ニッパー(犬)

ニッパー(犬)

古いオーディオ機器やパソコン類を思い切って廃棄した.オープンテープデッキ2台,カセットテープデッキ2台,チューナー2台,メインアンプ,レコードプレイヤー,自作品等々,軽トラック一台分をリサイクル業者が無料で引き取っていった.

捨てきれずに保存していた関連の小間物を整理していると,棚の奥にニッパー君(雄犬)が埃を被って立っていた.彼は,恩師の田口胤三教授から貰ったものであり,我家のオーディオ機器類や音楽生活の変遷を黙って見つめてきた存在である.レコードからテープへ,次いで MD, CD へ,さらには半導体メモリ(フラッシュメモリ)と記憶媒体が変化する過程で彼の出番はなかった.

円盤式蓄音器の発明者であるエミール・ベルリナーが,亡き主人の声を懐かしそうに聞いているニッパーの可憐な姿に感動し,その姿を描いた名画をそのまま「米国ビクタートーキングマシーン」の商標として1900年に登録した.日本では,1927年の日本ビクター設立時から,親会社であった米国ビクタートーキングマシーンの商標を用いている. 元の絵では,ニッパーはエジソン・ベル社の円筒型蓄音機に耳を傾けていたが,同社が商標として採用しなかったため,ベルリーナ・グラモフォン社の円盤型蓄音機の音を聞いている姿に変わった.

記憶媒体の変遷

CD, MDはレコードの仲間だから理解できる?

フラッシュカードや iPod となると?

iPodとの組合せ,意外と様になる?

ニッパーがお蔵入りする前に,レコードプレイヤーのターンテーブルの上で記念撮影を行った.CD, MD は円盤が回転するという意味ではレコードに似ている.実際,従来のレコードをダイアモンド針の代わりに,レーザー光を使って音を読み取るレーザーターンテーブルが実用化されているが,1日1台の手作りのため極めて高額である.これでは世界中に蓄積されているアナログレコードの有効利用には程遠い存在である.

iPodは,アップルが開発・販売する携帯型デジタル音楽プレイヤーであるが,本体に搭載されているフラスコメモリーに膨大な量の音楽を保存することができる.個人的に収集したレコードやCDなら3〜4万円の出費で充分である.80GBのiPodの場合,10分の楽曲を記録するには約20MB必要であるから,軽く数千曲記録できる(記録方法によって異なる).

iPodとの記念撮影画像は違和感を感じない.ビデオ映像も再生できるためか,なんとなく覗き込んでいるように見える.現代のニッパーは,飼い主の声や姿をビデオ映像で見るというストーリーになるだろう.実際は,ドッグイヤーと言われるように,犬は人間の7倍の速度で歳をとるため,人間が犬のビデオ映像を見る逆バージョンになっているようだ.

ついでに

岡本一平 著「一平全集」(先進社 昭和4-5)に中に,雑篇集(401-408頁)があり,「甲子園野球大會スケツチ(大正15年)」と題して面白いエピソードを漫画入りで紹介している.「商標の手伝ひ」の超ヴイクトロラ(ビクトローラ)の犬はビクターのニッパーである.昭和初期,屋外の聴衆に向けて音楽を流すための巨大ホーン(電気式巨大拡声器)を有するディスプレイを北米と日本で展示したとVictor-Victrolaの Web ページに書かれている.日本では各地を巡回したというWeb 記事がある.

実際のディスプレイ

Victor-Victrola Web page の画像を表示(Toronto Canada, 1926)

前年(大正14年)に実況放送が開始された.球場内のアナウンスは実施されていないので,超ヴイクトロラの売り込みだったのだろう?