LED電球の構造

政府は，省エネ性能が高い発光ダイオード（ＬＥＤ）に較べ，電力を多く消費する白熱灯と蛍光灯について，国内での製造と国外からの輸入を，２０２０年度をめどに実質的に禁止する方針を固めた（asahi.com, 11月26日）．パリで開催される国連気候変動枠組み条約締約国会議（ＣＯＰ２１）に向けて，日本の温室効果ガス削減への取り組みを具体化する狙いもあると報道されている．白熱灯と蛍光灯は，ＬＥＤ並みの省エネを達成しない限り，事実上製造や輸入ができなくなる見通しである．

安倍晋三首相は昨年10月22日，ノーベル物理学賞の受賞が決まった天野浩名古屋大教授と官邸で会い，同氏らが開発した青色発光ダイオード（ＬＥＤ）について「画期的に世界を変えた．省エネも広がった」と絶賛したのは記憶に新しい（産経ニュース 2014.10.22 ）．

我が家では，天井直付シーリングライト（蛍光管）７台のうち，４台をＬＥＤ（4000ー5000ルーメンクラス）に，白熱電球および電球型蛍光灯１２灯をＬＥＤ電球に交換した．

比較的早めに対応したため，問題も多かった．その典型的な例は「照度不足」である．白熱電球の６０ワット相当と書いてあっても，実際は２０〜４０ワット程度であった．最近は，800ルーメン程度を白熱球 60ワット相当と書いているので，初期の製品は半分程度の照度であったわけである．本件に関しては，費者庁が，電球型LEDランプを販売する12社の54製品について，白熱電球と比べた明るさが不足しているとして，景品表示法に違反していることを公表した（2012年6月14日）．

メーカーを問わず寿命を40000時間と明記しているのも問題である．私は2012年1個 2000円程度の LED電球 (600lm) ３個をまとめ買いしたが，１個は一瞬点灯したものの，以後点灯せずメーカーに交換してもらった，パソコンデスクライトに使用していた他の１個は１年半後に点滅し始め，ついには点灯しなくなった．寿命４万時間は点けっ放しにした場合，4年半はもつことになる．実際の使用時間を考慮すると１０年以上は使用できるはずである．それにしては短寿命すぎる感が強い．ところで，LED電球には，なぜか保証期間は書かれていない．いろいろ調べてみると，寿命がユーザーの使用状態に依存するためらしい．

そこでジャンク部品の中に放置していたLED電球を分解して調べてみた.

半球部と白色土台部の隙間に，ヤスリを入れて拡げ，数ヶ所ドライバの先を挿し込んで．隙間を広げるようにドライバを動かすとカバーは接着部から分離する．経年変化でプラスチックが固化しているため一部割れてしまった．内部構造は最上部右図である．発光部は，インターネット上で散見する「電飾LEDを複数個配置した構造」ではなく，四角形（黄色部分）の素子１個がアルミ放熱板上に固定されていた．基板を取り出し，交流100Vを流し，2次側の直流電圧を測定すると137Vを示した．この電圧は100Vが整流された電圧であり，この種のLED動作電圧の40Vをはるかに越えている．おそらく制御回路が壊れ整流機能だけが残っているものと思われる．