曲の指定テンポ アレグロ・モルト・アジタート 速く激しく
調性 イ短調
拍子 4分の4拍子
小節数 41小節
演奏順 リピートなし
全体演奏小節数 41小節
演奏時間 ♩=184 約54秒
解説
この曲の解釈は大変に難しいとおもいます。別れに対する感情が各個人にいて全く違いますから、そのことを考えて、テンポの設定がいろいろと考えら
れるからです。現在、日本で簡単に手に入る楽譜から、テンポの指示を見ていくと、♩=120と126から186と大変に幅広い。この曲集の中で一番の幅があります。それだけに表現内容も変わってくるわけです。
一番速いテンポではまず子供では弾けないテンポです。が実際に弾いてみると、激昂した、どうしようもない感じが出て、悲しみの大きさが伝わるような
感じになります。また遅くなると、悲しみの種類が変わってくるようです。これまた捨てがたい味わいがでてきます。別れの大小によって変わってくるな、
と感じないわけにはいかないですね。もちろん演奏能力にも大いに左右されるので、なるべくなら自分の感情に近づけるよう、努力を積んで弾けるテンポに出来るようになってほしいと思う。
序奏の部分は、右手は、表面の気持ちの表れで、左手の連打は心が突き上げられる感じを表しているようです。和音もⅣ、Ⅴで始まり、突然に別れを告げられたように感じます。右手の指変えは必ずしましょう。2番から3番の指への連打でもって自然なアクセントがつけられ、しゃくり上げる感じが出せます。
2小節目から3小節目の部分は感情が大きくあふれだすかのような音に聞こえるように弾けると良いですね。続く下降進行は気持少し落ち着くように感じら
れます。最後の4小節目は悲しみでがっかりした気持といったらよいのでしょうか。
弾き方の取り組みとして、この序奏での、和音のタッチは鍵盤から指は離さずに、鍵盤を押し戻す感じで連打を弾くとPで弾けると思います。そして全てが8分音符であることに注意することです。よく4番目の和音が、4分音符になってしまう事が多いようです。
試しに、4分音符で伸ばされた場合はどんな感じになるか?を弾き比べ対照してみることもおもしろいかもしれませんね。その時に感じが違うこともわかる
かとおいます。連打後の、属7の和音では響きが悲しみの絶頂で嘆きの爆発と考えしっかりと支えを作った手で手首を斜め前に突き出すようなタッチで弾くと爆発したような響きが得られると思います。ただ、やり過ぎや、力任せにしないように弾くことは、もちろんさらければなりません。
4小節目の右手の指番号に注目すると、慎重に弾くような指番号であることに気づくと思います。ここでは、手首の高さを低くしないように注意しましょう。親指が自由に動ける空間を作ることで、丁寧に音を出せると思います。
ここからは、別れに対する気持ちを音で表現している部分と考えられますね。どんな気持かは弾き手が考えることですが、とらえ方によって音の出し方も変
わってくると思います。3連符の部分でアクセントがあったり、スラーの部分がどのように付いているかを見て左手のメロディーに沿って動いていることがわかりますね。また感情の起伏が上から下へと動いている事も分かります。アクセントをどのように弾くかが、ここの部分の表情が変わってきますね
オーバーに弾きたい子供もいると思うので、ただここはPである小節内でのアクセントととらえて弾くことに意識させた方が良いと思います。
とにかくここはソワソワした、落ち着きがない感じ、又は「イライラ、ああどうしよう」といった自分ではどうにもならない感じとでも言ったらいいでしょうか。3連符のタッチは、手を丸めて鍵盤になるべく触れている状態で弾くようにしましょう。アクセントや5番、4番の指で跳躍するところのみ手を少し上げる程度で弾くことで充分にここの表情は出せると思います。
また、左手の4分音符はスラーの頭の音に若干のアクセントをつけることで音楽の勢いがつきます。4つの音をつなぐように手首の重心が移動するように
弾きましょう。これによって嘆きの感情がもっとハッキリと出てくるのではないでしょうか?
そして2分音符の和音が一つの盛り上がりの部分ととらえることが出来ます。ここは、少しアクセントを付けて深みのある響きを出したいと思います。
よって手首のしなやかさが必要になってきます。
ここは、3小節目からの右手の上昇部分に注目してください。それに伴う左手は半音進行で上昇します。とうとう感情があふれ出し、爆発寸前の場面に到達したような感じですね。実際に音にしてみると緊迫感が出て、引き締めていく感じに聞こえます。
ここでは、半音階に対して1音1音の響きを積み重ねていくように緊張感を以て指を鍵盤に深く入り込むようにタッチが良いと思います。徐々に手首の重みをかけていくように弾くと良いかも知れません。右手の分散和音はばらばら弾かないで3連符1固まりとします。4小節目は親指の指くぐりをスムーズにするために手首の高さに気をつけてください。テンポが速いので、手首の上下運動はここでは出来ないので、親指の動きを自由にする必要があります。
とうとう爆発が起こった場所ですね。全体がフォルテです。この楽譜ではsfのあとがアクセントのようになっているが、ここはディミヌエンドと解釈した方が、自然に聞こえると思います。右手の下降進行が、落胆の気持を大いに表しているかのようです。「なぜお別れなの?」と疑問を投げかけるかのように、左手のシンコペーションの和音が不安な気持を増幅しているようです。
ここでの注意すべき点は、フォルテの中での表現であります。フォルテからクレッシェンド、スフォルツァンド、アクセントと記号だけを追っていくと乱暴に弾いてしまう危険性がはらんでいると思います。「あくまでも、音の大きさでは無く、むしろ弾き手の強い意志と考えて音を出してみてはいかが?」と
思いますがどうでしょうか?
タッチについては、和音は手の形をしっかりとして、鍵盤の底に向かってしっかり打鍵するように弾けばよいかと思います。
3連符は気持の現れの一つですが、これは転ばないように3つの音を確実に弾いていきたいですね。
4分音符は強弱に気をつけ1つ1つの結びつきを感じながら、また、両手の最後の4分音符(ラ)は弾いた後は手を上へスーッと上げる感じで弾きましょう。
ここは、昔のことを思い出しているかのような、懐かしさ、回想シーンのようにも聞こえますね。「あの頃はこうだった、ああだった」などと思い巡らし
ているかのようでもあります。
ですから、そう考えたとき、ここの音の大きさ、響きは指示にあるPが適切だと思います。右手の音の動きに対して(音程)、リズム通りではなく音と音と
の幅を感じて幾らかの揺らぎが感じられるように弾くことがポイントとなると思います。あくまでも歌うように弾くことです。
左手の3連符は、あくまでも滑らかに流れる感じで弾くのが良いでしょう。
鍵盤にタッチしている状態で手首の左からの右へ動かす助けを以て指を軽く動かすと良いかと思います。
右手の跳躍箇所は手を広げる準備を速くして、すぐ次の音が弾けるようにすると余裕が出てきます。スラーの切れ目の音は軽く抜いて、次の音を弾くときには、息を吸って次の音を間を感じるように打鍵すれば、表情の付いた音になります。
このようにスラーの部部に少し気を遣いながら音を弾いていくことで、メロディーに抑揚がついてくる事がわかると思います。
前の4小節の続きになります。2小節目の2拍目が最高音となります。1拍目のオクターブ上の音になりますから、感情の起伏の大きさと同時に現実に引き戻されるきっかけ音と思われます。ここまでは、回想シーンの続きと思っても良いかと思いますが、確実に現実の状況に引き戻される音になるのが3小節目のラ♭が響いた瞬間です。
ですから、3小節目の右手の音は減7の和音のアルペジョで、心が落ち込む表現を表すにはぴったりの音でもあります。そして4小節目はあきらめの感情
が感じられるところだと思います。
ここの4小節間の音楽は感情が移り変わっていく箇所と考えられます。ここでの注意するところは、3小節目の右手の3番の親指飛び越しの部分といって良いでしょう。中指をしっかりとかぶせていくようにしてラ♭を弾いていくことです。また、デクレッシェンドがついていることに注目してください。
左手は前の部分と同じで、滑らかな動きと抑揚を持った音で、そのためには手首のしなやかな助けが必要だと思います。
続きの12小節は再現部に当たりますから、提示部のところと同じように弾いていきますが、別れの現実が本当であると言うことを再認識するところでもあ
ります。
この部分が最後になりますが、3小節は別れを惜しむかのような、さよならを言っているかのように見えます。そして最後のフォルテはドラマティックな感じで、悲劇のヒロインにでもなったかのような絶望感のある音に聞こえます。このようにして締めくくられますが、あまり感傷的にならないでサラッと弾いた方が、物語風になるかと思います。
また、感情を込めすぎると重くなってしまい、テンポが遅くなり作曲者のテンポ指定から感じられる切迫感が、薄らいでしまう恐れが出てくるでしょう。
ここでは右手のアルペジョをだんだんと手首の左旋回でもって、音を抜いていくようなタッチで弾かれると楽に弾けると思います。
最後の2つの和音は、決然とした音で悲しみの思いを断ち切る感じが良いかと思います。ですから、しっかりと型を決めて鍵盤の底まで弾き、強い意志を
感じられる響きがほしいです。
この曲のテンポは指示通りでは弾くことは、子供では不可能に近いテンポです。実際に弾けるテンポで弾いてみて、果たして作曲者が求めている感情がとらえ
られるかは、はなはだ疑問が残ります。どうぞ近くに指示通りに弾ける方が見えたなら、是非にでも弾いてくださることを願い出た方がよいでしょう。これ
ほど違いがあるのだと感じられることと思います。また、3連符を綺麗に粒をそろえて弾くことの難しさ、よどみのない流れを作る難しさなど、しっかりと指の動きの練習をしておかないと弾けない曲であることもわかります。
指の素早い動きを定着をさせるには良い練習曲だと思います。そのためには良く自分の音を聞くことを忘れないことです。聞こえているのではなく、聞いて
いくと言うことです。