第33回入選作品

応募総数61,976首の中から選ばれた入選作品をここに発表します。たくさんのご応募ありがとうございました。

学校全体で「現代学生百人一首」に取り組まれ、多数の優れた作品を応募いただいた学校に贈呈する「学校特別賞」は以下の5校に決定いたしました。

・千葉県  芝浦工業大学柏中学校

・神奈川県 慶應義塾湘南藤沢高等部

・広島県  広島県立広島工業高等学校

・徳島県  阿南工業高等専門学校

・長崎県  佐世保市立祇園中学校


▼第33回 応募作品を振り返って

6万首を超える応募があったのは2011年度以来8年ぶりです。「令和」への改元で万葉集が脚光を浴びたことも、短歌への関心に繋がったのかもしれません。応募作品からは、身近な出来事をクローズアップしたもの、世の中を俯瞰した冷静な視点、家族や友人を思う気持ち、現代のコミュニケーションにまつわる感情など、さまざまなアプローチが見られます。日常に抱く普遍的な悩みや喜びも、これから新しい時代を生きていく若者ならではの視点で詠まれたユニークな作品が多く寄せられました。

【時事・社会問題】

流行のスイーツだけでなく、環境問題や政治問題にも関心を示し、グローバルでボーダーレスな世界を実感しつつあるようです。社会の動きに対し若者ならではの視点で、真正面から向き合った作品、またユーモアを交えて詠んだ作品が、今回も数多く寄せられました。

【コミュニケーション】

コミュニケーションツールとして定着したスマートフォン。翻弄されたり、疑問を持ったり、拒絶したりと、身近であるがゆえにメリットもデメリットも感じている様子がうかがえます。

一方、せわしない毎日の中でふと立ち止まった瞬間を詠んでいる作品も見られました。

【進路・未来】

今回も、自身の進路や未来への不安を詠んだ歌、一方で手ごたえや決意を詠んだ歌など、若者ならではの気持ちを反映した作品が寄せられました。


▼入選作品(作品は都道府県別に北から並んでいます。学校名・学年・作者は発表時の情報です。)

バイト行く今日は先輩いるのかなシフト表見て笑みがこぼれる

帯広北高等学校 2年

井村 愛美


留学のポスターの前で立ち止まる夢ある友とまだない私

北海道千歳高等学校 1年

三浦 奏愛


しわくちゃの手を握って行った墓参り今年は握らず会いに行く夏

秋田県立秋田北高等学校 1年

塩田 遥子


あーそれな!うすっぺらいとは思いつつ今日も駆使してみんなに合わせる

山形県立酒田光陵高等学校 1年

石垣 茉生


キャッシュレス色々使ってみたけれど硬貨の重みは忘れられない

福島県立平工業高等学校 3年

佐藤 響


帰り道暮れ行く空にカメラ向け密かにためる夕焼け貯金

茨城高等学校 2年

小松原 万愛


「なぜうちを?」今日はこちらがきいてみるスーツの私と巣かける燕

筑波大学 4年

北森 葵


一輪の向日葵みたいに生きていた祖父の姿に憧れ抱く

東洋大学附属牛久高等学校 3年

椎野 有紗


超不安大事な模試の解答欄続く文字列アエアエエエエ

東洋大学附属牛久高等学校 3年

正能 雅玖斗


私だけとり残されてゆくような東京帰りの電車の窓際

高崎商科大学附属高等学校 3年

伊藤 あるは


おとうとのつむじが見えなくなった日にひとには別れがあることを知る

埼玉県立川越女子高等学校 1年

横山 花梨


目の前で手と目で話す手話会話少し分かって静かに参加

埼玉県立川越総合高等学校 2年

田中 万葉


ひこばえの青々とした姿みていまを生きろと背中おされる

埼玉県立川越総合高等学校 3年

新井 薫乃


「なんでもない」強がりすぎて離れてく寂しい顔した本当の友達

埼玉県立坂戸西高等学校 3年

白石 華鈴


流行りモノ興味がないという祖母のはやばや飲み干すタピオカドリンク

埼玉県立南稜高等学校 3年

石橋 学


ごうごうと新米乾かす音がする我が家の秋はここから始まる

埼玉県立松山女子高等学校 2年

吉野 愛香


迎え火の昇る煙と空見上げ優しき祖父におかえりなさい

志木市立宗岡中学校 3年

榎本 莉奈


おめでとう妹祝う誕生日こっそり祝う姉になった日

西武学園文理高等学校 1年

小川 璃乃


ママ抱っこ帰る私をうばいあい足がよろめく至福の時間

香取郡市医師会附属佐原准看護学校 1年

伊藤 香


風変わり冬のけはいに思い出す祖母の横顔静かな病室

芝浦工業大学柏中学校 1年

松田 北斗


目の前で一つだけ空く優先席金曜の午後つかれた体

芝浦工業大学柏中学校 2年

野口 詠都


晴れ渡るグアムの空の青さには昔の人の悲しみ眠る

芝浦工業大学柏中学校 3年

飯田 成美


台風が通って行ったこの道に電気の明かり通っておらず

芝浦工業大学柏高等学校 1年

松沢 大輔


インスタの君のジュースに紙ストロー映えるためにか地球のためか

芝浦工業大学柏高等学校 2年

王山 寧佳


認知症曾祖母の中の私消え自分の名前言う度苦しい

千葉県立千葉西高等学校 2年

辻??内 陽裕果


教科書に載る恋歌の乙女らと恋バナしたく五限の古典

千葉県立千葉東高等学校 3年

影長 美咲


昔から恋の相談祖母にする言っていること正論ばかり

千葉県立若松高等学校 2年

宮島 彩花


世のしくみ速さ第一何事も今は通じぬ大器晩成

千葉商科大学付属高等学校 3年

島崎 裕太


弾き終えた最後の鍵盤両の手で心はずませ音色は残る

千葉市立緑町中学校 2年

佐々木 心宇


「待たせてた?」「今来たところ」とはにかんだ今は約束の二十分前

大田区立貝塚中学校 3年

国則 恵


テスト前クラスで飛び交う「やってない」手口巧妙やってない詐欺

大妻多摩高等学校 1年

菊池 今日子


外出ればひっきりなしの情報に疲れた私を包む祖母の手

学習院女子高等科 2年

奈良澤 杏夏


「もういい」と言っても聞かず手をつかみ十四才児の爪を切る母

慶應義塾中等部 2年

曽我 宗功


朝早く平成最後と目をさますテレビつけると令和であります

京華商業高等学校 3年

石井 さくら


病院で名前を呼ばれてついていくいつもと違う母の背中に

光塩女子学院中等科 2年

堀内 祐希


墓参り花供え聞こえし祖母の声いがぐなったと茨城訛り

国士舘高等学校 3年

本田 和奏


母の背が大人になるなと語ってるごめんよ僕はもう子供じゃない

品川区立大崎中学校 3年

早川 将風


スカートの折り目のしわを手でのばす六年間の青春の跡

白百合学園高等学校 3年

渡井 麻友


中三でやっと手にしたスマートフォン友と語らい汗ばむ画面

成城中学校 3年

梶谷 栄太


電車内スマホの群れに紛れ込むおじいちゃんの古本の香り

星美学園高等学校 3年

黒木 礼乃


「おつ」「おけ」「り」スマホの会話単語だけそんなにみんな忙しいのか

台東区立浅草中学校 2年

関谷 咲


騎馬の上体温伝わる足裏に友を信じて心は一つ

中央大学高等学校 2年

木村 美月


友達の父の悪口聞いた日も私は父とタピ活をする

中央大学高等学校 3年

木村 日凪子


ラインの輪話のスピードリニアなみ乗り遅れたら過去の人なり

東京学芸大学附属高等学校 1年

田中 雄也


しわが増え小さく見えた祖父の手に驚きながらその手を描く

東京都立片倉高等学校 1年

土屋 はずき


「字がきれい」ほめてくれた祖母思い出しメールをとじてペンを手にとる

東京都立片倉高等学校 1年

三浦 天音


百日紅散りはてつもったその紅にかすかに感じる夕立の残り香

東京都立片倉高等学校 3年

市川 空未


しゃぼんだま君を映して空へ舞うはじける音に春の寂しさ

東京農業大学第一高等学校 1年

石川 結


一瞬のすき間を抜けて光さす多摩川渡る電車の中まで

東京農業大学第一高等学校 1年

大竹 凜


母をみて夢を抱くよ保育士に見れたらいいな子供の笑顔

練馬区立関中学校 2年

安住 吏央


耳をあて少し動いたと喜んだ姉になる日が近づいてくる

東大和市立第四中学校 1年

田中 紗智


涼しい日すぐにエアコンつける父ここにも届かぬグレタさんの声

町田市立金井中学校 2年

北川 優妃


天敵のニキビ一つぶ発見しおでこをめぐる陣地争い

目黒区立第八中学校 1年

大滝 菜々花


大国の圧に屈さぬ人々がマスクとともに自由をさけぶ

神奈川大学附属高等学校 2年

福井 拓己


日本地図眺めて祖父はつぶやいた「俺の生まれた満州はない」

慶應義塾普通部 2年

武 晃志


ガラケーもスマホも何も持ってない現代にいる原始人ぼく

慶應義塾普通部 2年

原藤 直


帰り道惰性で買ったマシュマロに救われるような夜もあります

慶應義塾湘南藤沢高等部 2年

天田 憲壮


コンビニでレジ打つ昔の同級生他人行儀に小銭を払う

慶應義塾湘南藤沢高等部 2年

川上 咲希


言葉の壁越えて過ごしたカナダの地不安と期待は自信と希望へ

中央大学附属横浜高等学校 1年

黒澤 せり


一瞬の風を率いて舞う札は古からの恋の懸け橋

中央大学附属横浜高等学校 1年

森 裕奈


黒烏口ばしつつくいちじくは失恋知った乙女の心臓

東京学館新潟高等学校 1年

加茂 凜々子


カタコトの「イラッシャイマセ」くりかえすアジアの風吹く朝のコンビニ

東京学館新潟高等学校 3年

栗田 岳


フキノトウ土雪をよけ顔を出す白になれてた目にあざやかに

新潟県立長岡農業高等学校 3年

中西 千里


曾祖母の畑のすいか赤く熟れまた来年もなと笑う縁側

金沢大学人間社会学域学校教育学類附属高等学校 1年

有吉 希生


曾祖母の遺した歌集手に取りて私の名前見つけるよろこび

飯田女子高等学校 1年

北澤 凪希


夕暮れのテトラポットと潮風を感じてみたい信州人は

伊那西高等学校 3年

我如古 ヴィヴィアン


電車まであと三分の待ち時間スマホに映る英単語五個

伊那西高等学校 3年

桑澤 菜生


最後だね楽しもうぜと声かかり涙ぬぐってラストゲームへ

上田西高等学校 3年

西川 莉央


ふれる度互いの汗ですべる腕チームを背負いレイアップ行く

静岡県立静岡中央高等学校 2年

佐野 心人


2年間いつも2人で乗り越えたマッチポイント最後のスマッシュ

愛知県立春日井西高等学校 3年

丹羽 伸一


母の日に感謝の花束照れ隠し素直なこころ花束の中

西尾市立平坂中学校 2年

小鹿 名奈子


電車での私のひそかな楽しみは低音が響く車掌さんの声

光ヶ丘女子高等学校 1年

米澤 朋花


電話出て奥様ですかとよく聞かれ成長するたび母に似てくる

立命館守山高等学校 3年

田口 桃佳


夏の朝駆け込み乗車息切らし君を見つけて前髪直す

立命館守山高等学校 3年

山田 美衣菜


「あ、今のミ」風鈴が鳴りつぶやくと「風流ないね吹奏楽部」

長岡京市立長岡第四中学校 2年

白川 未雲


帰り道あなたと乗った阪急線レールと鼓動がビートをきざむ

花園高等学校 1年

段 亮輔


席替えで君の隣の席になる「えー」と言っても上がる口角

大阪市立西高等学校 3年

安田 朱那


酷暑の日過ぎればそこに訪れる心高ぶる岸和田の秋

大阪府立岸和田高等学校 1年

七山谷 優介


病室の母と毎日ラインする既読の早さ元気伝わる

大阪府立岸和田高等学校 1年

光山 紗矢


画面越し既読はつけないままでいる一人で悩む君への返事

近畿大学附属高等学校 1年

相澤 希美


「えっかわいい~」JKの言う「かわいい」はこの世で一番信用できない

近畿大学附属高等学校 1年

宗川 弥生


少ししか会えない父とあそぶけど楽しすぎたら別れがつらい

大東市立住道中学校 2年

筒井 実里


静電気パチリと鳴ったそれだけで笑えた君とあの冬のとき

関西学院中学部 2年

岩田 真結


ふりそそぐ太陽の陽と急な雨ぱっくり割れた我が家のトマト

兵庫県立大学附属高等学校 3年

中村 温花


あの山の豪雨でくずれた爪あとが記憶とともに消えていく春

広島県立呉工業高等学校 1年

河﨑 蓮


ただの鉄それだからこそ俺達の技術使って命吹き込む

広島県立広島工業高等学校 1年

山根 飛和


実習着一年以上着ていれば今ではもはや私服のようだ

広島県立広島工業高等学校 2年

德佐 拓真


鑿を研ぎ緩む口元照れかくしうまくなったな祖父の一言

広島県立広島工業高等学校 3年

濱井 大季


「おかあさんまた勉強」と怒るキミいつかこの日を理解できるかな

広島市医師会看護専門学校医療高等課程 2年

豊島 由紀


音と音阿波の踊り子騒ぐ街待ちきれないよと心が疼く

阿南工業高等専門学校 1年

可原 悠人


元号をスマホ片手に待ちわびてSNSで令和と知りぬ

阿南工業高等専門学校 5年

髙島 雄太


友人と距離を感じる標準語忘れたくない故郷の言葉

阿南工業高等専門学校 5年

藤田 陸


測量でかげろうできて誤差が出るピントが合わずとても悔しい

愛媛県立八幡浜工業高等学校 3年

山下 一平


たくさんの付箋が辞書から溢れてる私の知識も溢れていくか

つくば開成福岡高等学校 2年

髙嶋 優香


爆竹の音がすごいぞお盆の夜 精霊船は静かに進む

佐世保市立祇園中学校 2年

田中 曖菜


平和とは?僕が聞くと父は言う必ず自分に明日が来ること

佐世保市立祇園中学校 2年

渕 凌万


協調性あるかないかを言いながら散らばる雲に心は惹かれる

佐世保市立祇園中学校 3年

石川 胡桃


扉開け耳に飛び込むセミの声連日の雨終わりを告げる

大分県立芸術緑丘高等学校 2年

藤内 歩


飛行機が欠航にでもならないか家族に手を振りひっそり願う

慶應義塾ニューヨーク学院(高等部) 10年

岩城 ??紀


コンビニの入店音すらなつかしむ一時帰国は二年に一度

慶應義塾ニューヨーク学院(高等部) 11年

中村 薫



【小学生の部】


ドンッとなりパラパラ散ったあの花火切ない思い強く心に

印旛郡栄町立安食台小学校 5年

ダシルバ 龍杏


春風につくしがゆれる右左のっぽになるのまち遠しくて

印旛郡栄町立安食台小学校 5年

野中 あおい


くらやみにライトてらすと百合の花白くかがやき道ばたにさく

印旛郡栄町立安食台小学校 5年

弘海 瑠奈


日本一大きい魚とならび立ち自分の夢と大きさ比べ

印旛郡栄町立安食台小学校 6年

臼井 寛


ぼくの家かぐらなんばん育ててるドキドキ食べると舌がひりひり

長岡市立山古志小学校 6年

長島 忠育


群青の輝く水に入り込みキックとプルでベストを尽くす

松阪市立松尾小学校 6年

飯田 美沙


かぜひいてベッドでひとり目を閉じる外から聞こえただんじりの声

堺市立深井西小学校 6年

有村 彩花


10月の楽しいリズム地車だみんなでさけぶソーリャーオーリャー

堺市立深井西小学校 6年

髙松 大雅


母ちゃんの入道雲が発達し大きなカミナリ私に落ちた

堺市立深井西小学校 6年

山本 美緒


あこがれる心にひびくやさしさがみんなに届く教師になりたい

新上五島町立青方小学校 6年

濵田 花純


【日本語学校・外語学校で学ぶ学生の優秀作品】


あす明日どうなるのかは知らないが今日一日を生きてほしいよ

双葉外語学校 2年

NGUYEN THI BICH QUY


「たべたいな」祖父の料理がでも無理だその味はいま天国にある

国書日本語学校 2年

楚 ?涵


外国でテレビ電話で分かち合う現代こその家族団欒

国書日本語学校 2年

鳳 翔宇