曲の指定テンポ アレグロ・モデラート あまり速くなく
調性 ハ長調
拍子 4分の4拍子
小節数 42小節
演奏順 リピートなし
全体演奏小節数 42小節
演奏時間 ♩=152 約1分6秒
解説
今までの学習してきた曲からするとずいぶんと落ち着いた雰囲気のある曲であることが両手の全音符が続くところからも感じられます。コンソレーションと今ではキャラクターピースのように市民権を得た名称となっておりますが、ピアノ曲において、リストが数曲のコンソレーションを作曲していることから、有名になってきたと思われます。もう少しメカニック的に書かれた難しい曲です。この曲は、内容的に心を慰めるかのように心地よい流れを全体が覆っています。
さて、この曲においてまず最初の部分で気が付くことは右手の保持を伴った指の独立を促す練習曲であるという事です。技術的には名前が示すような優しい感じはありません。弾き方としては、親指をしっかりと支えて4・5、3・4の指を均等に良くコントロールされた音を出さなければ成りません。音楽の流れは穏やかに聞こえるのは全音符の響きが良く聞こえ、細かい音を陰にすることから生まれるからです。このような手法の音楽は、シューマン、リストなどのロマン派の音楽に数多く見受けられます。
ここで求められる音は、ドルチェルジンガンドと指示してあるように、やわらかくやさしく聞こえるように、という事です。
まず、ここでは、右手の手首の高さに気をつけて弾くことが第1にあげられます。手首が低い位置ですと、手全体に力が自然に入り8分音符が弾きにくくなってしまいます。ですから少し高い位置から、親指をたてた状態で手を落とすように音を出し、次に、手首をリラックスさせて4・5、34指を軽くなでるように鍵盤を弾くと、力まないで弾けることが出来ます。全音符はしっかりと延ばす事が大事です。
また左手は、内声の下降進行の音が響くように少し大きめに弾くと、音楽的に落ち着きが出て流れが生まれます。やはり左手も、若干手首の高さを高くして親指を立てるようにして手を軽く落とすようにして弾くと良いです。
ここの3小節は、前奏に当たる部分の後半に当たり、8分音符が動きを持ち、しなやかなメロディーを形作っています。1小節目の3,4拍の8分音符と2小節目の12拍の8分音符は対称型の音型です。このミレドレの音型が音の高さを違えてメロディーとしてたびたび出てきます。この音型が全体の統一感を作っていると考えられます。またここではアクセントについても考えたいです。このアクセントの音をきっかけにしてメロディーが大きく変化をして、次の小節から4分音符の保持音が出てくる転換期の部分に導きます。また、表情豊かになるように音程の拡張があります。ですから、ここはすっきりとサラッと弾かずに丁寧に響きを味わうように弾きたいものです。3小節目は慎重にテンポをゆるめながら、次のフレーズに導くように弾けると良いと思います。
4分音符のミレの保持音から次の音楽を導くメロディーが出てきます。「さあ!どうぞ」という感じに聞こえます。
ここ3小節での注意すべき点は、アクセントの大きさと、2分音符になったところからのテンポです。アクセントは前の音から変え指で4番の薬指で弾くことになっています。これが強い音が必要と感じて、力んでしまいここだけが質の違う響きになってしまいがちな点です。手首のしなやかさでもって、音の響きのコントロールするところだと思います。
4分音符の保持音は、まず離れないように弾かなければ成りません。
ここの4分音符は保持音になってますから、離れないように弾かねばなりません。この4分音符が、この曲のメロディーに当たる部分です。音の進行の基本は、先のラソファソと同じ音型で、響きは本当に慈しむかのように美しい旋律です。
また、8分音符のラソファソが、先のミレドレの音型と同じです。このように
音型をそろえることにより一体感があります
さて、この4分音符の保持音の練習の仕方についてですが、まず親指の弾き方で注意することがあります。親指はソの鍵盤に乗せた状態で、鍵盤からなるべく離さないように、鍵盤が戻ってくるのを押し戻すような感じで繰り返して弾くと、4分音符に邪魔にならない音が出せます。次に4分音符の保持音は、一つづつの音を鍵盤を指でなでるように弾くことで、響きのある音が出せると思います。そのとき、打鍵するたびにすこしの手首の上下運動が含まれますので、手首の柔らかさが要求されます。そして流れを以て音楽を進めていきます。
また、左手の和音については、ふくよかな響きのある音がほしいと思います。ですから指を立てた状態では無く、少し指の腹でならすようにして、手首のリアクションを使った弾き方がよいかと思います。4小節目の3、4拍の8分音符はさりげなく、4分音符のメロディーの余韻を消さないぐらいの音量で弾くことが良いでしょう。
ここの部分では、2小節目の部分に注目すべき点があります。右手の保持音が無くなり、左手がそれを受け継ぐかのように、右手の動きに合わせて、同じ8
分音符で対応します。そして次の小節でもって収束する形をとっています。ディミヌエンドエポコリテヌート(だんだん弱くそしてすこし速度をゆる
めて)とあり注目が自然と集まるように書かれています。響きの色合いを味わいなさいと言っているかのようです。ですからここは極丁寧に指の運びをすることです。響きがうまく溶け込むように左右の音のバランスに気をつけることだと思います。指は鍵盤からは離さないで弾くことです。
24小節目からは、また同じメロディーが繰り返されます。
4小節目からは左手がメロディーとなりますが、右手のメロディーと6度音程の関係で、寄り添うような形になっています。この2声の響きの間に、8分音符のソの音が影のように置かれています。
保持音が、ここから左から右に変わります。この交代をスムーズに行うことはもちろんですが、語りかけるようなメロディーの推移を8分音符のソの音が重要な役割をしていることも気づかされます。
基本であるメロディーが同じでも、こうも聞こえ方が違うことに気づくでしょう。また、左手が4分音符のみになった部分の役割は、フレーズの終結部に導く役割で次に示す楽譜でわかると思いますが、いったんフレーズが閉じられます。
もう一度繰り返され、最後4小節のコーダを以て曲は締めくくられます。2度同じフレーズを繰り返すことにより、より慰めている気持が良く伝わるように聞こえます。また、最後の4分音符の感じは、改めてPと書かれているのを感じ取るべきでしょう。音楽が昇天していき気持が抜ける感じがします。そのように聞こえるように、だんだんとタッチの加減を軽くしていく様に、手首の高さも同時に上げていくように弾くことで音の調整をしやすくします。
全体のテンポは指定のテンポより少し遅くした方が弾きやすいでしょう。また、曲の感じも日本人の私たちにとって、少し遅い方が感覚的にわかりやすいと思います。西洋のそれとはやはり違いがあるようです。子供の学習者にとってみても原点版のテンポは無理があるかと思います。ある程度の指が出来てきた中級者の方が、演奏することでこの曲集全ての内容が、よりわかりやすく感じ取れるのでは無いかと思います。
ですから、音楽表現を限った限りにおいては、初級レベルとは言えないのかも知れません。メカニックのことに関して言えば、速いテンポで弾くことによって、保持音、トリルの練習になるかと思います。その練習をしながら感じられることは、やはり手首のリラックスした状態を感覚でわかることが一番必要だと言うことです。
ですから、最初はとにかくゆっくりと力まないで音を丁寧に鳴らすことです。手の感覚が自分なりにわかったときに初めてテンポを速くすることが出来るで
しょう。