『沈黙の作法』

『沈黙の作法』
河出書房新社、2019年6月


【装幀・本文AD】
坂野公一+吉田友美(welle design)


【対談構成】
柳美里


【目次】

まえがき 山折哲雄

 第1夜

生きるに値することのみを説いたり論じたりするのではなく

亡き人にただ別れを告げるだけでは立ち止まり絶望する以外にない

宗教とは、人間の存在に対する問い掛けから始まる

死ぬことが即ち生きることという「死生観」

時と共に薄れ消え入るのではなく死者の声は響き続ける

(2013年11月30日)

 

 第2夜

死を媒介にして繋がることを感じ取る命

身をよじって悩み悶える人と 苦しみと悲しみにじっと耳を傾ける人

深い沈黙の中に降りていく時に現れる身体反応

五十六億七千万年間の思索の後に弥勒菩薩は大地に座るのか?

死者の沈黙よりも軽い言葉を発してはならない

(2014年4月24日)


 第3夜

何百年前、何千年前の出来事を今日の時点でどのように受け取るか

他者へ向かう「怨」 内面化させる「恨」

「どちらかである」生き方 「どちらでもない」生き方

物理的な暴力と創造的な暴力

言葉が意味をなさなくなる時にわたしたちはどうコミュニケートすればいいか

(2014年8月24日)


 第4夜

普通の裏側から、本質的な問題に刃を突きつけている

塵芥のように流されていく 流れの中で摑む創造の契機

成長の行き着く先は衰退という複眼思考

未知なるものに対する五感を使った挑戦

わたしたちは言葉ではなく沈黙によって結ばれる

(2014年11月29日)


 第5夜

いのちの対話がはじまるんだよ 死んでしまった人と生き残った人の

存在の重さと存在の軽さ

わたしたちは西洋かぶれの重みをいつまで担い続けるのか

沈黙の先に感じる魂の動き、命の動き

生命欲という人間の根源的な欲望

生命欲の根源的は食欲にある

絶望の中の寂寥を経験しない人間の歌に何の意味があるのか

「かぶれ」の時代から「ぱくり」の時代へ

(2019年2月14日)


 第6夜

昭和の終わりと平成の始まり 昭和天皇と美空ひばり

闇は光では照らし出せない 闇は闇で照らすしかない

悲しみに浸ることの先にある快復と解放

生者は死者と何処で出会いどうやって癒されるのか

がんばらない、寄り添う、悩まない、そして癒し

答えのない問いを手放さずに持つことによって

(2019年2月15日)


あとがき 柳美里