第25回入選作品

応募総数60,237首の中から選ばれた入選作品をここに発表します。たくさんのご応募ありがとうございました。

学校全体で「現代学生百人一首」に取り組まれ、多数の優れた応募作品がある学校に贈呈します「学校特別賞」は下記の5校に決定いたしました。

・山形県 県立真室川高等学校

・福島県 県立平工業高等学校

・埼玉県 行田市立西中学校

・愛知県 県立岡崎盲学校

・岡山県 県立岡山東商業高等学校


▼第25回 東洋大学「現代学生百人一首」の特徴

〇「大震災」に心を揺さぶられつつも視線は未来へ

今回の入選100首のうち約2割を、昨年3月の大震災とそれに伴う原発事故、電力不足などに関連したものが占めました。震災の悲惨さをストレートに表現したものをはじめ、震災が発生したことで浮き彫りになった人間模様を表現した歌などが目立ちました。また、惜しくも入選には至らなかったものの、震災の悲劇を乗り越えて前を向こうとする心情を歌った佳作が数多くあった点は、若者を作者とする「現代学生百人一首」の大きな特長として挙げられるでしょう。なお、大震災をテーマにした歌は、東京以北からの応募が圧倒的多数を占めており、地域差が顕著にみられます。

〇「スポーツ」「スマホ」「季節」などテーマは多彩

キーワードとしてとくに目についたもののひとつが、「なでしこ/ナデシコ/撫子」。「なでしこJAPAN」の活躍は若い世代にも大きなインパクトを与え、その日本古来の花の名を用いて、さまざまに表現しました。ほかには、「はやぶさ」「韓流」などに加え、ネット社会の着実な進展を背景にした「ケータイ」「スマートフォン」「インターネット」などを素材として歌に読み込んでいるケースも多くみられました。


▼入選作品(作品は都道府県別に北から並んでいます。学校名・学年・作者は発表時の情報です。)

大人達話しかけてもそのうちねそれで一度も「そのうち」がない

北海道  江別市立江別第二中学校  2年

小笠原 実紅


母ぐまの後をおいかけ街にでたまいごの子ぐま早くおかえり

北海道  北嶺中学校  2年

齊藤 明良


ひっそりと影で咲いてたなでしこがいまや日本の象徴となる

北海道  北嶺中学校  3年

堀野 雄太郎


震災で採用増える公務員少しうれしい自分に嫌気

北海道  北海道帯広農業高等学校  3年

大石 怜央


苦労すると言われて辞める夢じゃない俺のこの手で畑を拓く

北海道  北海道帯広農業高等学校  3年

大森 拓


ふるさとのさむさにたえる白鳥の白き翼が冬空を打つ

青森県  平内町立小湊中学校  2年

辻村 恵祐


幼少期サンタクロースを待っていた仕事でつかれた父とは知らず

青森県  県立八戸工業高等学校  1年

田仲 柊平


「圭市君」呼ばれる度にほっとする私の名前はわたしの居場所

岩手県  県立水沢商業高等学校  1年

菊地 圭市


トラブルも悩みも不安も失敗もリセットしたいゲームのように

岩手県  県立水沢商業高等学校  2年

菊池 祐奈


グラグラと揺れる大地に一人きり遠く離れた母から電話

岩手県  専修大学北上高等学校  3年

石井 聖人


故郷(ふるさと)を全て飲み込む黒津波祖父の叫びはがれきと流れた

岩手県  専修大学北上高等学校  3年

佐藤 華


寂しくて携帯開きまたしまう震える声を隠す強がり

岩手県  盛岡女子高等学校  3年

小野寺 はな


じいちゃんに県外に出ると伝えたら寂しげな顔心惑わす

岩手県  盛岡女子高等学校  3年

齋藤 菜摘


日が暮れてくらやみの中ゆれる光家族五人を照らすろうそく

宮城県  宮城県岩出山高等学校  1年

大衡 友香


震災後あの日のままの体育館浮かぶ景色とつのる想いと

宮城県  宮城県仙台西高等学校  2年

板橋 蒼


実習で僅かに感じるミリの誤差悪戦苦闘の鉄鋼削り

山形県  県立酒田工業高等学校  2年

梅津 侑弥


新品の青い作業着に身を包み緊張しながら旋盤に触れる

山形県  県立酒田工業高等学校  2年

佐藤 大河


顔知らぬ名前も知らぬ人達に生きててほしいと願った三月

山形県  県立真室川高等学校  2年

門脇 優衣


珈琲にぽとりと落とした角砂糖が消えてなくなる一生(ひとよ)の終わり

山形県  県立山形東高等学校  2年

小野 壮亮


元気だと伝えてくれと言う親戚(おばちゃん)避難所前の最後の会話

福島県  県立平工業高等学校  2年

大平 浩貴


大地震力を合わせがんばっぺ!下を向かずに再興目指し

福島県  県立平工業高等学校  2年

黒澤 拓


七月はからっぽだったポケットを単語カードが独占してる

茨城県  東洋大学附属牛久高等学校  3年

髙塚 信治


秋の空見上げながらの帰り道たまに一人もいいなと思う

埼玉県  行田市立西中学校  2年

田島 ななみ


まっくらの計画停電あった夜あの日の夕食今でも言える

埼玉県  東松山市立南中学校  3年

新井 晴乃


旅終わり疲れて眠る君の顔これも一つの隠れた絶景

埼玉県  慶應義塾志木高等学校  3年

中村 元哉


端末やネットで繋がる現代人孤独(ひとり)と見るか仲間と見るか

埼玉県  県立春日部高等学校  2年

小林 俊晶


大震災復興待ってる人がいる今の私に何ができるか

埼玉県  県立熊谷女子高等学校  1年

安藤 千夏


スーパーの棚から商品奪い去る人々の目は被災者を見ず

埼玉県  県立熊谷女子高等学校  2年

加藤 美穂


エプロンを後ろで結ぶのできなくて置いて行かれる涙が出そう

埼玉県  県立特別支援学校さいたま桜高等学園  3年

河村 健太


おじいちゃん倒れているかと思いきや「暑いからな」と廊下で寝てた

埼玉県  県立松山女子高等学校  3年

松本 侑里香


冬の日に共に歩いた雪の道歩幅を合わす君はもういない

千葉県  芝浦工業大学柏中学校  3年

雨宮 佑弥


ゆずの葉にしがみついてるいもむしをどうか風さん飛ばさないでね

千葉県  成田高等学校付属中学校  1年

重吉 彩乃


朝起きてトマトにキュウリナスゴーヤ朝市思う祖父の縁側

千葉県  麗澤中学校  1年

勝見 聡太


夏の空くもが少なくすきとおる鳥がたくさん移動している

千葉県  和洋国府台女子中学校  3年

吉村 智江


笑いあう友達よりも本当の私を知ってるツイッター

千葉県  県立泉高等学校  3年

木下 果林


光速を超えてしまったニュートリノ新理論の扉が開く

千葉県  県立佐原高等学校  2年

山﨑 孝浩


便利だと流行(はやり)だからと皆が持つ使えるだろうかスマートフォン

千葉県  県立津田沼高等学校  1年

髙橋 幸風


鏡見ておもわず笑うその形慣れないネクタイ父に教わる

千葉県  芝浦工業大学柏高等学校  1年

上坂 樹


会えるかな淡い期待をそっと抱きあの道今日も遠回りする

千葉県  聖徳大学附属女子高等学校  3年

十川 栞


墓地に咲く花の種類はわからないただ覚えある悲しい香り

千葉県  東京学館船橋高等学校  1年

遠藤 謙人


老犬の温かな身に顔うずめ命の音聞き涙あふれる

東京都  足立区立第十一中学校  2年

川井 月


節電で冷房つけず勉強を原稿用紙に汗が一粒

東京都  板橋区立志村第四中学校  2年

小嶋 悠揮


猛烈な暑さにカラス口あけて風こないかと川岸で待つ

東京都  吉祥女子中学校  2年

小林 美佳


「優しいね」友達にはそう言われたが違う私はただ弱いだけ

東京都  慶應義塾中等部  2年

飯沢 茉侑


「人間は生きてる事が偶然だ」母の言葉に心打たれた

東京都  慶應義塾中等部  2年

西堀 里奈子


この携帯あまりメールがこないけどゆれたあの日は多くのメール

東京都  京北中学校  2年

高橋 紘平


雄大な阿蘇の緑に遊ぶ夏被災地のこと心かすめる

東京都  駒込中学校  2年

瀧来 海


青春の我の心は不規則に転がり続けるどんぐりのよう

東京都  創価中学校  2年

伊藤 駿佑


「悩みなら私に話して」ケータイの画面に映る文字が滲んだ

東京都  千代田区立九段中等教育学校  2年

三輪 琴乃


夏祭家族で並んで歩いたらカランカランと下駄もおしゃべり

東京都  普連土学園中学校  2年

三浦 理花


せんぷうき魔法の風に話しかけ私の声がゆらゆらゆれる

東京都  日本橋女学館中学校  1年

岩倉 春姫


夏空に白くたなびくバスタオル遥かに見える雲と重なる

東京都  足立学園高等学校  3年

高橋 昂太郎


交流の幅は広がるネット社会薄れゆくのは身近な地域

東京都  足立学園高等学校  3年

中村 麟太郎


マンションの上から見えるスカイツリー僕らみたいに成長してた

東京都  京華商業高等学校  1年

前原 圭佑


震災後街のあかりが暗くなり不安な気持ちただいまで消す

東京都  昭和女子大学附属昭和高等学校  1年

橋本 梨乃


飲みかけのラムネのビンを傾けるガラスのなかで揺れた夏空

東京都  女子学院高等学校  1年

山内 志織


胸に湧く喜怒哀楽はどれもみな生きる力の源となる

東京都  専修大学附属高等学校  1年

阿武 菜々子


韓流がにっこり勧めるCM見 酒飲めぬ母ダース買いする

東京都  中央大学高等学校  3年

中島 渉


田舎からカボチャが届くふっくらと祖父母の丸い背中のような

東京都  都立大泉桜高等学校  2年

北原 奈菜


被災地の想いが詰まった松の木が使われなかった京の送り火

東京都  都立片倉高等学校  2年

小島 寛子


会いに行く福島県のおばあちゃん不安にさせない私の笑顔で

東京都  都立保谷高等学校  2年

木村 秀斗


被災地となった故郷を前にして震える母の肩を支える

東京都  都立保谷高等学校  2年

辻本 有紀


満員のバスで微笑む赤ちゃんがみんなに渡す笑顔のバトン

東京都  明星学園高等学校  2年

下内 あかり


少しだけ独りの時間が欲しいからあえて乗り込む各駅停車

東京都  早稲田大学高等学院  3年

小林 孝平


友達と空き缶並べて語る夜卒業の日は近くに迫りぬ

東京都  青山学院大学  4年

飯島 真郁


いつの間に大人と呼ばれる歳になりあたしはわたしに置いてかれてる

東京都  日本女子大学  2年

結城 舞子


家出してどこへゆこうかまよったが結局裏の公園に行く

神奈川県  慶應義塾普通部  1年

森田 雄大


六月のよどめる雲の間からあじさいの花に光差しこむ

神奈川県  真鶴町立真鶴中学校  2年

刀称 光輝


春山にはねうまうかぶ山すその田植えの知らせ家忙しい

新潟県  関根学園高等学校  1年

岡田 涼平


告白の出来ない恋は五分咲きのキンモクセイのただ香りだけ

新潟県  東京学館新潟高等学校  1年

本永 康彦


アラームも母にもたよらず起きられた日はいつもより饒舌になる

長野県  飯田女子高等学校  2年

宮島 沙耶香


雲白く初夏(はつなつ)の空を流れをり淡く色づく凌霄花のうぜんかずら

長野県  伊那西高等学校  2年

新井 春香


「お嬢ちゃん」私を忘れた祖父は言う温かい手は変わらないのに

長野県  伊那西高等学校  3年

小松 理恵


戦争の映画見ながら眠る祖父思い出したくなかったのかな

静岡県  県立御殿場南高等学校  2年

長田 ひかる


高望みすればするほど席がなく就活帰りの満員電車

静岡県  県立浜松大平台高等学校  2年

藤野 恵美


ここは何処見知らぬ場所で降ろされてスクールバスは戻ってこない

愛知県  県立岡崎盲学校  1年

松井 健児


側溝の泥の掻き出し「車だぞー」仲間の声に作業中断

愛知県  県立岡崎盲学校  3年

可兒 直大


模試前の不安な気持ちに比例して付箋が増えるわたしのノート

愛知県  愛知淑徳高等学校  2年

近藤 紗矢


駆け寄られ「せんせい、あのね」と言われたらさらに高まる保育士の夢

愛知県  光ケ丘女子高等学校  3年

曽山 真帆


命日に網戸にとまり鳴くセミは祖父の化身としばし聞き入る

愛知県  光ケ丘女子高等学校  3年

服部 有


不器用な一人娘の親孝行末期(まつご)の父へのガトーショコラ

大阪府  関西大学第一高等学校  1年

井上 智子


配られる進路希望のアンケート紙一枚にせかされる日々

大阪府  関西大学第一高等学校  1年

検校 希


十五夜に雲の海から出た月を必死で取り合う街のビルたち

大阪府  清風高等学校  3年

池田 俊幸


「おかん、おれ」意味なく電話してしまいテレカが尽きる寮のおきまり

奈良県  天理教校学園高等学校  2年

小見山 智


進学の為に仕事を増やす母疲れた横顔見るのが辛い

岡山県  岡山市立岡山後楽館高等学校  3年

田中 琴梨


人を見て優れたところをまねてきた多くの自分を置き去りにして

岡山県  岡山市立岡山後楽館高等学校  4年

多田 大輝


透きとおるガラスの様な服を脱ぎ抜けがら残す小さなカマキリ

岡山県  県立岡山東商業高等学校  2年

藤井 佑美


日よけにと母が植えた緑のカーテンなかなか伸びない僕と一緒で

岡山県  県立岡山東商業高等学校  2年

堀 良祐


春の日に忘れられない天災が東北の地の時間を止めた

広島県  県立総合技術高等学校  2年

梅﨑 優華


「受験生」と呼ばれる時が来る前に会っておきたい本気の自分

広島県  広島文教女子大学附属高等学校  2年

小塩 里緒菜


実習衣真っ白折り目きっちりと日に日に黄ばみ折り目なくなる

広島県  広島市医師会看護専門学校  2年

大坂 菜巳


海外の父とメールで会話する会って話すより素直になれて

山口県  県立徳山高等学校  1年

平田 恵莉


機械科で男子の中に女子一人それを覚悟で目指す夢あり

山口県  県立徳山商工高等学校  1年

水津 梨亜奈


震災の復興支える技術者を目指して今日も高専で学ぶ

徳島県  阿南工業高等専門学校  1年

福田 傑


菜の花に光があたって輝いてる雫がきれいな宝石みたいに

長崎県  佐世保市立中里中学校  3年

荒木 香帆美


中庭に座ってみると大きくていつもの校舎がどこか頼もしい

長崎県  佐世保市立中里中学校  3年

岡田 みずほ


秋の空イワシがたくさん泳いでてとなりのネコがひるねをしてる

長崎県  佐世保市立中里中学校  3年

阪口 啓介


不器用な君が作ったスパゲティ少し無理しておかわりをする

長崎県  佐世保市立中里中学校  3年

村上 玲奈


落ち込んだ模試の結果C判定鉛筆十本黙って削る

長崎県  県立諫早農業高等学校  3年

林田 陸


渋谷なう原宿なうのつぶやきも実感わかないソコドコデスカ

沖縄県  県立開邦高等学校  3年

宜野座 安浩



【小学生の部】


庭のかきおいしくなれと小鳥達やさしい声のおまじないだね

茨城県  石岡市立石岡小学校  6年

池田 明純


やっとだよもうすぐ会える友達と髪切ったかな日焼けしたかな

埼玉県  コロンビアインターナショナルスクール  6年

小峰 未来


澄んだ川ささ船そっと置いてみた儚く終わった小さな旅路

埼玉県  コロンビアインターナショナルスクール  6年

長谷川 莉沙


桜の木昔も今も学校の歴史をずっと語っているよ

東京都  府中市立府中第十小学校  6年

西村 拓真


雨を行く新幹線の窓ガラス走れ走れ雨つぶねずみ

神奈川県  川崎市立鷺沼小学校  5年

小林 真夕


ひがん花赤の中に白い色一本ぽつんと白のひがん花

奈良県  奈良市立西大寺北小学校  6年

嶋﨑 友里菜


明日香村いろんな歴史まんきつし紅い森たち真っ赤なほっぺ

奈良県  奈良市立西大寺北小学校  6年

西 あすか


秋の田のかがやく稲穂と彼岸花飛鳥のキャンバスいろどる絵の具

奈良県  奈良市立西大寺北小学校  6年

温井 太一


ぎんなんがぽとぽと落ちる足元に見上げてみれば色づくいちょう

奈良県  奈良市立西大寺北小学校  6年

古澤 舞衣


もようまでしまに巻いてる貝ひろい海のかけらとポケットにいれた

広島県  福山市立南小学校  5年

中田 光紀