第34回入選作品

応募総数65,499首の中から選ばれた入選作品をここに発表します。たくさんのご応募ありがとうございました。

学校全体で「現代学生百人一首」に取り組まれ、多数の優れた作品を応募いただいた学校に贈呈する「学校特別賞」は以下の5校に決定いたしました。

・群馬県 高崎商科大学附属高等学校

・埼玉県 狭山市立堀兼中学校

・東京都 東京都立美原高等学校

・岐阜県 岐阜県立大垣商業高等学校

・長崎県 佐世保市立柚木中学校


▼第34回 応募作品を振り返って

新型コロナウイルスの影響による休校もあり、応募が減ることもやむを得ないと考えておりましたが、予想に反し、日本国内外から6万5千首を超える作品が集まりました。今回で34回目を迎えますが、コロナ禍においても募集を継続できた意義は大きいと感じています。

自粛生活の中で、自分自身を見つめなおしたり、思わぬ発見があったりと、いずれも学生の「いま」をリアルに切り取った作品ばかりです。受験や就職を控えた学年では、進路や未来への希望や不安を詠んだ作品もみられました。さらに今回は、実体験が得にくい状況下で、インターネットを通じたコミュニケーションを取らざるを得なかった学生たちの経験や思いを詠んだ作品も多数寄せられ、新しい時代に生きていく若者たちの姿が垣間見られました。

【学校生活】

休校措置、オンラインによる授業、部活動の休止や大会の中止など、2020年の学生たちを取り巻く環境は想像もできなかったことばかり。その状況下で感じた思いを詠んだ歌が多かったことが今回の特徴です。

【時事・社会問題】

コロナ関連話題だけでなく、リアルとインターネットの二面性、有名スポーツ選手のメッセージ性のある行動、レジ袋有料化など、興味や関心を持ったさまざまな事象を、若者ならではの視点で詠んだ作品が寄せられました。

【家族】

外出制限や親の在宅勤務により家族がずっと一緒にいることで、両親の仕事ぶりや普段は見せない一面を垣間見たことが、作者にさまざまな意識や感情の変化をもたらしたと感じる歌が多くみられました。また、遠方に住む祖父母に会えない寂しさを詠んだ歌が多かったことも、今回ならではの傾向です。


▼入選作品(作品は都道府県別に北から並んでいます。学校名・学年・作者は発表時の情報です。)

ハグをしてそれぞれの道をいつかまたそれでも春を嫌いになれない

旭川実業高等学校1年

吉田可琳


白秋忌祖母の歌ひし童歌少し外れた音で覚えた

秋田県立秋田西高等学校2年

鈴木優羽


自粛中あつ森でする海水浴ゲームで感じる季節の移ろい

山形県立酒田光陵高等学校3年

阿部姫乃


バッサリと自慢の髪を切った日は君の一言ずっとまってる

山形県立北村山高等学校1年

田中琉那


ありがとう言えない言葉伝えたい空っぽの弁当見て笑う母

山形県立北村山高等学校2年

笠原小夏


気づいたら手に入れていた選挙権高校生が世を変えられる

福島県立平工業高等学校3年

小松慎太郎


うすい箱つなぐイヤホン仮想世界そこから先は私の世界

茨城県立鉾田第一高等学校1年

金井海紅


プラトンもアリストテレスも教えてはくれない進路も君の気持ちも

茨城高等学校1年

石川櫻子


夕焼けは光のパレット日によってあかね桃色今日は何色

茨城高等学校3年

藤澤怜奈


ふと香る蚊取り線香脳裏にはあの穏やかな亡き祖父の笑み

江戸川学園取手中学校2年

塚本愛菜


とちおとめ氷の山を染める赤頭にキーンと打ち上げ花火

宇都宮海星女子学院中学校1年

デンプシーニコール春香


化学基礎教えてくれる君の手に働いてほしい分子間力

高崎商科大学附属高等学校1年

野村百花


電卓のマイナスボタン押したのにACボタンでやる気もAC

高崎商科大学附属高等学校2年

鈴木彩音


養蚕の「よ」の字も目立たぬ現代にひそかに聞こゆ桑をはむ音

埼玉県立川越総合高等学校2年

湯本蓮


指ハート流行おくれ気にせずに貴方に届け私の気持ち

埼玉県立坂戸西高等学校2年

小林千華


画面越し毎日見てた担任がデカくてびびる初登校日

埼玉栄中学校1年

藤原史奈


気付いたら午前一時をすぎていたああおそろしい本の力よ

さいたま市立宮前中学校2年

亀谷由衣


生き方を教えてくれたおじいちゃん最後の教え人は死ぬこと

狭山市立堀兼中学校2年

相川海己


あんなにも熱く悩んだ片想いどこに置いたかまた夏が来る

狭山市立堀兼中学校2年

奥冨莉緒菜


久々に着た制服の窮屈さ自粛期間の長さを語る

狭山市立堀兼中学校2年

杉本陽


友達が「ピエん」と嘆いたテスト返し返され私は「パオん」とつぶやく

西武学園文理中学校3年

石井芽依


学校のリモート授業寝落ちして起きたら画面に僕しかいない

西武学園文理中学校3年

村上麟太郎


待つ人がいるから毎日病院へがんばる母にエールを送る

いすみ市立国吉中学校3年

石井美咲


「まだまだね」からかっていた君の背は「まだまだだね」と私をからかう

芝浦工業大学柏中学校3年

高濱莉奈


テレワーク父の携帯鳴り止まない乾いた笑いおそらく上司

芝浦工業大学柏高等学校1年

井出眞之介


今や皆二人の自分かかえてる社会の自分とネットの自分

千葉県立泉高等学校1年

尾﨑利希


体育祭カメラごしに見る君の顔保存したのは秘密にするね

千葉県立浦安南高等学校3年

中村凜子


夏休み小湊線は都会色田舎の空気を吸いにきている

千葉県立京葉高等学校1年

蔵野裕香


リモートで祖父母の家におじゃまして電子マネーでこづかいもらう

千葉県立千葉西高等学校3年

知久暖菜


いまわたし泣きたい気分なんだからてるてる坊主は逆さにつるして

千葉県立千葉中学校3年

野宮樹


会いたいと慣れないスマホでかけてくるそんな祖父母を愛しく思う

千葉県立流山南高等学校1年

宮﨑ほの香


休みの日どこに行ったか聞かれたらすかさず言うよ画面の中と

千葉県立船橋芝山高等学校3年

佐々木琴美


炎天下夏にせかされ咲く恋は秋に枯れ行く極楽鳥花

千葉県立松戸馬橋高等学校3年

小野温音


現実で世界平和を願ってもゲームの中では大量虐殺

千葉商科大学付属高等学校2年

横田虎之介


彼が打つボールは綺麗にゴールへと私のハートに3ポイント

千葉市立葛城中学校2年

神原結奈


磯の匂い思い出すのは祖父の家津波に流され消えた故郷

麗澤中学校1年

井澤莉子


オンラインカメラをオフにし忘れて放送される自分の寝顔

開智日本橋学園高等学校1年

高田陽太


僕たちの成長みてきたとしまえん別れの感謝火と水の音

慶應義塾中等部2年

髙原煌世


コンビニでビニール越しの店員の声が聞こえず聞き直す我

慶應義塾中等部2年

山中圭


背番号全員付けて挑む夏いつもと違う特別な夏

国士舘高等学校3年

大熊将晴


七枚に大坂なおみの強い意志優勝で示す命の在り方

国分寺市立第五中学校3年

藤原春歩


「こ」と打ってコロナと予測変換しスマホまでもがコロナ禍にいる

淑徳高等学校3年

藤原祐奈


吊り革を触らずバランス保ちつつ両手に荷物今日も筋トレ

昭和女子大学附属昭和中学校3年

加藤理子


秋の午後ホウキギターをにぎりしめ聞いてください本当の俺

世田谷区立梅丘中学校2年

黒田孔


自粛中一人でいること多かった自分の声を忘れていたよ

専修大学附属高等学校1年

清水利空


歓喜の輪ハイタッチじゃなくヒジタッチ新しい日々始まる一歩

専修大学附属高等学校2年

伊藤諄哉


リモートで遅刻欠席ゼロだけど下はパジャマの校則違反

玉川学園中学部3年

竹川友梨


街中で咳き込む人を睨みつけ私は既にコロナ脳なり

東京都立片倉高等学校2年

島倉匠


お疲れと手を振ったけど気付かれず静かにしまう私の右腕

東京都立翔陽高等学校2年

沖彩寧


深夜2時あっ読まれたと舞い上がるラジオネームは自分の誇り

東京都立立川国際中等教育学校5年

角和泉


なんとなくスマホ片手に詠んでみる小野小町の恋の行く末

東京都立田柄高等学校1年

宇津野ひなた


マスクどこ頭を下げても聞いてくる見えてないのか前の貼り紙

東京都立美原高等学校2年

深澤優香


すれ違いほんの一瞬視線合うバスのあなたと自転車の私

東京都立美原高等学校3年

岩男夏鈴


面談後父とふたりの通学路付き合いたての恋人のように

東京農業大学第一高等学校3年

椎名偉大


通学路雨浴び輝く紫陽花を一人楽しむ分散登校

豊島区立西池袋中学校2年

山口和花奈


痩せていくホッキョクグマを思い出しレジ袋からエコバッグへと

西東京市立青嵐中学校2年

尾藤咲良


汗かいて怪獣マスクあごにして弟走る夏の公園

三輪田学園中学校1年

福戸優衣


軒下は腹を空かせた燕の子早く逃げろよ番いの蜻蛉

早稲田大学高等学院3年

八木義仁


ダンボール開けると秋の味覚たちつめ込む祖父の笑顔が浮かぶ

神奈川大学附属中学校3年

上野志織


「行ってきます」奇数の君からライン来て「気をつけてね」と偶数の私

神奈川大学附属高等学校1年

深澤璃子


レジ前で親分みたいなおじさんのバッグ持参にちょっとときめく

神奈川大学附属高等学校2年

杉本麻由花


コロナ禍でリモート授業の新学期友達作りはZoomにLINE

鵠沼高等学校2年

石田七海


授業中微塵も動かぬ長針が休み時間にスパートかける

慶應義塾普通部1年

丸山智


寝室の掃除で見つけたアルバムの小さな手形に手をそえてみる

慶應義塾普通部3年

原田皐汰


この先に今年があって良かったと思える日々があると信じて

中央大学附属横浜高等学校1年

渡辺納妃


訃報さえむさぼり尽くす世の中で生きる私はとても小さい

中央大学附属横浜高等学校2年

平出蘭奈


電車から時々見える青空が私のスマホしまってくれる

桐蔭学園中学校 女子部3年

長谷川結生


父さんの居ない私は父の日の原稿用紙をまだみつめてる

東京学館新潟高等学校1年

生野帆乃花


黒色のマスクで四つの感情を隠していれば友達のまま

東京学館新潟高等学校2年

金子優斗


何欲しい聞かれるたびに答えるが一番欲しいのは母との時間

新潟県立長岡農業高等学校3年

加藤智美


足運ぶ時代でないと実感し挑戦してみるウーバーイーツ

新潟県立津南中等教育学校4年

渡邊煌生


留学を決めたと君に告げてから草笛の音がなぜかせつない

都留文科大学1年

千田洋平


自転車を私の横でひく君の日焼けした腕大好きでした

伊那西高等学校1年

塩澤希風


教科書の文豪たちの問いかけにひとり脳内大討論会

岐阜県立大垣商業高等学校2年

竹中杏珠


「県大会行きたいじゃない行くんだよ」仲間の言葉胸を打つ夏

岐阜県立大垣商業高等学校2年

堀葉月


夏の夜に明かりに群がる虫たちよ共に学ぼう現代文B

静岡県立磐田南高等学校 定時制4年

武内麗雄


農高生七時半から畑作業「おはよう」交わす野菜と私

静岡県立静岡農業高等学校1年

板垣春菜


亡き祖父の財布貰った夏休みこれが最後のおこづかいだと

光ヶ丘女子高等学校2年

藤原久遠


うちに来る越後の新米北のサンマ思いを馳せて食す時待つ

三重郡菰野町立菰野中学校2年

藤森大晴


京の夜いつもと違う点六つ来年は見たい大の灯し火

京都市立旭丘中学校2年

首藤亮太


「もう十分」余命半年微笑む祖母あなたが良くても私は嫌だ

大阪府立港南造形高等学校1年

松田有加


質問をクラスラインになげかける既読はつくが返信0件

近畿大学附属高等学校2年

亀岡奈実


入学式すぐに実習キュウリ植えいきなり今日から農高生だ

兵庫県立農業高等学校3年

白濵和気


目を凝らし細かくハンドル回してくミリより低い俺たちの世界

広島県立広島工業高等学校2年

池田翔太


無観客いつもは聞こえぬ打球音プロの淒さを改めて知る

広島県立広島工業高等学校3年

木村太一


細腕に震える三指そっと当て伝わる拍動感じるいのち

広島市医師会看護専門学校医療高等課程2年

大村知慧


あの頃にもとに戻れるなら一言座学だけでも起きとけ私

広島市医師会看護専門学校医療高等課程2年

中植あいら


大豪雨部活がなくて喜んだそんな自分をどこか恥じてる

岩国市立玖珂中学校2年

弘下雄也


プリクラで可愛く写る女たち男よ気を張れ実物ちゃうぞ

山口県立岩国商業高等学校3年

友座猛


政府から「不要な外出控えてね」時代が僕に追いついたようだ

阿南工業高等専門学校1年

渡邉響綺


毎朝のあるようでない指定席いつもの顔ぶれあと何回か

香川県立三本松高等学校3年

金地皐希


認知症祖母の中から消えていく自分の名前大切な物

高知県立安芸桜ヶ丘高等学校3年

楠瀬蓮


コロナ流行り「気をつけろよ」の友のLINEアイツもたまには優しいんだな

大牟田高等学校2年

秋根周典


夏の夜や君の笑顔を思い寝る明日は言いたい「月が綺麗」と

福岡県立筑紫高等学校1年

境拓真


外練の赤い日焼けを見るたびに「今日どうだった」と笑う母親

佐世保市立柚木中学校2年

椎葉藍香


中継を見ながら過ごした祈りの日いつも以上に思いを込めて

佐世保市立柚木中学校3年

山本ほのか


父親のゴボウのような細い腕冷たくなるまで握り続ける

長崎市立長崎商業高等学校3年

佐藤陽菜


言葉の矢真上に放てば分かるはず矢は落ちてくる自分の元に

熊本県立小川工業高等学校2年

井村望愛


スマートフォン下向き歩きやってると見えなくなってる人と青空

沖縄県立豊見城高等学校2年

宮城菜々星


くやしいなバス行っちゃった時計見るかさにポツポツふってくる雨

トスカーナ日本人会 フィレンツェ日本語補習授業校(中学)2年

奥田美亜



【小学生の部】


さむいのに部屋でむずむずどうしたの体が外へ出ようとするよ

木更津市立請西小学校5年

熊倉悠香


この秋も今か今かと待っている鼻をくすぐる金木犀を

白百合学園小学校6年

大川珠佳


作品のタイムカプセル美術館変わらぬ心未来に繋ぐ

白百合学園小学校6年

河本紗柊


青色を食べて冷たいかき氷溶けて近くの海ふたつあり

白百合学園小学校6年

鈴木愛弓


久しぶり握るラケット打つボールマスクの下は笑顔だからね

白百合学園小学校6年

長谷部葉


悲しいないつもとちがう夏休み毎年見てた長岡花火

長岡市立越路小学校6年

渡邉薫


山古志の中山隧道日本一手掘りのトンネルとっても長い

長岡市立山古志小学校5年

藤井結人


さつまいもホクホクあまいいいかおりやって来ましただいすきなあき

大泉学園 堺市立大泉小学校2年

大寶優香


もらったよ三角じょうぎしんぴんだつかいこなすぞかしこくなるぞ

大泉学園 堺市立大泉小学校2年

川口晄太朗


一番の思い出になった運動会みんなとだから思い出なんだ

南島原市立布津小学校5年

池田遥翔



【日本語学校・海外協定校で学ぶ学生の優秀作品】


立っていた君の姿は月のように私の夢に射し込んできた

双葉外語学校1年

邱燕斌


日本来て中秋の時月を見てふるさとの親思い起こした

国書日本語学校2年

鄧?


道角の野良猫が見る急ぐ人マスクをつけてどこへゆくのか

国立マラヤ大学1年

アイヌラムサエワターライベク


家族とは互いに愛し優しくし大切にして幸せになる

国立マラヤ大学2年

アリヤビンティモハマドノール


雨が降り小さい光輝いて今夜の闇も暖かくなる

ベトナム国家大学ホーチミン市人文社会科学大学4年

ラムティタンタオ