第9回入選作品

応募総数24,343首の中から選ばれた入選作品をここに発表します。たくさんのご応募ありがとうございました。

学校全体で「現代学生百人一首」に取り組まれ、多数の優れた応募作品がある学校に贈呈します「学校特別賞」は下記の4校に決定いたしました。

・東京都 暁星高等学校

・東京都 桜丘女子高等学校

・北海道 稚内市立抜海中学校

・愛知県 安城市立安城西中学校


▼入選作品(作品は都道府県別に北から並んでいます。学校名・学年・作者は発表時の情報です。)

牛達の間にはさまれポカポカと体温感じて搾乳していく

北海道 稚内市立抜海中学校 3年

上原 由華


何もないわかっていてもついのぞく今日はあるかな母からの手紙

北海道 北海道教育大学 1年

矢部 真紀子


半折に折目をつけて墨擦れば筆をもつ手に気合いがはいる

青森県 県立三沢商業高等学校 3年

植村 育子


どのように塗っていこうか真っ白なわたしの未来のマークシートを

岩手県 東進衛星予備校 年

小瀬川 貴子


待つ人のいない部屋見上げポケットの冷たい鍵を投げ上げてみる

宮城県 東北工業大学 2年

鴨井 喜博


夕暮れのバスを待ちつつ自販機のコーヒーの温かさに秋を感じる

山形県 県立山形西高等学校 1年

石井 香織


マフラーが去年のままで置いてある想いも毛糸も編みかけのまま

山形県 県立山形西高等学校 1年

高橋 陽子


お父さん少しは母を休ませて昼は十分働いている

山形県 県立ゆきわり養護学校高等部 2年

佐藤 奈美


祖父の背の銃の古傷撫で思う戦いに過ぎた悲しき青春

茨城県 東洋大学附属牛久高等学校 3年

金原 朋子


シンナーの匂い染み込む作業衣を着がえるヒマなし夜の教室

茨城県 県立水海道第一高等学校定時制 4年

植木 寿行


主婦学生掃除洗濯子育てを済ませて通う夜の学校

茨城県 県立水海道第一高等学校定時制 4年

大滝 通代


バス降りたら暗闇の中光ってるむかえの母の懐中電灯

茨城県 茨城大学教育学部附属中学校 2年

飯竹 広恵


中三の頃より我の放置せしピアノより母のバイエル響く

茨城県 茨城大学 1年

野村 桂子


片思い月日過ぎてもあのままのわたしの心は冷凍保存

埼玉県 浦和学院高等学校 3年

鈴木 里奈


夕焼けに誘われ少しまわり道母へのおみやげコスモス一輪

埼玉県 県立小川高等学校 2年

佐藤 真由美


ホームランあの好プレー辰徳が最後に見せたプロの根性

埼玉県 県立越生高等学校 3年

浅野 智由


いなくなり初めて気づく悲しさよもうペットなど飼わぬと決めた

埼玉県 県立越生高等学校 3年

中村 篤治


みずひきの赤く小さな花々がかすかにゆれる秩父路の秋

埼玉県 県立坂戸高等学校 2年

飯野 ゆかり


スパイクのひも結び直すその指にあせりと緊張ふるえとまらず

埼玉県 県立坂戸西高等学校 1年

市木 秀人


幕末に夢をおいかけ生きた人今も海見る坂本竜馬

埼玉県 県立坂戸西高等学校 1年

鈴木 孝幸


受話器持ちプッシュボタンをあとひとつ押せばききたい声きけるのに

埼玉県 県立寄居高等学校 1年

春山 久美子


飛び散ったプライドの破片集めては眠れぬ夜のジグソー・パズル

千葉県 県立千葉大宮高等学校 3年

斉藤 陽克


生物の食物連鎖の図の中にヒトが動物殺す絵はない

千葉県 県立富里高等学校 3年

立岩 一美


「南天が成長するのは栄える証拠」と庭を眺める祖母の笑顔は

千葉県 県立成田国際高等学校 3年

越村 英子


真っ白な心に紙ひろげ描いてみよう明日の地図を

千葉県 県立船橋旭高等学校 3年

中村 亜希


自転車を私にあわせて不器用にこぐあなたらしい優しさが好き

東京都 都立稲城高等学校 3年

大城 明日香


夏の日の花火の夜に君といるつなげない手に想いはつのる

東京都 都立稲城高等学校 2年

馬場 友一


帰宅して新聞を読む父親の目と新聞の距離が拡がる

東京都 暁星高等学校 1年

室町 泰史


トルネード変な投げかたするけれどアメリカいちのスーパースター

東京都 京華商業高等学校 2年

難波 丈二


偶然ね。笑って君に言うけれど気づいて欲しい待ちぶせてること

東京都 桜丘女子高等学校 2年

井上 つかさ


真剣な眼をしてボールを追いかけるあなたの眼には私はいない

東京都 桜丘女子高等学校 1年

大村 朋子


新しく買ったブーツの行き先をなくしてしまった今夜の電話

東京都 桜丘女子高等学校 1年

管 香織


なにげなく今日も電話を待っている鳴った瞬間笑顔を隠す

東京都 淑徳巣鴨高等学校 1年

大崎 裕子


いつもなら授業を受けてる先生と焼き肉つつく合宿の夕べ

東京都 女子学院高等学校 2年

高花 美樹


高校は自分で決めろと言いながら最終判断親の掌中

東京都 都立富士高等学校 1年

榎本 貴


つらい時助けてくれたこの曲を記憶と共に今聴き返す

東京都 文化女子大学附属杉並高等学校 3年

久岡 幸子


日本史の講義で熟睡してる間に何百年も時代がすぎる

東京都 文化女子大学附属杉並高等学校 3年

廣田 涼子


吉野ヶ里卑弥呼に会いにやってきた汗をかきかきたたずむ草原

東京都 都立村山養護学校高等部 3年

酒井 志保


手動式限定免許小さな紙65時間教習の重み

東京都 都立村山養護学校高等部 3年

千葉 沙智子


ムルロアの静寂破る核実験深い傷負う母なる大地

東京都 明星高等学校 1年

加藤 寛章


知らぬ間に追い越していた年齢(とし)の数テレビの中ののび太やカツオ

東京都 明星高等学校 1年

鈴木 重洋


車いすを軽々あげる若者は通りすがりの剣道部員

東京都 大妻中野中学校 1年

橘川 春奈


読みかけの本にはさんであるものは風が運んだ落ち葉のしおり

東京都 京北中学校 3年

塚本 祐介


日本海波にのまれた小ガニたち必死に戻るまたさらわれる

東京都 京北中学校 1年

北原 康浩


疲れたと言いつつごはんの支度する母にお金となかなか言えず

東京都 國學院大学久我山中学校 3年

田辺 操


バスの中で座りますかの一言が言える自分に拍手を送る

東京都 國學院大学久我山中学校 2年

野底 靖


休み明けショートをロングにした君は伸びた長さの分遠くなってる

東京都 青山学院大学 4年

上中谷 幸夫


重そうな包みが届く「新米よ」なぜわかったの?切れそうなこと

東京都 お茶の水女子大学 2年

日水 史子


図書館に時はゆらりとたゆたって古代の地層の化石のようだ

東京都 國學院大学 1年

近藤 暁子


我の姓“さん”づけで呼ぶあの人の名前をそっと呼びすててみる

東京都 東京音楽大学 2年

太田 明子


自転車をこぐ人達の顔つきに未来を感じた北京の朝(あした)

東京都 東洋大学 3年

竹之内 久実子


やわらかな春の光を浴びながら蝶迷いこむ君を待つ部屋

東京都 明治学院大学 1年

木村 美春


弱くとも「強さ」という名の鎧着て偽りの自分を見せる日もある

東京都 早稲田大学 4年

石井 美奈子


桜桃の白き花咲く山寺に土盛られゆく友の亡骸

東京都 東洋大学大学院

寺田 貴美代


授業中きんもくせいのいい香り初秋漂う窓側の席

神奈川県 県立小田原高等学校 1年

桐生 亜紀


かたちないものもいつかは壊れることをできればずっと知りたくなかった

神奈川県 県立小田原高等学校 1年

立石 明子


友達のままでいいからあと少しあなたの瞳の中にいさせて

神奈川県 神奈川大学附属高等学校 3年

高井 絵美


異国にて初めて思う懐かしさ蝉と風鈴蚊取り線香

神奈川県 東横学園大倉山高等学校 1年

城〓 美和


アマゾンの森林の木が切られていくノート一枚ムダにはできず

神奈川県 神奈川大学附属中学校 1年

雨貝 延久


蝉の声聞くと祖母を思い出すみかん畑の小さな背中

神奈川県 神奈川大学附属中学校 1年

大森 亮敬


デッサンに真剣なふりして石膏の隣の君の横顔みてる

神奈川県 和泉短期大学 1年

長浦 史恵


遠慮しつつ上目遣いに母をみて卒業旅行の費用をたのむ

新潟県 県立六日町高等学校 3年

山田 愛歌


オレンジの空のえがおに目をほそめTシャツを干す寮の休日

山梨県 日本航空高等学校 1年

露木 悟堂


伝統を受け継ぐ者と自覚して情熱もちて和太鼓を打つ

山梨県 日本航空高等学校 1年

前田 伸二


思い切ってぱたんと閉じれば終わるのにこれが小説(はなし)であるというなら

岐阜県 県立岐山高等学校 2年

田中 理子


現在は亡き死者の魂風になり影がポツンと石段に残る

静岡県 県立静岡農業高等学校 2年

白輪 弘二


屍のねむる川底太田川今も聞こゆる無念の叫び

静岡県 県立静岡農業高等学校 2年

山田 智哉


夕食のコロッケの横が光ってるちょっと得意なキャベツのせん切り

愛知県 光ヶ丘女子高等学校 1年

土谷 みのり


浜名湖をはさみを使って切るように青空の下進むボートは

愛知県 安城市立安城西中学校 2年

藤田 典久


もしもしと呼ばれ思わず振り返る視線の先には携帯電話

愛知県 名古屋大学 4年

山崎 良子


落とされた巣を作り直す親つばめまた土わらを運びとびかう

京都府 府立北桑田高等学校 3年

坂本 隆行


風紀指導先生の目は透視可能長髪に隠れたピアス見つけた

京都府 同志社女子高等学校 2年

藤原 理恵


盗まれた通学用の自転車がわが家に届く二カ月ぶりに

京都府 南京都高等学校 1年

植田 憲寛


今日もまた同じ演歌を流しくる魚屋に猫があくびしている

京都府 仏教大学 4年

吉村 和子


夕焼けで焦げる図書館頬杖をついたまま夢伸ばしゆく秋

京都府 立命館大学 4年

岩谷 昌樹


震災のボランティアで復興に役立てた事を誇りに思う

大阪府 大阪市立生野工業高等学校 2年

石原 勇浩


FRIENDと書いてスペルを眺めれば後半部分が妙に気になる

大阪府 府立堺西高等学校 3年

隅野 竜児


機械化が進むといえど田の水を毎朝見に行く祖母の足音

大阪府 清風中学校 1年

植山 大輔


心臓が口から出そうな懇談会先生が母の意見に押されてた

兵庫県 県立香寺高等学校 2年

福田 結加


オリックス日本一はのがしたが神戸にくれた勇気と笑顔

兵庫県 市立神戸商業高等学校 3年

関原 三枝子


震災の本を見るたび母が泣く妹の名がのる死者の一覧

兵庫県 市立神戸商業高等学校 1年

加藤 いつか


震災後の仮設校舎で勉強だよそのクラスの声がきこえる

兵庫県 市立神戸商業高等学校 1年

富上 直俊


震災後更地になった空地にも秋のおとずれコスモスの花

兵庫県 県立神戸高塚高等学校 1年

松本 綾介


夕焼けの中にちぎれてゆく雲と私とともに染まる坂の上

兵庫県 県立佐用高等学校 3年

井上 めぐみ


アルファ波は脳にいいのと言い訳しラジカセかけて宿題をする

兵庫県 県立長田高等学校 1年

蔭山 泰史


大震災に助け合うこと覚えたがサリン事件で人間不信

兵庫県 県立姫路別所高等学校 3年

柴田 英美


冬の朝電気が消えて揺れ始め縦横揺れてすべて無に帰す

兵庫県 神戸市立御影工業高等学校 2年

伏原 平雅


どこまでも黄色い手を振るキリン草遠回りして家路をたどる

兵庫県 県立三木東高等学校 2年

井上 典子


髪切った鏡の中の自分見て変われるような気持ちがしてる

兵庫県 県立三木東高等学校 2年

清平 ひとみ


父遅く帰宅しレンジであたためる後ろ姿何やら寂し

島根県 出雲西高等学校 3年

加納 康臣


反対を無視してまでもフランスは何を求めて地球を汚す

広島県 県立尾道東高等学校 1年

倉田 大輔


夏休み必死で覚えた百人一首おかげで気分は平安時代

山口県 県立下関南高等学校 1年

金田 美奈


落ちる汗灼熱の炎を浴びながら溶接をする夏の実習

愛媛県 県立今治工業高等学校 3年

森 昌彦


御先祖はすごい人だと言う母よ私の中ではあなたが一番

福岡県 県立須恵高等学校 3年

西田 陽子


逆境に得たる思想の輝きて校内弁論一位となれり

熊本県 熊本大学附属中学校 1年

金栗 翔一


「十時ね。」と明日の約束してみてもなかなかさよなら言えないバス停

大分県 県立佐賀関高等学校 1年

柿本 千枝


ショートステイ、デイケアセンター横文字を解せぬ祖父は独り老いゆく

宮崎県 県立宮崎大宮高等学校 2年

福留 祥子


沖縄に米軍基地があるかぎり沖縄の心いまだなごまず

沖縄県 県立知念高等学校 3年

新垣 智規


ひしひしと冬の気配を感じつつ落ち葉の敷布ふみしめ歩く

米国 テネシー明治学院高等学校 1年

石田 麻由


障害ある身をば忘れさす異国にて「地球人」となり己が道探す

米国 トレド大学大学院

内田 早苗