曲の指定テンポ アレグロコンブリオ いききと快速に
調性 ハ短調
拍子 8分の3拍子
小節数 96小節
演奏順 3部形式
全体演奏小節数 112小節
演奏時間 付点4分音符=104で1分5秒
解説
バラードとは、一般的にものがたりふうな楽曲を指します。最初にバラードをピアノ曲で作曲したのはショパンといわれています。ほかにはブラームやリストなどが作曲しています。
このブルクミュラーのバラードは、有名な作曲家の人たちの作品に比べて規模は小さいですが、初心者にとっては物語を音から感じさせるよい体験になるでしょう。また、音楽形式の一つとして理解できれば良いでしょう。
1小節目から、右手の和音の刻みからミステリアスな雰囲気たっぷりです。この和音はずれないように揃えて弾きたいです。鍵盤に3つの指がちゃんと触れていることを感じながら弾くとよいと思います。また、テンポのことを考えますと1つ1つ和音を打鍵するのではなく1小節1単位で軽く弾ませて(つまりバウンドさせる感じで)刻むように弾くとよいと思います。このときに手首は硬くしないで、上下に軽く動かせるぐらいに柔らかにし、3つの音が同時にならせる様に手を形作ることがポイントです。また感覚が分かるまでゆっくり何回も繰り返すことです。
3小節目から左手の16分音符が、半音の動きをして4度下に音が飛び、下から這い上がってくる不気味なメロディーを奏でます。ここは動き重くならないようにPで弾くとよいと思います。また不気味な感じもPのほうが効果的になります。
ここの不気味さを出すためには、どのように弾けばよいかを考えてみます。
まず、鍵盤から指を離さないようにして鍵盤が戻ってきたのを感じながら、次に鍵盤を押し戻すような感じで弾き、小さいクレッシェンドをして、ドで音量をPに戻す様に連続して弾く事が出来れば、不気味さが出せると思います。
5小節目から、ド・ミ・ソ・ドとスタッカートで動きます。ここのスタッカートは軽く弾きたいですが、休符を利用して前もって、指をその場所に準備す
ることでミスを減らすことが出来ると思います。7小節目、左手のラのタイの付いた音はsf(スフォルツァンド)デクレッシェンドが付いています。
ここの音の出し方は、初心者は大きいからと言って思いっきり親指でたたきつけたい衝動に駆られます。確かに今まで音程が狭い部分で行き来していたところから一気の跳躍をして解放されたようになりますから、大きく弾きたくなります。注意したいことはあまりにも堅い汚い響きにならない程度に親指でしっかりと重心の低い響きをえられるようなタッチの工夫があると良いかと思います。
ここで弾き方の一つの提案として
1,手首を硬くしないようにする。
2,自然の落下を利用して、親指で鍵盤に狙いをつけて手の甲を上げた状態
でおろす。
3,音が鳴った瞬間に手首をバウンドさせる。(手首のリアクション)
以上の3点について気をつけることで、綺麗な響きがえられると思います。
考察
ここで、手首を硬くしない様にするためには、どうしたらよいか?を少し
考えてみたいと思います。
まず1つには「緊張をしない」2つには「必要以上に力を込めない」ことが挙げられます。
1番目の緊張しないは、返して言うならば「リラックスする状態を作る。」といえます。
これは精神的な部分がおおいと思いますが、たいていの場合「間違えないように!」とか、「ここは大事な音だから」など、自らが精神的な追い込みをして
いる場合が多いと思います。ですから、あくまで音を楽しもうとか、響きを味わおうなど、(なかなか難しいですとの声も聞こえてきそうですが。)緊張から
離れた気分を持つことがもっともいい結果を生むと思います。
次に「必要以上に力を込めない」についてですが、この必要という部分についてどれくらいの、割合なのかを考えてみますと、
まず1つには、手首を水平に保つだけの力。
もう一つ、鍵盤をたたく(もしくは指を曲げる)だけの力。が考えられます。ではそのような状態を自覚させる方法は、どうしたらよいのでしょうか?
ここで、1つの考え方として述べてみたいと思います。
まず腕を水平にし、指が手首からぶら下がったような形にすると、手首に力が入っていないことを自覚することが出来ます。
そして、その力が抜けた状態でピアノを弾くようにゆっくり少し手の甲を上げます。そのときに前腕の裏側の筋肉が伸びる感じが分かると思います。
そして、そのまま腕をピアノを弾くように肘を曲げ、そのまま鍵盤に手を持って行きます。そのときの手首の状態は、必要最小限の力が入った状態と考えてください。このような状態をなるべく保つようにして鍵盤に触れてください。
そのとき、指先が鍵盤に触れている感じが良く分かると思います。「ピアノを弾く自然な状態はこの状態だ」と、頭と身体にしっかり分かるまで、繰り返し実践することです。そしてこの状態を保ちながら、指を曲げる連続をするわけです。
次に鍵盤をたたく、もしくは指を曲げる運動ではどれくらいの力が必要なのか?この事について考えてみましょう!
ここで普段の生活でどれくらい手に意識を持って過ごしているかを考えてみてください。物を掴む、つまむ、握る、引っ張る(これは腕の運動の割合が多
い)支える等、様々な運動が手には出来ることが分かります。その中で、ピアノを弾くという運動は、様々な運動の中で、一番と言って良いほど簡単な動きです。それは手が普段リラックスしている状態から少し指を曲げる運動です。
(ただ問題なのは、何も障害物が無い状態での、指を曲げるのと、鍵盤のように物体があるとき指を曲げるときの精神的覚悟の違いがあると言うことです。
空気を切るという場合は、何も指先に抵抗があるわけでは無いので、スムーズに緊張感もなく動かせます。ですから力が入ることはまずありませんし、必要ないです。
しかし、鍵盤など硬い物質に対して指を曲げ、触れるという運動においては、体の保護作用が働き、多少なりとも力が入ってしまいます。ですから、どれだけ力を軽減できるかが、ポイントとなると思います。ですから、鍵盤がどれくらいの力で下がるのかをゆっくりと繰り返し弾いてみることを提案します。
そこから、人によって様々でしょうが、「これくらいの力で、指を曲げて鍵盤をおろすと音がなる」という事が分かってくると思います。これがキー感覚というものです。指先に鍵盤が触れていて、自分の意志で鍵盤を上げ下げできるようになれば、しめた物です。
左の楽譜の部分において、今まで述べてきたこと実践するには良い部分だと思います。楽譜通りに弾きますと、スタッカートになっていますが、とりあえずここで、4つの音をまず、ゆっくり同時に鍵盤を下げます。次に、手首を使ってリバウンドします。そして、またすぐに鍵盤に触れる。この一連の動作を繰り返してみることです。この動作を速くするとスタッカートになります。
そこで分かることは、指の支えをしっかりしていれば、力はさほど必要のないことが分かると思います。それより手首のリバンドする動作の勢いが必要な事が分かると思いす。よってピアノを弾くのは、いろいろな手の部分を利用して弾くのであることが分かると思います。しかし、ここのテンポを速めるにはこのリバウンドの運動を小さくしないと弾けないことが分かると思います。また、指だけの折り曲げで弾いた方が都合がよいことに気がつきます。ここでも、鍵盤に触れた状態から、指を曲げて弾く事が一番正確に弾けることが分かるでしょう。そうやって、指の使い方、手、腕の使い方を見つけていきましょう。
中間部に入る手前の3つのアクセンティッシモの和音
ここは、今まで述べきた弾き方をそのまま実践するところです。しっかりした手の形を作り鍵盤の底まで、今度は速く鍵盤を付くように弾きます。その後、手首のリバントをしてそのままの状態を鍵盤から指が離れないように1拍分保ちます。それを3回繰り返します。
上の3小節前の小節の下降進行の部分ですが、初心者にとって、乱暴になるか、又は、弱々しいタッチの音になるかの部分です。ここは、一つ一つの指の意識が大事になってくると思います。そしてどのような響きで弾きたいのかをはっきりさせることで、弾き方がきまります。例えばポンポンと、クリアーな響きで弾きたいならば、1音づつ指を鍵盤の底までしっかりと打鍵し、手首をリバウンドさせながら弾く事で、その響きが得られると思います。右から左へ引き継がれていきますが、同じ感じのタッチで弾く事が出来れば良いと思います。
ここの中間部は、右手のおおらかな流れに乗って弾く事が求められていると
思います。フレーズが4小節が2つと、6小節になっていますが、4小節は1
フレーズごと、手首の一つの動きでもってまとめるように弾くと良いでしょう。
6小節のフレーズは3度、5度、3度と下降進行が繰り返されています。ここでの手首の使い方は、細かいフレーズごとに小さく旋回をしながら弾くまとまった響きが得られると思いますが、あまり大げさな動きにしないように注意が必要です。
もちろん指だけで、まとまった響きが出せるならそれが一番良いかと思います。ここでの左手の和音は、先ほど述べた指だけで弾く、軽く響かせるタッチで弾きましょう。
ここでの音楽的頂点は、8小節目の高いラの音になります。ですから、はじめソからドの4度。シからソの6度と跳躍して。またソからドの4度。今度はシからラの7度と大木ら跳躍があります。ここのラの音がクレッシェンドの頂点となり、次の音から徐々に緩やかに下降進行となっていくのに伴ってデクレッシェンドとなります。
最後の2小節が8分音符スタッカートとなり勢いを増すようにアニマート(動きを以て)と書かれています。ここは、次のフレーズへ導き、あらたな展開を暗示しているようです。
ここのところで分かることは、リズムが前の部分の4分音符8分音符の組み合わせ(ラ♭ソ)、先に進むことを躊躇しているかの如くに繰り返されます。そして、そのフレーズの繰り返しをし、突然のsfで不安な気分をかき立てた後、diminで主題に導きます。左手は次小節のドにつながります。
そして再現部が続き、そして終わりから10小節目前まで同じ繰り返しとなっています。
次の両手奏の16分音音符が激しくなり消えていく様は、あたかも波乱に満ちた人生ドラマが、終わりを遂げるかのように感じられます。また、最後のsfの音は最後の最後に、何か悲劇的な場面、もしくは何かを決意をした様な暗示する強い意志を聞き手に想像させます。このバラードは初心者にとって大変ドラマティックな音楽だと思います。
演奏に関して注意することは、16分音符の両手奏において、左手がバタバタするか、遅れてしまう事があります。fとなっていることから、余計に力が入りやすくなりこのような症状が出ます。ここでは右手は左手に合わせるように弾く事で、両手のタイミングは合うようになります。次に音量ですが、左手の音をやや大きめにすることで、右手だけがんばっているよりかは大きな音量が得られます。これはピアノの特性として、倍音が良く出るようになるからです。(倍音については、改めて説明をします。)
8分音符の3小節の部分は、4つの和音のスタッカートの奏法で述べた如くに演奏しましょう。最後の和音は、指をしっかりと立てて支えられた状態である程度の高さから、前腕を使って軽く振り下ろす感じで弾いてみてください。