曲の指定テンポ ムーヴメント・ディ・ワルツ ワルツの速さで
調性 ト長調
拍子 4分の3拍子
小節数 60小節
演奏順 リピートあり
全体演奏小節数 116小節
演奏時間 ♩=176で1分56秒ほど
解説
原語でラ・スティリエンヌとあり、最近の楽譜では、そのままの表題であったり、訳してスティリア地方の踊りとより具体的に表記されるようになりま
した。しかし、日本人である私たちにとって、スティリア地方といってもピンとこないかも知れませんね。
地図を見ていきますと、ウィーンの南西約200キロに当たる場所で、今はシュタイアーマルクといわれているようです。(アルプス山脈の入り口に当たる
ところ)地図で見たところでは、高原のようには感じられませんので、よくアニメにあるア○○スの○○○のような高い山々に囲まれた様では無いようです。ただ、色とりどりの民族衣装つけた人たちが踊る姿は想像できます。
音楽だけ聴いていくと、いろいろなタイプの踊りが繰り広げられるように聞こえます。ですから、踊る人たちの衣装も考えながら想像力を大いに発揮して
表現したいものです。
導入の4小節です。ここは、あたかも「さあ、踊りを始めますよ!」と言った合図のようです。
装飾音は軽やかに、次の音に重心が来るように弾きたいものです。ワルツのリズムはどうしても3拍目にアクセントが入りやすいので、気をつけたいです。日本人の癖として弱い音の後にどうしてもアクセントをつけることが多いので、まず2拍目を少し強めに弾くことによって3拍目を弱く弾くことで容易にすることが出来ます。
また、ト長調の主和音の第5音(レ)を左右にオクターブの関係を3小節保ちまた4分音符で右と左で6度の音程をもって半音下降進行します。ここの音の使い方が、あたかも「踊りを始めましょう。」という感じが私はいたしますが、皆さんはどう感じるでしょうか?
右手の出だしの弾き方について
装飾音は軽やかに音を弾くと普通は考えられています。ですから、軽やかに弾くために、1つの方法として手をある程度の高さから自然落下を利用して1つの動きで装飾音をはじくようにして、続いて付点2分音符を弾くという弾き方を試してみるとよいと思います。付点2分音符にアクセントがあることから、親指をしっかり支えておいて五番の指でラの音を弾きます。この1小節の動きを大きな1つの運動と考えて、2小節以降も弾くことで音楽の流れが出来てくると思います。
伴奏を受け持つ左手については、次のように考えてみました。
左手2つの和音は、しっかりとした形を保って右手の音のバランスをとりながら響かせたいものです。手は鍵盤から少し上から打鍵するよいかと思います。
いよいよ踊りが始まる小節になります。この右手、はじめのスタッカートが付いた3つの8分音符が、踊りが始まったことを表しています。
ただ体のどこを使って動いているのかをまず考えるとよいのでは無いでしょうか?
足なのか?手から腕なのか?顔なのか?
いろいろと個性があると思います。一つに限定しない方が、表現の幅は広がると思いますね。また、それによって音を決めていくわけですから、タッチが自ずといろいろと考えられると思います。
楽譜にあるのは、スタッカートがありPであるということ、そこから思い浮かぶことは重々しくない音であることは間違いなく、グラツィオーソとあるので、優美にとか優雅といった感じに聞こえるようにと要求してあることから、軽々しく弾く事はないと思います。またテンポについても「あまり速く無く」と考えるのが普通かと思います。
そういった条件の中から、どのように弾くのがよいか?ということを先に述べたことを充分に考えることがいかに大事なことかわかると思います。しかし、あまり神経質になっていまい腕や体が硬直してしまっては元も効ももありませんから、あくまでそのことを忘れずに取り組んでほしいと言うことです。
2小節目の右手メロディー、8分音符ですがソ・シと跳躍しています。ここでは少し間がある方が、踊りの動きが感じやすいかと思います。シからの半音進行も注意したいところです。
ここの部分はステップを踏んでいるような感じがするところですから、軽やかに8分音符は弾きたいと思います。
3小節め1拍半までで、前の部分から1フレーズになります。これをもう一度繰り返して第一展開部を終
えます。
リピート記号の後が第2展開部になります。ここでは、明らかに左手の伴奏に違いがあります。それは保持音です。これまでにも出てきてはいるのですが、持続性の保持では無いのでそこに注意が必要です。8分音符と付点2分音符の交互になっていることと、右手がどのように弾くのかがわかれば上手に対応できると思います。 右手の装飾音ですが、このトリルは鍵盤の近くで指をはじくように弾きます。
次の4分音符にアクセントがついてますから、その音に突っ込むようにして弾くと出来るでしょう。
また、ここでの右手のメロディーは、親指の使い方に気をつけないといけません。一つには弱拍につくこと二つには1.2.1.2と繰り返しの指によってメロディーを形成している部分があることです。初心者はこういう部分においてよくぎこちない音になってしまいがちです。音の流れをよく聞いてぎくしゃくしないように気をつけることが大事です。dimrallの書いてある小節、左手2拍目のアクセントはしっかりと意識も持ってならしてほしいと思います。このアクセントの音楽的効果は、一瞬ここで踊りの動きが止まる感じがいたします。また、これをきっかけに右手のメロディーが動き出すことによって次の動きを導くような役割を果たしている感じがいたします。
確かに、次に出てきたメロディーでは、8分音符のきに大きな変化が見られます。半音下降進行のあと6度跳躍、オクターブ(初めての大きな跳躍)下降という大胆な動きが出てきます。ここの2小節で想像できることは、踊りに大きな動きと変化があると考えられます。よって弾き方もそのように工夫します。
少しテンポを揺らして弾く事や、スラーになってはいますが、手の小さい学習者は音が切れるのは仕方のないことだと思います。ですから音楽の流れが続いているという意識でノンレガートで弾いてみるのもよいと思います。ここでは、弾き手の感性が発揮できるところかも知れません。また左手の音にも注意をしてください。付点2分音符がしっかりとあります。このフレーズが2回繰り返された後、反復記号の後、ハ長調に転調して踊りの内容がガラリと変わります。ここは中間部に当たる部分と考えられます。この8小節がおわると、音楽はまたもとに戻ります。
曲の一番の聞き所であるこの中間部は、右手の2音間(ファレ)のオクターブ以上の跳躍が出てきます。この曲集では初めての体験になると思います。ここで注意したいことは、跳躍が大きいことで「すぐに跳躍しなければならい」と思い込み慌ててしまい、かえってテンポが急いでしまうことです。1オクターブと6度も離れているのですから、2音間の距離はそれなりに時間がかかるわけですから、ここのテンポは、ゆっくりとなってしまうのが、自然なことなので、「テンポ通りに弾かないといけない」という訳ではありません。ここはかえって少しゆったりした感じに弾いた方が、踊りの振りが大きいこと、
もしくは足踏みをして少しジャンプしているやも知れません。とにかく音楽的にもメリハリが出て立体的になる部分だと思います。
また、レの音からまた下へ跳躍し元の音に戻って来ますが、ここの4分音符と付点4分音符にはスラーがあることから、たっぷりとした響きで丁寧に弾きたいものです。次に出てくる跳躍は前回よりは狭い音程なので、テンポは前回とは同じにはならないと思います。あくまでも自然な音楽の流れと、自然な踊りの動きに聞こえるように弾くべきです。またこの部分では左手が付点2分音符になっていることから、響きがゆったりとした感じにも、とれますので、踊りの振りが細かくひとまとまりになっていると思います。またこの動きが、4小節間続きますので、あくまでも優雅な感じを保ちながら少しちがいが感じられる様に演奏したいです。そのフレーズが終わると同時に、左手は一気にオクターブと4度下降の跳躍が来る事で音楽に緊張感がみなぎります。右手はそれに反する動きをもって緊張を表すように、ソファ・ソ8分音符の半音階の狭い動きをしています。次に左手は4分音符ソでオクターブ跳躍します。また最後の2つの4分音符は右手は和音となって下降進行で、左手は導音から主音へ解決してます。ここでは一つの踊りの振り付けが終わる感じがします。決然と弾くと良いと思います。
ここまでが中間部で、次は再現部になり繰り返しをして全曲を締めくくります。