中に柄杓を入れる。
ピンセットで試料の載ったピンを摘み、まず軸の部分のみを液体窒素に浸ける。上まで白くなってきたら、全体を液体窒素に浸けて凍結させる。
試料は柄杓に入れたまま水筒内で保管、移動させる。
*試料によって調製方法は様々です。最適な凍結方法を検討しましょう。
① チャンバー内部が十分冷却できたら、試料をチャンバー内に移動させる。
調製した試料の入った水筒をグローブボックス横の二重窓から中に入れ、水筒から柄杓を取り出し、液体窒素ごと試料をチャンバー内のプラスチックカップに移す。
ピンを使用した試料
ピンをピンセットで摘まみ、試料ホルダに差し込み、専用ツールで固定する。
高圧凍結装置で調製した試料
ナイフホルダで冷却しておいた試料台に試料キャリアを専用ツールで固定し、試料台に運搬ツールを差し込み、セグメントアークに取り付けたホルダに差し込む。試料台は六角レンチで固定する。
*高圧凍結装置用試料ホルダは、標準(ピン用)ホルダのように試料部分は回転しないため、試料を回転させたい場合は、一度トルクリミットネジを緩め、試料ホルダごと回転させる。
⚠️試料の固定が甘いと試料が動いてしまい、切削の際に試料表面を傷つけてしまう可能性があるので、しっかりと固定すること。
⚠️チャンバー内は狭いので、小さい試料を取り付ける際、チャンバー内に落とさないよう慎重に作業すること。(まれに、チャンバー内を分解しないと試料が取れなくなることがある。)
② 試料をセットしたら、ナイフを真ん中の位置に合わせ、ナイフホルダを六角ツールで固定し、チャンバー手前にあるナイフレバーを回し、カチッとロックがかかる位置に固定する。
③ 試料をセットしたら切削を行う。
イオナイザー(CRION)をチャンバー手前の丸い磁石位置にセットし、コントロールパネルのANTISTAICバーをMAXに設定する。
自動切削の際には、「charge」と表記されていない方のフットペダルを踏むと、切削と同時に除電も行うことができる。
*切削方法については、ウルトラミクロトーム(常温)マニュアルを参照。
💡クライオではガラスナイフでのトリミングは可能ですが、ナイフや試料の角度を変えることができないため、常温の場合と比べて難しくなっています。可能ならばトリミング用ナイフを使用することをお勧めします。
1 試料の片側をトリミングナイフで削る。
2 横移動で反対側側面を削る。
3 必要なら90°回転し、同様の作業を繰り返す。
〈ガラスナイフでのトリミング方法〉
1.ガラスナイフ角にて試料の側面を削る。
2.試料を90°回転し同様に側面を削る。
3.同様の作業を繰り返す。
4.仕上げに全体を整える。
③ 面出し(平滑化)の場合 試料表⾯が平滑にできているかを確認する。ナイフ位置を下げ、ライトを下からのみにし、試料表⾯が鏡⾯になっているかどうかで判断する。鏡⾯になってない場合は再度、表⾯が鏡⾯になるまで切削する。
<切り屑の飛ばし方>
水筒に液体窒素を汲んでおき、スポイトで水筒中の液体窒素をブクブク出し入れし、スポイト中の空気を窒素で満たしてから、スポイトで切り屑を飛ばす。
*ナイフの温度センサーとヒーターはナイフ下にあり、試料の温度センサーとヒーターは試料受けにある。
*生物試料を切るときは-80℃が適しているが、低温で厚い切片を切削するときは試料が割れて脱落する場合があるので注意する。→その場合は温度を上げる。
*切りくずを除去する場合、液体窒素を試料表面にかけて洗浄してもよい。
但し、割れやすい試料の場合はLN2をかけないようにする。その場合は筆を使って除去する。
*クライオでは切削速度を1mm/sec以下にした方が、きれいに切ることができる。
*ダイヤモンドナイフは、硬い方が切れが良いので、切るときは少し温度を下げてもよい。
スパッタコーターACE600のマニュアル参照 →
① 切削が終了し、表面をスパッタする場合、試料を移動させる必要がある。その場合、予めチャンバー内にセットしておいたスパッタ用ホルダに、面出しした試料を差し込み、固定する。
⚠️試料表面に霜が付きやすいので手早く作業を行う。
② シャトルの準備を行う。VCTシャトル内、ACE600内に液体窒素を入れ冷却しておく。
ACE600の画面 赤枠がVCTの状態を示す。
LN2タンクが黄色表示の時はLN2残量が少なくなっているので、青になるまで入れるようにする。
③ ACE600またはVCMからシャトルを取り外す。
シャトル内が真空になっている場合、グローブボックスに接続するため、ventする必要がある。「setting」→「vent shuttle」でventを行い、「detach」を選択する。
④ 「Detatch」が終了したら、シャトルを取り外し運搬する。上部につめがあり引っ掛かっている状態なので、そっと両手でシャトルを取り外し、運搬は丁寧に行う。
内部に試料がある場合に乱暴に扱うと試料が試料台から外れる可能性があり、故障に繋がります。
⑤ 取り外したシャトルはグローブボックス横の接続部に取り付ける。接続部にはカバーが取り付けてあるのでそれを外してから、シャトル上部のつめ部分を引っ掛けて取り付ける。
接続しても反応がない場合はもう一度行ってみてください。接続部分が汚れている場合、反応しないことが稀にあります。その場合はエタノールで表面をふいてください。
⑥ シャトルをグローブボックスに接続するとモーター音がするので、音が収まるまで待つ。グローブボックスのシャッターを開き、シャトル先端をグローブボックス内に入れていく。
シャトルを開くと内部に空気が入り、霜が付きやすくなります。
シャトルを開けた後の操作は出来るだけ素早く行うようにしてください。
⑦ ある程度シャトルを押し入れたら、チャンバーのシャッターにあたるので、シャッター部分をピンセットで開き、更に内部に挿入する。
⑧ シャトル先端部を試料ホルダに差し込んだら、試料ホルダをシャトルに固定する。
シャトルを試料ホルダに挿入する際は、「S」が上部に来るようにする。シャトルを試料ホルダに挿入したら、シャトル上部を「●」が真上に来るように回すと試料ホルダがシャトルに固定される 。
⚠️この時、シャトル先端部分が試料ホルダの奥まで入っているか確認して下さい。シャトル先端部から脱落する可能性があります。
⑨ シャトル上部が「●」の状態で、ゆっくりとシャトルを引き出す。
シャトルをきちんと引き出さないと、試料ホルダがシャトルのシャッターに引っ掛かる可能性がある。シャトル部分は最後まできちんと引き出す。
⚠️きちんと引き出せた場合、磁石がカチッとするような手ごたえがあります。また、引っ掛かるような感触がある場合は無理に引き出そうとはせず、ほんの少しだけダイヤルを左右に回しながら引き上げて下さい。
⑩ シャトルを最後まで引き出したら、チャンバー内のシャッター、グローブボックスのシャッター(グローブボックスとの接続部分)を閉じる。シャトルのシャッターを閉めたらモーター音がするので、音が収まるまで待つ。
チャンバー内の試料ホルダをシャトルに移す一連の作業は、霜防止のために手早く行いましょう。
また、シャトル内の液体窒素容量はとても少なくなっています。必要なら液体窒素を追加するようにしましょう。
⑪ モーター音が止んだら、シャトルをチャンバーから取り外し、ACE600に装着する。
⑫ 以降、スパッタ作業は高真空スパッタ装置ACE600のマニュアルを参照 →
*VCT500シャトルを使用せずに、VCMワークステーションに試料を移動させる場合は、試料を液体窒素を満たした柄杓、水筒に入れた状態で移動させる。切削面に触れないよう注意する。
シャトルを使用せず移動させた場合は、VCMワークステーション内で試料をスパッタ用ホルダに移し固定する。スパッタ用ホルダに固定したらシャトルをワークステーションに接続し、試料を回収し、ACE600に移動する。
① CRIONの電源を切って、プローブを外す。先端がかなり低温になっているので、周りの物に接触しないようにする。
⚠️CRIONの電源を切らずにプローブを触ると痛みを感じることがあります。必ず切ること。
*チャンバーの電源は入れておく。
② 試料ホルダ、ナイフホルダを取り外す。試料ホルダ、及びナイフホルダを取り外す際、ネジを緩めるようにする。
特に試料ホルダーのねじは狭く、温度差によって焼き付き、変形が起こる可能性があるので必ず緩めること。
③ 取り外した試料ホルダやナイフホルダ、ピンセット等は乾燥機に置いてしっかりと乾燥させる。
*乾燥機の温度は60℃です。
④ 顕微鏡部分を動かし、チャンバー上部に来ないようにする。また、チャンバーに載せたプラスチックカバーも外しておく。
⚠️顕微鏡内部の部品を損傷する可能性があります。必ず位置をずらしてください。
⑤ 確認が出来たら、モニター上の「heat」ボタンを押して加温する。加温後50℃くらいになったら分解し片づける。
① チャンバー温度が上がったら、「HEAT」ボタンを押し、加温を終了する。
② グローブボックスのネジを外し、カバーを取り外す。
③ シャトル移送用ホースを取り外す。
④ 液体窒素デュワーにつながったチャンバーのホースのノズルを回して取り外す。 デュワー側のホースのノズルも取り外す。
⑤ 液体窒素デュワーに取り付けたポンプを取り外す。
⑥ チャンバーの電源を切り、本体裏側から電源を取り外す。
⑦ チャンバーと本体を固定したネジを緩め、右下部のロックレバーを解除し、チャンバーを取り外す。
⑧ タッチパネルで「FC Mount」を押し、初期位置に戻し、フロントカバーを取り付ける。
⑨ タッチパネル 「Menu」から「Power off」を選択し、電源を切り、終了。