「ムジカーザでガムラン2019」はこんな感じでした
6月27日(木)「ムジカーザコンサート ガムラン」、28日(金)「ムジカーザでガムラン」にお越しくださり、ありがとうございます。梅雨入りし、しかも台風が上陸しようというなか、2日間3公演で200人を越す大勢の方々にご覧いただきました。蒸し暑い気候でしたが、入退場にあたる時間帯に雨が降っていなかったのだけは幸運でした。不備な点も少なからずあったでしょうが、どうぞお許しください。記録として、各公演の様子をそれぞれ書き記しておきます。(公演直後のブログより)
◆出演
ローフィット・イブラヒム
佐々木宏実
ナナン・アナント・ウィチャクソノ
西田有里
スミヤント
根津亜矢子(6月28日のみ出演)
岩本象一
西岡美緒
6月27日(木)「ムジカーザコンサート ガムラン~世界の珍しい楽器」19:00~
ムジカーザ主催の年6回のコンサート、そのうち1回は「世界の珍しい楽器」シリーズとして開催しているとのこと。同館ができて24年目の今年、光栄なことに「ガムラン」を選んでくださり、コンサート会員の方+一般のお客様約70人を前に、ジャワ芸能の数々を披露しました。終演後に演者も交えてお客様との立食パーティーを開くというので、プログラムはちょっと短めの90分。楽しんでいただけたようで、幸いでした。
・開演前パフォーマンス
「ジャワの農村の夕暮れ風景」
(19:00開演)
・開会の曲
「パンクル・ニャマ・マス」
・宮廷舞踊
「スカル・プディヤストゥティ」
(踊り手=西岡美緒、27日のみ)
・ガムラン音楽の始まりと進化
・ジャワの遊び歌
「ジャムゥ・ジョウォ」
~「オジョ・ディプレロイ」メドレー
・ジャワの人形芝居
「トラとやんちゃなシカ・カンチル」
(人形遣い=ローフィット、演奏=佐々木宏実)
(20:05~20:15 休憩)
・ジャワ影絵芝居の前奏曲
「パタロン」
・ジャワの影絵芝居
「無法者チャキルと若武者の戦い」の場面(27日のみ)
・ジャワの村踊り
「ジャティラン 騎馬舞い~獅子舞い」
・メンバー紹介
(20:40頃終演)
・立食パーティー
搬入の時間、この日は来ないはずのスミヤントさんが心配のあまり、わざわざ有休休暇をとって現われたのでびっくり。驚いたことに、そのままローフィットさんの衣装を借りて本番にも出演してくれることに。彼らの強い仲間意識には本当に頭が下がります。
まずはやんごとなきジャワの王宮の風情を味わってもらおうと、開会の曲に続けて西岡美緒さんによる宮廷舞踊を短めに。
レクチャーコンサートを望む人も多いのではないかというので、美緒さんが化粧を落として演奏に復帰するまでの間、「ガムラン音楽の始まりと進化」というイメージのコーナーを設けました。ガムランは「ガムル(打つ、叩くの意)」の語が転じたもので、魔除け・厄払いのためのゴング(銅鑼)の音に始まり、やがて鍵盤楽器・弦楽器などを加えて音楽・芸能になっていく様子を、実演を交えて5分ほどで解説。果たして面白さが伝わったかどうか。
そこから雰囲気を変えて、庶民的な流行歌をメドレーで演奏。会場内が少し陽気になったところで、動物人形芝居「トラとやんちゃなシカ・カンチル」を上演。ローフィットさんと佐々木宏実さんの力惜しみのない熱演、さらには森の権力者であるトラのあまりのマヌケさに笑い声が上がります。この演目、子ども向けに作ったはずですが、意外に大人に評判がいいのです。
休憩はさんだ後半はジャワの影絵芝居ワヤン・クリ。人形の動きとともに、芝居音楽としてのガムランを聞いてもらうために、立ち回りの多い「プラン・チャキル(=チャキルの戦い)」の場面を演じてもらいました。その場面の曲が独特でいいのですが、彼らにしてもふだんは演奏しない曲なので、準備に思いがけないほどの時間がかかったらしい。ご覧になった方、得しましたね。
フィナーレはジャティランと呼ばれる騎馬舞いと獅子舞い。「これから暑い日が続きますから、熱中症に気をつけて」の獅子のセリフに、場内大爆笑。ほのぼのとした雰囲気のなかで、90分の公演は終了しました。
立食パーティーは、近所のパン屋さん(店の名を失念。フランス料理の修業をし、ベトナム料理にも通じた方がオーナーらしい)が仕出しをしてくれたココナツ風味のカレーや、アジア風サラダなどの料理が並び、インドネシアのビンタンビールまでありました。お客様は人懐こい方ばかりで、「ムジカーザをよろしくね」の言葉を何度も聞きながら、楽しいひとときでした。
そういえば1枚も写真を撮らなかったので、録画したビデオからの画像をいくつか。
西岡美緒さんの舞踊
チャキルの戦い
メンバー紹介
立食パーティー
6月28日(金)「ムジカーザでガムラン2019 昼の部」15:00~
この朝、台風が関東上陸というので心配していたら、雨の気配もない。てるてる坊主のテルちゃんのおかけで、天候にはめっぽう恵まれたようです。午前中に宮廷舞踊と影絵芝居のリハーサルだけして本番。お客様は60人強で、まずまずの入り。子どものお客様がいなかったのが残念。プログラムは昼夜とも同じで、休憩入れて120分の予定でした。
・開演前パフォーマンス
「ジャワの農村の夕暮れ風景」
(15:00開演)
・開会の曲
「パンクル・ニャマ・マス」
・宮廷舞踊
「ゴレ・アユンアユン」
(踊り手=西岡美緒、根津亜矢子、28日昼夜のみ)
・ガムラン音楽の始まりと進化
・ジャワの遊び歌
「ジャムゥ・ジョウォ」
~「オジョ・ディプレロイ」メドレー
・ジャワの人形芝居
「トラとやんちゃなシカ・カンチル」
(人形遣い=ローフィット、演奏=佐々木宏実)
(16:10~16:20 休憩)
・ジャワ影絵芝居の前奏曲
「パタロン」
・ジャワの影絵芝居
「鬼王アリムボの涙」(28日昼夜のみ)
・ジャワの村踊り
「ジャティラン 騎馬舞い~獅子舞い」
・メンバー紹介
(17:20頃終演)
西岡美緒さんと根津亜矢子さんが2人で踊った「ゴレ・アユンアユン」が素敵でした。桟敷が迫るあの狭いスペースで、そのことを一切感じさせない動き。たまに腰に巻いた布が桟敷のお客様にぶつかることがあったかもしれませんが、そういう方には近日中に必ずいいことがおきるはずです。
ガムラン音楽の解説コーナー、ジャワの遊び歌メドレーで少しずつ会場が温まり、「カンチル」で笑い声が起こるところまでは前日と同じ。ただ、この時点で予定時間をはるかにオーバー。
影絵芝居ワヤン・クリ「鬼王アリムボの涙」は、どこかロミオとジュリエットのような悲恋をはらんだ内容になり、鬼娘アリムビがビモに惚れて結婚を望む理由、さらに鬼王が絶対にそれを認めたがらない背景がだいぶわかりやすくなっていました。事前説明がほとんど必要ないほどよくできた流れ。そのまま村の踊り「ジャティラン」でフィナーレ。
内容はよかったとは思いましたが、予定時間を20分オーバーしてたのは大問題で、お客様を送り出した後、食事休憩もほどほどにして、どこをどう詰めるかを緊急に話し合い最終公演の夜の部に。
開演前の様子
人気の売店
美緒さんと亜矢子さん
トラとカンチル
6月28日(金)「ムジカーザでガムラン2019 夜の部」19:00~
2日前にチケットは完売。立ち見のお客様まで出るという大盛況で観客総数は97人、うち小中学生と未就学児が合わせて20人。子ども連れの方のために用意した桟敷席がこの会にしてようやくフルに活躍することに。仲間のガムラングループからお借りした座布団、ムジカーザが用意してくれた高級座布団や小さな腰枕が大いに役立ちました。
夜の部は、代々木上原の人気店ファイアーキングカフェ特製の「あじあごはん」を食べながら見る会。プログラムは昼公演と同じ。
・開演前パフォーマンス
「ジャワの農村の夕暮れ風景」
(19:00開演)
・開会の曲
「パンクル・ニャマ・マス」
・宮廷舞踊
「ゴレ・アユンアユン」
(踊り手=西岡美緒、根津亜矢子)
・ガムラン音楽の始まりと進化
・ジャワの遊び歌
「ジャムゥ・ジョウォ」
~「オジョ・ディプレロイ」メドレー
・ジャワの人形芝居
「トラとやんちゃなシカ・カンチル」
(人形遣い=ローフィット、演奏=佐々木宏実)
(20:00~20:05 休憩)
・ジャワ影絵芝居の前奏曲
「パタロン」
・ジャワの影絵芝居
「鬼王アリムボの涙」
・ジャワの村踊り
「ジャティラン 騎馬舞い~獅子舞い
・メンバー紹介、手締め
(21:00頃終演)
宮廷舞踊が終わった時点で、大人はともかく、子どもたちが興味を持てているのかどうか心配な雰囲気でした。遊び歌メドレーも微妙な感じ。そこを見事に救ったのが「カンチル」でした。桟敷席の子どもたちの目が夢中です。解説を大幅にカットし、曲の出だしを短めにしたり工夫したおかげで、予定時間をほぼキープできていたので安心。
休憩中、おもしろ楽器として人気だった鳥笛の音がこだまするなかで、影絵芝居の解説をせざるを得ず、声が届かずにイライラされた方もいらしたでしょうが、細かいことはプログラムにも書いてあるので、それでご容赦ください。
時間通りに始めた「鬼王アリムボの涙」。スクリーン近くに余計に準備していた座布団を出し、ワヤンの間だけでも立ち見の方に座ってもらおうと思っていたら、ここがすっかり子どもたちの居場所になっていたのには笑いました。インドの叙事詩「マハーバーラタ」を元にした、決して子ども向きの物語ではなかったのに、子どもたちが思っていた以上によく見てくれたのがふしぎ。ダラン(人形師)のローフィットさんの動きが気になるのか、座っていた子どもたちが、少しずつローフィットさんに近づいていく。「スクリーンの後ろにも回れますよ。自由に動いていいですよ」とすると、動くこと自体が楽しみになってしまうものですが、これならば何も問題はない。
ワヤンが終わると同時に、この夜、新宿バスタ発21:45の夜行バスで帰る岩本象一さんがこっそり退場。打ち合わせ通りに西田有里さんがゴング(ドラ)にまわり、フィナーレは村の踊りジャティラン。スミヤントさんの尻尾の振り方が激しい。
メンバー紹介の場で、最後まで残れなかった岩本象一さんの幻影を偲んで拍手。20:55、予定通りにこの会恒例の三本締めで幕。お母さん方が多かったので、洒落で「明日が洗濯日和になりますように」と願ってみたら、まあまあ叶いましたね。
撤収作業のために、ロビーでの見送り散会とさせていただきました。運のいいことに、たまに降っていた雨もきれいに上がり。撤収作業も予定通りにできました。
開演の直後
演奏者たち
影絵芝居ワヤン
村の踊りジャティラン
最終公演の出演者紹介の様子。この時、岩本象一さんは岡山行きの夜行バスに乗るために、バスタ新宿に向かっていた
2階のお菓子、楽器、雑貨の販売コーナーは、もはやひとつの名物になった感じ
6月28日の公演を見た方の感想(一部)
昼の部
●ムジカーザという器と息の合った演者とそれを目の前で味わえる観客の幸福さ。全体がひとつの桃源郷を形成している2時間でした。しかも大切なのは、高尚な「お芸術」に堕することない人間味がひしひしと伝わってくることです。この桃源郷が思い起こさせるのは、遠い昔に近所の神社にある夜忽然と現れた見世物小屋や、40年くらい前に観たテント芝居でしょうか。
●久しくジャワの芸能に触れていなかったのですが、演奏が始まった瞬間、干からびた地面に雨が滴り落ちてきたような思いがしました。悠久とか永遠とか、近視眼の日々を送っていると、そんな言葉があることすら忘れてしまっていますが、ガムランの音色が全てを思い出させてくれます。ああ、ここから来て、いつかまたここに還っていくんだった。
●いつもいつも楽しい催しをありがとうございます。ムジカーザでガムランは、ローフィットさんの静と動、手練れぞろいの演奏と踊り、お楽しみ福袋のような展開、ユルい案内、やはり圧倒的な楽しさでした。
夜の部
●盛りだくさんであっという間の2時間でした。大人より、うんとわかりやすいこどもたちの反応。やっぱりガムランの力ってすごいと感激しました!
●楽しい公演でした。インドネシア芸能の素晴らしさと、ちょっと笑える柔軟さが味わえて、満足でした。
●子供たちも大騒ぎで、まるでジャワの田舎にいるようでした。鳥も鳴いていて!、お弁当も美味しく、また皆さんとても達者ですよね。
●子供達の反応も新鮮でしたね。色々な演目も見れてとても楽しい時間でした。
●少ない人数にもかかわらず、芸達者な皆さんが、一人で何役もこなし、楽しいプログラムを次々に展開していく様子に、一昨年同様、ワクワクしました。ローフィットさんも、本当に素晴らしいです。欲を言えば、ワヤンはもう少し長く見たかったなぁ??
●我が子の話ですが、2回…3回目?のムジカーザで「前はあの位置に座ってたね」とか「最後に虎が出たっけ?」とか。以前の記憶がウッスラ残ってるんですね。そんな記憶も進行と同時に楽しんでました。早速家に帰って寝落ちるまでワヤンをいじってました。
●すごく良い雰囲気であったかい気持ちに包まれてましたね。楽しかったです!毎年ガムランに夢中になっちゃう子供がいるってのは素敵ですね。
【協力スタッフ】
吉上恭太
吉上智子
早川純子
松坂明律
飯田茂樹(NPO法人JIBECA)
大森愛子(NPO法人JIBECA)
中村伸
中村深樹
comoe-come(インドネシア菓子)
ファイアーキングカフェ(アジアごはん)
武藤奈緒美(スチール撮影)
折原カズヒロ(フライヤーのデザイン)