曲の指定テンポ モルト・アジタート・クアジ・プレスト きわめて速く十分に激しく
調性 変ホ長調
拍子 8分の6拍子
小節数 38小節
演奏順 リピートあり
全体演奏小節数 62
演奏時間 付点四分音符126で約1分
解説
一目見て、まず左手の連打で、スタッカートの音に少し驚きがあるかもしれません。また、右手の3度で弾くメロディーにもたじろぐかもしれませんね。
全体を見回していくと、この曲が大変メカニカルな曲であることがわかると思います。腕の筋力もある程度必要になってくる曲ですね。一見、力任せに弾きたくなる楽譜ですが、そうともいえません。和音の連打は基本PPになっていますから、弾き方を工夫することで疲労は押さえられると思います。表題から、家に帰る時の心情(とにかく、うちへ速く帰り着きたいという気持ち)を音に表している曲と考えられると思います。自分が家へ戻るときの気持ちと思い合わせて、弾いてみると良いと思います。
・左手の弾き方について
この曲に必要な左手のテクニックは大きく2つあると思います。
1,単音の連打
2,和音の連打
です。
(2,和音の連打)については右手にもありますから、同じ要領で弾くことで良いと思います。ただ、右手はメロディーに相当する部分が多くありますから、若干手の使い方が違うと思います。
①,単音の連打について(左手の最初の部分)
注意する点は、2つあります。手首の高さと連打の時の指の配置です。
手を目で見て鶴が首をもたげているような感じにして、そのまま鍵盤に指を持って行ったときの手首の高さで弾きます。そして、1指、2指を交互にしながら弾くわけです。その時に2指の後ろに1指を準備しておくと弾きやすくなります。
(視覚的にOKマークを作っているような形)
2,和音の連打について(両手)
手の甲を先の単音の連打の時と同じようにして、軽く鍵盤を付くように弾きます。まずゆっくり弾いて、指先に鍵盤を押して戻ってくる感覚をつかみます。
その時は常に手首は柔らかくなっていなければなりません。指先に鍵盤を意識することで、手首への力は入りにくくなると思います。手首に力が入っていないことを確認しながら、少しづつテンポを速くしていきましょう。焦らずに地道に練習することです。
・右手の弾き方について
主に2つの音で弾くのメロディーと連打が右手の部分です。注意しておかなければならないことは、上に当たる部分の音が主旋律ということです。
2つの音を同時にならすときに、上の音がバランス的に大きく弾くのが一般的だと思います。確かにそうなんですが、ではどうすれば大きくできるのか?
もし、もっぱら「上の音大きくして!」と繰り返えされ、具体的に先生から弾き方の説明をきいた記憶がない方は、どちらかといえば何回も弾いていくうちに手がそのように反応するようになった。と感じてないでしょうか?
または、先生が弾いて見せて、その響きになるように弾き方をまねしていくうちにできるようになる。といった具合の方が多いのではないでしょうか?
ですから、その時の手の状態がどのようになっているかを、具体的にしていくことで、どう弾けば良いかが分かってくると思います。
ではその状態はといえば、どのようであるかといえば、
「鍵盤に対し上の音の意識が下の音よりもしっかり弾いている感覚があるということ。」だと思います。
難しくいえば、腕の重心が上の音にかかっている状態といった事でしょうか。
3つの音の場合も同じ事です。ただ、鍵盤の抵抗が大きく感じますから、はじめはゆっくりと練習をすることです。
このようにメカニック的なことについては、はじめは手が理解をします。そしてその状態を定着させるために何回も反復するわけですが、よく聞く話では、今やっている曲が終わり次の曲の練習に入り、2,3曲進んだ後に、また弾いてみると弾けない場合があるということです。手は今現在の状態のものを処理しようとしていますから、すぐには、反応できません。また手の記憶がなくなっている場合の方が初心者は多いと思います。ですから、手がいつまでも記憶できている状態にさせておくことは、初心者にとって大変に難しい問題です。
忘れないようにするためには、上記のように弾けたときの状態を書き留めておくことは大切なことでしょう。和音の連打は、今後いろいろな曲にも出てきますから、この曲で十分に練習をして、しっかりとその時できたときの状態について、書きとめておくことを勧めます。
ここの部分では、右手の和音が様々な響きを作りながら進んでいきます。先ほどの点に注意しながら弾き、加えて響きの変化がどのように変わっていくかを耳で確認しながら、弾き進めていきたいですね。左手がメロディーになっていますし、ピアノとフォルテの対比もしっかりと意識して弾くようにしましょう。ここの部分が終わりますとまた最初の部分に入りコーダで締めくくります。
この曲は最初から最後まで和音の響きで埋め尽くされた曲ですが、心地よい快適なテンポで弾けるようになると、演奏が楽しめると思います。最終的に爽快感が弾いた後に感じられるようになればしめたものです。