第36回入選作品

応募総数65,966首の中から選ばれた入選作品をここに発表します。たくさんのご応募ありがとうございました。

学校全体で「現代学生百人一首」に取り組まれ、多数の優れた作品を応募いただいた学校に贈呈する「学校特別賞」は以下の5校に決定いたしました。

・山形県 山形県立山辺高等学校

・千葉県 芝浦工業大学柏高等学校

・神奈川県 慶應義塾普通部

・京都府 京都女子中学校

・長崎県 佐世保市立日野中学校


▼第36回 応募作品を振り返って

3年ぶりの「日常」

コロナ禍も3年目。マスクが必需品の生活、自身や家族の感染など、コロナ以降の生活様式が当たり前となった一方で、部活動や学校行事、地域のイベントなどが再開され、「3年ぶり」という表現が見られるなど、少しずつ元の日常を取り戻しています。

今回の応募作品には、家族や友人と過ごす“普通の”夏休みの様子がうかがえる歌、試合に向かう緊張や引退する先輩から引き継ぐ思いなど活動が再開された部活動にまつわる歌、「合唱コンクール」「文化祭」「修学旅行」など対面で開催された学校行事にまつわる歌など、オンラインとは違うリアルな体験で感じた気持ちや再び交流できる喜びを詠んだ歌が多く寄せられました。

【学校生活】

学校生活に対面での活動や行事が戻り、そこで感じた思いや情景を詠んだ歌が多く見られました。専門的な学びの場を詠んだ歌には若者ならではの感性が光る作品が見られました。

【時事・社会問題】

違いを受け入れる歌がある一方で、「多様性」という言葉で理解したつもりになって思考停止してしまうことへの危機意識を詠んだ歌もありました。ウクライナについて平和を願う気持ちを率直に詠んだ作品も多数寄せられ、実社会にむける若い世代のまなざしを感じました。

【日常生活】

若者らしい流行り言葉やSNSを使いこなす毎日。その一方でスマホからそっと離れてみる試みも。未来への選択肢に直面して、悩む若者らしい歌も寄せられました。


▼入選作品(作品は都道府県別に北から並んでいます。学校名・学年・作者は発表時の情報です。)

冬の朝かじかみながら登校す手袋一双貸し借りしながら

帯広北高等学校2年

村本彩花


頑張れとぽつりつぶやくその声は彼に届かず試合が終わる

札幌市立西岡中学校2年

山下利子


二個上の兄と迎える成人は心の準備全然出来ない

北海道美唄聖華高等学校3年

森廣千智


三年の時経て揺れる火薬の香湖水にひかる花のなつかし

青森県立三本木農業恵拓高等学校1年

田村凜


十六の僕らの翅はひしゃげてる好きも嫌いも言えず震えて

仙台市立仙台高等学校1年

佐藤文菜


通学路目立たないけど地面にも毎日変わる楽しさがある

宮城県仙台二華中学校1年

及川颯


免許取り初心者マークの兄と行く右をむいたら父の面影

宮城県名取高等学校2年

横山実優


鳥海の涼しき風にあおがれるテントの中に登山部眠る

秋田県立秋田北高等学校1年

櫻庭幸登


オムレツはふわふわよりも薄皮派部活帰りの私を包む

秋田県立秋田西高等学校3年

利部瑠南


流行語若者「それな」祖母「んだず」祖母が使うとめんこいばかり

山形県立新庄神室産業高等学校真室川校1年

荒木英美梨


祖父の編む葡萄の蔓で出来た籠裏地縫う祖母躍るぬい針

山形県立新庄神室産業高等学校真室川校1年

櫻本唯


手に持った鑷子の冷たさ身にしみるこれから看てゆく命の尊さ

山形県立山辺高等学校1年

漆山璃海


オレンジの夕日が差し込む窓際で試験に向けてにんじんを切る

山形県立山辺高等学校1年

横山凜


暑い中私も食べたい芋煮会担当業務は検温だった

山形県立山辺高等学校3年

工藤心春


じゃんがらで今亡き祖母を迎え入れ家族で囲む新盆の夜

福島県立平工業高等学校1年

宮澤悠仁


見上げれば三段上にいるきみを「ち、よ、こ、れ、い、と」で追いぬく放課後

東洋大学附属牛久高等学校3年

櫛田有咲


インスタのQRコードでよろしくね女子高生の名刺交換

東洋大学附属牛久高等学校3年

中山由香


これなあに?聞く弟の指の先ウソでしょ!それは公衆電話

上尾市立上平中学校2年

大久保采音


あたらしい個性が見えるコロナ禍で身につける服あわせるマスク

埼玉県立越谷南高等学校1年

安藤虹七


憂鬱な梅雨の激しい雨の日も前髪死守するJK強し

埼玉県立庄和高等学校3年

間所唯


数々の「違い」に悩む私たちそれでもいつか分かり合えたら

埼玉県立松山女子高等学校1年

五十里莉奈


幼き日百円握って通ってた駄菓子屋の戸に「閉店します」

埼玉県立蕨高等学校3年

重田梨亜


弟の「ねえね、あそぼ」の一言に最後にいいよと言えたのはいつ

芝浦工業大学柏高等学校3年

村口真菜


電車内マスクしてない人がいる責める気持ちを消せない自分

芝浦工業大学柏中学校1年

井上湊祐


わがままでめんどうくさいぼくだけど感謝を込めて風呂を洗うよ

芝浦工業大学柏中学校1年

宮下玲


せりなずなごぎょうはこべら七草の一番最初は私の名前

昭和学院秀英中学校1年

福田せり


テレワーク会議をしている母親にご飯まだかと訴え続ける

千葉県立安房拓心高等学校1年

鈴木大和


角折れた古いノートを見返せば小さな自分よく頑張ったね

千葉県立千葉中学校2年

田中真緒


武道場かけ声響く頭脳戦一本取るぞ右足を出す

千葉市立轟町中学校2年

岩﨑雄斗


電車内席を譲るが断られ下車駅同じ長いふみきり

千葉明徳中学校3年

松井凜


地区大会敗れた夜のカレーライス甘口なのに目の奥ピリリ

稲城市立稲城第三中学校2年

小川慶太郎


休み時間一人群れずに本を読む君の姿に目を奪われた

?友学園女子中学校2年

江尻あい


二学期の始めの頃に現れるシャワーヘッドのような向日葵

学習院女子中等科2年

篠崎双葉


緊張し勝手にかかるビブラートお願い声帯落ちついていこ

慶應義塾中等部3年

今泉佳彩


消されゆく運命にあると知りながら往復はがきに書いた「行」の字

慶應義塾中等部3年

高橋蒼


ビニールの仕切りに波打つ面会に祖母の手のシワ幾重にも増え

国士舘高等学校1年

佐藤菜穂


自信作そう昨晩は思ったが今日の私が消しゴムで消す

白百合学園中学校2年

杉田明日香


言い方で伝わることは変わるから最大限の私で話す

専修大学附属高等学校1年

望月奈緒


「ママ」と呼び「お母さん」と言いなおすなお照れくさい十三の夏

高輪中学校2年

田中護裕


母入院男4人の夏休み小言はないが明るさもなし

貞静学園中学校1年

長﨑大嘉


ふと思う私の夢はなんだろうソーダの泡がはじけて消える

田園調布学園中等部2年

佐久間咲良


マスク越し飽きるほど見た君の顔弁当開けばまた別の君

東京都立日比谷高等学校3年

野上佳鈴


文化祭初の対面ミュージカル拍手はこんなに嬉しかったか

東京都立日比谷高等学校3年

野畑琴音


子は学科親は学校選ぼうと言い争うは三者面談

東京農業大学第一高等学校1年

武田英俊


おはようと笑って挨拶するために二段落とした変速装置

東京農業大学第一高等学校3年

仲明快


最近の子どもの名前読めないよ母と推測クラスの名薄

東洋大学京北中学校3年

倉井遥花


ウクライナコロナ未来の教科書の数行分の激動の年

日本大学大学院2年

内村佳保


引っ越しですっからかんのあたしんちまた思い出を育んでいく

普連土学園中学校2年

福永真夕


炎天下サッカーをして汗をかく俺らの臭いまさにカメムシ

明星高等学校1年

髙橋海舟


分からないものを分からぬものとして楽しむ心スマホで消えた

早稲田大学高等学院2年

森谷昂之心


「もう一回!」三〇分後はい王手父に勝てずにそっぽ向く夏

神奈川大学附属中学校1年

大谷柚葉


堂々とアイス頬張る家一人こそこそ片付け証拠隠滅

神奈川大学附属中学校1年

幸田茉花


五時間も黙って座る日帰りの座禅もどきの修学旅行

慶應義塾普通部1年

栗原勇哲


気づいたらいつもスマホを触ってる催眠術に僕はかかった

慶應義塾普通部1年

柳沢諒


もう少し違う関係あの夜のラインに早く気付いていたら

慶應義塾普通部2年

髙橋仁寛


まじやばいガチでえぐいわそれは草スパイのような僕らの会話

慶應義塾普通部3年

加藤大地


「行ってきます」「行ってらっしゃい」それだけで私は今日もがんばれるんだ

法政大学第二中学校2年

宇井朋希


塾帰り空のスクリーン茜色そっとスマホをリュックに入れる

横浜市立南戸塚中学校3年

若狭いおり


マスクして少し曇った声だっていいさ想いを告げられるのなら

東京学館新潟高等学校1年

佐藤翼海


十一年経っても私は帰りたい私の故郷いわきの町へ

東京学館新潟高等学校1年

渡辺恵美里


コロナ禍で誰かが居ない教室に慣れてく自分が何か悲しい

東京学館新潟高等学校2年

吉田そら


朝起きて布団投げ出し洗面所女家族の戦が始まる

金沢大学附属高等学校2年

長野好花


マスク時代目で感情を表現し私も一歩女優に近づく

上田西高等学校3年

篠原百絵


カマキリの卵が地上10センチ今年の冬は雪が少ない

松商学園高等学校2年

星野沙羅


なぜだろうみんなと違うだけなのに間違いなんかじゃないはずなのに

川辺町立川辺中学校2年

加藤葵衣


大掃除ほこりかぶった本棚に知らない本と父の歴史と

川辺町立川辺中学校2年

三品明日香


淡々とありをりはべりいまそがり迫る睡魔に抗いながら

静岡県立下田高等学校3年

太田果蓮


未来への地図がないまま歩き出す自由の苦しさ知ったこの夏

静岡県立下田高等学校3年

相馬瑶


卒業式名前呼ばれてマイクオン自室に響く寂しげな「はい」

静岡県立浜松北高等学校1年

佐々木菜結


シャープペン落として気づく午後十時麦茶の氷はあとかたもなく

静岡県立浜松北高等学校1年

芳澤明希


背が伸びて届かなかった吊り革をやっと掴めた高一の春

名古屋市立桜台高等学校1年

志智朱莉


青い空金色の野のウクライナ描くためには赤はいらない

名古屋市立桜台高等学校1年

鈴木優志


嫌なこと「多様性」だとまるめられ少し不安な私の未来

光ヶ丘女子高等学校3年

佐藤天音


内定の通知書そっと見せてみた親の笑顔が忘れられない

三重県立紀南高等学校3年

松田旬


あなたへの敬語をだんだん外したい「はい」を「うん」へと変えてみる今日

大阪大学2年

小池弘実


お父さん口きかなくてごめんなさい思春期とやらがきてしまったの

京田辺市立培良中学校2年

有牛柚子香


板隔てバーガー頬張り笑い合う今ある幸せ一口味わう

京都女子中学校2年

沢井咲菜


澄んだ空山から見える宇治川も頼通がみたあの日と同じ

京都女子中学校2年

橋本千央


甲子園活躍するのは男子だけ私は河原でキャッチボール

京都女子中学校2年

三浦知紗


まだ寝てる君を起こすか迷う手をまた引っこめる放課後のバス

京都市立紫野高等学校1年

竹内悠莉


隔離され一人寂しい十日間学校行きたい初めて思う

明浄学院高等学校1年

中本一瑚


この音に過去と未来を詰めこんで息を合わせる私とホルン

芦屋市立精道中学校2年

高澤紬


登下校稲を見ながら歩いたら友と感じる春夏秋冬

関西学院中学部2年

上羽優菜


つかめない深くて青い成層圏君のようだと常々思う

関西学院中学部2年

島川善名


はいどうぞこころひろすぎかわいすぎなんでもくれるにさいのいとこ

西宮市立西宮東高等学校2年

神田早葵


ゆうこ、まほ会うたび変わる私の名孫の名前は間違えないで

兵庫県立尼崎北高等学校2年

西口瑞季


他人には弱みを見せぬと笑う君水があふれたコップを見つめて

紀の川市立貴志川中学校2年

久保侑里菜


溶接をやってくうちに見えてくる理屈を超えた感覚の世界

広島県立広島工業高等学校3年

沖野晴人


初めての実習実施リモートで一人孤独に我が身を拭いた

広島市医師会看護専門学校2年

吉村清香


蛍火をつつみこんだ手宝箱そっと開けば夏の思い出

広島市立東原中学校2年

宮内澪


スタートの飛び込み台に立ったとき静まりかえる一瞬の水

山口市立宮野中学校2年

山岡颯眞


好きな人素直に言えず推しという便利な言葉で本心隠す

徳島県立脇町高等学校2年

土井杏実


教室の外から聞こえた君の声姿は見えずも背筋が伸びた

香川県立三本松高等学校2年

大江有加


二人きり何を話すか分からない心臓だけが会話をしている

東明館高等学校2年

木村愛子


暮れなずむ橙色のいい眺め少し長めの親子の会話

佐世保市立日野中学校1年

桒野良輔


耳澄まし今の世界の音を聞く平和を祈る原爆忌の日

佐世保市立日野中学校1年

庄﨑あかね


あの頃はルーズソックスミニスカで楽しかったと母はつぶやく

長崎女子高等学校2年

益柚妃


「始まるね」「緊張しないね」という君の手が震えてるの僕は知ってる

熊本県立熊本商業高等学校3年

内村希良


気づいたら君に目線が奪われる特等席を私にください

沖縄県立西原高等学校2年

新城璃星


マスクして買い物行くと蔑視されカルチャーショック不意に感じる

慶應義塾ニューヨーク学院(高等部)9年(中学校3年)

相澤み子



【小学生の部】


ながれ星キラキラ光るほう石だみんながえがお私のねがい

横浜市立藤が丘小学校4年

吉瀬真央


木がゆれるまだ夏なのに七ぶそでおち葉が飛んでまるで飛行機

横浜市立つつじが丘小学校6年

木佐貫結花


夜の世界読書をしたら引きこまれまだ見ぬ世界でかけめぐるぼく

長岡市立越路小学校6年

小林羽愛叶


幼くて覚えていない祖父祖母を写真では無く近くで見たい

長岡市立越路小学校6年

田中彩羽


メロディーが流れて母は懐かしむ私も知ってる年下の男の子

長岡市立越路小学校6年

西澤柚月


もみじの葉ふむとカサカサ音がなるもみじの道は音のじゅうたん

河合町立河合第二小学校6年

西内愛俐咲


いつもなら聞こえる母のおかえりがないなそうだよ入院なんだよ

河合町立河合第二小学校6年

福井愛羅


タブレットを開いてみるといつのまに国語の課題返ってきている

南島原市立布津小学校5年

中野怜緒那


おじいちゃん天国からの里帰りお酒もついで待ってるからね

南島原市立布津小学校5年

山下秀真


夏の空ながるる雲の形見てどんどんうかぶ好きな食べ物

南島原市立布津小学校5年

渡部ひなた



【日本語学校・海外協定校で学ぶ学生の優秀作品】


すきというたったひとこと言えなくてとおりすぎてくかれのよこがお

双葉外語学校2年

グェン ティ バオ ヴィ


日本来て母さんの夢叶えたいがまんできますがんばりますよ

アンランゲージスクール池袋校1年

カゥン チョー タン


たくさんの人にやさしくしているが自分にもぜひ忘れないでね

シーナカリンウィロート大学3年

ポーンパット ピサッシペン