本ホームページの紹介内容は、北海道大学 創成研究機構 同位体顕微鏡システムをご利用・またはご利用を検討頂いてる皆様へ向けた内容となります。
上記以外で所有の同一装置(仕様が同一であっても)において、本マニュアルの内容に沿って操作やエラー解決などを行った場合の結果についての保証、および起因して生じたトラブルについての責任は負いかねますこと、ご承知おきください。
初版作成:上杉 2023年10月25日
装置利用にあたって(注意事項)
1,この装置では液体窒素(LN2)を使用します。液体窒素の取り扱いについて理解し、怪我や事故が起こらないよう安全第一で作業を行ってください。
2,液化エタンは、極めて可燃性・引火性の高いガスです。この装置では、少量ですが液化エタンを使用します。液化エタンの取り扱いについてSDSなどをよく確認しておいて下さい。
3,グリッドやシリンジ、濾紙などの消耗品はご自身でご用意ください。
1,液体窒素:本装置では液体窒素を使用します。
10Lなどのデュワー:創成研究機構の規定で7リットル分まで充填出来ますが、これを2本程度準備しておくと安心です。
(処理する試料数により、もう少し追加で必要になる場合があります)
(*)液体窒素の充填は、使用者が行ってください。
(*)一番近い充填場所は、創成研究機構の01-301-1室です。創成研究機構のルールに則って教育を受け、ご使用ください。
(*)使用者側で液体窒素の充填作業を出来る人がいない場合(学外からの場合など)は、ご相談下さい。
(*)10Lなどのデュワーをお持ちでない人はご相談下さい。IIL所有のデュワーをお貸しできる場合があります。
(同位体顕微鏡が稼働中で、使用中の場合があります。その際はご容赦ください)
2,グリッド:グリッドホルダーには3㎜φのグリッドがセット出来ます(それより小さいサイズも可能です)。
ただ、後述するSIMS用試料ホルダーに回収する場合、3㎜φ以下のグリッドはセット(固定)出来ませんので、注意して下さい。
1,エタンガス:設置・接続済み
2,液体窒素小分用の卓上ポッドなど
3,グリッドホルダー、グリッド運搬用クライオホルダー、エタン充填ホルダー
4,湿度調整用の純水
足りない場合、スタッフにお声がけください
5,濾紙:下図
6,シリンジ
7,グリッドを挟む専用ピンセット:左図
8,マイクロピペット、チップ
9,プラカップ
10,柄杓
11,専用工具(箱):左図
① 装置背面右下にある電源スイッチを入れる。
② イニシャライズが始まり「Touch to screen to start preparation」の画面に変わったら、スクリーンをタッチする。
③ 「Grid Plunger initializing...」の画面に変わったら、間もなくチャンバーが自動的に上昇する。
④ その後、ディスプレイに下の様なWarning表示が続けて出るが、無視して「OK」を押す。
液体窒素チャンバー内に、グリッドホルダー・グリッド運搬ホルダーおよびエタン充填ホルダーセットする。
グリッドホルダーおよびグリッド運搬ホルダーは、突起にはまるようにセットする。
小さく切った濾紙を入れて、余分なエタンをふき取るのに使用する。
💡上記濾紙は、チャンバーセット用濾紙(ドーナツ型)を切り出した際の残りを使用するとよい。
液体窒素チャンバーの初期状態は上図の通り。
グリッド運搬ホルダーをセットしたところ。
グリッドホルダー
グリッド運搬ホルダーにグリッドホルダーをセットしたところ。
グリッド運搬ホルダーに蓋をセットしたところ。
エタン充填ホルダーにキャップをセットしたところ。
上記、グリッドホルダーを使用する方法は試料の移し替えの難易度が高く、失敗する可能性がある。
この方法は一例で、移し替え方法は検討を繰り返しての使用が必要である。
移し替え方法の別例は後述する。
チャンバー内に液体窒素を入れると、装置の冷却が開始される。LN2量のバーが100%になるまで液体窒素を入れていく。
液体窒素を入れたら、チャンバーに蓋(図内赤枠)をする。
湿度調整用の純水を、プラカップなどに移し、シリンジを使って下左写真赤枠の箇所に入れる。※三方活栓の向きに注意する
最初入れる純水は、30ml×2回、追加する場合はその都度20mlずつ入れるようにする。
また、純水を一気に入れると漏れる可能性があるため、少しずつ入れるようにする。
純水が適量入ると、湿度(Humidifier)がOK表示になり、内部の加湿がスタートする。
純水は、実験室内に洗瓶に入れて準備されている。
なくなった場合は、スタッフに声掛けください。
三方活栓 の向きに注意する。
左写真の上段の向きで純水が供給され、下段の向きで遮断される。
濾紙をセットする。
濾紙は磁石の力で固定する。濾紙→リングの順に、窪みにはめ込むようにピンセットで固定する。
しっかりはまっていないと、浸漬時に脱落する可能性があるので注意する。
チャンバー温度が-180℃になったら、液体エタンを充填する。
・充填用ホルダーをセットする(下図左)。
・充填用ホルダーをセットすると、一時的に温度が上がるので、‐180℃まで下がるのを再度待つ。エタンは‐180℃以下にならないと液化しない。場合によっては液体窒素を補充する。
・エタンボンベの頭のバルブ①と、ストップバルブ③が閉まっているのを確認する。
・レギュレーターの圧力調整ハンドル②が完全に緩んでいるのを確認する(緩んでいたら全閉状態)。もし緩んでいなければ、反時計回りに3~4回転回して緩める。
・ボンベの頭バルブ①を1回転位反時計回りに回して開ける。
・ストップバルブ③を同じく1回転位反時計回りに回して開ける。
・レギュレーターの圧力調整ハンドル②を時計回りにゆっくり回していき、徐々に圧力をかけていく(左側の二次圧圧力計を注視する)と、エタンが供給される。
エタンが充填されだすと、白煙が発生する。
供給過多にならないよう、圧力調整ハンドル②を調整する。
白煙で供給されたエタン量がわかりにくい場合は、一度供給を止めて、白煙が落ち着いて透明になるまで待つ。
液体エタンを黒い容器の八分まで充填する。
充填が終わったら、エタン充填用ホルダーを取り外し乾燥させる。
次に処理する試料がない場合、ここでエタンボンベを閉じる。
・圧力調整ハンドル②を閉める(反時計回りに3~4回転ほど回して、完全に緩める)。
・エタンボンベの頭のバルブ①を閉める。
・ストップバルブ③を閉める。と、ストップバルブ③が閉まっているのを確認する。
(*)連続して次に処理する試料がある場合、最後に処理した試料のエタン充填が終わった段階でボンベを閉じる。
ピンセットの先端にグリッドをセットする。
グリッドの淵の部分をピンセットでつまむようにし、黒い部分を左側にスライドさせて下げてロックする。
この時、黒い部分を縞々の部分に行かないようにする(故障の原因)。
本マニュアルでは、上記グリッドを使う場合で説明します。
グリッドは北大IILの所有物であるため、使用者は、同等の物を各自準備する様にいて下さい。
もし、この試料ホルダーを使用したい場合は、担当者にご相談下さい。
チャンバー下部に、ピンセットを固定するアダプタ(下図左)があるので、ピンセット上部をアダプタに差し込み、セットする。
カチッという音がするまで差し込むようにする(下図右)。
(*)この際、グリッドに触れないよう注意する。
グリッド試料をピンセットでつまむ際、裏表に関しては、右写真の向き。
「Load Speciman」を押すと、ピンセットが所定の位置に移動する
試料をマイクロピペットに3 μlほどとり、本体横のスライドドアを開けてピペットを差し込み、グリッド上に試料を載せる。この時、ピペット先端がグリッドに触れないようにする 。
グリッドは試料にもよるが、支持膜付きのグリッド(支持膜の孔の大きさは、1-2 μm程度)を使用し、使用前は親水化処理を行うようにする 。
① 「BLOT」を押すと、グリッドの余分な水分を濾紙で吸い取る。この時、濾紙とグリッドの位置などはブロットの設定画面で編集できる。
濾紙の吸い取り時間によって試料の氷の厚さが変わってくるため、試料によって最適な条件を検討する。
次に、「plunge」ボタンを押すと(右写真では都合によりplungeボタンが白抜きで表示されていない)、ピンセットがエタンに浸漬し、グリッド上の試料が凍結する。浸漬後は自動的にチャンバーが上昇し、グリッドが取り出せるようになる。
BLOTからPLUNGEまでの時間を設定できる。
2023年10月現在、この時間が『0』となっており、BLOT → PLUNGEまで連続で処理される設定になっている。
(もちろん変更も可能)
「Transfer」を押すと、ピンセットがわずかに上昇する。
ピンセットを外し、できるだけ霜が付着しないよう、グリッドホルダーに入れる。
ピンセットを外す際は、グリッドがエタンデュワーの淵に触れないように注意する。
奥から手前にゆっくり外すと作業しやすい。
グリッドを取り外すコツは、グリッドケース上部でゆっくりとピンセットのロックを緩め、グリッドケースに触れないぎりぎりの位置でピンセットからグリッドが落ちるようにする。
グリッドケースに入らなかった場合、まつ毛プローブでグリッドを動かしてグリッドケースに入れる。
試料(グリッド)を入れたグリッドホルダーは、液体窒素を満たした容器(柄杓など)に、外気温に触れないように素早く移し替え、次の作業工程へすすむ。
★ 別な試料回収方法について ★
上記、グリッドホルダーを使用して試料を回収する方法は難易度が高いです。
以下、本方法よりは比較的簡単に試料を回収する方法を紹介します。
右はグリッドを使用する場合の、SIMS用試料ホルダーです。
使い方は、
・左側の六角を緩めると、真ん中の丸い窪みの隙間が左右に開く。窪みにグリッドをセットする。
・左側の六角を締めて、グリッドを固定する。
グリッド運搬フォルダーにグリッドホルダーを置き、そこへグリッドを入れる、と言う作業よりは簡単だと思われます。
ただし、この試料ホルダーは、グリッド運搬フォルダーに入りません。
運搬フォルダーをチャンバー内に置かずに、直置きにして作業することになります。
① 液体窒素チャンバー内の物を取り出し、ヒーターで乾燥する。
但し、エタンは可燃物でとても危険なため、充填ホルダー(エタン)はヒーターで乾かさず、装置外の常温下に置いて乾燥させる。
② ①の充填ホルダーの下に液体がある場合、濾紙で吸い取る。
※エタンである可能性もあるため
③ チャンバー内のドーナツ型の濾紙、②の濾紙を取り出す。
④ エタンボンベが閉じられているのを最後に再確認する。
⑤ 内部に残っている水をビーカーに取り出す。
⑥ 本体下部には結露した水を回収するタンクがあるので、水を捨てて清掃する。
⑥ 顕微鏡を左に動かす。これを忘れると、顕微鏡と本体がぶつかり、故障の原因となるので注意。
⑦ 本体のドアを開けて、ベークアウトをスタートする。
メイン画面から「Setting」を選択し、「Bake out」を選択する。
⑧ ベークアウトを行う準備が出来ているか、WARNING形式で聞いてくるので、各々の項目を確認し、問題なければOKを押す。
・液体窒素チャンバーから物を取り出したか?
・液体窒素チャンバーの蓋を外したか?
・濾紙を取り除いたか?(高温注意)
・本体のドアを開けて、顕微鏡を左側に動かしたか?
⑨ 全て問題ないことを確認したら、「Start」を押す。
1時間で終了する。
⑩ ベークアウトが終了すると、チャンバーが自動的に降下する。そのまま本体裏面右側のスイッチを押して電源を切る。