第35回入選作品

応募総数78,444首の中から選ばれた入選作品をここに発表します。たくさんのご応募ありがとうございました。

学校全体で「現代学生百人一首」に取り組まれ、多数の優れた作品を応募いただいた学校に贈呈する「学校特別賞」は以下の5校に決定いたしました。

・山形県  山形県立山辺高等学校

・埼玉県  埼玉県立川越総合高等学校

・東京都  東京農業大学第一高等学校

・神奈川県 慶應義塾普通部

・三重県  菰野町立菰野中学校


▼第35回 応募作品を振り返って

コロナ禍での生活も2年目に突入した第35回は、過去最多の応募数となりました。自粛が続き、思うようにいかない生活の中で、自分を見つめ直す時間が増え、周囲への想いを再認識したと感じられます。未来への不安を歌にした作品がある一方で、自身のおかれた状況を、時にユーモラスに、時に俯瞰して詠んだ歌も多く寄せられ、学生たちの柔らかな心を垣間見ることができました。オンライン授業や分散登校が、非日常で特別なこととして詠まれていた前回と違い、マスク着用でクラスメートの素顔もわからないまま始まった学校生活の中で、マスクをしていないことに違和感を覚える歌や、かえって自分を「盛れる」と楽しむ様子などが軽やかに詠まれています。さらに今回の応募作品群の特長として、オンラインでのコミュニケーションが定着し、授業だけでなく私生活の中でもオンライン上で仲間とつながり、好きなアイドルを応援する「推し活」など、若者たちの柔軟な適応力に感服する一面もありました。

【学校生活】

オンライン授業や部活動、大会の中止など、活動の制限が続く学校生活を、ある学生はユーモラスに、ある学生は淡々と歌にしました。また例年に比べ未来への希望や決意を宣言する歌が少なかったのは、コロナ禍で世の中の先行きが不透明であると感じていることも影響しているかもしれません。

【時事・社会問題】

コロナ関連の話題だけでなく、ダイバーシティ、SDGsなどについて若者ならではの視点で詠んだ作品が寄せられました。社会と自分を比較しながら、作品として昇華させている歌が印象的でした。

【家族】

テレワークやオンライン授業が継続する状況下で、家族との何気ないやりとりを丁寧に表現したり、日常の一場面を鮮やかに切り取った歌が寄せられました。また遠くに住む祖父母に対しては、画面越しのお見舞いを歌にした作品が今年も多くあり、会いたくても会えない期間が長くなっていることが伺えました。


▼入選作品(作品は都道府県別に北から並んでいます。学校名・学年・作者は発表時の情報です。)

着信で半トーンほど上がる声いつから母と同じになった?

北海道札幌北高等学校2年

山下わかな


二回目のワクチン接種終わったよ単身赴任の父への切符

北海道美唄聖華高等学校3年

田代桃


コロナ禍でマスク生活定着しドラマの中の少しの違和感

北海道美唄聖華高等学校3年

藤井帆海


ありがとうコートに向けて最後の礼リング見上げて新たな夢を

青森県立三本木農業高等学校3年

髙田佳穂子


ゴーグルの使用方法孫に聞くごめんねそれはグーグルなのよ

一関修紅高等学校3年

髙橋玲亜


初デート二人並んで歩く道これがいわゆる青春なのか

専修大学北上高等学校2年

照井志穂


レジの前ライン引かれて気が付けば等差数列みたいに並ぶ

聖ウルスラ学院英智高等学校2年

横溝麻志穂


次はいつ会えるのかしらと泣く祖母の手も握れずにガラスと会話

宮城県宮城野高等学校2年

大場美言


甲子園熱き戦い終えた君髪形一つで別人みたい

秋田県立秋田北高等学校3年

鎌田桃佳


問題と見つめあって十五分二次関数にフラれた私

山形県立山辺高等学校1年

荒木美咲


先生のかわいい眉が気になって目が離せないミーティング中

山形県立山辺高等学校1年

矢作桃花


「うるさいな」言ってしまった一言を細い身体の祖父見て悔やむ

山形県立山辺高等学校2年

後藤早紀


手元から離れずババがステイホームコロナの威力トランプにまで

いわき秀英高等学校1年

根本姫花利


「本当はね」初めて知った新事実父の手一つでずっとありがとう

天栄村立天栄中学校2年

石塚愛優


風を切り仲間目指してひた走る溢れる思いたすきに込めて

福島県立安積黎明高等学校1年

堀田雅織


ペダルこぎ左右に揺れた背の荷物箱にぶつかるトマトの悲鳴

福島県立安積黎明高等学校1年

松本茜音


体育館カンカンキュッキュッと鳴り響くシューズとボールのすてきな音色

福島県立平工業高等学校1年

村上翔太


リモートで授業はじまり映る部屋勉強よりもそうじ頑張る

茨城県立鉾田第一高等学校1年

黒木薰里


顔加工男に変身してみたら「パパにそっくり!」ショックな私

茨城高等学校1年

小室華凛


くだらないそれが将来何になる鼻で笑って憧れる僕

茨城高等学校1年

武藤太一


相葉くん櫻井くんも祝結婚私も一応一般女性

茨城高等学校2年

宮本和奏


発表中私の声が遅れてる私は困惑画面は爆笑

鹿嶋市立平井中学校3年

大川楓


賢さをスマートフォンに奪われる操作されてる君の日常

東洋大学附属牛久高等学校3年

冨田涼太


ピカピカに磨いたフルート出番なく涙にぬれたコロナ禍の夏

埼玉県立川越女子高等学校1年

武田衣未


点Pさんぐるぐるまわる図形上楽しむあなたと苦しむ私

埼玉県立川越女子高等学校2年

細貝杏衣


看護師の祖母が引退「おつかれ」とハグしたいのをはばむ世の中

埼玉県立川越総合高等学校3年

江澤穂


コロナ禍で日々マスクつけ気がついたプリクラよりも盛れる気がする

埼玉県立松山女子高等学校2年

梅澤碧葉


三〇〇年時空をこえてバロックを奏でる僕にバッハがコケる

市川中学校2年

鈴木優紀


人が増え広い教室狭くなる終わりを告げた分散登校

市川中学校2年

渡辺悠貴


コロナ禍で出かけられずに家籠る一度も着ない夏服たちと

敬愛大学八日市場高等学校3年

篠塚帆乃佳


オンライン画面とマイクで授業中下から大声ごはんですよ

芝浦工業大学柏中学校2年

小林直史


本屋行き好きな作者の新刊を買い読む時の至福の時間

芝浦工業大学柏中学校3年

大谷健介


不織布を「ふしき」と読んじゃう君だから不思議な君を僕は読めない

芝浦工業大学柏高等学校2年

小野陽平


「眩しいね」「猛暑日だもんね」そうじゃないあなたの笑顔と光る汗だよ

千葉県立千葉中学校3年

但馬凜


体操の最終種目鉄棒の止まった着地止まらぬ涙

千葉県立千葉西高等学校1年

浅海綾音


休日に壁越しに聞く会議の声優しい父の上司の一面

千葉県立八千代東高等学校1年

鶴岡彩音


『外出自粛』自粛疲れのストレスを戦闘ゲームにぶつける私

松戸市立旭町中学校1年

星夏穂


父の指赤く染めてくアルコール白衣の下に覚悟を決めて

慶應義塾中等部3年

髙倉綾乃


突然のゆれと泣き声ふるえる手十年経ってもあせない記憶

慶應義塾中等部3年

水落眞琴


昼食でマスクをはずす違和感がコロナ禍にいると再認させる

慶應義塾中等部3年

三谷力輝


世界中飾り彩る十七色地球の未来の希望か枷か

慶應義塾中等部3年

山川颯月


夏休みもがきまくった部活動大会中止心が折れる

国士舘高等学校1年

藤田潤夏


新語なの「はにゃ」と言われて困惑中誰か私に意味を教えて

国分寺市立第五中学校3年

川瀬天寧


大好きな車の運転やめにしてバスに乗る祖父小さく見えた

国分寺市立第五中学校3年

渡邉結


女子美生絵の具のついた仕事着の汚れでさえも作品のよう

女子美術大学付属中学校2年

丸井遥香


やつが来た「ブン」と横切る吸血鬼正義の父のバトル始まる

世田谷区立喜多見中学校2年

石川奏太


「今日濃いね」ポカリの味に気づく君好きの想いに気づくのはいつ

専修大学附属高等学校1年

長岡芽


あの人は今頃なにをしてるかな知りたくなるし知りたくないし

専修大学附属高等学校2年

石川直樹


家の中授業を受ける弟の背後を通る私は忍者

専修大学附属高等学校2年

小塚萌愛


祖母からの贈り物には茄子があり畑が薫る今日の夕飯

貞静学園中学校2年

高橋永尚


リンリンと風鈴揺れて目を覚ます今年は行かないラジオ体操

貞静学園高等学校1年

井上璃音


ぐうたらの父も外では郵便屋日焼けでわかる灼熱地獄

貞静学園高等学校2年

松橋明句


アクリル板マスク消毒ディスタンス慣れたくなかったこんな生活

東京都立片倉高等学校2年

樋口壱之介


蝉の音が読んだページに刻まれて参考書から八月の記憶

東京都立片倉高等学校3年

宇佐見翔


寂しいな私の問いには生返事一緒にいても目線はスマホ

東京都立府中高等学校3年

北湯口莉奈


コロナ禍で身近になった黒マスク対策のはずが今では親友

東京都立本所高等学校2年

岡本春紀


風鈴の夏を連れだすその音は時をまたいで心やすらぐ

東京農業大学第一高等学校1年

恩田優奈


ネット授業我が家のアイドルおでましだネコが届けた和やかな昼

練馬区立関中学校2年

澤田拓実


時計地図写真音楽お財布も気づけばみんなスマホの中に

普連土学園中学校2年

赤間夏妃


マスク消えみんなのかおが見えるときはなせるのかな今まで通り

普連土学園中学校2年

川本美瑛


いびきかき寝てる愛犬ながめると実感したよ飼い主に似る

文京学院大学女子中学校1年

佐藤杏菜


ズーム中ミュート忘れて歌うたいさびしい授業わらいあふれた

明星高等学校2年

橋本大和


難問を解いたチョークの消し残しどこかアイツのやさしさがある

神奈川県立神奈川総合産業高等学校3年

大竹恭平


文化祭二年連続オンライン慣らされていくこの空気感

慶應義塾湘南藤沢高等部2年

石川胡桃


天気予報風のボクサー映りだす西からおそう右ストレート

慶應義塾普通部2年

近藤悠成


わからない君の指し手も感情も誰か教えて恋の五手詰

慶應義塾普通部3年

杉本創


植物は文句を言わずかわいいな水やりながら母はつぶやく

慶應義塾普通部3年

林谷彬生


妹の寝顔にそっとごめんねと言うくらいなら優しくしろ俺

慶應義塾普通部3年

涌井夕輝


先輩の「勝った!」のLINE届くこと信じて磨くサッカーボール

中央大学附属横浜高等学校1年

吾妻こと葉


音のない世界で私達手で話す画面ごしでも笑い合えてる

横浜市立ろう特別支援学校2年

平賀梨里穂


十七色のSDGsが叫ばれる僕らの日常変わらないけど

東京学館新潟高等学校1年

五十嵐天邑


一年生黄色の帽子は道に咲くタンポポのよう五月の朝の

東京学館新潟高等学校1年

小林優汰


初めての車椅子に乗る祖父の手を握って感じる笑顔の裏側

東京学館新潟高等学校1年

物井秋羽


恥ずかしいマスク外すの躊躇する慣れてしまった新生活に

石川県立金沢商業高等学校1年

小池穂楓


特別に最期だからと病棟へ厚い祖父の手「またね」と握る

石川県立金沢西高等学校3年

坂井結妃


顔合わせすぐに首振るせんぷうきそっぽ向かずに俺だけ見てろ

山梨県立白根高等学校2年

金丸幸生


何時からか気になりだした周囲の目うんと手を挙げた無垢なあの頃

山梨県立都留興譲館高等学校3年

檜垣稀妃奈


暇つぶし気付けば覗くSNS遠くの君のSOSかも

長野県小諸高等学校3年

小林彩葉


知らぬまに中学違う三人が肩を並べて圃場へ向かう

静岡県立静岡農業高等学校2年

中野葵


卒アルの写真撮影マスクとり初めて知った先生の素顔

名古屋市立桜台高等学校3年

植田琴未


今話題スケボー買って挑戦だ一週間でやる気無くした

光ヶ丘女子高等学校1年

青山怜花


朝八時ベッドから起きる兄弟たち朝から取り合うリモートの場所

菰野町立菰野中学校2年

二之湯玲香


十年後再会しても気づくかなマスク顔しか知らない友達

三重県立津東高等学校2年

上山愛裕


今度こそたるんだ身体に終止符を筋トレ動画を寝ながら探す

三重県立津東高等学校2年

星本宇哉


AIも母の声には返事する優先順位インプット済

守山市立明富中学校3年

中西結羽


雨弾く紫陽花ひかる梅雨の頃三室戸に咲く二万もの四葩

京都廣学館高等学校3年

大西恋


マイルーム気軽に入る我が父に一度言いたい立入禁止

京都文教中学校2年

山名野々香


役割に制服さらに呼びかたも男女で分ける必要あるの?

立命館宇治中学校3年

松尾紗弥


暗い道街灯の明かり道しるべ私もなりたい誰かの明かりに

近畿大学附属高等学校2年

中山渚々夏


反抗期来たら何する母が問う少し考え「野菜を残す」

伊丹市立松崎中学校3年

花輪ひなの


コロナ禍で大声出せずヒソヒソとしゃべる姿は小鳥のようだ

東洋大学附属姫路高等学校1年

春木翔伍


視線落ち口にはマスク会話なく耳にはイヤホンまるで三猿

西宮市立西宮東高等学校1年

永井滉子


二年半育てた髪がカツラへと姿を変えて闘う君へ

山陽学園高等学校3年

井上愛心


音楽部最後の舞台コンクール緊張の先に見慣れた笑顔

福山市立松永中学校3年

門田七架


パソコンと話し始めてはや一年カメラで人の目見るクセつける

阿南工業高等専門学校5年

丸山賢人


蝉時雨ポニーテールのうなじ灼くコーラの瓶当て涼む午後二時

聖和女子学院高等学校1年

前田智花


鐘の音街中響く爆竹と伝統つなぐ精霊流し

長崎女子高等学校2年

木屋希芽


今晩も筆を走らす受験前雪の代わりにスマホの光

長崎女子高等学校2年

畑地夢愛


日本語だ誰も知らないノルウェーでふいに聞こえる行列の中

慶應義塾ニューヨーク学院 〔高等部〕3年

三輪茉利奈


こうちゃんのかんぺきなトスよく見える楽しく飛んで強いスパイク

トスカーナ日本人会 フィレンツェ日本語補習授業校〔中学校〕1年

鈴木裕朗



【小学生の部】


?の声青い夏の空見あげればブルーインパルス飛んでいった

白百合学園小学校6年

村井美紀子


夏の夜空を見上げれば花火達悲しみも消す笑顔の魔法

長岡市立越路小学校6年

星愛菜


山古志の牛の角つき激しいがちゃんと最後はひきわけにする

長岡市立山古志小学校6年

五十嵐亜都夢


オンライン下はパジャマで上は服寝坊をしても心配ないさ

岐阜市立柳津小学校5年

柴田かんな


オノマトペいろいろな音きれいだな今日も一日いい音さがし

大泉学園 堺市立大泉小学校3年

大寶優香


お母さんお仕事かいごぼくはじゅくぼくたちみんなぐったりねむる

大泉学園 堺市立大泉小学校3年

大前涼資


コンパスをまわしてたくさん円かいたそしたらできた平わの五りん

大泉学園 堺市立大泉小学校3年

濱田類叶


妹が回転花火に火をつけた目が回るほど怖がっていた

新上五島町立青方小学校6年

??田歩華


やすみじかんくしゃみをするといっせいにじろみをされてうごきがとまる

南島原市立布津小学校4年

大平桃聖


弟はへんなおどりをするけれどみんながいうよぼくににてると

南島原市立布津小学校4年

山下昴



【日本語学校・海外協定校で学ぶ学生の優秀作品】


私だけ聞こえるのかなと思っていた宇宙の信号実はコオロギ

双葉外語学校2年

李導獻


一言で人を殺せる一言で人を助ける一言は武器

国書日本語学校2年

ナチンビルグーン


梅雨の間に花が喜び鳥歌う祭りみたいにさわやかな日々

シーナカリンウィロート大学3年

パンチャラットクルーソン