曲の指定テンポ アンダンティーノ・クワジ・アレグレットアレグレットのようなアンダンティーノ
調性 変イ長調
拍子 8分の6拍子
小節数 47小節
演奏順 リピートなし
全体演奏小節数 47小節
演奏時間 付点4分音符72で1分25秒
バルカロールとはイタリアのヴェネツィアのゴンドラ(幅の狭い小船)の先導が船を漕ぎながら歌う「バルカローレ」を模倣した曲で、ゴンドラの動きを表すような軽快なリズムを伴います。しかし、曲の雰囲気はどちらかといえば、少し感傷的(もの悲しい)な感じがします。楽曲で有名なのは、オッフェンバックの「ホフマン物語」の舟歌です。一度聴いてみてください。曲の出だしをみてみましょう。両手ユニゾンでPPでデクレッシェンドです。すごく静かな始まりですね。どんな情景が浮かぶでしょうか?
1つのたとえとして、朝、少しづつ太陽が上る感じを想像するのもよいかもしれません。港から海を眺めいると、だんだんと日が昇り、あたりが明るくなっていく感じ、とでもいいましょうか。そういった感じを想像して弾いてみると最後の和音3つの役割が何となくわかるのではないでしょうか。もしくは、ゴンドラが、1そうまた1そうと、河川に出ていく感じ。とにかくこれから何かが動き出していく感じがしますね。そういったことを踏
まえてどのように弾くか考えてみましょう。まず最初の8分音符です。ここの弾き方は静かに指だけの運動で、指を閉じる感じで鍵盤を弾いてみましょう。付点4分音符は1つの区切りとして考え、落ち着く感じで持って、少し止まる感じでそっとタッチします。押さえ込まないように気をつけます。次の和音のところからクレッシェンドになっています。1つめの和音は、準備をした後、音がばらけないように注意して静かに弾きます。フェルマータのところではスフォルツァンドですが、極端にあまり強くない方がよいと思います。和音の指使いについて、右手の2つ目の和音が楽譜通りの指使いで次の和音を弾くと、音が少し途切れてしまいます。5から5への部分を5から換え指4にしてから5にして弾くと響きがつながります。
同じ動きをもう1度繰り返されます。 ここでは最後に左手の装飾音の跳躍があります。短前打音なので付点2分音符音の所で、左右同時に弾きます。当然ですがドドと5-1で弾いたときに力任せに弾いて乱暴な音にならないようにしましょう。5から1へ慌てて速く弾くと強くなりやすいので、はじめはゆっくりと練習し、付点2分音符に手の重心がうまく移行できる様になり、音量のバランスがとれるようになってから、テンポ通りに弾いてみましょう。
ここの部分は、8分音符が上下に動きます。このような音の動きの時は、手首の助けを借りることでスムーズにメロディーを弾くことができます。手首の旋回運動を利用しましょう。
右手手首の旋回運動の基本は、左回り。左手は右回りです。
ただ単に極端に手首を大きく回すのではなく、音程が離れており、指だけで弾くと音が途切れてしまう場合において使います。闇雲に手首の旋回は反対に音が不安定になります。また、付点4分音符の前の8分音符では、打鍵した瞬間に手首の反動を感じて手首をあげ、次の音に向かって丁寧に付点4分音符を弾句と同時に、手首が鍵盤に対して平行になるように動かしてみてください。
最後の1小節目から主題に入っていく導入部分ですね。左手の和音の刻みはゴンドラの推進力を表します。I-V7の変化を感じてください。
右手のテーマは曲の主和音、ラドミの音で作られています。順番はドミラからなっていることがわかります。音の動きは、2小節長い音後2小節が短い音というようになっています。4小節のこの動きは何を表しているのか考えてみながら演奏しましょう。
ここは、メロディーに身を任せてゆったりと弾いていきたいものですね。このドミラのラの音で船が前にすーっと出て行く感じで弾くと曲の推進力が感じられます。この同じ動きが2回繰り返されていますね。2回繰り返されることでますます、舟のスピードが増していく感じがします。また、左手の和音の進行によって様々な情景が感じられると思います。和音の響きの変化をよく聞き取りましょう。また、2回目の部分(上記の楽譜で2段目の1小節目)の右手のアクセントに注意が必要です。このアクセントは歌うように弾かれている中でのものですから、あまり鋭い音にならないように少し注目させる感じの大きさぐらいで良いかと思います。そしてなぜ?という答えがへ短調からハ短調へ移調するということではないでしょうか?
また、3小節目から、下の楽譜1段目の3小節までをみてみると、右手ファミレドシラシを挟んでさまよう感じのフレーズ、ドシラ、ドファミ、ドシラ、ドソファが奏でられます。ここは、機械的に弾き通さないように一つ一つの音の響きの変わりようを感じて弾きたいものです。
加えて、ドシラ、ドソファは前の小節の部分より若干小さめに弾くことで音楽の立体感が出せます。伴奏も細やかに変化をしていますから、次々と風景が変わる様子がかじられはしないでしょうか?2段目のスフォルツァンドは1回目は強め、2回目は短前打音があることから、テンポが少し緩くして弱めに弾きます。スタッカートはもちろん軽めで指だけのタッチで弾きましょう。34小節目は少しテンポを緩めてまたテーマに戻ります。
ここで気が付くことは、ミソファと3回繰り返しでもって最初の部分へ導いていることです。普通、同型反復でもって曲を前へ前へ進めていく場合が多い中で、ここでは、落ちつかせるように仕向けている部分です。今まで学習してきたことの癖でだんだん大きくしないように気をつけたいです。反対に、慎重になりすぎるとテンポが非常に遅くなりやすいのでそういう所にも気を配ることがポイントです。最後の1小節は後半のメロディーに入ります。
ここでの弾き方については、基本はあまり変わりはありません。音の動きがだんだんと目的地に着くような、もしくは終わりに近づいているような、音の運びになっているようにも聞こえます。そのように感じられる部分を見つけてみましょう。
①,メロディーが前より細かくなっていないか。
②,音の動きが前半に比べて、上下の動きが頻繁になっていないか。
③,同じ音型が繰り返されている場所がないか。
④,最後に伴奏が細かく変化していないか。
などに注意をしてみると良いかと思います。
演奏で、音楽の流れをぎこちなくさせないために、注意する箇所があります。
たとえば、同音反復などがある所ではしなやかな指換えが必要です。
これは、1つの方法として、手首をスムーズに指導して弾くことでなめらかに弾けると思います。指の素早い交換をすること。また、描くぐりの所では常に手首の高さが、指がくくることができる空間があるかがポイントです。弾いているうちに手首が下がらないように注意しましょう。
最後は出だしの音楽と同じようにユニゾンで奏され曲を締めくくります。とうとう目的地についたようです。
消えていくように丁寧に弾きましょう。
表情記号について
leggiero レッジェーロ 軽く
cantabile カンタービレ 歌うように
lusingando ルシンガンド 優しく
perdendosi ペルデンドシ 弱くしながらだんだん遅く