曲の指定テンポ アレグロ・ヴィヴオ 快速に生き生きと
調性 ニ長調
拍子 8分の6拍子
小節数 67小節
演奏順 ロンド形式 リピート、第1括弧第2括弧2カ所後半
全体演奏小節数 127小節
演奏時間 付点4分音符=160で約Ⅰ分36秒
タランテラの名前の由来について2つのことがいわれがあります。
①南イタリアの民俗舞踏および舞曲としてプーリアの都市、ターラントに来する。現在では無言の求愛の舞踏の一種をさし、人々に囲まれた1組の男女によって踊られ、踊り手が持つカスタネットやタンバリンの伴奏が入る。舞踏の最中に見物人によって歌われる歌には、通常8分の3拍子か8分の6拍子の規則的な楽句によるもので長調と短調が入れ替わり次第にテンポが速くなっていく。
②同じ南イタリアのプーリアの都市ターラントの由来するタラント毒グモとの名前の一致が、この舞踏の「タラントゥラ」が徐々に効いてくるクモの毒を和らげる効果を持つという言い伝えを生んだと思われている。15世紀から17世紀にかけて南イタリアで流行ったタラント病と呼ばれた病気は、クモにかまれた結果の症状というよりも、ヒステリーの状態であったと思われます。
タランテラ特有の旋律型は、音の反復、上方もしくは下方補助音を伴う音の交互の使用、音階的な動き、跳躍、アルペジョなどがあります。
では以上のことを踏まえながら曲をみていきましょう。
最初の部分です。まさに反復音と音階的な動きが出てきていますね。激しい感じを出せるようにしっかりと打鍵し、前へ前へ突き進む勢いと、うねった感じがほしいところです。3つの指を形よく丸めて鍵盤を垂直に打鍵すると鋭い音が出せます。反復音は素早く手首の水平移動でおこないます。
両手の音がユニゾンになっていますから、音量的なバランスを考えなければいけません。右手を左手に対して大きくなるように弾く方がきれいに聞こえます。数値的なもので表すことは難しいですが、自分の耳でよく聞いて綺麗に聞こえる感じを感覚的に身につけることが大切だと思います。あえて数値の表
すと7対3ぐらいの割合になるでしょうか。楽器の特徴として低音部の方が大きくなるようになっていますから、意識を持って弾くことです。
序奏の最後の3和音は決然としっかりと鍵盤のそこまで打鍵しましょう。「サーこれから踊りが始まりますよ!」と合図を送っているように感じて弾くとよいと思います。そして十分にフェルマータの付いた休符を感じて次の音楽に備えましょう。また、大きく弾かなきや」と思い乱暴になりやすいので和音の響きをよく聞くように弾くとよいでしょう。
3つめの和音も前2つと同じ長さです。長めにならないように注意しましょう。
テーマ8小節ははじめの踊りの部分です。最初の8分音符はアウフタクトを感じて。少し息を吸って止めると、アウフタクトを感じやすくなります。2小節部分は、右手の動きが序奏部分のレミファファソラ、ラソファファミレの部分を丁度入れ替えをしてここの部分を作っています。
3・4小節は、軽やかに跳躍している部分で、7・8小節はより跳躍が大きくなっています。重くならないように8分音符はスタッカートにし、休符をしっかりととりましょう。
3・4小節目の指使いについても注意が必要です。
同音反復のところは指番号は変えましょう。
6小節目は初めて音階進行になっています。ここでタランテラ特有の動き、2つめが出てきました。上行形になっていますから何かが迫ってくる感じで、だんだん大きく弾くのが自然です。前の小節からクレッシェンドになってますが、ここからが本格的に大きくする部分です。
8小節目のオクターブは前のドの音からレガートになっていますが、リズミックに弾きたいところです。付点4分音符は親指でしっかり支えて高いファの音を狙って最後の音を歯切れよく弾きましょう。ここでヘ長調に転調しています。
右手の活発な動きに対して左手は、右手を支えるように和音進行になっています。また、気をつけたいことは音量指定が、ピアノになっていることです。もし強弱記号がなかったとして考えてみるとどうなるのでしょうか?音楽的な効果を考えてみれば、自ずと前の部分に対して対照的な音量を選ぶのでは?
和音は3つの音のバランスを考えないといけません。右手が和音を弾くときと左手で和音を弾く時とでは、3つの音のバランスは違います。
右手の場合は1番上の音が大きく弾くことで綺麗になりますが、左手の場合は1番下の音を大きく弾くと、安定した綺麗な落ち着いた響きになります。その
ことを覚えておいて、ここの部分を弾いてみましょう。両手の音量のバランスを考えながら、和音を弾くことは大変に難しいことだと思いますが、よく耳で
聞いて綺麗な響きを見つけるように練習しましょう。
ここは主に跳躍しながら音楽が進行するところです。音楽の素材は、ラソ
ファ、ファミレの下降進行形を使っています。まず該当する音に印をつけて
みるとよいと思います。
元気よく手首はしなやかに、2音を1回の手首の上下動の動きで流れるように弾くようにしましょう。
左手は和音を4小節弾いた後、分散和音に変わります。
ここで注意したいことは、和音から分散和音になってから急にバタバタとギクシャクした感じになりやすいことです。
流れるように弾きたいですから、この部分だけよくいろいろなリズム練習をすることを勧めます。
そして、指と手首を連動した弾き方を注意深くすることだと思います。
練習方法として
① まず和音の動きの理解。
② 小指の打鍵において指をよく見て打鍵する
③ 小指の打鍵の後、少し手首の反動を感じること。
④ それに伴い、手首を少しあげられるかをみる。(鍵盤を押さえつけていないか?
⑤ 2つめと3つめの音が先の反動から促されて指が動こうとするか。
⑥ 打鍵と連動しながら手首が右側に旋回するように弾けるか
⑦ 連続して続きの3つの音がスムーズに弾けているか
⑧ クレシェンド(だんだん強く)がスムーズにできるか。
昼間部はいる手前の部分は左手の伴奏が変わります。注意することは、左手の8分音符ですね。前のところと同じように注意して練習してください。
中間部の所です。今までとは違い和音で刻みながら音楽が進みます。どんな様子が見えてくるでしょうか?その前によく見てみましょう。
この中間部に入る前に8分休符が1つあります。この休みは前の音楽との違いをつけるためのものと考えられます。気持ちを入れ替える程度と考えてください。音楽の流れが、前までは横に流れる感じであったのが、次からは縦の響きが主になります。その分かれ目のポイントとなる休符です。注意したいこと
は休みすぎないことです。ロンド形式の中間部に当たる部分です。和音が主役のように感じますが、あくまで音楽の流れは音階的な動きです。しかし、ここは和音の響きをよく聞いて進んでいきたいところです。もちろん右手の邪魔にならないようにします。スタッカートが付いていますので右手と同じように軽く弾きましょう。最後の右手のシの音は左手につられて短くならないように。そしてアクセントはつけないようにしましょう。
上の楽譜の4小節目の右手のラの音も短くならないようにしましょう。
5小節目からは、前の変奏になっています。装飾音が付いて少し軽やかさが出てくるところだと思います。
短前打音(装飾音)は、力んでしまうとうまく打鍵で来ませんので、手首軽くあげて指づかい通りにして、弾む感じで弾くと重くならないで弾けると思います。また、テンポを遅く、でも指は素早く動かすようにする練習をしましょう。
2段目の1小節目、右手のソは短くならないように気をつけましょう。2小節目からの8分音符は、スラーの後の8分音符は、はずむようにスタッカートで弾くことで軽やかさが出ます。
主調(ニ短調)に戻った所は、最後の部分です。大きく変わっているところは、左手の伴奏部分です。和音の縦のラインから、分散和音の横の流れに変化します。注意してほしいのは、縦のラインが重くならないことと。また、横のラインに変わるときに、スムーズに移行でき、ギクシャクしないように弾くこ
とです。第2カッコからはコーダに入ります。最後まで、強弱をしっかりつけて、音楽のうねりを引き出しましょう。
最後は上昇していきますが、慌てないようにしっかりと刻んでいくように。そして、だんだん弱くなりながら、少しゆっくりになりますから、感覚としては
意識が遠のくように弾くとよい感じになると思います。
締めくくりの3つ和音は、スタッカートは付いていませんが、決然と悲劇的な要素を待った感じで弾くとドラマティックになります。
以上全体を見てきましたが、気をつけてもらいたいことは、よく楽譜を見てスタッカートなど、記号を見落とさないこと。また、音楽の変わり目に余裕を
持って対応できる手を作ることです。