曲の指定テンポ アレグロ・アジタート速くせきこんで
調性 ホ短調
拍子 4分の2拍子
小節数 31小節
演奏順 リピート 括弧1箇所
全体演奏小節数 46小節
演奏時間 ♩=138で約40秒
この曲は常に、左手の8分音符の和音のきざみの上から常にのしかかるように、右手の16分音符がせき込むように突進してくる感じがあります。また、音量はピアノの指示になっています。ここから想像してみますと、心配事や不安になったりすると、気持ちがドキドキしたりイライラしたりすることがあります。そうすると息が浅く短くなり、また冷や汗なども出てくることでしょう。そういった感情を音でよく表現されている曲だと思います。
ここで注意したいことは、16分音符の3つの音が1つのかたまりの意志の強さを保ちながら、1つ1つの指ははっきりとくっつかない様に弾くことです。しかし、ばらばらに指を高くして弾くことを意味しているわけではありません。三つを一つの形にして鍵盤に指をのせた状態で弾きます。
また、全体を2小節を1単位で、4拍子のようにして弾くと流れができてきます。
左手の和音の響きは、あまり強調しないように。すこし息が絶え絶えの感じが出せる和音が良いと思います。あまりにも弱々しく弾くのも良くありません。
では、ここの4小節の弾き方について少し考察したいと思います。
まず、左手の和音について考えてみたいと思います。ここは軽く鍵盤の上に置いて、かるくつく感じで弾きます。ピアノの指示になってますから、つよづよと弾かなくても好いかと思います。
次に、右手の16分音符の弾き方です
3つの音を素早く弾く事が必要ですから、まず、鍵盤に軽く手をおいて素早く指をはじくように弾きます。その後すぐに手を軽く、音が進む方向に向かって
斜め上に、もしくは真上にあげます。
5小節目の和音の音型が左右同じです。いきなり手を拡げることと、臨時記号により、左手の小指が黒鍵を弾くことや、右手の中指も黒鍵を弾くことなどで集中力が必要です。丁寧に弾こうとすれば良い結果が生まれると思います。
演奏表現としては、少し抑揚をつける感じで弾くことで弾きやすくなります。また、少しづつ大きくしていく出発点ですから、いきなり前の小節から入り込まないで、瞬間的に間を取ってこの小節を丁寧に弾き始めたらどうでしょうか。
ここまでで、3部形式の前半の1部が終わります。5小節目からのクレッシェンドが、最後のシまで続くような感じですが、途中大きな変化があります。それは、左手の4分音符のアクセントがついた和音です。この和音で調を換える働きをしています。音楽用語ではこの和音をドッペルドミナントといいます。属調の属和音です(主音から数えて5度上の音から音階が始まる調)。ですからここが自ずと強い音の響きになる形になります。音楽にはこのような変化があることによって、聞き手に何かが起こるのかな?と思わせる効果が出せます。ですから演奏する場合、こういうところでは、注意深くそして意識を持って響かせると好いかと思います。この和音の弾き方は、鍵盤に手をおいて和音をつかみ取るように弾くと同時に手首を少しあげるようにしながら鍵盤に重心をかけます。するとポーンとした響きが出せると思います。その響きを聞いて次の音へつなげます。そしてつながれた音は主和音の第1音と第3音ですが、響きは薄くならないようにし、次の短音の主音につなげます。最後の小節は強い意志を持っているかのように決然と弾ききる感じですが、アクセントはつけません。
左の楽譜の部分からはト長調になります。ホ短調と同じ調号がつきます。音楽用語では平行調(3度下から始まる音階)に転調した事になります。強弱記号がメッツオフォルテになっていますから、はじめの部分とは、明らかにもっと明るい感じに聞こえます。しかし、次に出てくる減7の和音がその明るい感じを少し曇らせ、ただ明るい感じだけではないことを教えてくれます。たとえば、人が表面的には明るく振る舞っていても心の底には不安を持っている感じ、といった具合でしょうか。よって、この音は自然に少し強めに弾いた
方が良いかな?と思います。
そしてこのパッセージを2回繰り返します。次に大きく音が跳躍する動きが出てきます。属7の和音の部分で、ここは少し丁寧に弾いてください。そして
この部分から順番に音型の2番目の音から下行していきます。左右の手が鍵盤の中央に向かっていきます。ですから音量が、自然とだんだん小さくなります。
シラ、シラ。ラソラソ。ソファソファ。ファミファミ、と。ここの和音進行はト長調属7、ト長調の主和音、ホ短調属7ホ短調の主和音と移行して主調であるホ短調に戻ります。
ここからまたはじめと同じ繰り返しとなります。転調せずただ、主調のままで繰り返しをします。
第1括弧の1小節前からが前半と違うところでホ短調の属7の和音です。順番に音型が下行していきます。第2括弧からコーダに移ります。
フォルテで左手の4分音符をよく響かせるように弾くと、この曲の最後にふさわしい情感が伝わると思います。指の先ではなく、柔らかい部分で鍵盤をタッチして弾くと良いかと思います。感情的には、少しもどかしいといったら良いのでしょうか。それとも、「もうどうしようもないことだ!」といった感じか?!
心残りは有るのでしょうが、「いつまでも心配していても仕方が無い事。」が判ったかのように、音型がオクターブづつ上行し、だんだん小さくして気持ちを
整理させたいようにも感じられます。
右手の指使いは常に同じであることに注意が必要です。これは、同じ質の響きがふさわしいということを暗示しているようでもあります。
この最後の音を弾き終わった後の余韻を少し考えてみると、いろいろと想像ができると思いますので、不安、心配などの心が痛む気持ちを考え想像して弾いてみましょう。
どういった結末の音が良いのか?!左手の4分音符は何なのか?音楽は、楽しい明るい気持ちを表現するようも、悲しい、つらい気持ちを表現する事の方が難しいことが、この曲で体験できれば良いかなと思います。