曲の指定テンポ アンダンティーノ ややアンダンテより速く
調性 ト長調
拍子 8分の6拍子
小節数 29小節
演奏順 3小節目~10小節目リピート
全体演奏小節数 37小節
演奏時間 約1分6秒
解説
最初2小節右手のみの8分音符によるメロディー、ここは牧歌ののんびり
したのどかな雰囲気を感じさせます。
このメロディーラインをdolcecantabileとの指示があるので、鍵盤から指を離さないようにして、手首の旋回運動を利用しながら弾くと、スムーズにレガートに弾けると思います。最初の音の親指を深く鍵盤に打鍵すると同時に手首を下げそのままの状態から2番・3番の指に移行すると同時に手首を少しずつ左旋回します。
この動きを利用する弾き方はよくメロディーを歌わせる場合に使うとよいです。
手首の重みの重心を移動させるタッチをここで勉強させることは大変に有効と思います。ただ、気を付けたい事は、あまりオーバーに動かさない事です。
3小節目から左手の伴奏が奏でられます。この左手の伴奏が、大変に騒がしい演奏を幾度となく聞く事があります。
これは和音の出し方が2番のアラベスクと同じようなタッチで速く弾くことから起こる現象です。
この曲では右手のメロディーと同じように鍵盤から指を離さないように戻る鍵盤を押し戻す感じで連打するタッチで弾くと、右手にマッチした響きが得られます。
大変に難しいテクニックですが、手首のしなやかさと、鍵盤と指先の感覚がしっかりと意識させる事で初心者にも可能な弾き方です。
耳で響きが漂うような感じに聞こえるように何回もゆっっくりと連打してみてください。ここでは自分の出している音に集中させるよい練習になります。イメージをしっかりと持つことから取り組み、「どのような響きがよいかな?」と思うようになればしめたものです。
3小節目、右手の6拍目に初めて装飾音が出てきます。この曲の練習目的の2番目の課題です。短く打鍵せねばならない音は指を鍵盤の近くに準備させ指を軽くはじかせるようにして次の目的の音に向かわせる様にすることです。
初めはゆっくりとそして次第に速く弾くように練習をしましょう。ここでは装飾音が4番の指で弾くので、どうしても弱い指のため、音の切れが鈍くなりがちです。そこで前練習として3番の指(中指)を鳴らすべき音の鍵盤に音を鳴らさずに鍵盤を押したままで4番の音を何回か弾く練習を繰り返します。
これにより4番の指の支えがだんだんとしっかしてくると思います。
次に5小節目の16分音符で書かれた装飾音の弾き方は1音の装飾音に比べ転がりが大きいです。ここは人差し指、中指でひくことから比較的に平易で今まで経験してきた手首の旋回左回転を利用するとスムーズに弾けるのではないでしょうか。このとき薬指がしっかり支えている形になるはずです。
10小節までのメロディーは前奏2小節を拡大した変奏と見なすことができます。ソ・シ・ド・レの音がまず2小節目終わり近くにソ抜きで現れ、6小節目に原型
が出てメロディーが繰り返されています。9・10小節は左の伴奏形が変化し8分音符によって8小節までの右手の動きを受け継ぐかのように歌われています。
右手のレから高いレの音の起伏は、深呼吸するようなつもりで弾くと音に情感が出てきます。高いレの音は抜くように弾きましょう。
3小節から10小節を繰り返したのち、左手の和音の保持音の伴奏が出てきます。4小節間ありますが、この和音はある程度の響きを持って出したいです。
そのためには、しっかりした手の形と手首のしなやかさが必要です。1曲目の「素直な心」の和音と同じような深くタッチをする。ただここでは親指でレの音を弾くことが求められ難易度が増しています。ここの親指は鍵盤から離さず1度沈めた鍵盤が戻ってくるのをまた押し戻す感覚で弾くと響きの均一化が図れます。あくまでも右のメロディーがのびのびと歌えるようにすることです。
12小節目のド#は次の2つの音の手の広がりの準備として、少し手首をあげることで次にスムーズな流れを作ることが出来ます。
また、この音(ド♯)は2回目ではアクセンティシモとなって6拍伸ばされます。左手もシ♭の連打によって、ここの音楽の雰囲気は田園風景の晴れ渡った空に雨雲らしき雲が迫った一抹の陰りを表しているかのようです。
続く不安に満ちた16小節目のミ♭がまた効果的です。しかし、それもつかの間すぐにそれたを断ち切るかのように、17小節目のシ♮をきっかけとして18小節目までで元の気分に戻すように書かれています。ここまでの左手の音の充足感とこの右手の音の絡み合う響きが、牧歌的な要素を生み出していると思います。田園風景が想像できるように弾けると良いですね。
19小節目から最初の部分と同じになりますが、前半との違いは23小節目からの和音が変化しハ長調の属7の和音、Ⅰの和音と続き、響きの広がり感をだしています。この転調を何か遠くへいざなうような感じを生み出しています。25小節目のシのアクセントによって突然、現実に引き戻された感じに聞こえます。
あと4小節は家に戻る気分で。良い1日が送れた感謝の気持ちでもって、最後の音に向かって丁寧に弾くと最後の両手の響きがきれいに澄み渡るように弾きたくなると思います。そっと手を準備して手を下す感じで弾くとよいです。
演奏テンポは指示しているテンポよりやはり少し遅めがよいでしょう。
日本は俗にいう田園風景といった景色がなかなかお目にすることが出来ない現代になりました。わざわざ山々や小川、谷といった所に足を運ばなければいけません。便利な世の中になりましたが、心が「ホッ!」とするような空間が少なくなりました。自然を生活空間に身近にできない現代社会においては、憧れの空間なのかもしれませんね。忙しい、騒がしい演奏にならないように、音の響きに身を任せるように弾ければ何よりだと思います